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日本共産党

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赤旗

農林水産大臣 江藤 拓 殿

酪農・畜産問題に関する申し入れ

2024年12月17日 日本共産党国会議員団

 飼料用穀類や生産資材の価格の高止まりが続き、酪農、肉牛繁殖・肥育・養豚・養鶏ともに厳しい経営が長期化している。中でも酪農は、2022年の農業経営統計調査で年48万円の赤字となって以降、経営環境は改善せず、ことし9月の段階でも酪農経営の6割が赤字経営を強いられている。「働き盛り・中堅農家が続々離農」と報じられ、ついに指定生乳生産者団体の受託戸数が1万戸を割る事態となっている。

 にもかかわらず、政府は座して眺めるだけで何も対策をしようとしない。このまま手をこまねいていては、日本から畜産の灯が消えかねない。これ以上離農者を生まない緊急の対策が必要である。

 既に畜産業は、TPP11、日EU・EPA、日米貿易協定の発効による牛肉、豚肉、乳製品などの市場開放によって経営不安にさらされ、コロナ禍による消費の減退と価格低迷によって大きなダメージを受けてきた。

 地球温暖化、水不足と干ばつの頻発、人口増、土壌の劣化などにより、世界の食料危機が間近に迫っている。お金を出せばいくらでも食料や生産資材が買える時代は過ぎ去った。際限のない市場開放と輸入依存から決別し、食料主権を回復するとともに、大規模化偏重の農政から、家族経営をはじめとする多様な担い手が安心して生産に取り組める酪農・畜産政策に転換するべきである。

 そのためには、生産費の価格転嫁に期待するだけなく、政府による備蓄を組み合わせた効果的な価格政策に加え、一定以上の所得を保障する所得補償政策がどうしても必要である。

 また、鳥インフルエンザなど家畜伝染病や、災害などにより被害を受けた農家に対しては、自己責任を基礎とする従来の枠組みにとらわれない支援が強く求められている。

 よって、2025年度の畜産物価格及び関連対策の決定にあたり、以下を申し入れる。

1.配合飼料の高騰前の価格と現在の価格との差額を全額公費で補填する緊急支援を行うこと。配合飼料価格安定制度は、直近1年間の輸入価格の平均との差額を、農家と国・メーカーが積み立てた基金から補填する仕組みであり、現在のように継続して高騰する場合には補填が十分なものとならない。同制度の対象とならない自家配合の農家にも支援を行うこと。燃油をはじめ、乾燥牧草や藁、敷料、代用乳など、あらゆる生産資材も高騰している。経営の実情を正確につかみ、緊急の直接支援を行うこと。離農した農家の家畜や施設の承継を可能な限り図るための支援を行うこと。

2.大幅な経費の増大を踏まえ、加工原料乳生産者補給金および交付対象数量は、中小規模の経営も含め再生産が可能な水準とすること。計算式が生産コストの上昇を直接反映するものになっていないため、新たな政策を検討すること。集送乳調整金は、燃油価格をはじめ、全国の集送乳コストの高騰やドライバー不足等の状況、物流2024年問題を踏まえるとともに、指定生乳生産者団体が果たしている機能に見合った単価水準とすること。酪農経営が赤字に陥らないよう一定の所得を保障する恒久的な仕組みを導入すること。

3.畜産クラスター事業を利用し、資金の償還が迫っている農家に対して、据置き期間を延長するなど柔軟な対応を強く金融機関に求めること。同事業をはじめ各種支援措置は、離農を食い止め、小規模・家族経営を含めた多様な担い手が意欲と希望をもって生産に取り組めるよう、現状維持での更新・修繕でも支援可能とするなど、実情を踏まえた改善を図ること。

4.乳製品の過剰在庫により生産抑制を迫られていた酪農は、予想された通り、供給が不足する事態への危機感が広がっている。生産者が需給の緩和と逼迫の繰り返しに翻弄されることのないよう、乳製品の政府備蓄など、国が生乳の需給調整に責任を持つ仕組みの導入を検討すること。二股出荷を許す改正畜産経営安定法は、需給調整にも、価格転嫁にも逆行するため、改正前に戻すこと。国は、カレントアクセスによる乳製品の義務的全量輸入を停止すること。国は、生産者団体と乳業メーカーとの対等な価格交渉に責任を持つとともに、危機に対応し、期中でも機動的に交渉を開始できるよう主導すること。

5.夏の高温化が畜産の生産性を著しく低下させている。遮熱カーテン・屋根、散水装置、扇風機、冷房機などの暑熱対策への支援を図ること。受胎率の低下など暑熱による被害に対する経営支援制度を設けること。

6.国産の飼料・生産資材の増産と持続的な確保が図られるよう、生産・流通に対する恒久的な支援を強力に行うこと。輸入飼料に依存しない自給飼料型の酪農経営を支援するため、水田、畑、採草地への直接支払交付金を維持、拡充すること。

7.酪農経営安定化支援ヘルパー事業については、必要な予算を確保するとともに、酪農ヘルパーの人材確保、育成、定着に向けた支援をすること。

8.肉用子牛生産者補給金の保証基準価格については、経費の増大を反映し生産者が再生産可能な水準とすること。

9.牛マルキン・豚マルキン制度は、一部を生産者が負担するうえ、基準となる経費が過去数年間の平均を取るため、コスト増が継続する場合には飼料価格安定制度と同様の問題が生じる。国の全額負担により実質的な生産費の不足分を全て補填する制度に改善すること。

10.飼料用米の水田活用直接支払交付金を断固維持するとともに、一般品種への単価引き下げを撤回すること。

11.豚熱・高病原性鳥インフルエンザ対策については、農家の衛生管理への支援を拡充すること。特に国立感染症研究所の警告に従い、鳥インインフルエンザの感染経路としてオオクロバエ等の冬に活動するハエへの対策の強調・周知、支援を緊急に行うこと。埋却地の選定を農家まかせにせず、殺処分後には確実に営農再開ができるよう、殺処分手当金・特別手当金においては逸失利益まで含めて補償を行うこと。高ストレスの防疫作業にあたる自治体職員、自衛隊員、農協職員など、すべての従事者について、適切な作業環境の設定や、メンタルヘルスなどの体調管理が確実に行われるよう県への支援を行うこと。作業に見合う適切な金銭的手当の支給ができるよう国が措置すること。対応に当たる家畜保健衛生所および本省の人員・体制の増強を図ること。地域における事前研修・訓練の実施強化を図ること。

12.アニマルウェルフェアの推進を図るとともに、それに伴う経費増に対する十分な支援を行うこと。

 

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