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総選挙特集

「国民が主人公」の新しい日本を――日本共産党の総選挙政策

2009年7月28日 日本共産党 

「国民が主人公」の新しい日本をめざす日本共産党の基本政策


目次 アピール  基本政策【1】 【2】 【3】  各分野政策 総選挙政策/ダイジェスト版(PDF書類))

【1】財界・大企業中心の政治をただし、くらしと権利をまもる「ルールある経済社会」を築きます

1、人間らしく働けるルールをつくり、安心して働き続けられる社会に

 雇用情勢は悪化の一途をたどり、厚生労働省の調査でも、昨年10月から今年9月までに失職する非正規労働者は22万3000人にのぼり、リストラの波は正社員にも広がっています。自動車、電機などの大手製造業20社だけで、この半年間に8万7千人の従業員を削減する(共同通信の集計)など、日本有数の大企業が先頭にたって雇用破壊をすすめています。

 こうした大企業の行動を後押ししたのが、労働者派遣法や労働基準法などの相次ぐ「規制緩和」です。労働者派遣の原則自由化を決めた1999年の派遣法改悪に日本共産党以外のすべての政党が賛成するなど、「使い捨て」の働かせ方を広げた政治の責任は重大です。

 大企業は「赤字経営」とはいっても、内部留保が全体で230兆円にのぼり、製造業大企業だけでも、この5年間に95兆円から120兆円へと25兆円も増大させています。財界や大企業は、「雇用には使えない」といいながら、内部留保を取り崩して株主への配当をしており、雇用を維持する体力は十分あります。

 雇用破壊は、内需の柱である個人消費、家計に大きな打撃となり、さらに景気全体が悪化するという悪循環を引き起こしています。雇用を守り、人間らしい労働のルールをつくる雇用政策に大きく転換することは、経済と産業のまともな成長と日本社会の安定のためにも、避けて通れません。

(1)大企業に雇用への社会的責任を果たさせ、無法な「非正規切り」やリストラ、雇用破壊をやめさせます

 「非正規切り」の多くは、偽装請負、偽装派遣、契約途中の解雇、派遣期間違反など、現行法でも違法・脱法行為のもとでおこなわれています。不当に解雇された労働者が全国で、労働組合をつくり、たたかいに立ち上がっています。

 違法行為を告発し、正規雇用を求める申告が広がり、マツダや東芝のグループ会社などに、労働局から是正指導も行われています。裁判でも、いすゞの「非正規切り」が違法行為であると断罪されています。日本共産党は、労働者をはげまし、連帯して、雇用をまもるために全力をあげます。

 監督・勧告・指導などあらゆる手段で雇用をまもる労働行政に……現行の労働者派遣法でも、偽装請負などの期間を含め3年以上派遣労働者を受け入れていた企業には直接雇用をする義務があります。本来なら、派遣先企業に直接雇用されるべき多くの派遣労働者が「派遣切り」されています。政府が、違法・脱法の「派遣切り」「非正規切り」をやめさせれば、多くの労働者の生活と雇用をまもることができます。そのために労働者の申告、相談に親身になって対応できるよう労働局の体制強化も必要です。

 日本共産党は、国会でも、日本経団連の代表や雇用破壊を進めている大企業の経営者を参考人として招致するなど、国政調査権を発動し、機敏に対応することを求めていきます。

 人権さえも踏みにじる退職強要や強制配転など乱暴なリストラをやめさせる……大量解雇の波は正社員にも及び始めています。無理やり「自主退職」に追い込むための「パワーハラスメント」や強制配転なども違法行為です。判例として確立し、労働契約法にもその趣旨が反映されている「整理解雇4要件」((1)解雇をしなければ企業の維持・存続ができないほどの必要性、(2)解雇回避の努力、(3)対象となる労働者の人選が合理的、(4)労働者に十分な説明をして納得を得る努力)を厳格に守らせていきます。

(2)失業者への生活援助を抜本的に強化します

 日本は、先進国のなかでももっとも失業者に冷たい国になっています。国際労働機関(ILO)によれば、日本は失業給付を受けていない失業者の割合が77%にものぼっており、ドイツやフランスの10%台と比べてもあまりにも異常です。雇用保険の特別会計に溜め込まれている6兆円もの積立金を有効に活用するなら、もっと大規模に、もっときめ細やかに、失業者への生活支援をすすめることができます。

 雇用保険を抜本的に拡充する……09年の雇用保険法の「改正」では、雇用保険から排除されている失業者1008万人のうち適用対象になるのは148万人にすぎません。雇用保険の拡充は、「失業給付が切れる」から劣悪な労働条件でも就職せざるを得ないという状況を改善し、「働く貧困層」をなくしていくうえでも重要です。失業給付期間を、現在の90−330日から180−540日程度までに延長する、給付水準の引き上げ、受給資格の取得に要する加入期間の短縮、退職理由による失業給付の差別をなくし、受給開始時の3ヵ月の待機期間をなくすなど拡充します。

 失業給付を受けられない失業者などへの支援をすすめる……政府がつくった失業者への生活援助制度は、「住宅喪失者」とか「職業訓練」などの条件をつけたうえに、3年という期限付きです。生活援助を、生活に困窮しているすべての失業者を対象にするように抜本的に拡充するとともに、恒久的な生活扶助制度として確立します。

(3)新しい雇用の創出と再就職支援にとりくみます

 介護、医療、保育など社会保障を充実させ、新しい雇用をつくる……社会保障分野は、「雇用誘発効果」が「介護」が全産業中1位で、「社会福祉」3位など、国がまともに取り組めば大きな雇用が生まれます。しかし、「派遣切り」で仕事を失った人の就労の場として介護が注目されても、政府の社会保障削減、介護報酬の引き下げによって、労働条件が非常に劣悪になっているために、新規雇用創出どころか、離職と介護現場の人手不足が深刻化しています。医療や保育なども含めて、国の社会保障政策を削減から拡充に転換してこそ、新しい雇用も創出できます。とくに劣悪になっている介護と障害者福祉の労働者の賃金を月3万円以上引き上げるために特別の公費投入をおこないます。

 自然エネルギーをはじめ環境での雇用創出をすすめる……地球温暖化などの環境問題に真剣に取り組む政策に転換し、自然エネルギーなどの分野で新規雇用を創出します。自然エネルギー導入の先進国であるドイツでの実績にてらせば、日本でも、年間約6万人の雇用を増やし、2030年には約70万人の雇用を擁する産業に発展させることも可能です。

 職業訓練を充実・強化し、新しい分野の仕事に就けるようにする……日本は失業者の生活支援も貧弱ですが、再就職支援の対策費も、ドイツ、フランスなどの5分の1程度です。公立の職業訓練校が削減されたこともあって、公共職業訓練、民間委託の訓練ともに2倍近い倍率になっています。希望するすべての失業者に職業訓練の機会を提供できるようにするとともに、技術や技能、資格を取得できるように職業訓練を充実することや相談体制の整備など再就職支援を強化します。

