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- とくほう・特報
- 2026.05.02
怖い 国家情報会議法案
市民の監視・尾行・メール盗み見…人権侵害やりたい放題

ペンライトを手に、国家情報会議設置法案と「スパイ防止法」に反対し、声をあげる人たち=4月17日夜、国会前
4月23日に衆院を通過した国家情報会議と国家情報局を設置する法案の審議では、内閣情報調査室(内調)や警察などによる市民監視・人権侵害が問われ、参院審議でも焦点です。国の情報機関は国民の目の届かないところで秘密裏に何をしているのか、その実態を探りました。(伊藤紀夫)
衆院内閣委員会では、内調が国会議員を国会質問に関連して尾行したことがあるかとの質問に、木原稔官房長官は「お答えは差し控えたい」と答弁。「調査に支障を及ぼすおそれ」を理由に事実さえ示しません。
病歴まで調査
今回の法案で国家情報局に格上げされる内調は1952年、内閣総理大臣官房調査室として発足し、57年に内閣調査室、86年に内閣情報調査室となりました。
内調の村井順・初代室長は戦前の内務・警察官僚でした。吉田茂首相(46~47年、48~54年)の秘書だった52年、首相に「日本にもCIA(米中央情報局)のような情報機関が必要」と意見具申し内調が誕生しました。
内調発足前の原案では、その重点目標は共産党対策で、「政府はつとめて表面に出ず、所謂(いわゆる)『見えざる手』となって民間の団体及び活動を推進する」との記述もあります。実際、共産党を封じ込めるさまざまな謀略活動や、委託研究、委託団体に資金を出して学者をとりこみ、マスコミ、出版社などにも手を伸ばして世論工作を続けてきました。
日ソ交渉を進めていた鳩山一郎首相(54~56年)邸に盗聴器をつけた―。

「赤旗」日曜版に連載して出版した『謀略列島 内閣調査室の実像』(吉原公一郎著、78年)には、こんな驚くべき証言も。佐藤栄作氏(元首相)の秘書だった鬼倉氏は、CIA要員と内調グループとともに鳩山邸をはじめ日ソ交渉推進派の動きを調べる工作をしていたと語っています。
「鳩山邸に盗聴器をつけるときには、東京ガスの工事人夫に化けて潜入したんだ。だから、応接室での会話も、むろん電話のなかみもぜんぶわれわれにはわかっていたもんです」
首相、官房長官の指揮を受ける内調が、CIA、吉田前首相らの指揮下で動いた―。首相も統制できない「闇の組織」といえます。

苫孝二さん
「政府の情報機関は、共産党の封じ込めが最大の目的で、反戦などの国民運動の抑え込みを続けてきました。秘密工作組織なので、暴走する可能性も大きい。当時の内調を担った人物は戦争中、対外工作をしていた連中で、その流れは今も続いています。民主主義とは相反する権力組織です。今回の法案はこれを肥大化させるものだと警鐘を乱打し、市民が彼らを監視する体制をつくっていかなければならないと思います」
吉原さんに協力し全国各地を取材した元日曜版記者の苫孝二さん(元日本共産党渋谷区議)は語ります。
警察や自衛隊、公安調査庁なども市民監視・人権侵害をしてきました。
大垣警察署の公安警察が市民を監視し、個人情報を収集した事件で、名古屋高裁は2024年9月、プライバシー権や表現の自由を侵害したという原告の訴えを認め、個人情報の抹消(まっしょう)と損害賠償を命じました。警察が上告を断念し、この判決は確定しました。
16機もの風力発電施設建設の計画に環境破壊を心配した住民が勉強会を開いた際、主催した市民を監視し、尾行、聞き込みもして、学歴、人間関係、過去の市民運動の経歴、病歴まで調べ、発電事業者に情報を提供していました。警察は原告の知人へのメール内容を把握し、「動き出す気配がある」と事業者に電話連絡した事実も判明しました。
「違法判決を受けた警察は原告に対し謝罪を行ったんでしょうか」。17日の衆院内閣委員会で日本共産党の塩川鉄也議員の質問に、赤間二郎国家公安委員会委員長がかたくなに答えず、騒然となり、議事は一時中断。「抹消が完全に履行されていないのではないか」との質問にも答えず、塩川議員は調査を求めました。
仙台高裁は16年2月、自衛隊情報保全隊がイラク戦争と自衛隊派兵に反対する市民の活動を監視・情報収集したことを違法とする判決を下し、防衛省が上告せず確定しました。判決は、「医療費負担増の凍結・見直し」「年金改悪反対」「消費税増税反対」などの街頭宣伝、「小林多喜二展」「核兵器廃絶を求める署名活動」も情報収集していたことを認定しています。

中谷雄二弁護士
両事件の裁判で原告代理人を務めた中谷雄二弁護士は語ります。
「公安警察や自衛隊情報保全隊は国民がまさかと思うような怖いことをやっているわけです。大垣警察が監視した市民の環境を守る取り組みは、判決でも憲法の立場から推奨されるべき行為を含むと評価される活動です。自衛隊の事件で証人として尋問された情報保全隊長は小林多喜二展を取材する記者も監視対象になると言いました。司法に違憲・違法と断罪された政府が、国家情報機関の市民監視権限を強化する法案を出すこと自体許されません」
新設される国家情報局の仕事は、政府によるスパイ活動(重要情報活動)と外国からのスパイ活動(外国情報活動)への対処です。国民も国家からスパイされる対象で、プライバシーなど基本的人権の侵害がこれまで以上に広がることになります。ところが、法案には国会や第三者機関による民主的統制の規定もなく、まさに野放し状態です。
廃案へ運動を
「政府は法案が組織法だから国民の権利義務に関わらないと言います。しかし、組織法である警察法の2条1項『公共の安全と秩序の維持』を根拠に、市民監視をしているのが、公安警察です。だから、この法案は国家情報機関に何の歯止めもなく、何でもできる強い権限を与えることになります。今、必要なのは、国の情報機関の権限拡大ではなく、市民監視からプライバシー、人権を守るための権力統制法、権力監視機関です」と中谷さん。
法案の狙いは、無法なイラン攻撃をするトランプ米政権とともに戦うための治安体制強化です。高市早苗政権はさらに「スパイ防止関連法制」、CIAにならった「独立した対外情報庁の創設」を狙っています。戦争反対の運動を抑圧する悪法は廃案にすべきです。
国会前で17日夜、国家情報会議設置法案と「スパイ防止法」に反対する集会が開かれ、3500人(主催者発表)がペンライトを振り、熱く訴えました。
「スパイ防止法はもちろん反対ですし、反戦もある。表現の自由は守っていただきたい。普通にイランと平和外交して普段の生活に戻してほしい」
東京都墨田区から小学2年生と一緒に来た母親の服部さん(36)は話します。
「高市さんに賛成できず、何か訴える方法がないかとXとかで探していたらデモがあった。3月28日初めて一人で参加し、家族や友達にも理解が得られ、どんどん参加するようになりました。不安がいっぱいなので、政権交代してほしい」

