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日本共産党

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赤旗

84、安保・基地・自衛隊

 戦争の準備ではなく平和の準備を!

〝日米同盟絶対〟の大軍拡やめ、憲法9条いかした平和外交に全力

2024年10月

ここまで来た、安保法制と「安保3文書」による「戦争国家」づくり

 今回の総選挙は、日本と東アジアにおける「戦争か平和か」がかかった、まさに歴史的な意義をもっています。「アメリカ言いなり」・「日米同盟絶対」の政治から抜け出し、独立した新しい日本をつくるかどうかも正面から問われる選挙です。

 安倍政権は2014年、歴代政府が憲法9条の下では許されないとしてきた集団的自衛権の行使を一片の閣議決定で認め、翌年にはそれにもとづく安保法制を強行するという歴史的暴挙を行いました。これにつづけて岸田政権は、2022年末にいわゆる「安保3文書」(「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」)を、これも閣議決定だけで策定しました。

 「安保3文書」は、集団的自衛権行使と同様に憲法違反とされてきた「敵基地攻撃」能力の保有や、5年間で43兆円もの巨額をつぎ込む大軍拡が柱となっています。その目的は、同文書自体が「戦後の我が国の安全保障政策を実践面から大きく転換するもの」と明記しているように、安倍政権が法制面で認めた集団的自衛権行使を、実践面で可能にする、つまり名実ともに行えるようにすることにあります。「専守防衛」という日本の「平和国家」としての理念を無きものにし、「戦争国家」づくりを新たなレベルに引き上げたのです。岸田政権は今年3月には、日英伊で共同開発・生産する次期戦闘機の第三国輸出を可能にする閣議決定まで行い、「国際紛争を助長しない」という憲法の平和理念をも180度転換させてしまいました。

 ➡各分野の政策「85、武器輸出」もごらんください。

 さらに石破首相は、「安保3文書」の路線を継承・推進するだけでなく、より危険な方向に日本を引きずり込もうとしています。同首相は総裁選で「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」の創設を繰り返しましたが、これは対中国を念頭に、アジアに集団的自衛権行使を本質とする多国間軍事同盟をつくることを意味します。さらに、米国との「核共有」や「非核三原則」の見直しまで主張しています。唯一の戦争被爆国の首相でありながら、アジア地域での核軍拡競争を際限なく激化させることなど絶対に許されません。

「敵基地攻撃」能力―長射程ミサイル配備で東アジアの主要都市が射程内に

 「安保3文書」は「敵基地攻撃」能力として、米国製巡航ミサイル・トマホーク(射程約1,600キロ)から国産の極超音速ミサイル(射程約3,000キロ)に至るまで、何種類もの長射程ミサイルの保有を明記。現在、政府・防衛省はその取得、開発、生産にこれでもかと前のめりになっています。トマホークや国産の12式地対艦ミサイル能力向上型の配備を当初予定から前倒しし、2025年度にも開始するとしています。長射程ミサイルを南西諸島はじめ全国各地に配備することにより、東アジア全域の主要都市を攻撃することができるようになってしまいます。これまで政府は、「敵基地攻撃」能力の保有について、「平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っていることは、憲法の主旨とするところではない」との立場をとってきました。現在の事態は、憲法違反であり、「専守防衛」や「他国に脅威を与えるような軍事大国とならない」という「平和国家」の理念を根本から破壊するものであることは明白です。

 政府はさらに、長射程ミサイルを保管するために、全国で新たに130棟もの大型弾薬庫を建設する計画も推進しています。このままでは日本がまさに〝ミサイル列島〟へと大変貌してしまいます。もし「有事」になれば、ミサイル発射基地や弾薬庫が格好の標的になってしまうでしょう。

「指揮統制」の一体化―米軍指揮下に組み込まれる自衛隊

 政府・防衛省は長射程ミサイルの保有・配備に躍起ですが、それだけでは「敵基地攻撃」を実際には行えません。なぜならば、ミサイルをどこに撃つのかを決めるための偵察情報をはじめとした運用能力が自衛隊には決定的に欠けているからです。そこで同時に推進しているのが、これも「安保3文書」に明記された、「統合防空ミサイル防衛(IAMD)」構想への参加です。米軍主導のIAMDは、あらゆるミサイル攻撃に対応するために、「敵基地攻撃」と「ミサイル防衛」をミックスしたもので、いわゆる先制攻撃を柱の一つにしています。米統合参謀本部ドクトリンは、最大限の戦闘能力を発揮するため、「米軍と同盟国の能力を統合する」としています。