(4)労働者派遣法の抜本改正をはじめ、雇用の安定と労働者の権利をまもる労働法制に

 派遣労働を臨時的・一時的な業務に限定し、常用雇用の代替にしてはならないことを明記するとともに、もっとも不安定な働かせ方となっている登録型派遣を原則禁止し、専門業務にきびしく限定します。製造業への派遣を禁止します。派遣期間違反、偽装請負など違法行為があった場合には派遣先企業が直接雇用していたとみなす「みなし雇用」の導入など、労働者派遣法を派遣労働者の雇用と権利をまもる派遣労働者保護法に抜本改正します。数ヵ月単位の雇用契約を繰り返す「細切れ雇用」をなくすために、期限の定めのある雇用契約を合理的な理由のある場合に限定するなど、非正規労働者の雇用と権利を守ります。「同一価値労働同一賃金」の原則に基づいた均等待遇の法制化をすすめます。

(5)長時間・過密労働を是正し、過労死を根絶します

 失業者が増える一方で、過労死基準を超えるような長時間労働がまかり通っています。「サービス残業」を根絶するとともに、残業の上限を法律で制限し、残業代の割増率を50%に引き上げるなど、過労死や「心の病」を広げている長時間労働を是正します。“一人で二人分働かせる”ような長時間労働を是正することは、新規雇用を創出することにもつながります。

(6)最低賃金の引き上げ、公契約法(条例)などで「働く貧困層」をなくします

 全国最低賃金制度を確立し、当面、最低賃金を時給1000円以上に引き上げ、くらしと地域経済の底上げをはかります。そのために、中小・零細企業には雇用保険財政なども活用して必要な賃金助成を行います。

 国や自治体などが事業の外部委託を発注する際に、低賃金を押しつけるために生まれている「官製ワーキング・プア」を是正します。発注する公的機関と受託する事業者の間で結ばれる契約(公契約)に、生活できる賃金など人間らしく働くことのできる労働条件を定めるようにし、そのための法律や条例を定めます。

2、くらしを支え、生存権を保障する社会保障制度に――削減から拡充への大転換を

 深刻な経済危機だからこそ、自公政権がとりつづけてきた社会保障削減路線を撤回し、くらしを支える社会保障制度の拡充へと大きく転換することが強く求められています。

 自公政権は、社会保障予算の削減・抑制と社会保障制度の改悪を繰り返してきました。その結果、日本の社会保障は、社会的弱者が制度から真っ先に排除され、貧困と格差を是正するどころか、「生活苦で保険料が払えないと保険証を取り上げられ医者にもかかれない」など、貧困に追い打ちをかけています。社会保障の負担増は、国民のくらしに重くのしかかり、給付、サービスの削減は、生活と将来への不安を増大させています。医療体制の崩壊や介護の人手不足など、社会保障の根幹にかかわる深刻なゆがみが顕在化し、病院が次々に閉鎖される、お産ができない、救急車を呼んでも病院までたどり着けないなど、これまで「当たり前」だったことさえも、まともに機能しなくなっています。

 憲法25条は、すべての国民に生存権を保障し、社会保障の増進を国の責務として明記しています。日本共産党はこの立場から、医療・年金・介護をはじめ社会保障の各分野で、負担の軽減と不安の解消をすすめます。

 社会保障の拡充は、現在のくらしを支え、将来不安の解消にも大きく貢献し、内需の大きな柱である個人消費をあたためます。さらに、雇用や地域経済にも大きく波及します。社会保障の削減から拡充への転換は、景気対策としても大きな力を発揮します。

(1)医療にかかる負担を軽減し、“医療崩壊”の危機を打開します

 お金のことを心配して医者にかからず重病化してしまう、国保料を払えない滞納世帯が2割におよぶ――まともな医療保険制度とはよべない事態がひろがっています。「保険証1枚」あれば、だれでも、どんな病気でも医療が受けられる――公的医療保険制度の原点です。日本共産党はこの立場での改革をすすめていきます。

(1)後期高齢者医療制度を廃止します

 高齢者だけ別の医療保険制度に囲い込む――こんな世界にも例がない差別医療制度は廃止し、老人保健制度に戻します。これにともなう国保の財政負担は国が補填します。

(2)先進国では当たり前の“窓口負担ゼロ”をめざして、負担軽減をすすめます

 外来でも入院でも3割もの窓口負担をとられるなどという国は、先進国では日本だけです。公的医療制度がある国では、窓口負担はゼロか、あっても少額の定額制です。日本も、80年代前半までは、「健保本人は無料」「老人医療費無料制度」でした。この当たり前の制度を崩し、“国際標準”から著しく後退させてしまったのが自民党政治です。保険料は所得など能力に応じて負担し、必要な医療は誰もが平等に受けられる、この方向にむかって日本の医療をたてなおします。

 子どもと高齢者の医療費を無料にする……“窓口負担ゼロ”をめざして負担軽減に踏み出します。その第一歩として、就学前の子どもの医療費無料制度を国の制度として創設するとともに、75歳以上の高齢者の医療費を無料化します。さらに、現役世代の医療費3割負担も、健保も、国保も、本人も、家族も、引き下げをめざします。自公政権が来年度からの実施を決めた70〜74歳の1割から2割負担への2倍の値上げを撤回します。

 国の責任で、国保料(税)をひとり当たり1万円引き下げる……国民健康保険は、加入者の所得が減っているにもかかわらず、保険料がどんどん値上げされ、くらしを圧迫し、深刻な負担になっています。その最大の要因は、1984年以来、国庫負担が削減されてきたことです。いまこそ負担増から軽減に、国が責任をはたすため、国庫負担を引き上げます。

 国保証取り上げをやめる……失業や経営難などで生活に困っている人から、「滞納」を理由に国民健康保険証を取り上げるという無慈悲な行政をやめさせます。

(3)“医療崩壊”の危機を打開し、安心してかかれる医療体制を確立します

 医師・看護師を計画的に増員し、医療体制をたて直す……先進国で最低レベルの医師数を計画的に増員し、OECD(経済協力開発機構)加盟国の平均並みの医師数にします。そのために医学部入学定員を1.5倍化します。看護師の増員と労働条件の改善で、看護師200万人体制を確立します。“医療崩壊”をもたらした大きな要因は診療報酬の連続引き下げです。診療報酬の改革――「総額削減」、保険外診療の拡大をやめ、安全・有効な治療は速やかに保険適用する、薬・医療機器にかたよった報酬のあり方を見直し、医療従事者の労働を適正に評価するなどをすすめ、外来でも入院でも、医科でも歯科でも、安全・安心で質の高い医療が受けられる医療提供体制を確立します。

 国公立病院など公的医療機関への支援を強める……政府は、「採算重視」「コスト削減」を強要し、「不採算部門」を口実に産科・小児科・救急医療などを率先して切り捨ててきました。総務省の「公立病院改革ガイドライン」が、自治体病院の閉鎖や病床削減に拍車をかけています。国の政策が各地の医療崩壊の“引き金”をひいています。

