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- 2026.08.08
米政権、イラン戦争で孤立
現代イスラム研究センター理事長 宮田律さん
米同盟国も国際法違反に抗議 日本は憲法を盾に平和外交を

宮田律さん
2月28日、米国とイスラエルによる国際法違反の先制攻撃から始まったイラン戦争は、5カ月を過ぎた今も続いています。米国とイランは6月16日に停戦に向けた「覚書」を交わしたにもかかわらず、戦闘終結の見通しさえ立たない状況です。「私には国際法は必要ない」というトランプ米大統領の無法な戦争が示すものは何か、ひたすら米政権に追随する高市早苗政権をどう見るか、現代イスラム研究センター理事長の宮田律さんに聞きました。(伊藤紀夫)
―先行きの見えない現状については、どうですか?
トランプ大統領は気まぐれで、一つの定まった方針が見えません。それが事態を悪化させています。
米国は7月24日までの13日間、イランを連続攻撃しました。それがイランの反撃を招き、イランの同盟勢力は米国に近い国々、特にサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)を攻撃するようになっています。イラクの人民動員隊やイエメンのフーシ派という武装組織は、サウジアラビアの製油所を攻撃し、生産を停止させました。戦闘の応酬で問題は解決しません。
米国とイスラエルが始めた戦争はイランの国家体制の転換が目的でした。イスラエルが占領・抑圧するパレスチナを支援する「抵抗の枢軸」イランを倒し、親米・親イスラエル政権の樹立を願っていたのです。そのために、最高指導者ハメネイ師らを標的に殺害し、イランの人々がそれに呼応して体制を打倒することを狙いましたが、そういう動きにはなりませんでした。
米国とイスラエルがイランを攻撃している時に、街頭でイラン体制への抗議運動ができないのは当たり前で、裏目に出た形です。イランの国そのものが攻撃されている中で体制への反感よりも、主権を侵害する米国やイスラエルへの反感の方が強まったと思います。
国防相も殺害されましたが、彼は軍人ではなかった人です。それが革命防衛隊の出身者に変わり、より強硬な体制になりました。だから、米国とイスラエルの攻撃は、イランをかえって強硬にさせ、よりタカ派の政権・体制をつくったということになります。
イランはこの戦争でホルムズ海峡を人質に取るという交渉方法を学習してしまったと言えます。結局、米国は中東の石油に依存する日本や韓国、フィリピンなどアジアの同盟国に対して多大な経済的な損失を与えることになったわけです。
―米国によるイランの小学校への攻撃で150人以上もの犠牲者を出しました。こうした国際人道法違反について、どう見ますか。
米軍は国際人道法で禁じられている学校や病院への攻撃もし、本当にひどい戦争です。イスラエルはイランだけではなく、イスラム教シーア派武装組織のヒズボラを壊滅させるとして、レバノンを攻撃していますが、医療関係者を重点的に狙っています。パレスチナ自治区ガザでは1200人もの医療関係者がイスラエルによって殺されましたが、同じようなことをレバノンでもやっています。
イスラエルは故意に医療関係者を狙うことによって相手の戦意を喪失させる目的で、国際人道法違反の攻撃をしているのです。
―イランは2015年の核合意で「もう核兵器を作らない」と国際社会に公約しているのに、この合意から一方的に離脱したトランプ大統領が核兵器開発の疑惑を口実に戦争しています。その点はどうですか。
この核合意が結ばれて、イランは核兵器開発から遠のいたわけです。イランは国際原子力機関(IAEA)の査察を受け入れ、濃縮ウランの量や濃縮度を下げ、遠心分離機の数を減らすことになりました。これを一方的にひどい合意だといってトランプ大統領は離脱したうえ、今回はこの問題での交渉の最中に戦争を始めました。言わば、ヤクザの言いがかりみたいな戦争なわけです。
むしろ、核兵器を保有する米国とイスラエルがその力を頼んで国際秩序を破壊する無法を繰り返していることこそ、厳しく問われなければなりません。
―米国と同盟関係にある北大西洋条約機構(NATO)の欧州諸国でも、国際法違反の戦争に米軍基地を使わせないという動きが広がっています。高市政権の極端な対米従属姿勢とは対照的ですね。
中東で一番人気があるのはスペインのサンチェス首相だと思います。ガザでのイスラエルによるジェノサイド(集団殺害)を非難し、無法なイラン攻撃で米国に基地を使わせないとはっきり言うわけですから。トランプ大統領と親しい関係にあるイタリアのメローニ首相も「米国とイスラエルによるイラン攻撃は国際法の範囲を超えた一方的な介入だ」と批判しています。
一方、高市首相はトランプ大統領との首脳会談で「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけだ」とこびを売る。恥ずかしい限りです。高市首相や茂木敏充外相は、国際法を破って先制攻撃した米国とイスラエルを批判しないで、逆に自衛権を行使したイランを非難する。驚くべきことで、憤りを覚えます。
この姿勢はこれまで歴史的に積み上げてきたイランの日本に対する良好なイメージを損なうもので、非常に残念に思います。
イランのアラグチ外相が日本と個別交渉してタンカーのホルムズ海峡通過を考えてもよいと言っても、日本政府は応じなかった。中東の石油に一番依存してきた日本で、国民が石油や関連製品の供給不足と価格高騰にあえいでいるのに、なんの外交努力もせず、国益を裏切る行為と言えます。
―イランと米国の歴史的関係も踏まえ、和平と平和の国際秩序を構築するには何が求められますか。
米国にはイランへの身勝手な介入の歴史があります。1951年に民主的に選出されたイランのモサデク政権が石油資源を取り戻そうと英国の石油施設を国有化すると、53年に米国と英国はそれぞれの諜報(ちょうほう)機関であるCIAとMI6による工作でクーデターを起こし、親米の王政を樹立しました。CIAは反王政派の情報を国王の秘密警察に流して弾圧政治に加担してきました。さらに、膨大な米国兵器を売りつけ、イスラムの価値観に合わない米国文化を持ち込みました。
これらが反米的なイラン革命につながっていきます。ところが、米国は自ら「反米」を生み出したことに反省なく、今も力による支配を追求しているのです。
第2次世界大戦後、国連憲章と国際法にもとづく国際秩序を、米国自身がつくったわけです。それを自ら壊しているのが、トランプ政権です。
だから、米国は国際的に孤立し、その影響力が低下し、世界からまともに相手にされなくなっています。
日本は憲法を守り、それを盾にして米国の無法な戦争に加担せず、外交の力で平和に関与していくことが必要です。平和と人道の外交でこそ、国際社会から信頼を得ることができると思います。
みやた・おさむ 1955年、山梨県生まれ。現代イスラム研究センター理事長。著書に『イラン戦争 アメリカ・イスラエルの策略』『ガザ紛争の正体』『イスラエルの自滅』など。