 今年4月の日米首脳会談では、米軍と自衛隊の「シームレス(切れ目ない)な統合」をおこなうことで合意。7月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)では、その具体化として、米側が新たに在日米軍を再編して「統合軍司令部」を設置し、自衛隊が今年度中に創設する「統合作戦司令部」との相互運用性を強化することを決めました。米軍はIAMDの〝心臓部〟となる指揮統制システムとして「統合全領域指揮統制(JADC2)」も開発しており、これに自衛隊を組み込もうとしています。中谷防衛相は今年10月7日、来日した米インド太平洋軍のパパロ司令官と会談し、自衛隊と米軍の指揮・統制枠組みの連携強化を確認しました。

 政府は自衛隊が米軍の指揮下に入ることはないと根拠も示さず強弁しますが、装備の点でも情報の点でも圧倒的な能力を持つ米軍の指揮下に自衛隊が組み込まれることは火を見るよりあきらかです。日本が主権を放棄してまで、アメリカの戦争態勢に空前のレベルで一体化していく暴挙だといわなければなりません。

 政府・防衛省がこのまま長射程ミサイルの保有とIAMDへの参加をゴリ押しすればどのような事態が待っているでしょう。日本が攻められていないアメリカの先制攻撃の戦争に、「敵基地攻撃」能力を保持した自衛隊が、米軍の指揮下で参戦するという地獄絵図が現実味を帯びるのです。そうなれば、相手国からの猛反撃で日本全土が焦土と化すことが必至となってしまいます。軍事に対し軍事で構えれば、相手もさらなる軍事で応えることになります。そうなれば際限のない大軍拡競争をもたらすことになり、この東アジア地域は一触即発の事態に陥ってしまいます。偶発的、計算違いによる武力衝突が発生し、それが大規模な戦闘に発展してしまう危険性が高まるだけです。

 この危険を裏付けるように、政府は日本に対する軍事攻撃に備える対策も進めています。それが、各地の自衛隊基地司令部の地下化をはじめとする施設の「強靭化」で、全国283地区約2,000棟におよび、核攻撃などを受けても戦争を継続する態勢をつくろうとしているのです。沖縄県先島諸島では住民の「避難計画」まですすんでいます。これらはまさに「戦争の準備」としかいいようのない動きであり、およそ許されるものではありません。

「アメリカ言いなり」・「日米同盟絶対」による軍事一体化
 深化する日米共同訓練と、拡大するNATO加盟国など「同志国」との演習

 「安保3文書」は、集団的自衛権行使容認と同様、米政権の強い圧力のもと、「アメリカ言いなり」・「日米同盟絶対」の立場で策定されたものです。バイデン米政権は2022年10月発表の「国家安全保障戦略」で、対中国軍事包囲網づくりに同盟国を動員するための「統合抑止」をぶち上げ、自公政権が忠実にこれに従ったのです。27年度には軍事費を国内総生産(GDP)比で2%にまで増やそうとしていますが、これも米政権が強く求めてきたものです。この「アメリカ言いなり」・「日米同盟絶対」の実態は、エマニュエル駐日米大使の次の発言を見れば明らかです。

 「岸田政権は2年間で、70年来の(日本の安全保障)政策の隅々に手を入れ、根底から覆した。防衛費の国内総生産(GDP)比2%への増額、反撃能力(敵基地攻撃能力)保有、そのための(米国製巡行ミサイル、トマホークの)購入に踏み切った。防衛装備品の輸出にもめどをつけた。日本は今や米国にとって完全なる安全保障上のパートナーだ」(「産経新聞」2024年4月5日付)

 米軍との共同訓練の規模と内容も日米一体化の様相を急速に深めています。

 米海軍が主催して自衛隊も参加する世界最大規模の海上演習「環太平洋合同演習(リムパック)」では、2022年から集団的自衛権の行使を想定した合同演習が行われるようになりました。また陸上自衛隊と米海兵隊が昨年7、10月に開催した「レゾリュート・ドラゴン23」について、「防衛白書」2024年版はこう書いています。「本訓練は、指揮所演習と実動訓練からなり、北海道、九州から沖縄にかけて実施した、国内における米海兵隊との最大規模の訓練である。実動訓練では、指揮所演習の成果を踏まえつつ、日米の指揮機関による戦闘指導と連携し、陸自の地対艦誘導弾(SSM)、多連装ロケットシステム(MLRS)、米海兵隊の高機動ロケット砲システム(HIMARS)などを活用した対艦・対空戦闘や対着上陸戦闘、共同兵站・衛生支援など、島嶼防衛に必要な訓練を実施した」と。