 不採算部門やへき地医療をになう公的医療機関の役割を投げ捨てる政府のやり方をあらため、国公立病院、厚生年金病院、社会保険病院など公的医療機関の乱暴な統廃合や民営化をやめ、地域医療の拠点として支援を強めます。

 難病や新型インフルエンザ、がん、ウィルス性肝炎などへの対策の強化……感染症治療体制を緊急に整備します。肝炎対策基本法を制定し、すべてのウィルス性肝炎患者に対する恒久的な総合対策を確立します。

 原爆症認定訴訟を全面解決し、認定基準を抜本的に改善する……広島、長崎での被爆から64年を迎え、高齢化した被爆者の願いにこたえ、根本的な解決をはかります。

(2)最低保障年金制度をつくり、無年金・低年金問題の解決をはかります

 日本の年金制度の最大の問題は、無年金者が100万人を超え、国民年金だけの受給者は平均月額4万7000円など、日々の生活をまかなえない低額年金の人々が膨大な数にのぼっていることです。次の方向で無年金・低年金問題を解決し、年金全体の底上げをはかっていきます。

 受給条件を「25年以上」から「10年以上」にただちに引き下げる……保険料を「25年以上」納めないと1円も年金が支給されないという過酷な制度は日本だけです。アメリカでも年金の受給資格要件は約10年以上で、イギリス、フランス、カナダなど、受給の資格要件に加入期間がない国も少なくありません。

 年金額を月額5万円底上げする最低保障年金制度をつくり、国民年金では月額8万3千円に引き上げる……日本の年金制度には、諸外国では当然の最低額保障の仕組みがありません。全額国庫負担による最低保障年金制度の創設に踏み出します。すべての国民に当面月5万円の最低額を保障し、その上に支払った保険料に応じた額を上乗せします。それにより、国民年金の満額を現行の月額6万6千円から8万3千円へと引き上げます。厚生年金も、基礎年金部分を同様に引き上げていきます。これにより無年金者はなくなります。

  「消えた年金」「消された年金」問題の解決……“被害者を一人たりとも残さない”“一日も早く”という立場で、国の責任で解決します。

 公的年金等控除など高齢者増税を見直す……この間に行われた高齢者の所得税・住民税の増税について、公的年金等控除の最低保障額を140万円に戻すとともに、所得500万円以下の高齢者には老年者控除を復活します。

(3)安心して利用できる介護制度への抜本的見直しをすすめます

 高すぎる保険料・利用料、在宅介護での利用制限、増え続ける特養老人ホーム待機者など、「介護地獄」は解決されず、介護を苦にした痛ましい事件も続いています。安心して利用できる介護制度への抜本的な見直しは待ったなしです。

 保険料・利用料を減免し、経済的理由で介護を受けられない人をなくす……介護保険への国庫負担割合をただちに5%引き上げ、国の制度として保険料・利用料の減免制度をつくります。さらに、国庫負担を介護保険発足以前の50%にまで戻し、所得の少ない高齢者には原則として負担を求めない仕組みをつくるなど、お金の心配なく利用できる制度にしていきます。

 要介護認定の改悪や「介護とりあげ」を中止する……要介護認定の改悪は大きな見直しを迫られましたが、白紙撤回が必要です。要介護認定制度や利用限度額は廃止して、現場の専門家の判断で必要な介護を提供できる制度に改善します。訪問介護、通所介護、福祉用具の利用制限などの「介護とりあげ」をやめます。

 介護施設などの整備をすすめる……特別養護老人ホームの待機者が38万人にのぼることは重大です。国が2006年から基盤整備への補助金をカットしたことが大きな原因です。5ヵ年計画で特養老人ホームの待機者を解消し、「介護難民」をなくすため、特養老人ホームや生活支援ハウスなどの緊急整備を国の責任ですすめます。療養病床の廃止・削減計画を白紙撤回します。

 介護労働者の労働条件を改善し、人材不足を解消する……介護報酬を5%引き上げるとともに、介護報酬とは別枠の公費投入で、介護労働者の賃金を月3万円以上引き上げます。2014年度を目処に、150万人の介護従事者を養成・確保します。

(4)障害者自立支援法を廃止し、障害者福祉・医療を拡充します

 障害者の福祉や医療は、本来、利用料負担を求めるべきものではありません。障害者自立支援法を廃止し、「応益負担」を即刻撤廃します。福祉施設・作業所への報酬の日払い制度をやめ、大幅に引き上げます。障害者福祉で働く労働者の賃金を国の責任で3万円以上引き上げます。

 障害者関連予算は、ドイツの3分の1、スウェーデンの7分の1しかありません。これを大幅に増額し、日本国憲法と国連「障害者権利条約」を踏まえた総合的な福祉法制を確立して、障害者福祉・医療の拡充をはかります。

(5)貧困の実態を国が把握し、憲法25条の生存権を保障する生活保護に

 日本では、判明しているだけでも年間100人近くが餓死し、「経済的な困難」で自殺する人が後を絶たないなど、貧困の広がりが深刻な社会問題となっています。日本の相対的貧困率は、OECD加盟の先進国中で第4位です。ところが、いま生活保護を受けている人は対象となるべき人の1〜2割程度に過ぎないとされています。日本政府は他の先進国ではあたりまえの「生活保護の捕捉(ほそく)率」(生活保護基準以下でくらす人たちのうち、どれだけ保護を受けているか)の調査さえしていません。政府として貧困の実態を把握することは、国民を貧困からまもる政治姿勢にたつ大前提です。貧困の実態調査をおこない、政府が貧困を減らす具体的な目標を策定します。

 保護申請の門前払いをやめ、老齢加算・母子加算の復活を……住所の有無、年齢などを理由にした保護申請の門前払いをやめ、当座の所持金のない人には即日で保護決定を下すなど、生活保護法の本来の主旨にそった行政に転換します。生活保護の老齢加算・母子加算を復活します。

3、安心して子育てできる社会に――総合的な子育て支援をすすめます

 子育て支援は、仕事と子育ての両立、経済的負担の軽減、「子どもの貧困」の解決など、“子育てがしにくい”という日本社会のあり方への総合的な取り組みが必要です。

(1)子育てと仕事が両立できる社会に

 人間らしく働けるルールをつくる……残業規制の強化など長時間労働の是正、育児休業制度の改善、妊娠・出産にともなう不当な解雇や退職勧奨、不利益な扱いをなくす、若い世代に安定した雇用を取り戻すなど、子育てしやすい働き方、賃金・労働時間を保障することが大切です。

 保育制度の改悪を中止し、待機児童を“ゼロ”にする……保育所に入れない待機児童は4万人にのぼり(08年10月現在)、認可外施設やベビーホテルなどに預けられている子どもや保育所への入所を希望している潜在的な待機児童なども含めると100万人近くになるとされています。待機児童をすみやかにゼロにするために、国が計画をつくり、国の責任を明確にして認可保育所を整備していきます。希望者全員が入所できるよう学童保育を抜本的に拡充します。

