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2025年11月19日

ミサイル阻止 アーケード埋めた

「地域が全滅」住民奔走
「保守王国」熊本・健軍ルポ

 敵基地攻撃能力をもつ長射程ミサイルが熊本市の陸上自衛隊健軍(けんぐん)駐屯地に年度内に先行配備されることが発表(8月29日)され、「保守王国・熊本」と呼ばれる同市で住民からの怒りが噴出しています。今月9日には「STOP!長射程ミサイル・県民の会」の呼びかけで1200人が参加する集会が地元商店街で開かれ、配備に抗議し説明会の開催を求める県民・市民が、アーケードを埋め尽くしました。(田中正一郎)


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(写真)集会で発言する「県民の会」の山下雅彦代表(左)とアーケードを埋め尽くす参加者=9日、熊本市東区

 「ミサイルは移動できても私たちは引っ越すことはできない。どこにも逃げられない」。2児を育てる女性(49)は集会で、有事の際に地域が攻撃される恐れを訴え、「長射程ミサイル配備も、軍事力による抑止も絶対反対です」と語気を強めました。

 健軍駐屯地は、政令市・熊本市街地の東エリア、住宅地の中心にあり、市民病院や国家公務員・県職員住宅、飲食店と道を挟んで隣接しています。保護者から「子育てしやすい地域」と見られている地域での軍備増強に対し、会では、駐屯地の周辺2キロメートル圏内に、保育施設29カ所、小学校12校、中学校7校、高校8校があることを示す地図入りのビラを配って参加者に危険性を伝えました。

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 駐屯地では敵国からのミサイル攻撃を防ぐ司令部の地下化も進められています。地元保育園で理事長をつとめる建川美徳さん(75)は「木原稔官房長官(元防衛相、熊本1区選出)は攻撃される心配はしなくていいと言うが、それならなぜ自衛隊だけ地下壕(ごう)をつくるのか」と憤ります。建川さんは地域住民との深いつながりをいかして集会の準備に奔走。成功の背景に、支持政党の枠にこだわらず県内20団体と個人が結集して目標の1000人を大きく超える参加者が集まったこと、さらに商店街がアーケードでの開催を快諾するなど地域の協力をあげます。

 健軍駐屯地は戦前の軍需工場の跡地につくられ、集会が開かれた健軍商店街は工場社宅の跡地。周辺は工場の元社員の子弟や自衛隊関係者も数多く住み、「商店にとって自衛隊さんはお客様」「普通に自衛隊が生活の中にある」という地域です。しかし今回のミサイル配備では商店街の住民からも「的にされれば地域は全滅。絶対困る」「表立っては言えないが、気持ちでは反対だ」と集会への賛同が寄せられています。

健軍駐屯地 市民病院が隣接

住民説明一切なし 2児の母「初めて行動」

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(写真)陸上自衛隊健軍駐屯地(左)に隣接する熊本市民病院(右)=16日、熊本市東区

 商店街役員の男性は、「住民への説明は一切なにもされておらず、配備の経緯も分からない、こちらの意見も全然聞いてもらっていない。まず説明会をきちんとしてほしい」と語ります。

 また地域住民によると、現役自衛官からも長距離ミサイル配備に加え、大軍拡による広範囲の人事異動や実戦的な訓練の増加、訓練中の事故などに対し、「これからどうなるかわからず心配だ」との声が漏れているといいます。

 初めて平和の活動に参加するという住民も。地域で2人の子どもを育てる女性(43)は、「平和について家族で考えることはあっても、実際に動かなければというところまで行き着いたことはなかった」と振り返ります。ニュース報道で配備を知って夫や子どもと集会に参加し「生活が脅かされるということをすごく実感しました」といいます。日本政府は他国を攻撃する武器を持たないことで世界の平和をリードしてほしいと願います。

 日本共産党の田村智子委員長は、11日の衆院予算委員会で地域の声や集会の成功を紹介し住民の不安に応えるよう閣僚に迫りました。現地では「党首自ら足を運び国会議員が集会に参加してくれるとは」と感動が広がっています。一方、高市首相や小泉防衛相が住民説明会の開催を拒否し、さらに全国各地へのミサイル配備に言及したことに反発が強まっています。

 会代表の山下雅彦・東海大学名誉教授は、高市政権の態度に「住民や市民、国民の声を聞く気がないということ。配備は決まったこととして進める姿勢だ」と批判します。東アジアの平和を破壊し戦争の脅威を広げる憲法違反の大軍拡を熊本から全国に広げていこうという危険な流れがあると危惧。「たたかいはこれから。年度内配備をなんとしてもやめさせるためにさらに大きく行動を起こしたい」と語りました。

配備狙う12式地対艦誘導弾

違憲の「敵基地攻撃能力」

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(写真)長射程ミサイル配備が狙われる陸上自衛隊健軍駐屯地=14日、熊本市東区

 健軍駐屯地に配備が狙われている12式地対艦誘導弾能力向上型は、大型化により射程を200キロメートルから900キロメートル超、最終的には1500キロメートルへと伸ばし、ステルス性能なども追加。自国の領域にいる敵を攻撃する「専守防衛」を踏み越えて、相手国の領域にある基地・艦船を攻撃する、憲法違反の「敵基地攻撃能力」を持つミサイルです。

 敵と見なした艦船をその射程外から攻撃することを目的に設計・建造が進められており、健軍への配備では、これまで九州沿岸に限られていた射程が、東シナ海や中国沿岸の一部、北朝鮮周辺の日本海、黄海に届くようになります。

 ただし自衛隊単独では他国領域にある攻撃目標の情報収集ができず、事実上米軍の指揮・命令のもとで運用されることになります。「台湾有事」など米軍の起こす戦争に加担し、報復攻撃を招く恐れが強まります。

 防衛省は8月29日、長距離ミサイル配備の前倒しを発表。12式地対艦誘導弾能力向上型を2025年度から26年度に健軍に配備することに加え、27年度には富士駐屯地(静岡県)に配備、護衛艦やF2戦闘機での運用も計画。また島嶼(とうしょ)防衛用高速滑空弾(地対地)の富士駐屯地、上富良野駐屯地(北海道)、えびの駐屯地(宮崎県)への配備も明らかにしました。