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2025年11月9日

きょうの潮流

 気象学者の増田善信(よしのぶ)さんは生前、何度も自伝出版の誘いがありました。そのたびに「研究が忙しいから」と。昨年やっと、ジャーナリストの小山美砂さんの聞き書きで自伝にとりかかりましたが、完成を待たず101歳で亡くなりました▼その評伝『気象学者 増田善信』が本の泉社から出ました。原爆によって広島に降った「黒い雨」の実態を再調査し、見捨てられた被害者の救済に道を開いた増田さん。小山さんは「人を救うために科学があることを体現した人だった」と語ります▼小山さんは増田さんに最後に会ったとき、「101年の人生はどうでしたか」と聞きました。すると増田さんはこう答えました。「共産党員として大変なこともあったけれど、世のため人のために尽くすのが私の生まれてきた意味だと思って生きてきました」▼「戦争体験と共産党員であることが増田さんの生き方を支えてきたのだと、ことばの端々から感じました」と小山さん▼「黒い雨」地域を終戦の年にいち早く調査したのは広島気象台の宇田道隆技師でした。増田さんはその奮闘に感動し、道隆の名を長男につけました。長男自身が本書で初めて知る秘話です。後年、「宇田雨域」の不十分さを被爆者から指摘された増田さんの衝撃は大きく、再調査にまい進しました▼小山さんはいいます。「社会をよりよくしたいという思いは、人々への愛情だったのだと思います。信念とは、愛情とも言い換えられる。愛情深い人だったから信念に生きられたのです」