 政府・厚労省は、保育所にたいする市町村の義務をなくし、保護者と保育所の「直接『契約』・自己責任」にする「改革」を実施しようとしています。保育料に「応益負担」を導入する仕組みに変えることも検討しています。保育への公的責任を後退させ、負担増や格差を持ち込む大改悪を中止させ、公的保育を守り、充実させます。保育料、幼稚園授業料の負担軽減をはかります。

(2)医療費無料化、児童手当を現行の2倍の月1万円に

 子どもの医療費無料制度を国の制度として確立し、そこに自治体の独自助成を上乗せできるようにして、医療費負担軽減を拡充します。小学校6年生までの児童手当を、ただちに現行の2倍に引き上げ1万円にします。18歳までの支給をめざし改善していきます。その際、扶養控除、配偶者控除の廃止などのいわゆるサラリーマン増税との「抱き合わせ」での手当増額はおこないません。

(3)教育費負担を軽減し、経済的理由で学業をあきらめる若者をなくします

 高校入学から大学卒業にまでかかる費用は子ども一人当たり平均1045万円、教育費は年収の34%にのぼり、とくに年収200〜400万円の世帯では55.6%に達します(日本政策金融公庫調査)。貧困と格差の広がりは、高すぎる学費のために中退せざるをえない若者を増やし、私立大学では年間1万人の学生が経済的理由で退学しています。子育て支援というなら、この重い教育費負担の軽減は避けて通れません。

 憲法は国民に「ひとしく教育を受ける権利」(第26条)を保障し、教育基本法は「すべて国民は…経済的地位…によって、教育上差別されない」(第4条)としています。

 高校授業料の無償化をすすめる……先進国(OECD加盟30カ国)で高校に授業料があるのは日本を含めて4カ国(韓国、イタリア、ポルトガル)にすぎません。公立高校の授業料を無償化するとともに、私立も「授業料直接助成制度」(入学金等も対象とする)を創設し、年収500万円未満の世帯は全額助成、800万円未満の世帯は半額助成にするなど、無償化をめざして負担を軽減していきます。

 給付制奨学金の創設など奨学金制度の改革で支援を強める……国の奨学金はすべて無利子に戻すとともに、返済猶予を拡大します。とくに就学が困難な生徒・学生のため、返済不要の「給付制奨学金」を創設します。給付制奨学金制度がない国は、先進国のなかで日本、メキシコ、アイスランドの3カ国だけです。

 大学の「世界一の高学費」を軽減する……国公立大学の授業料減免を広げ、私立大学の授業料負担を減らす「直接助成制度」をつくります。「学費の段階的無償化」を定めた国際人権規約の「留保」を撤回します。国際人権規約の第13条は、高校と大学を段階的に無償化することを定めていますが、条約加盟国160カ国中、この条項を「留保」しているのは、日本とマダガスカルの2カ国だけです。

(4)生活保護母子加算の復活、就学援助、児童扶養手当の拡充など、「子どもの貧困」の克服に力を尽くす

 生活保護母子加算を復活します。生活困窮世帯の子どもに給食費・学用品代・修学旅行費などを援助する「就学援助」も受給者が急増するなどその役割はますます重要になっています。ところが政府が2005年に国庫補助を廃止したために、支給額や基準を切り下げる自治体も増えています。国庫補助を復活し、拡充へと転換します。父子家庭への対象拡大、手当額の引き上げなど、児童扶養手当を拡充します。児童福祉施設の生活と進学保障の充実、児童相談所の体制強化を緊急にすすめます。

4、中小企業を応援する政治へ本格的な転換をはかります

 自民党・公明党が推進してきた外需優先・内需切りすての「構造改革」路線によって、中小企業と地域経済は痛めつけられてきました。そのうえ、アメリカ発の経済危機のもとで、原油・原材料高騰、大企業による違法な「下請切り」、銀行による理不尽な貸し渋り・貸しはがしで突然の経営難に追い込まれるなど、二重三重に苦しめられています。今こそ、大企業優先の経済路線を転換し、中小企業を本格的に応援する政治が必要です。

(1)景気悪化から中小企業をまもる4つの緊急課題に取り組みます

  雇用の7割を支えている中小企業向け雇用調整助成金を抜本拡充する……仕事の激減など中小企業を襲っている深刻な事態に即応できるように、給付開始を早めることや、助成率を休業補償の5分の4から5分の5に引き上げるなど、中小企業向け雇用調整助成金を抜本的に拡充します。

 貸し渋りをやめさせ、信用保証制度の改善で資金繰りを支える……三大メガバンクは、大企業貸出を増やす一方で、昨年3月からの1年間で中小企業向け貸出を約2.6兆円も減らしています。こうした理不尽な貸し渋り・貸しはがしは直ちにやめさせます。また、信用保証協会の「緊急保証」制度は、全業種を対象にしていないだけでなく、3分の1の企業が、拒否・減額されるなど保証を受けにくくなっています。緊急保証制度について全業種を対象とするほか、審査条件を緩和します。さらに、「一般保証」制度に導入された「部分保証」制度を廃止し、全額保証に戻します。商工中金の完全民営化をやめさせるなど、政策金融全体のあり方を再検討し、円滑な資金供給という本来の役割を果たさせます。

 違法な「下請切り」をやめさせる……大企業による一方的な発注内容の変更など「下請切り」の多くは、下請代金支払遅延等防止法に反する違法・不法行為です。二階経済産業大臣でさえ、「違法に近いものもたくさんある」(09年2月5日、衆院予算委員会)と答弁しています。違法な「下請切り」への指導監督を抜本的に強化し、直ちにやめさせます。

 中小企業が廃業・倒産しないために緊急の休業補償・直接支援をおこなう……仕事の激減によって、多くの中小企業が廃業・倒産の危機にさらされています。中小企業の廃業・倒産の急増は、優れたモノづくりの技術を失わせ、日本経済と産業にとって重大な損失です。

 中小企業を対象にした緊急の休業補償・直接支援を実施します。中小貸し工場への家賃や光熱費などの固定費への補助、固定資産税の減免、大企業からの注文に応えるために行った設備投資への助成など、休業しても中小企業が存続できるような支援を抜本的に強化します。

(2)日本経済の基盤を支える中小企業への支援を抜本的に強化します

 中小企業は、(1)短期的な利益よりも「雇用確保」や「社会貢献」を重視する、(2)地域経済への波及効果が大きく、もうけが地域経済に還元される、(3)優れたモノづくり技術を持つ経済・文化資源である、(4)地域経済に根ざし社会的責任を果たしているなど、日本の経済・社会にとってかけがえのない役割を果たしています。内需主導で日本経済を立て直すことが求められている今こそ、中小企業が生きいきとその力を発揮できるために、国・自治体が力を合わせて、本格的に支援することが必要です。