 共同訓練は日米に限りません。「安保3文書」は、「統合抑止」戦略にもとづき、「同盟国・同志国間のネットワークを重層的に構築するとともに、それを拡大し、抑止力を強化」するとし、日米韓、日米豪等の枠組みを活用するだけでなく、北大西洋条約機構(NATO)加盟国などとの軍事協力強化を明記したのです。

 この方針の下、自衛隊と各国軍の共同訓練が激化の一途をたどっています。「東京」2024年9月19日付は一面トップで「共同訓練3倍超に」との記事を掲載。自衛隊と米軍との共同訓練が2014年度に25回だったものが、23年度は82回に、3カ国以上で行う多国間訓練を含めると、42回から142回に増えていると強調。さらにNATO加盟国との訓練が相次いでいると指摘しました。

 石破首相は「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」などといって危機感を煽り、「アジア版NATO」の創設を訴えるとともに、「米国の核シェア(共有)や核の持ち込みも具体的に検討せねばならない」などと主張しています。米国との「核共有」は、すでにNATO加盟国との間で行われており、自公政権の大軍拡路線は、まさにユーラシア大陸の東と西での軍事同盟の大増強の一翼を担うというグローバルな危険性を持つことも浮き彫りとなっています。

「日米同盟」「抑止力」の口実は破たん。暮らし破壊の〝亡国の道〟

 「安保3文書」による大軍拡の最大の口実となっているのが「日米同盟」強化であり、「抑止力」の強化です。「抑止力」の本質は、「軍事力による恐怖によって相手を思いとどまらせる」ことであり、日本が相手国に「恐怖」を与えれば、相手国も日本に「恐怖」を与えることで応えることになります。

 この「日米同盟」と「抑止力」の強化は、安保法制強行の際にも声高に叫ばれました。

 安倍元首相は、2015年5月26日の安保法制審議入りの際、「日本が危険にさらされたときは日米同盟が完全に機能するということを世界に発信することによって、紛争を未然に阻止する力、すなわち抑止力はさらに高まり、日本が攻撃を受ける可能性は一層なくなっていく」(衆院本会議)などと主張。成立後の17年2月15日には、「平和安全法制は、新ガイドラインの策定と相まって同盟関係を一層強固にし、抑止力を向上しました」(参院本会議)とまでいい切っていました。そうであれば、今頃は「日本が攻撃を受ける可能性」はなくなり、東アジアに平和が訪れているはずです。しかし実際には、「安保3文書」が「戦後最も厳しく複雑な安全保障環境」と強調しているように、軍事対軍事のエスカレーションは逆に激化しています。「日米同盟」「抑止力」強化論は完全に破たんしているのです。

 岸田政権が最初に編成した2022年度予算の軍事費は5.4兆円でしたが、今年8月に防衛省が発表した25年度の概算要求は8.5兆円超にまで膨れ上がりました。失われた30年による経済停滞や貧困な社会保障、教育、農業政策などで国民生活が逼迫しているなか、軍事費だけがこれだけ膨張することはありえないことです。「安保3文書」の計画では、軍事費は27年度には11兆円規模になりますが、「抑止力」論に固執するかぎり、それで〝打ち止め〟とはならない可能性が極めて高いといえます。自公政権による大軍拡は、国民生活を押しつぶす、まさに〝亡国の道〟といわなければなりません。

――憲法違反の安保法制を廃止し、立憲主義を取り戻します

――「安保3文書」を撤回させ、自公政治の大軍拡をストップさせます

南西諸島はじめ全国ですすむ自衛隊の基地強化を許さない

 日米一体の対中国軍事包囲網づくりにおいて、その〝最前線〟とされているのが南西諸島です。自衛隊基地・機能がこれでもかと強化されており、「軍事要塞化」に対し住民が怒りの声を上げています。

 同地域では、2019年に宮古島と奄美大島に、23年に石垣島に、24年には沖縄本島うるま市にそれぞれ陸上自衛隊の地対艦(空)ミサイル部隊が新たに配備されました。16年に「沿岸警備隊」が配備された与那国島にもミサイル部隊配備が計画されています。宮古島、奄美大島、石垣島、うるま市には、「安保3文書」にもとづき長射程ミサイルへと能力向上がはかられている12式地対艦ミサイルの現行型(射程約200キロ)がすでに配備されており、早ければ25年度中にも改良型(射程約1,000キロ)に置き換わる可能性が極めて高くなっています。

