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NO!主務教諭(下)
オンライン署名4万7000人超 
多様な子の成長保障 保護者と手携え

2025年12月19日【くらし】

 教師のなり手がいなくなる。「処遇改善」と言いながら、基本給を引き下げるような改革は止めてください! 主務教諭に反対します―。

今夏、4万7000人を超えるオンライン署名と要望書が、千葉と岐阜の県教育委員会に提出されました。署名を呼びかけた「給特法のこれからを考える有志の会」の西村祐二さんは、岐阜県立高校の教員。両県の会見に参加しました。

声を抑える

1971年制定の給特法(給与特別措置法)は、月給の4%を「教職調整額」として一律支給する代わりに、残業代を支払わない仕組みでした。今回の改定では調整額を10%に増額。「調整額が上がること自体は、悪いことではありません。しかし、教員の働き方を変えたい活動をしてきた自分として、主務教諭は絶対まずいと思ったんです」

署名のきっかけについてこう話す西村さん。階層化が進み、教師が声を上げられなくなるかもしれない仕組みに「ぞっとした」と言います。教師の裁量は認められるべきだ、自由にいろいろな教育活動ができるべきだ…。「形の上ではこう言ってきた文部科学省の姿勢をも、自ら否定するものだ」と指摘します。

一般企業では、いくつもの職階があるのが当たり前です。ではなぜ、学校は「フラット」な組織がいいとされるのか。西村さんは言います。

「多様な子どもの成長を保障するためには、教師も多様であること、そして自由に意見が言えることが大切だと思うんです。民主主義が保障されなければ、教員にとっても子どもにとっても、学校が息苦しい現場になってしまいます」

一般的にはなかなか理解は広がらないかもしれない、と懸念していただけに、署名が4万人を超えたことに驚いたと西村さん。「息ができて、自分らしくいられる学校のために何をすればいいのか。ずっと考えながら行動しています」

分かり合う

署名の広がりの表れの一つが、千葉県の会見に保護者が出席したことでした。丸山瑞果(みずか)さんは市川市立小学校のPTA会長。わが子と教師との数年にわたる深い関わりから「コミュニケーションを重ねることで、先生とも分かり合えるようになった」と振り返ります。

家庭と学校との“2交代制”で、わが子の成長を見守ってきました。「教師には子どもの方を見てほしい。主務教諭制度で『上』ばかり見るようになったら、一番困るのは子どもたちです」

会見に先立つ県教委との懇談で、丸山さんは率直な疑問をぶつけました。「何のメリットがあるんですか?」。しかし教委は「わからない」「調査中」「研究中」…。「これだけで、すごくリスキーな制度だと思いました」

丸山さんが信頼する教師は、小学校情緒学級の担任だった吉井広人さん。この吉井さんの取り組みに賛同して、丸山さんも参加したのでした。

子どもの心の声を聴き、向き合い、時には校長や教委に意見する姿を見てきました。わが子は驚くほど成長し、今では「中学生という時期を青春している」。子どものためにきちんとものを言う教師が必要だ、と丸山さんは実感しています。

孤立しない

吉井さんは、教師の専門性を生かしてものが言えなくなるような主務教諭制度は、絶対に受け入れられないと語ります。「専門性があるという保障がない人に、お伺いを立てなければいけなくなるなんて。教師としての専門性を捨てろ、というようなものです」

さらに危惧するのは、教師同士だけでなく、教師と保護者との分断も進むのではないかということ。「教師が子どもの方に目を向けられなくなれば、保護者は学校を信頼しなくなる」。丸山さんも「子どもの成長を見守るためにも、対立している場合じゃない」と、制度に強く反対します。

吉井さんは言います。「さまざまな手法で対立をつくろうとしています。しかしそのわなにはまるのではなく、とにかく対話をして、対立を超えていくのが大事だと思うんです。誰もが孤立しない社会であってほしい。そのために、手を取り合って社会を変えていけたらと思っています」

(おわり。(上)は17日付に掲載)