 中小企業憲章を制定し、中小企業予算を1兆円に増額する……今年度の中小企業予算は1890億円で、1企業当たり年4万5千円にすぎません。他方、米軍への「思いやり」予算は2879億円、米兵1人当たり年811万円であり、中小企業の180倍です。

 中小企業に冷たい政策を大もとから転換し、当面、一般歳出の2%、1兆円程度に増額します。中小企業の各分野に専門家を配置し、製品開発や販路拡大、起業支援や人材・後継者の育成などへの支援を抜本的に強化します。また、中小企業の新しい成長分野として、自然エネルギー、省資源・リサイクル分野への公的投資と助成を増やします。

 EUは、「小企業憲章」を制定し、「小企業が最優先の政策課題に据えられてはじめて、“新しい経済”の到来を告げようとするヨーロッパの努力は実を結ぶ」と位置づけています。日本でも『中小企業憲章』を制定して中小企業の役割を明確にし、国の政策の影響・効果を検証して中小企業政策に反映させます。

 「地域金融活性化法」「納税者憲章」をつくる……中小企業・地域経済に対する金融機関の貢献を義務づける「地域金融活性化法」を制定します。政府系金融機関の統廃合をやめ、公的金融制度の拡充をはかります。先進国では当たり前の「納税者憲章」を制定し、消費税の免税点引き上げや家族の労賃を必要経費と認めない所得税法56条の廃止など、中小企業や零細業者を育てる税制に転換します。

 中小企業の法人税率の引き下げ……法人税にも累進制を導入し、中小企業の一定範囲の所得については、現行より税率を引き下げます。

 自治体のとりくみへの支援を拡充する……政府は、「三位一体改革」の中で、財政的な裏付も行わないまま、地方自治体への中小企業施策の“丸投げ”をすすめてきました。こうした姿勢を転換し、商店街の振興、農商工連携、伝統産業・地場産業の支援などについて、地方自治体が主導的な役割を果たせるよう国の支援を抜本的に拡充します。

 大企業・大銀行の横暴を規制し、中小企業をまもるルールをつくる……中小企業の経営難の背景には、違法な「下請切り」や貸し渋り・貸しはがし、大型店の一方的な出退店など、大企業の身勝手な行動があります。日本共産党は、中小企業や地域経済をまもるためのルールをつくり、大企業に当たり前の社会的責任を果たさせます。

――独占禁止法を改正し、中小企業との取引・競争における大企業の地位の濫用を厳しく規制します。

――下請代金法を改正し、違反した企業名や事実の公表、損害賠償支払いの義務化などの措置をとれるようにします。訴えのあるなしにかかわらず、系統的に下請取引に関する実態調査をおこなうため、下請検査官を抜本増員します。

――公正取引委員会に中小企業の代表を加えるなど、その機能を拡充・強化します。

――業界団体・中小企業団体が、大企業並びに大手の業界相手に、「団体交渉」をおこなう権利を保障した「公正取引確保法」(仮称)を制定します。

――労働者の平均賃金に見合う最低加工賃の算定基準を策定します。

――大店立地法第13条を廃止し、自治体が自らの権限で条例をつくり、大型店や大工場等の出退店を規制できるようにします。                                      

(3)地域に密着した生活・福祉型公共事業で仕事と雇用を生み出します

 政府の公共事業は、高速道路やスーパー中枢港湾、空港などの大型開発中心です。大型公共事業に偏重した現状を見直し、小規模・生活密着型、福祉型の公共事業への本格的な転換をすすめます。これは、雇用を生み出すとともに、特養ホームの待機者や保育園の待機児童を解消し、国民生活を改善させるうえでも大きな役割をもちます。

 待ったなしの耐震化工事にただちにとりくむ……小中学校などの耐震化、老朽化した施設の維持補修は、命と安全をまもるためにも最優先課題です。耐震性が不十分な公共施設7万棟、公営住宅7万戸の耐震工事などに直ちにとりくみます。みずほ総研は、倒壊の危険の高い1万棟の小中学校の耐震化工事で、約2万3千人の雇用が生まれると試算しています。耐震化・維持補修工事を実施し、雇用創出と中小企業の仕事おこしにつなげます。

 中小企業向け官公需を拡充し、入札制度を改善する……中小企業向け官公需発注比率を少なくとも7割以上に引き上げるとともに、最大限、分離分割発注を行います。地方自治体による「小規模工事登録制度」を創設・拡充し、中小企業の受注を増やします。“ダンピング競争”を防ぐため、積算単価の適正化をはかるなど、入札制度を改善します。

 波及効果の高い住宅リフォームへの助成を増やす……各地の自治体が実施している住宅リフォームへの助成制度は、助成予算の20倍を超える波及効果を生んでいます。住宅リフォームへの支援を抜本的に拡充します。中小建設業者への著しい負担となっている「住宅瑕疵(かし)担保保証制度」の改善をはかります。

 大手ゼネコンから建設業者をまもるルールをつくる……大手ゼネコンによる低単価発注、下請代金支払の未払いなどをやめさせます。自治体の仕事を受注する企業に、人間らしく働ける賃金と労働条件を義務づける「公契約」法や「公契約」条例の制定をすすめます。労働協約をしっかり結ぶためのルールをつくります。

5、農林漁業の再生で食料自給率を高め、「安全な食料を日本の大地から」を実現します

 日本は、食料自給率がわずか40%、先進国の中でも異常な低さです。「お金を出せば世界中から食料を買い集めることができる」という時代は終わりを告げています。

 ところが自公政権は、国内生産を支える価格保障制度を廃止し、規模の大小で支援する農家を選別するなど、現場の実態を無視した政策で、国内の生産基盤を弱体化させる農政を依然として続けています。さらに昨年7月のWTO(世界貿易機関)交渉では農産物の輸入をさらに拡大する関税引き下げを事実上、容認しました。こんな政治では、日本農業も国民の食料も守れません。

 農林漁業など第1次産業の衰退は、地域経済を疲弊させています。居住人口の半数以上が高齢者となり、社会的な共同活動が困難となる「限界集落」を広げる要因にもなっています。農業生産を拡大すれば、それに関連する食品加工、サービス、製造業なども活性化し、農業生産額の3倍もの規模で地域経済に波及する効果があります。食料自給率向上と農林漁業再生に向けた政策への抜本的な転換は、地域経済の再生にもつながります。

 経済・社会の基盤である食料の安定的な確保のために、当面、食料自給率の50%台への回復を最優先の課題とします。その達成に向けて、昨年3月に発表した「日本共産党の農業再生プラン」で提案した施策の実現をめざします。

(1)安心して農業・漁業にはげめるよう価格保障・所得補償を実施します

 わが国農業の再生にとっていまもっとも必要なのは、農業経営を安定して持続できる条件を保障するための制度を整備・充実することです。価格低迷が農業の衰退を招き、大規模経営でさえ維持が困難な状況です。経営が成り立ち、持続できる条件を整えてこそ、他の産業分野や都市部から参入してくる人たちも増えます。

