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シリーズ介護保険 「人口減少」地域の規制緩和狙う国
危機加速 制度骨抜き 要介護も保険給付外し 職員削減

訪問介護事業所がゼロか、残り1しかない自治体が全自治体の4分の1に迫る「介護崩壊」が「しんぶん赤旗」調査で明らかになっています。ところが政府は「人口減少」地域の介護サービスの人員基準を緩めたり、要介護5の重度の人まで「保険給付」から外して、自治体による安上がりな事業に置き換えることで崩壊「危機」を糊塗しようとしています。介護保険制度の根幹が掘り崩されます。そんな内容を盛り込んだ介護保険法改定案の実質審議が、15日から衆院厚生労働委員会で始まります。(内藤真己子)

同法案では、中山間地や人口減少地域を対象に「特定地域サービス」を新設します。訪問介護など在宅サービスや特養ホームなど施設の人員配置基準(管理者や専門職の常勤・専従要件、夜勤要件)が緩和されます。

現在は、訪問介護事業所の場合で、ホームヘルパーが常勤換算で2・5人以上配置しなければならないなどの基準があります。人手不足で基準を満たせなくなると原則的に事業所は開設・運営ができなくなります。

訪問介護やデイサービスの介護報酬は、1回ごとの「出来高払い」ですが、新設する「特定地域サービス」では、月単位の「定額制」も導入します。どの市町村が「特定地域サービス」の対象になるかは、市町村の意向を踏まえ都道府県が決定します。人員基準や介護報酬は今後、政府の審議会で議論します。

さらに改定案には、要介護1~要介護5の在宅介護サービスを「保険給付」から外し、自治体の事業(地域支援事業)に移すことが可能な仕組みも盛り込まれています。

人員基準を緩和した「特定地域サービス」でもサービス提供が困難になった場合、在宅サービスを「保険給付」から外し、自治体が行う「事業」に移行させる仕組みをつくります。受け皿として「特定地域居宅サービス等事業」を新設、自治体の委託をうけた事業者などが実施。対象は訪問介護や通所介護、訪問入浴、ショートステイなど医療系を除く在宅サービスです。

財源は介護保険ですが、必要に応じて提供される保険給付ではないため事業費の枠内でのサービスに質も量も切り縮められます。人員配置基準は「規定なし」です。車いすや寝たきりの中・重度の人まで保険給付が受けられなくなる重大事態です。

見直しには利用者・家族が反発しています。公益社団法人認知症の人と家族の会は今週、緊急要望書を国会議員に送付しました。(1)「特定地域」を創設し事業所の介護職員を減らすのではなく、必要な介護職員を確保するための見直しを行ってください(2)どの地域に住んでいても、どんな場所で暮らしていても、全国の認定者に公平・平等な給付を維持するための見直しをしてください―の二つを要望しています。

同会の和田誠共同代表は「過疎が進む中山間地域では、すでに人員基準が緩和された『特例サービス』があり、保険者の15%程度が実施しています。今後問題になるのは中山間地以外の『人口減少地域』です。都市の周辺部を含め、広範な自治体で今後人口減少が進むことが予想され、基準緩和された定額払いのサービスが広がる可能性があります。『人口減少』を隠れみのにしたサービスの切り下げで、介護保険制度が根本から変わってしまう」と危惧します。

人口減少地域の自治体はどう考えているでしょうか。新潟県村上市も人口減少が深刻です。2024年の介護報酬改定で政府が訪問介護基本報酬を引き下げ、事業者が経営危機に陥るなか、減収分を独自に補助しています。「村上方式」は全国で広がりを見せています。同市では補助制度の効果もあり、市内16の訪問介護事業所は維持されています。同市介護高齢課の土田孝課長は「人員基準が緩和されても介護報酬が現行より下がれば事業所は打撃です。経営が厳しい中山間地域の報酬単価は引き上げてほしい」と語ります。

同市の補助制度を使い同市で訪問介護事業所などを経営する福田秀樹さんは「定額制を導入すると、移動距離が長い地域の事業者には有利になるのかもしれません。しかし、要支援者を対象にした自治体の『総合事業』がそうだったように、利用者にとっては利用回数が減ることになったり、利用料が上がったりして不利益になる可能性が高い」と指摘します。「基準緩和で事業所が当面維持できたとしても、他産業並みの賃金が保障されない限りヘルパーの人手不足は解消されません。基本報酬を引き上げることによって、人口減少地域の事業所が存続できる道を考えるべきではないか」

 

小竹雅子さん

■市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰の小竹雅子さんの話

「人口」は減少しても、要介護認定率が高まる80歳以上人口は増えていく市町村が少なからずあります。実態を精査し、介護事業所の充実を図る施策こそ必要なのに、事業所をさらに弱体化させる法改正には危機感しかありません。また「人口が減少」し、「特定地域」となった市町村で、介護事業所の人員基準が緩和されれば、介護職員が減ることになり、現在利用している人へのサービスを維持するだけでも職員の負担は増加します。新規の利用者を受け入れることはできなくなるでしょう。

新たに「特定地域居宅サービス等事業」を創設し、要介護認定者も対象に需要の高い在宅福祉系サービスだけを給付から外すことができるという見直しは、介護保険の根幹である「要介護認定者が保険給付を受ける権利」を損なうもので、契約違反と言わざるを得ません。

法案では住宅型有料老人ホームに新型ケアマネジメントを創設し、有料化することも盛り込まれています。地域だけでなく、「在宅」の居住形態によってサービス基準や利用料負担が違うのは、介護保険制度の基本原則である給付の平等性、公平性を損ないます。