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国家情報会議設置法案の闇
違法の市民監視 陸自「別班」も暗躍 
「戦争準備の法律いらない」

 

参院で審議中の国家情報会議と国家情報局を設置する法案は、政府によるスパイ活動と外国のスパイ活動への対処を目的にインテリジェンス(情報の収集・分析)の司令塔機能を強化するものです。その狙いは、米国とともに戦うための情報収集機能の増強で、市民監視による人権侵害や政権による世論・政界工作が拡大する危険があります。高市早苗首相は「国民のプライバシー等を無用に侵害するようなことはありません」と言いますが、「有用ならいいんですか」「何でもできちゃうわけです」と質問されるほど、何の歯止めもありません。(伊藤紀夫)

  2013年11月に海外で秘密情報活動をしている陸上自衛隊の「別班」の存在を報道した共同通信の石井暁編集委員は4月27日、日本弁護士連合会主催の「スパイ防止法」を考える院内学習会で語りました。

 

「スパイ防止法」について考える院内学習会で発言する石井暁共同通信編集委員(右)と海渡雄一弁護士=4月27日、東京都千代田区内

「防衛大臣にも総理大臣にも、その存在を知らせず、さらには勝手に海外に展開している。こんなことが現代の民主主義国家、シビリアンコントロール(文民統制)という大原則のもとにある軍事組織で許されるのか」

  陸自「別班」といえば、日本共産党と「赤旗」の追及で1970年代にその存在が明らかになった秘密部隊です。77年3月29日、共産党の上田耕一郎参院議員は予算委員会で、陸幕二部別班員からの内部告発の手紙を紹介し、この秘密組織の実態を追及しました。手紙は恐るべきものでした。

  「内島二佐が別班長で、私達二十四名がその部下」「私達はアメリカの陸軍第五○○部隊(情報部隊)と一緒に座間キャンプの中で仕事をしています。私達は私服で」「仕事の内容は、共産圏諸国の情報」「共産党を始め野党の情報をとること」「長官も幕僚長も知らないと思います」

 人格破壊的訓練

別班員は、旧陸軍中野学校の教官が引き継ぐ陸上自衛隊調査学校で、心理戦防護課程(スパイ教育)を研修した人たちです。

  「山谷のドヤ街にこもっていろいろ心理戦の訓練をやっている」。この事実を暴露した上田議員は、同課程の教育資料には「対手国の政治中枢に対しテロ謀略を実施する」との記述があることを示し、「首相も知らないところで、こういう秘密部隊が、さまざまなことをやっている。金大中(拉致)事件に関わったという疑惑さえ出ている」と徹底的な調査を求めました。

  石井さんは「別班員の海外での情報活動は、その国にとってはスパイ行為です。身分を偽装して、ある人物に近づいて情報をとる、これは完全に違法です。心理戦防護課程での教育訓練は別の人格になりきる訓練で、人格破壊的な洗脳教育です。軽々にそんなスパイ活動が必要だと言ってほしくない」と批判します。

 人権侵害を拡大

衆院内閣委員会(4月16日)の参考人質疑で齋藤裕弁護士は、自身の名前が海上自衛隊の情報公開請求者リストに載り、それを勝手に空幕や陸幕、内局、自衛隊情報保全隊にまで流していた問題でプライバシー侵害と認定した新潟地裁判決をあげ、今回の法案の危険性を指摘しました。

  「違法に収集された情報が国家情報局にあがってくることもあるかもしれない、各省庁に配布されることもあるかもしれない。そういう形で、今までだったら防衛庁とか防衛省の中だけで流通していた情報がほかの省庁に飛び火する、そういう可能性が疑われる」

  齋藤弁護士は「個人情報がインテリジェンス機関の中で移動させられること自体が人権侵害です」と批判します。

齋藤裕弁護士

  政府情報機関の監視活動がプライバシー侵害とされた確定判決は、▽公安調査庁が24時間体制で元同庁職員の居宅を監視、外出時に尾行▽大垣警察署が風力発電建設に反対する市民の動静を調査し、事業者に個人情報を提供▽自衛隊情報保全隊がイラク派兵反対、年金改悪反対、消費税増税反対などの市民活動を監視し情報収集―などです。

  そもそも内閣情報調査室(内調)は、共産党対策を重点に反戦・民主主義の運動を監視し、委託研究で学者を取り込み、世論・政界工作を進めてきた国家諜報(ちょうほう)機関です。これを国家情報局に格上げして総合調整権を与え、警察庁、防衛省、外務省、公安調査庁などの情報を集約する今回の法案は、人権侵害をさらに拡大することは明らかです。

 

中谷雄二弁護士

中谷雄二弁護士は言います。

  「昨年成立した能動的サイバー防御法は警察官職務執行法の改定で、警察庁長官に『サイバー執行官』を指名し、指揮する権限を与えました。戦前の国家警察の反省から捜査の指揮権限を持てなかった制度を変えたのです。警察が収集したDNAデータの抹消を命じた名古屋高裁判決を受け、警察庁と話し合った際、バラバラに存在していたDNAデータ、顔写真、指紋などの個人情報をデータベースに統合し、検索できるようにすると言っていました。国家情報局が市民監視、ネット監視、思想調査を統合する監視社会では、マスコミなどの言論の萎縮を招き、さまざまな社会運動に対する政府の敵視・情報操作が横行するでしょう」

  41年12月に始まった太平洋戦争の前には、37年に「スパイ防止法」に当たる軍機保護法が全面改定されて死刑の規定が盛り込まれ、41年に公布された国防保安法は国防にかかわる外交も「国家機密」として死刑を含む重罰を科したのです。

 

「まさに今、内調を国家情報局に格上げし、スパイ防止法のような情報統制法制をつくろうとしている。この流れは太平洋戦争直前と酷似している。高市政権がやろうとしていることは、インテリジェンス強化によって、戦争する国を完成形にしようとしている。その意味で、憲法9条(戦争放棄)の問題でもあるし、憲法21条(表現の自由・報道の自由)の問題でもあると考えます」。石井さんは警鐘を鳴らします。

 

 廃案の声広がる

日本共産党の田村智子委員長は4月22日の衆院内閣・法務・外務・安保連合審査会で、長射程ミサイルの運用に関わる相手国の意思や軍事動向を探る内調の役割について追及。内調が発足当初から米中央情報局(CIA)と深い関係にある事実を示し、「国家情報局はCIAとどのような連携を図っていくのか」とただしました。木原稔官房長官は「米国をはじめとする関係国と平素より緊密に連携し、さまざまな情報交換を行っている」と答えました。

緊急ペンライト行動で市民監視の法案に反対する人たち=12日夜、国会前

「抑止力強化だと言って長射程ミサイルで構える、これを有効に使うため、相手国へのスパイ活動に乗り出していく。緊張を高め、軍事対軍事の悪循環に陥ることになる」。田村委員長は、無法なイラン攻撃をする米国と防諜活動でも連携を強めていく法案を批判し、廃案を求めました。

  「市民総監視の国家情報局法案を通すな!」緊急ペンライト行動が12日夜、国会前で開かれました。「私の情報勝手に見るな」「戦争準備の法律いらない」「憲法守れ、人権守れ」―。全国で市民が声をあげる運動が広がっています。