 農産物輸出国であるEUやアメリカでも実施されているように、価格保障・所得補償の拡充を農政の基本として日本でも実施し、生産・経営コストをカバーできる条件を早急に確立します。米でいえば、過去3年間の平均生産費を基準にした不足払い制度による価格保障制度を創設して当面、少なくとも1俵(60キロ)あたり1万7000円以上を保障します。加えて、水田のもつ国土・環境保全の役割を評価した直接支払い(所得補償)を拡大し、あわせて当面1俵あたり約1万8000円を確保します。麦、大豆、畜産、野菜・果樹などの主な農畜産物も条件に合わせて価格保障・所得補償で増産をうながします。

 とくに米価が急落している現状で、政府は、備蓄米の買い入れをルールどおりに行い、米価の低落を防ぎます。

 農業経営の強化に取り組んでいる経営者や農協、共同組織に、機械導入・更新や事務コストに関する助成を拡充するなどの支援をすすめます。

 水産物も、「調整保管制度」などを活用して価格の下落を防ぎます。経費に見合う魚価の実現のために、価格保障・所得補償をはかるとともに、食料自給率を支える資源管理型の漁業をめざし、資源回復のための休業にたいする補償、適切な輸入管理を実施します。

(2)農林漁業の担い手を育成し、後継者確保のために就業援助を強めます

 農業を中心的に担う基幹的農業従事者202万人のうち65歳以上が約6割に達し、漁業者の半数近くが60歳以上です。食料自給率を支える後継者の確保は差し迫った課題です。

 「担い手の多様化」を口実に、自民党、公明党、民主党の賛成で、農地法が改悪され、外国資本も含む株式会社の農地利用が原則自由にされました。しかし北海道で大規模なトマトのハウス栽培に乗り出した企業がわずか3年で撤退するなど、株式会社はもうからなければ撤退し、農地の荒廃を大規模に進めることにつながります。

 今後の農業の担い手も家族経営が主役であり、多様な家族経営の維持を、担い手対策の中心にすえます。小規模農家や兼業農家を排除する「水田・畑作経営所得安定対策」(「品目横断対策」)をやめ、農業を続けたい人すべてを応援します。地域農業の重要な担い手であり、高齢者・離農者などの農地や農作業を引き受けるなど、大規模農家や生産組織などが果たしている役割を重視して、支援を強めます。

 新規就農者への就業支援を強化する……後継者をふくむ新規就農者へ「月15万円を3年間」の「新規就農者支援制度」を創設します。同時に、新規就農者の研修や技術指導を引き受ける農業生産法人や農家への支援も強化します。都会から移り住んで就農することを望む人のための住宅提供などの支援や、農林漁業の技術・経営を身につけるための教育・研究機関の強化、就業しようとする人のための農地、船などの確保に国の支援を進めます。

 地元木材の利用拡大や森林資源を使ったエネルギー供給で仕事を広げる……日本の国土の3分の2を占める森林は、国土の保全、空気の浄化、水資源の涵養など多面的な役割を果たしています。中山間地などの活性化のためには、農業とともに林業の振興が大切です。森林の維持を中心的に担っているのは、わずか3万人の林業専業労働者ですが、5年間で3分の1も減少しています。地元産の木材使用への補助、公共施設建設への地元産木材の優先使用などで、林業の活性化を図るとともに、間伐材や廃材によるバイオ燃料の供給など森林資源を活用した自然エネルギーの供給で新たな仕事と収入を生み出します。

(3)関税など国境措置を維持・強化し、「食料主権」を保障する貿易ルールに

 世界ではいま、各国が輸出のためでなく自国民のための食料生産を最優先し、実効ある輸入規制や価格保障などの食料・農業政策を自主的に決定する権利=「食料主権」を保障する貿易ルールの確立をもとめる流れが広がっています。農業をめぐる自然的・社会的条件や、農業の果たしている多面的機能には国ごとに違いがあります。そのため、生産条件の格差から生まれる不利を補正するため、関税や輸入規制など必要な国境措置がとられています。こうした国境措置を維持・強化することは当然です。各国の「食料主権」を尊重する立場に立って、WTO農業協定を根本から見直すよう求めます。わが国が諸外国と結ぶFTA(自由貿易協定)・EPA(経済連携協定)について、日本の農業と食料をはじめ国民の利益に重大な打撃をあたえるものには反対します。

(4)都市農業、中山間地農業にたいする支援を強化します

 都市の環境に果たす農地の役割と農業への参加の意欲に応えるため、都市計画制度での位置づけを強化し、農地への相続税・固定資産税を、維持可能な水準に引き下げます。当面、生産緑地の指定を拡大し、相続税猶予の条件を緩和します。期限切れとなる条件不利な中山間地農業への直接支払い制度を継続し、指定の条件を緩和します。

(5)農業者・消費者の共同を広げ、「食の安全」と地域農業の再生をめざします

 食品の産地・品質の偽装、添加物の表示違反、賞味期限の改ざん、メラミン混入など、山積する「食の安全」問題を打開するには、食品に関する検査体制をただちに強化するとともに、根本的には食料自給率を抜本的に高めることが必要です。BSE(牛海綿状脳症)対策の全頭検査を維持するなど食に関する信頼を高め、安全・安心の生産・流通の拡大など農業者と消費者の共同を広げて、「食の安全」と地域農業の再生をめざします。

 汚染米問題の根源には、日本に必要のないミニマムアクセス米を年間77万トンも輸入するという政府の施策があります。輸入機会の提供にすぎないはずのミニマムアクセス米の「義務的」輸入を中止するとともに、「規制緩和」によって国の米流通に対する管理責任を放棄してしまった、小泉「改革」の一環としての「コメ改革」を見直します。

6、地球温暖化をくいとめる国際的な責任を果たし、地球環境を守ります 

 7月のラクイラ・サミット(イタリア)でも改めて確認されたように、地球温暖化の被害が取り返しのつかないレベルになるのを避けるには、産業革命前にくらべて2度以内の気温上昇(現在までにすでに0.76度上昇)にとどめることがカギです。

 温暖化抑制に有効なルールをしっかり設定し、それにもとづいて中長期的な取り組みを進めることが必要です。いまこそ、温室効果ガスの排出量を減らしながら発展する経済社会への本格的な転換が求められています。国の将来にかかわる総合的な戦略・政策のなかに地球温暖化対策をしっかり位置づけ、政府の取り組みを義務づける法律(気候保護法=仮称)を制定します。

