日本共産党の田村智子委員長が5日の衆院本会議で行った、高市早苗首相の所信表明演説(10月24日)に対する代表質問は次のとおりです。
裏金幕引き許されない 消費税減税実施が民意
(写真)質問する田村智子委員長=5日、衆院本会議
私は、日本共産党を代表し、高市首相の所信表明演説に対し質問をいたします。
衆議院に続き、参議院でも与党が過半数割れに追い込まれて、初めての国会論戦です。国民の審判をどう受け止めるのか、高市首相の政治姿勢が問われます。
第1に、「しんぶん赤旗」が暴いた裏金への無反省に対する、国民の厳しい審判です。ところが、総理は、所信表明演説で「政治とカネ」の問題に一言も触れず、昨日の答弁でも従来の言い訳を繰り返しただけです。国民は裏金に関わった議員の重用にも、この問題を幕引きすることにも納得していません。国民にどう説明されるのですか。
その上、維新の会との合意によって、企業・団体献金の扱いも不問に付し、衆議院議員定数削減に問題をすり替える、これでは「政治とカネ」の問題にふたをするのと同じではありませんか。
もう一つの審判は、消費税の減税です。
物価高騰は止まらず、実質賃金も前年同月を下回り続け、暮らしの苦しさは深刻になるばかりです。それなのに自民党は減税より給付金だと主張して、参院選で過半数割れとなり、消費税減税を求める議員が国会の多数となりました。総理は、給付金は国民の理解は得られなかったので実施しないと表明された。ならば、国民が求める消費税減税を行うことが、民意に応える道ではありませんか。
この30年間、消費税は3度増税され、法人税は7回も税率が引き下げられ、富裕層への減税と税優遇も続いています。
空前の利益を上げる大企業や大資産家には減税、食費さえ切り詰める庶民には消費税の重い負担――この税制のあり方を総理はどう思われますか。大企業には、今よりも税金を負担する力、担税力があると認めますか。消費税の減税で「所得の再分配」を行うことが必要ではありませんか。
物価上回る賃上げ可能 内部留保を働く人へ
暮らしのためにも、経済のためにも、物価高騰を上回る賃上げが必要です。そしてそれは可能です。
財務省の「法人企業統計調査」によれば、2024年度の労働分配率が51年ぶりの低水準となり、特に大企業の労働分配率は、2012年度の53・4%から24年度は37・4%へと急降下しました。
同じ12年間で、大企業の純利益は4・6倍、株主配当は2・8倍、大企業の内部留保は200兆円以上増え561兆円です。働く人が生み出す富が、賃上げに回らずに、株主への配当と大企業のため込みに流れている。総理、労働分配率の急降下は異常だと思いませんか。ここを正すことが、大幅賃上げを実現する鍵ではないでしょうか。
大企業の内部留保を賃上げに活用する、そのために日本共産党は、内部留保の一部に課税して中小企業への賃上げ直接支援に充てることを繰り返し訴えてきました。働く人が生み出した富を、働く人のもとへ回す、その仕組みをつくることが政治の責任ではありませんか。答弁を求めます。
労働時間の短縮こそ 規制緩和では逆行
賃上げとともに労働時間の短縮が、国民の切実な願いです。
日本の労働時間は、ヨーロッパの国々よりも300時間も長く、労働組合も「賃上げ」とともに、「生活時間の拡大」「自由な時間を」と求めています。
ところが、高市総理は就任早々、「労働時間規制の緩和の検討」を指示された。経団連が「働きたい改革」などと労働時間のさらなる規制緩和を求めたことに呼応し、長時間労働を強いる労働法制の規制緩和を行おうというものではありませんか。
厚生労働省の資料では、「月平均80時間という残業規制を超えて働きたい」という労働者はわずか0・1%です。それでも規制緩和をしようというのですか。
長時間労働による命と健康への被害は、近年、急増しています。「過労死対策白書」では、「精神障害事案の労災保険の請求件数は年々増加しており、特に令和5年度に大きく増加している」と指摘。この12年間では3倍です。
「働き方改革」と言って進めた政策は、命と健康を守るものになっていない、事態はますます深刻になっている、総理、この認識がありますか。
健康の問題だけではありません。「1日8時間労働」でも子育てや介護との両立はギリギリで、仕事を辞める、非正規雇用に変わらざるを得ない女性たちが大勢います。まともな生活時間が欲しい、自由な時間が欲しい、これが働く人たちの声であり、日本の経済の大きな課題です。この願いに応えてこそ、消費と需要の活性化にもなるでしょう。
「賃上げと一体で労働時間の短縮を」――総理、これこそが政府が目指すべき大方針ではありませんか。
病院の6割が赤字深刻 社会保障切り捨てるな
医療危機が深刻となっています。病院の6割が赤字、倒産・閉鎖も相次いでいます。総理は、緊急の財政措置を行うと述べましたが、そもそもこれほどの危機がなぜ起きたのか。社会保障抑制政策のもと、人件費や物価高騰に全く見合わない診療報酬にとどめてきた、この失策が、今日の危機を招いたのではありませんか。
その上、維新の会との合意によって医療への公費を4兆円削減したらどうなるか。患者の自己負担は激増し、医療基盤が崩壊しかねないのではありませんか。国民の命を脅かす社会保障切り捨てを断じて許すわけにはいきません。
