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「地方の時代」映像祭2025授賞式

「地方の時代」映像祭2025授賞式

メディアのあり方・責任見つめ

2025124日【テレビ・ラジオ】

「伝えることをあきらめない」をテーマに第45回「地方の時代」映像祭2025が開かれ、各部門の受賞が決まりました。主催は、NHK、日本民間放送連盟、日本ケーブルテレビ連盟、大阪府吹田市、関西大学。授賞式に登壇した放送局部門の受賞者が、制作した思いを語りました。(小川 浩)

子らの居場所づくり取材

☆グランプリ

グランプリは、ETV特集「独りでも、大家族 久留米・じじっかの1年」(NHK福岡 初回放送3月8日)に贈られました。

福岡県久留米市にある「実家よりも実家」という居場所づくりの事業をしている「じじっか」を長期取材。番組ホームページによると「週末になると子どもたちが集まる場所がある。食事をとったり、ダンスをしたり、くつろいだり」。さらに「子育てに悩むひとり親や生活保護を受ける家族、不登校の若者もここに居場所を求めてやってくる」施設です。

ディレクターの加藤麗さんは、「じじっか」を取材して「まじめな子ども食堂だと思って行くと拍子抜けをするような愉快な雰囲気のある場所です」と言い、「ふさぎ込んだ心の状態で行っても、『大丈夫だよ。あなたならできるよ』とドンと(背中を)押される。足が勝手に動きだしてしまう。自分の足に力があると気づいてしまう場所です」と話しました。

「迷いながら取材した」と告白。「制作の後期は、妊婦でした。たくさんの方のご協力をいただきました」と謝意を表し、「相手のことを思う。番組にそういったメッセージを込めさせていただきました」。

警察の不祥事・冤罪を検証

☆優秀賞

優秀賞は2作品が選ばれました。

その一つは、鹿児島テレビ「警察官の告白―鹿児島県警情報漏洩(ろうえい)事件を問う―」(5月31日放送)です。鹿児島県警の元生活安全部長の逮捕をきっかけに問題が表面化しました。

番組の取材で、県警職員の犯罪行為を幹部の本部長が「隠ぺいしようとしたことが、どうしても許せなかった」と。「だから、不祥事をまとめた文書を記者に送った」

情報漏洩というよりも、公益通報ではないか。それを問う検証報道です。

プロデューサーの四元良隆さんは、「今回は、鹿児島県警だけでなく、私たちマスコミのあり方も問われました」と述べ、「この受賞は、故郷のためにもの言うテレビでいることを励ましていただいた気がします。これからも鹿児島から、もの言うテレビをつくり続けていきたいと思います」。

もう一つは、福井放送「烙印(らくいん)~人殺しと呼ばれた38年間~」(初回放送5月25日)。「福井女子中学生殺人事件」(1986年)で元受刑者の男性は、逮捕された時から無実を訴え続けました。番組は、「警察・検察が隠し続けた無罪の可能性を示す新たな証拠」を取材しました。

ディレクターの五十嵐康平さんは、「今年8月に再審・無罪が確定した前川彰司さんの心の叫びを取材したドキュメンタリーです。メディアの責任が問われる中で、自分が生まれる前に起きた事件ですが、伝え続けることなんだ、と考えております」と話します。

「刑事事件としては一区切りついた事件ですが、賠償請求などもあるので、前川さんの心の叫びを自分が記者である限り、追い続けられるように精進していきたいと思います」と決意を語りました。

袴田巌さん姉・ひで子さん講演

冤罪(えんざい)の「袴田事件」。無罪になった袴田巌さんの姉・袴田ひで子さんが講演しました。テーマは「58年闘って…今思うこと」。「巌には自由に生きてほしい」と今の気持ちを語りました。

再審無罪になりましたが、謝罪する立場の静岡地方検察庁側は、袴田さんたちに、こちらに来るよう連絡してきました。礼を尽くしていないため、はっきり断ると、昨年、地検側が袴田さんの自宅を訪問。ようやく謝罪しました。

「弟の身に起きたことから、この世界から死刑や冤罪がなくなることを願っております」と訴えたひで子さん。

裁判をやり直す再審制度の見直しも声をあげています。