(1)基準年を1990年から2005年に変更するごまかしをやめ、2020年までに温室効果ガスを30%削減する中期目標を設定します

 自公政権は、6月に、2020年までの日本の温室効果ガス削減中期目標を、2005年基準で「15%削減する」と決定し、欧米と比べても遜色(そんしょく)がないなどといっています。しかし、日本は、2005年までに逆に7%も増やしています。政府の中期目標は、1990年比にすればわずか8%の削減にすぎません。これでは、京都議定書で約束した2012年までの目標である1990年比で6%削減と、ほとんど変わりません。EUが90年から05年までにすでに2%削減し、さらに2020年までに90年比で20%〜30%削減しようと取り組んでいる姿と比べると、日本は「遜色がない」どころか、「基準年を移す」という小手先のごまかしの「目標」にすぎません。自公政権は、削減のための施策を「統制経済」などとする財界のいいなりになってきた結果、まともな削減目標さえ定めることができなくなっています。

 今年12月にコペンハーゲン(デンマーク)で開かれる温暖化に関する国際会議では、2013年以降の新たな国際的取り組みを具体的に決定しなければなりません。日本共産党は、日本に課せられた先進国としての国際的義務を果たすために、2020年までに90年比で30%削減することを明確にした中期目標を確立し、2050年までに80%削減するという長期目標をすえ、着実に実現していくための手立てを講じます。

(2)最大の排出源である産業界に対し、公的削減協定など実績のある施策を実施します

 産業界は日本の温室効果ガスの総排出量の8割(家庭が使う電力分を電力会社の排出とすれば9割)を占め、わずか166の事業所だけで日本全体の二酸化炭素排出量の50%に達しています。

 にもかかわらず日本では、もっぱら財界の“自主努力”まかせにされています。EU諸国では国が産業界と公的協定を結んで実績を上げています。こうした施策によく学んで、日本でも政府と産業界の間で削減目標を明記した公的な削減協定を義務づける必要があります。企業の目標達成のための補助的手段としての「国内排出量取引制度」や、二酸化炭素の排出量などに着目した環境税を導入し、削減を加速します。

(3)自然エネルギーの活用を大幅に拡大します

 二酸化炭素の排出量の9割がエネルギー由来であり、エネルギー対策は温暖化抑制のかなめです。現在、自然エネルギー(再生可能エネルギー)は1次エネルギーのわずか2%(大規模水力発電分3%を除く)に止まっています。国際的にも日本は、大きく立ち遅れ、電力供給にしめる比率でEUを下回り、太陽光発電の導入量でドイツに首位の座を奪われスペインにも抜かれました。風力発電ではアメリカ、中国からも立ち遅れています。

 自然エネルギー利用の発電を促進する固定価格買取り義務制度を導入する……2020年までにエネルギー(一次)の20%、2030年までに30%を自然エネルギーでまかなう計画を策定し、着実に実行していきます。そのためにすでに国会で提案したように、電力会社が、太陽光だけでなく自然エネルギーによる電力全般を、10年程度で初期投資の費用を回収できる価格で、全量買い入れる「固定価格買取義務制度」に転換します。初期投資を回収したあとは余剰電力の買い取りに切り替えます。そのさい、いま電気料金に含まれ主に原発用に使われている電源開発促進税(年間3510億円)や、温室効果ガスの削減目標に達しない分の穴埋めに海外から排出権を買い取るのにも使われている石油石炭税(同5100億円)などの使い方を見直し、ユーザーへの負担を抑制するようにします。

 自然エネルギーの普及促進のために、家庭用の太陽光発電に対する国の補助を抜本的に引き上げ、公的助成を半分まで高めます。国、自治体の施設や、一定規模以上の建物については、自然エネルギーの利用、熱効率の改善を義務づけます。

 危険な原発だのみの「環境対策」をあらためる……自公政権は、原子力発電を「温暖化対策の切り札」とし、長期的にも電力供給の約半分を原発でまかなおうとしています。この間、地震などの自然災害や、事故、データ捏造(ねつぞう)などによって、原発の停止が相次いでいます。しかも、事故や廃棄物による放射能汚染という環境破壊の危険も大きく、安全上も、技術的にも未確立な原発に頼った「温暖化対策」はやめるべきです。

7、国民サービスの拡充、どんな利権も許さない郵政事業に――郵政民営化を中止します

 自民・公明は4年前の衆院選で、郵政民営化を「改革の本丸」などとして、民営化すれば、社会保障の充実、地方経済の立て直し、戦略的外交の推進、安全保障の確立などにもつながるという荒唐無稽な「バラ色」の大宣伝をしました。しかし、こうした民営化の「バラ色」の宣伝は、すべてメッキがはがれ落ちました。それどころか、簡易郵便局の閉鎖、郵貯ATMの撤去、各種手数料の引き上げ、時間外窓口の閉鎖、集配郵便局の統廃合など、国民サービスが大きく後退しました。

 しかも、民営化によって、国民共有の財産を食い物にする「新しい利権構造」と腐敗が次々に明らかになっています。「かんぽの宿」をはじめ郵政事業として保有していた資産の「たたき売り」や郵貯カード事業との提携で利益をあげたのは、西川善文日本郵政社長の出身銀行である三井住友グループや、規制緩和の旗振り役だった宮内義彦氏が会長を務めるオリックス・グループです。自民党・公明党は、「郵政民営化によって利権がなくなる」などと宣伝してきましたが、実際には、古い利権から新しい利権に変わっただけです。

 郵政事業は、長年にわたり、国民の貯金や保険料、郵便料金で培ってきた国民の共有財産であり、地域住民の暮らしを支える重要な役割を果たしています。それが、民営化をすすめた営利企業によって食い物にされているのです。西川社長をはじめ、新たな利権を拡大し、国民共有の財産を食い物にさせた経営陣の責任は重大です。

 国が保有している郵政株の売却を中止し、郵政民営化路線を根本から転換する……今必要なことは、国民が安心して利用できる郵便・貯金・簡保などのサービスを提供することです。郵便局ネットワークによって提供されている生活に不可欠なサービスを「ユニバーサルサービス」として義務付け、全国あまねく提供されるように力をつくします。そのためにも郵政事業を、三事業一体の運営を堅持し、ユニバーサルサービスを守り、利権を許さない公的な事業として再生します。

 郵政事業を国民に開かれた、国民へのサービスに徹する事業にするための改革にとりくむ……「かんぽの宿」の売却問題など、民営化をめぐる利権についての実態解明をすすめます。郵政関連事業が高級官僚の天下り先になり、ムダな施設をつくっている問題にもメスを入れます。民営化後、いっそうひどくなっている郵政事業での非正規雇用の拡大、「使い捨て」の働かせ方を改善します。

 中小企業、住宅、福祉・医療施設などへの資金供給……これらの分野の資金供給は、民間銀行などの「市場まかせ」ではなく、公的金融による支えが必要不可欠です。こうした公的金融の原資として、郵貯・簡保資金を活用します。

8、消費税増税に反対し、軍事費・大型公共事業などの無駄をなくし、大企業・大資産家に応分の負担を求めて、社会保障などの財源を確保します

(1)消費税増税に反対します

 政府は、昨年12月に閣議決定した「中期プログラム」と今年の国会で成立した税制「改正」法で、今後2年間のうちに消費税増税を含む「税制改革」を実行する計画を決め、借金のつけを消費税増税によって国民におしつけようとしています。

