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- とくほう・特報
- 2026.04.24
増えてます行動する女性
9条守ることは人権守ること ペンライトがハードル下げた
国会前などで行われている反戦、憲法9条を守れのデモには女性の参加者が目立ちます。共同通信が携帯電話会社からデータ提供を受けて行った分析では、8日の国会前デモに参加した人の6割超が女性でした。なぜ多くの女性が声をあげているのでしょう。(内藤真己子)
3・6万人が国会周辺に集った「19日」行動。思い思いのプラカードを掲げた人々が「9条守れ」とコールしました。その歩道に面した国会前庭には、芝生にシートを敷いて「ピクニック」したり読書したりしながら、デモに参加する人たちが大勢いました。輪になって持ち寄ったお菓子でお茶をしていたのはエンタメ系企業の女性社員有志らです。一緒にデモに来るのは3回目です。

思い思いのプラカードを手に「ピクニック」をしながらデモに参加するエンタメ系企業の女性たち=19日、国会前庭
投稿きっかけに
きっかけは、20代~30代の複数の女性社員が先月半ば、社内の連絡ツールに行った投稿でした。国際女性デーのデモなどに参加したことを紹介し「もし行こうかなという方がいたらご一緒したいです」と呼びかけたのです。十数人が「いいね!」と反応し、シスターフッド(女性の連帯)のグループができました。「行けないときは無理しない」。参加しないことが負い目にならない配慮も怠りません。
女性らが勤める企業はフェミニズムや、外国人との共生などをテーマにしたコンテンツも手がけます。先月初めてデモに参加したKさん(40)は、「憲法9条を守ることは人権を守ることに直結している」と強調します。「戦争が起きて一番に踏みにじられるのは弱き者。女性であり、マイノリティーであり、子どもです。基本的人権は平和な世の中でないと主張することも難しくなる。ぜんぶつながっています」
デモへの参加を呼び掛けたNさん(33)。「人権を守ろうと思ったら戦争反対と言うのは当たり前だと思いますが、改めてそれを言葉にしないといけない状況になってしまっている」と危機感を募らせます。仕事がら人権意識の高い社内では「デモに行くこと」が受け入れられた一方、友人らとの間では意識の差を強く感じてもいます。
「小中高の友だちとは政治の話はあまりできない。パートナーは、自民党改憲案をよく読まずに『むかし作った憲法は変えてもいい』みたいなことを言うので、話していて悔しく泣いてしまうときもあります。国家情報会議設置とか危険なことが次々起きているのにあまり報じない。人権とか社会的イシューは、情報を取りに行く人とそうでない人の間で大きな差がある」。全国各地に広がる反戦デモをテレビは、ほどんど報じていません。
同社のSさん(43)は、「憲法を変えること自体が悪だとは思いませんが、連綿とつづく自民党政権、とりわけ現政権においては絶対に変えてほしくない。自民党改憲案を見る限り絶対反対です」と話します。
希望と危険交錯
Sさんは、この10年、小選挙区で野党共闘候補が自公候補を破ったり、杉並区長選で市民が推した岸本聡子氏が当選するなど「希望を感じる出来事」が起きる一方、ウクライナ戦争やガザ攻撃、排外主義を唱える政党の伸長や、タカ派の高市政権の誕生と総選挙での自民党の圧勝など、「希望を上回る危険な出来事が立て続けに起き、危機感を募らせた」ことがデモに行く原動力になっています。
この日デモに参加したメンバーは、フェミニズムを話題にする社内の「飲み会」の仲間。Kさんは、前の職場でひどいセクシュアルハラスメントにあい、現代社会に厳然と存在する女性差別に気づいたと言います。敗戦後、未婚の女性を旧ソ連兵の「性接待」に差し出した満蒙開拓団の存在など、家父長制が戦時性暴力と結びついていることも話し合ってきました。
小学生の子の母親でもあるKさんですが「自分のアイデンティティーをママだと思っていません。既婚とシングルが分断されてきたのは嫌だし悲しい。わたし個人の問題として戦争を止めたい」と話します。一方、最近転職してきたMさん(39)は、子どもを産んでから、女性にばかり子育ての負担が課せられることに「なんで自分ばっかり!」と強い憤りを感じ、社会や政治への関心が広がったと話します。

国会前庭でシャボン玉を飛ばす人たち=10日
19日行動でも女性の姿が目立ちました。国会前庭でシャボン玉を飛ばしていたのは漫画家のまきいわ山さん(34)。「子どもたちが遊べる日常は平和の象徴」の意味を込めました。SNSに自民党改憲草案を批判する漫画を投稿しています。
「非常に恥ずかしい話ですが、2月の総選挙の頃は政治の情報はテレビだけしか見てなくて『日本初の女性総理か』とのんきに思っていました」とまきいわさん。ところが「選挙では消費税減税と物価高しか言わなかったのに、3分の2以上の議席を得ると改憲を発議すると言い出してびっくり。自民党に投票した人も『話が違う』と怒った方がいい」と言います。「トランプ(米大統領)にこびを売って、イラン戦争の大量虐殺に加担するあの姿。日本の女性の代表だと思われたくないです」とぴしゃり。
疑問を持ち調べると、さまざまなことが分かってきました。憲法は権力を縛るもので高市首相が言うような「国家の理想」を示すものではないこと、政権与党が改憲発議することがおかしいこと、憲法9条は、侵略戦争に突き進んだ第2次世界大戦の反省から二度と侵略戦争をしないと世界に誓ったものであること。
3週間前、初めてデモに参加しました。「ギリギリ独裁国家じゃない今のうちに声を上げないと『戦争反対』の口をふさいで戦争がヌルっと始まってしまう」
命を間引く政権
女性の参加者からは、高市政権の弱者切り捨て政治への厳しい批判が聞かれました。乳がんの闘病体験をつづったSNSのアカウントを相互フォローする56歳と49歳の女性は、デモの現場で落ち合いました。
高市政権は、石破政権が見送った高額療養費の負担増を強行。「30万人分も集まった反対署名を無視したんですよ。聞く耳を持たない。重病患者の受診控えを予算に見込むなんて、命を間引こうとしている」。女性(56)は怒ります。
49歳の女性は3回目。高額療養費の負担増とともに、「武器輸出の全面解禁とか毎日びっくりするようなニュースが続き驚いている」と話します。黙っておれず夜の国会前デモに来てみました。「過激なら引き返そう」と身構えていましたが、デモはペンライトの光にあふれていました。「これなら」。隊列に加わりました。韓国の運動に学んだペンライトデモが、女性たちの背中を押しています。「亡くなった祖父は広島で被爆しました。二度と戦争はしないと誓った9条は守りたい」。女性は話します。

