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体育嫌いと呼ばないで~仲間と楽しむ運動文化 小学校教員 川渕和美
(5)ともに楽しむ世界へ(下)

2026年5月29日【くらし】

6年生の運動会練習を前に、ジンは自ら「不安で自信がなく、全力を出せない。乗り越えるため、大好きな劇を、運動会後にレクでやりたい」と提案した。しかし、閉じた身体(からだ)は簡単には開かなかった。

練習試合では1周差がついた。頑張っているなら、勝負にならなくても仕方ないのか。わだかまりはないのか…。クラスも私も、ジン自身も揺れていた。話し合いを重ね、距離を変える案もあったが、ジンは「皆と同じ距離を走りたい」。

それをうけ、クラスではジンが全力を出せるよう応援しようと「チームジン」と称して何人もの子が、ジンと毎日10分走る練習をした。「変化を確かめるため」と、計測も始めた。

       イラスト 鴨下潤

最終練習試合の前日、チームジンの1人、ユキが「明日って全体の朝練ある? ジンの練習、朝やりたくて」と言いに来た。「朝?」と思ったが、最終試合では前を走るチームとの差を前回より大きく縮めた。「ジンはね、先に走っておいた方が速くなるんだ! 走り方がわからなくなるみたい」。ユキたちの発見だ。だから「朝」だったのだ。最初は乗り気でなかったジンも、自分から練習に誘うようになっていた。

アンカーに葛藤も生まれた。しかし、劇を目標にした提案に疑問を呈していたサトが「勝つため、勝てるからより、ジンが全力出してやりきることが一番大事」と話した。もう、みんなの挑戦になっていた。そして当日、ジンは同じ距離を「走って」つないだ。最下位でのゴールだったが3位に0・3秒と迫り、クラスは大きく沸いた。運動会翌週、ジンは「チームジンでわかった友情・協力をもとに班長を頑張りたい」と班長に立候補し、リレーへの挑戦の喜びも伝えた。

ジンが運動会で挑戦できたのは、誰かを蹴落として上に立つような競争ではなく、子どもたちが生んだ協同的競争の力だろう。安心して身体を開き、仲間とともに楽しむ。そんな体育の授業を続けたい。(おわり)