 日本共産党は、国民を苦しめる消費税大増税計画にきっぱり反対します。ヨーロッパ諸国で実施されているように、消費税の減税に踏み切ります。その際、低所得者への減税効果が大きくなるよう、食料品などの生活必需品を非課税にする方法で実施します。軍事費や大型公共事業をはじめとする歳出面での無駄をなくすとともに、「負担能力に応じた税負担」の原則にたった税制改革をすすめます。これによって、社会保障などに必要な財源を12兆円以上確保することが可能です。

(2)軍事費・大型公共事業などの歳出の無駄をなくします

 いま、どの政党も「歳出の無駄をなくす」と口ではいっています。しかし、本当に無駄をなくすためには、軍事費、財界・大企業の要望、アメリカからの対日要求、政官財のゆ着構造と利権など、「聖域」に切り込めるかどうかという、政治の姿勢が問われます。

 軍事費を「聖域」にせず、大幅に削減する……年間5兆円にものぼる軍事費を「聖域」とせずに削減するかどうかは、本当に無駄を削れるかどうか、巨額の財政赤字にまともに立ち向かう意思があるかどうかの「試金石」です。アメリカのオバマ政権は、財政健全化のために軍事費を今後10年間に140兆円削減するとしています。日本の軍事費は、国の人件費や物件費の4割、公共事業を除く施設費の6割近くを占めており、これにメスを入れることなしに歳出の大幅削減はできません。米軍への巨額の税金投入――3兆円ものグアム島への基地建設などの「米軍再編」経費、年間2800億円にのぼる米軍への「思いやり予算」や、憲法違反の海外派兵経費、海外派兵のための装備や訓練経費を全額削減するとともに、軍事費全般を「聖域」とせずに削減していきます。

 大型開発にメスを入れる……政府は、地域住民の反対もあって1970年以来凍結されてきた東京外郭環状道路(練馬〜世田谷間)の事業化を決定し、この計画を自民、民主の国会議員が委員となっている国土開発幹線自動車道建設会議(国幹会議)が全会一致で承認してしまいました。地下40メートルに直径16メートルのトンネルを2本も通すこの計画には、総額1兆8000億円、1メートル1億円以上の費用がかかります。この外環道を含む「三大都市圏環状道路」には、毎年5千億円もの事業費がつぎ込まれています。こうした高速道路建設をはじめ、八ツ場ダム、川辺川ダムなどのダム建設(3千億円弱)、スーパー中枢港湾(1千億円強)、空港建設などの大型事業を総点検し、不要不急の事業を中止・延期します。

 高速道路無料化より福祉・教育を優先する……高速道路料金の無料化や大幅引き下げに何千億円、何兆円という税金を注ぎこむことが、「税金の使い方」として適切でしょうか。無駄な高速道路建設に歯止めもかけないまま、旧道路公団の借金を国民に肩代わりさせて続けられようとしている高速道路料金の軽減よりも、福祉や教育を税金の使い方として優先します。

 政官財のゆ着や特権による浪費をなくす……官僚の天下りを禁止し、政官財のゆ着や特権による浪費をなくします。政府が組んだ15兆円もの補正予算には、自動車・家電業界などの要求を丸飲みした補助金ばらまきや、目的も効果もはっきりしないのに基金を積むなど、無駄な事業が多数含まれています。これらの予算にメスを入れ、その財源を社会保障などに振り向けます。

 政党助成金を廃止する……年間320億円もの国民の血税を政党が分け取りする政党助成金は、ただちに廃止します。「無駄な補助金を削る」とか「財政難」と言いながら、自分たちへの巨額の補助金は受け取り続ける政党に「聖域のない無駄の削減」はできません。

(3)大企業・大資産家に「能力に応じた税負担」を求めます

 もう1つの「聖域」は、大企業や大資産家を不当に優遇している現在の税制です。この間、庶民には定率減税の廃止や年金課税の強化などの増税が続く一方で、大企業や大資産家には減税が繰り返されてきました。最近10年間に行われたものだけでも、年間ベースで7兆円以上、累計で40兆円以上の減税がされています。

 いま、アメリカでは、ゆきすぎた「金持ち減税」を改め、富裕層に10年間で100兆円以上の負担を求めるという税制改革が提案されています。イギリスでも40%の所得税最高税率を来年4月から50%に引き上げることが提案されています。

 日本でも、くらしをまもり、内需主導の経済危機打開の道を開くために、不公平税制にメスを入れ、税制がほんらいの所得再分配機能をとりもどす方向での改革が必要です。

――所得税・住民税の最高税率を少なくとも98年以前の水準(所得税・住民税あわせて65%)に戻し、高額所得者・大資産家に応分の負担を求めます。

――大資産家の株式配当や譲渡所得には、わずか10%しか課税しない証券優遇税制は、アメリカ(25%)、フランス(30%)など、欧米と比べても低すぎます。証券優遇税制をただちに廃止し、税率を少なくとも20%に戻します。

――社会保険料を含めた大企業の負担は、ドイツやフランスの7〜8割にすぎません。景気が回復して大企業の利益があがった段階できちんともうけ相応の負担をさせるようにするのは当然です。大企業の法人税率を97年の水準まで段階的に引き上げます。

――政府が決めた贈与税の減税は、ひとにぎりの資産家だけを優遇するもので、景気対策としての効果も見込めません。この間に引き下げられた相続税の最高税率を元に戻し、大資産家に応分の負担を求めます。これは、格差是正につながるだけでなく、大資産家の消費や生前贈与による現役世代への資産移転を促進することになり、当面の贈与税も増収になるなど、景気対策としても有効です。

 以上のような改革を進めれば、大型公共事業削減(約2兆円)、軍事費削減(約1兆円)などの歳出の無駄の削減で5兆円以上、大企業の税率引上げ(約4兆円)、証券優遇税制廃止(約1兆円)、所得税の最高税率引上げ(約0.7兆円)などの税制改革によって7兆円以上、あわせて12兆円以上の財源が確保できます。これらの改革は、今後、数年間かけて段階的にすすめていきます。当面の緊急の景気対策のためには、特別会計の積立金など、いわゆる「埋蔵金」の活用もはかります。これによって、消費税増税に頼らずに、社会保障などの拡充をはかることが可能になります。

 さらに、将来必要になる社会保障などの財源は、“応能負担の原則――所得や資産など能力に応じた負担”の立場で確保していきます。国民のくらしを支える改革をすすめれば、内需主導の安定した経済成長への道が開かれます。そうしてこそ、新たな財源も作り出すことができます。国民のくらしをつぶしてしまうような増税で「財政の帳尻」を合わせようとしてもうまくいきません。「財政再建」を「理由」に、1997年に消費税増税などの9兆円負担増を押し付けたことによって、財政赤字がいっそう巨額に膨らんだ苦い教訓でも明らかです。

つづく→



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