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訪問事業継続へ 岩手3市町 独自支援

2024年に政府が訪問介護の基本報酬を引き下げたうえ、物価高騰や人手不足などで、全国各地で訪問介護事業所の倒産と廃業が増え、事態が悪化しています。このもとで独自の調査や日本共産党の提案などを受け、事業所へ支援をしている自治体があります。岩手県の花巻市と宮古市、岩泉町は基本報酬引き下げによる減収分への支援金などを給付しています。(武田祐一)

ik介護サービスのヘルパーステーション=岩手県花巻市

■花巻市

「介護の人材確保のため、処遇改善には、お金も労力もかかります。訪問介護事業所への支援は大変ありがたいです」

そう語るのは花巻市内で訪問介護事業を行うik介護サービスの鎌田則子所長です。

花巻空港に近い同事業所では、40~70代のヘルパー18人が在籍し、主力は60代です。交代で毎日延べ70人ほどの利用者を訪問。「以前は48人のヘルパーがいましたが、ボーナスも退職金もないので若い人はなかなか入ってきません」

おむつ交換や体をふく介護、清掃や洗濯、料理などの支援などを限られた時間でこなします。より高い加算を算定するため、紙の報告書の代わりに導入したデジタルの介護管理システムは使い勝手が悪く、手間と時間がかかると話します。

花巻市は広域で、市の面積は東京23区の1・4倍の広さ。利用者宅に移動するのに時間がかかり、訪問介護には車が不可欠です。

同事業所のヘルパーは「市内は平野部もありますが山間地の狭い道も多く、軽自動車の方が小回りはきくのですが、子どもの送迎があるので普通車で回っています」と話します。

訪問介護に使う車の大半は自家用車です。この事業所では利用者宅への移動時間も時給を支給しますが、ガソリン代や車の整備費はヘルパーの自己負担です。

また高齢者の生活の交通を保障する、福祉有償運送サービスも行っており、安価な料金で対応し利用者に喜ばれているといいます。

鎌田所長は「ガソリン代高騰は、訪問介護事業と福祉有償運送事業にとって負担増です。車の確保はもちろん、整備・車検・燃料費がかかりますがサービスをやめるわけにはいきません。介護報酬を切り下げられると運営は厳しくなります。だからといってサービス料に転嫁して利用者の負担増になることは避けたい。苦しい状況の中で市の独自支援は助かります。ヘルパーの処遇改善をして若手の人たちが続けていけるためには、国のお金で介護報酬を引き上げてほしい」と訴えます。

赤字・経営難にあえぐ訪問事業所 住民の安心 支援不可欠

国の報酬引き上げは急務

花巻市の長寿福祉課

2024年4月に政府が訪問介護基本報酬を2~3%引き下げたことから、全国の訪問介護事業所は収入が減って経営難に陥り、倒産や廃業が広がりました。

花巻市の訪問介護事業所は24年に23ありましたが現在20カ所に減少。こうした事態を受け、市は25年8月臨時議会で基本報酬引き下げによる減収分を支援金として給付する補正予算を決定しました。

支援金は25年4月までさかのぼって支給され、25年度末までの分として約916万円を補填(ほてん)しました。

 

櫻井肇花巻市議

花巻市福祉部の菊池司部長は「報酬引き下げの影響を緩和し、事業所の経営安定と地域介護サービスの確保のために支援したものです」と説明しました。

支援金について日本共産党の櫻井肇市議は「訪問介護事業所を守るために市独自で一般会計から支援を実現したことは画期的です。今年に入り、米国とイスラエルによるイラン攻撃の影響でガソリン代や介護資材の高騰など影響が出ています。訪問介護事業所の存続のために、26年度分も支援するべきです」と話します。

 

■宮古市

宮古市も日本共産党市議団の提案や市の調査を受け、25年6月の定例議会で、市独自に赤字の訪問介護事業所に対する「支援金給付事業」を決定しました。同市は、介護保険財政調整基金の積立金を活用し、訪問介護報酬の引き下げ率2・4%相当分に加え、介護報酬全体の改定率0・61%相当分を上乗せして支援するものです。支援期間は24年~26年度の3年間。24、25年分の事業費は約2709万円で、今年の3月議会で26年度分1281万円の支援金を出すことを決定しました。

 

落合久三宮古市議

日本共産党の落合久三市議は「2カ所の訪問介護事業所から話を聞き、報酬引き下げでかなりの赤字が出ていることや、ヘルパーの高齢化と担い手不足などの声が出されたことから、議会で介護保険財政調整基金11億円を活用するよう提案しました」といいます。

市も事業所調査を行い、市内17事業所のうち、8事業所が赤字を見込むことがわかりました。

市は介護保険財政調整基金を赤字事業所の支援に使うことについて検討。介護保険法115条49項で、市町村は介護保険施設など保健福祉事業を行うことができる規定になっていることや、新潟県村上市で活用している事例があることから支援へ踏み切りました。

 

落合市議は「市独自に事業所支援を実現したことは重要です。しかし、国の制度として早急に介護報酬を引き上げ、誰もが安心できる制度に改善するべきです」と強調します。

■岩泉町

岩泉町では、居宅介護支援事業と訪問介護事業を行う事業所が社会福祉協議会1カ所のみになっています。同事業所では居宅介護支援で約200人、訪問介護支援で約700人の利用者がいます。

同町の保健推進課の阿部宏行さんは「町で唯一の事業所であり、介護サービスの提供体制を確保する必要があった」といいます。

有資格者確保を目的として人件費の一部を補助するために25年度に町の高齢者福祉基金を活用して、500万円弱の支援を開始し、現在も継続。阿部さんは「岩泉は本州で一番広い町でヘルパーが町内を回るのも効率が悪く一苦労です。現場からは『経営は楽ではない。もっと人員が必要だ』という声が上がっている」と話します。

県社保協が請願

岩手県社会保障推進協議会(岩手県社保協)は25年2月から県内の自治体に「訪問介護報酬の引き下げ撤回と介護報酬引き上げの再改定を早急に行うことを求める請願」に取り組みました。髙橋貴志子事務局次長は、花巻、宮古両市議会で請願の趣旨説明を行いました。

「両市議会とも質疑では積極的に受け止められたと思います。その後、両市が請願を採択しました。さらに市独自の訪問介護事業所への支援を実現したことは先進的です」と振り返ります。

意見書は県内33市町村のうち、18市町村が採択しています。県を含めると19自治体です。髙橋事務局次長は「引き続き、意見書や独自の支援を広げるために社保協としても自治体に要請していきたい」と話します。