軍事費増額の対米公約 国民不在の対米従属だ
日米首脳会談で総理は、「防衛力強化と防衛予算の増額に取り組む」と表明しました。トランプ政権がGDP(国内総生産)比3・5%という途方もない軍事費の増額を要求しているもとで、このような表明を行えば、この要求を受け入れることになるのではありませんか。
総理は、会談に先立つ所信表明で、GDP比2%への軍事費増額を2年前倒しで、今年度中に達成すると表明しましたが、選挙で自民党の公約に掲げることさえしていません。なぜ、憲法と平和、暮らしに関わる重大な問題を勝手に持ち出し、対米公約したのですか。国民不在の対米従属外交そのものではありませんか。
総理、いったい軍事費拡大の目標をどこまで引き上げるつもりですか。明確にお答えいただきたい。
日米一体で戦争準備 必要なのは平和外交
異常な軍事費拡大、その目的は、外国を攻撃するミサイルの大量配備、米国からの戦闘機の大量購入など、日米一体で戦争するための準備にほかなりません。
長射程ミサイル配備、大型弾薬庫の建設、戦闘機の大量配備などが進む地域では、住民からの不安が高まっています。ミサイル対ミサイル、軍事対軍事の悪循環がエスカレートすることは、むしろ東アジアの軍事的緊張を高め、武力衝突につながりかねません。必要なのは、武力衝突も戦争も起こさないための平和外交です。
中国との関係も、2008年の日中首脳会談での「互いにパートナーであり、互いに脅威とならない」という合意に基づいて、前向きに打開する外交に継続的に取り組むことが大切ではありませんか。総理、お答えください。
「核実験再開」方針と気候対策妨害に抗議を
今問われているのは、トランプ大統領のもとで、アメリカ言いなりで良いのかということです。
沖縄で、米兵等による性暴力被害が繰り返されています。米軍の戦闘機やオスプレイの訓練は、市民生活などお構いなし。市民も自治体も強く抗議し、日米地位協定の改定を要求しています。こうした問題に日米首脳会談で言及しなかったのはなぜですか。
トランプ大統領は、日米首脳会談直後に、「核実験の再開」を指示したと表明しました。唯一の戦争被爆国として、トランプ大統領に抗議し、核実験をやめるよう要請すべきではありませんか。
また9月の国連総会の演説で、トランプ大統領は、パリ協定による気候変動対策について「世界史上最大の詐欺」と罵倒しました。この発言に、ハリウッド俳優のハリソン・フォード氏が「本当に恐ろしい」「世界が地獄へと向かっているというのに信じられない」と述べるなど、世界中から厳しい批判の声が起きています。総理は、トランプ大統領のこの発言を容認しますか。
トランプ政権が、気候危機打開の国際的な取り組みを妨害することに、日本政府として、どう対応するのですか。気候危機は、日本国民の命にも関わる緊急の課題であり、トランプ大統領の発言をいさめ、妨害をやめさせるべきではありませんか。また日本自身、温室効果ガス削減目標を大幅に引き上げ、責任を果たすべきではありませんか。答弁を求めます。
排外主義許さない 選択的別姓認めよ
人権に関わって端的に2点お聞きします。
一つは排外主義を許さないということです。犯罪や治安の悪化を外国人と結びつける、このこと自体が、深刻な差別と分断を生み、いま日本に暮らす外国の人たちに大きな不安をもたらしています。総理、こうした主張を政党や政治家が喧伝(けんでん)することによって、外国人への恐怖心や憎悪があおられ、その結果、外国人やそのコミュニティーに危害がもたらされる、このようなことはあってはならないと考えますが、いかがですか。
いま一つは、選択的夫婦別姓です。総理は、通称使用の法制化を主張し、それぞれの名前での結婚を選択できるようにすることに反対しています。
通称使用を徹底しても、自分の名前を変えて結婚することが強制されます。そのことに、多くの人々、特に女性たちが、名前はアイデンティティー、人権だ、名前を変えずに生きていく選択をさせてほしいと訴えているのです。
そういう人々に、二つの名前で生きていけというのですか。名前は人格です。自分の名前のままで生活するには、二つの人格を持てということでしょうか。
多様な生き方、多様な家族がそれぞれに幸せを追求できる社会へ、私たちは決して屈することなく歩んでいきます。
議員定数削減に反対 広範な世論結集し全力
最後に、衆議院議員定数削減について述べます。衆議院の総定数は、すでに戦後80年で最も少ない水準となり、OECD(経済協力開発機構)加盟38カ国中36番目の少なさです。議員定数削減の「積極的理由や理論的根拠は見いだし難い」、これが2016年の国会での議論の結論です。こうした経緯をいっさい無視して政権与党が、突如、議員定数削減を持ち出すこと自体が大問題です。
しかも憲法9条改憲、大軍拡、「スパイ防止法」制定、医療費4兆円削減など、自民・維新の合意を実現する突破口が、議員定数1割削減だと、維新の会の吉村代表は明言しています。定数削減によって国民の反対意見を国会から排除して、強権政治を進めるという宣言にほかなりません。
日本共産党は、議員定数削減反対の一点で、広範な世論を結集し、各党・会派、議員の皆さんとも共同して、この危険なたくらみを打ち砕くために全力を尽くすことを表明し、質問を終わります。

