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- くらし家庭
- 2026.05.08
体育嫌いと呼ばないで~仲間と楽しむ運動文化 小学校教員 川渕和美
(2) 「ゆめのようでした」
2026年5月8日【くらし】
体育は子どもに人気がある一方で、運動を苦手と思っている子にとっては、でき具合があらわになる苦痛の時間になってしまいかねない。「自分はできない」「恥ずかしい」と、授業に取り組めない子もいる。
私自身、水が怖くて泳げず、「恥ずかしい」という意識が強かった。そのため水泳の授業はずっと避けていた。6年生の臨海学校を前に、腹をくくって練習し、なんとか泳げる程度にはなった。できるようになった時、うれしさもあったが、「ああこれで『できない』烙印(らくいん)から逃れられる」という安堵(あんど)の方が強かったことは今も心に残っている。
教師になり、そんな消極的な動機ではなく、体育の面白さや楽しさ、できた喜びを味わってほしいと思った。しかし、現実はそう甘くなかった。そんな時、学校体育研究同志会という民間の研究団体に出合った。異なるでき具合やわかり具合の子がまざったグループでの学習を軸に、できないあの子は過去の自分、「できる」には筋道があると実感できる授業―。体育で何を教えるのか、何を大事にするのか? 問いながら細々と学び、研究を続けた。

イラスト 鴨下潤
教室ではいつも雄弁な3年生のコウタは器械運動に苦手意識があり、側転の学習中、イライラしてすねることもあった。同じグループの子たちは、どうしたらコウタがわかって、できるかを見合って、ともにうまくなる道を見つけようとしていた。
ある日のコウタの感想に「ユズルにリズムって言われてうまくなった。ユイに山とび三れんぞくは手に力を入れるんだよって言ったら手に力を入れて上手になった。魚がとびはねる感じって言われて意識したらうまくなった」とあった。グループの他の子の感想にも、コウタができるようになるまでの教え合いや、できた喜びが書かれていた。
学習の最後の感想にコウタは「ゆめのようでした」と書いた。すべての子にとって、仲間とともにできた喜びは大きい。(金曜掲載)