 米海兵隊はいま、南西諸島などの島しょに小規模な部隊を迅速に分散展開させ攻撃拠点をつくり、制海権を確保する「遠征前進基地作戦」(EABO)の態勢づくりを推進しており、現在、そのための日米共同訓練を重ねています。今年7月から8月にかけて実施された「レゾリュート・ドラゴン24」では、うるま市、宮古島、石垣島の各駐屯地で12式地対艦ミサイルの展開訓練が行われるなど、日米一体となった「敵基地攻撃」態勢構築が急ピッチで進んでいるのです。

 南西諸島における基地強化では、鹿児島県・馬毛島を自衛隊の訓練拠点化するための基地建設を強行していることも極めて重大です。同基地では、米空母艦載機の離着陸訓練(FCLP)の実施も企てています。これまで硫黄島で行われてきたFCLPの移転を求める米国政府の圧力受けて日米政府が合意したもので、米軍が同訓練を恒常的に行うほか、自衛隊による戦闘機の離着陸訓練やパラシュート降下訓練などを、年間を通じて実施しようとしています。文字通り、日米一体の基地強化です。

南西諸島以外でも、自衛隊機能・基地強化がすすんでいます

 防衛省は「敵基地攻撃」能力として米国製トマホーク・ミサイルを400発購入しましたが、それらは、海自が保有する8隻のイージス艦すべてに搭載するとしています。イージス艦は現在、横須賀基地と舞鶴基地に2隻ずつ、佐世保基地に4隻配備されており、これら3つの基地が、早ければ25年度中にも「敵基地攻撃ミサイルの出撃拠点」となろうとしています。

 大分県では、湯布院駐屯地に今年3月、九州・沖縄地方の地対艦ミサイル部隊を指揮下に置く「第2特科団」が発足し、さらに同地へのミサイル連隊の新編成も計画されています。これは、12式地対艦ミサイル(能力向上型)の配備を想定した部隊です。また同県の大分分屯地では、長射程ミサイルを保管するための大型弾薬庫9棟を建設する計画がすすんでいます。まさに大分が「一大ミサイル攻撃拠点」へと様変わりしようとしており、反対運動が広がっています。

 「安保3文書」にもとづく大型弾薬庫130棟建設をめぐっては、大分分屯地に加え、青森県大湊地方総監部ですでに一部着工済で、2025年度概算要求には京都府精華町の祝園分屯地での本体工事経費も盛り込まれました。

 宮崎県の新田原基地では、防衛省がこの間、沖縄の米軍普天間基地がもつ「緊急時」における米軍機受け入れ機能を移転するとして、米軍のための駐機場や庁舎に加え、危険な弾薬庫まで建設してきました。昨年3月には、一連の工事が完了したと町に報告しています。福岡県の築城基地も、2016年に米軍岩国基地の第一代替飛行場に指定されたのにつづき、18年10月には、「緊急時」の米軍機受け入れのため、米軍用駐機場や弾薬庫を新たに整備し、滑走路を延長することを日米で合意。現在、そのための工事がすすんでいます。

 広島県呉市では、防衛省が今年3月、昨年閉鎖した民間製鉄所跡地を一括購入し、「多機能な複合防衛拠点」にすると発表しました。武器の維持整備・製造、訓練、補給の三つを一体的に機能させるもので、既存の呉基地との合計面積はそれまでの2.6倍となる大拡張です。「有事」になれば兵たん拠点は真っ先に標的となり、ここでも反対運動が大きく広がっています。また呉基地では、25年3月に陸海空自衛隊共同の新部隊である「自衛隊海上輸送群」の司令部を設置し、当面は小中型船舶や機動舟艇合わせて10隻を配備することを企んでいます。同輸送群は、米軍・横浜ノースドックで運用開始された「小型揚陸艇部隊」との「連携」が必至といえます。

 佐賀県・佐賀空港では、千葉県木更津駐屯地に暫定配備されている陸上自衛隊のオスプレイ17機を本格配備するための工事が急ピッチで進んでいます。この陸自オスプレイは2018年に創設された〝日本版海兵隊〟と呼ばれる水陸機動団(長崎県佐世保市の相浦駐屯地)を南西諸島など島しょ部に輸送するためのものですが、今年3月には、長崎県大村市の竹松駐屯地で三つ目の水陸機動連隊が発足し、それまでの約2,400人から約3,300人体制へと格段に強化されました。

――米戦略と一体の自衛隊強化、「戦争国家」づくりに反対します。

米軍基地の大増強――日本全国の〝沖縄化〟が止まらない

 日本には戦後79年を経た2024年現在も、沖縄はじめ全土に130もの米軍基地(米軍専用76、自衛隊との共同使用54)が居座っています。沖縄のように人口密集地に外国軍の大部隊が我が物顔で占拠している国、首都圏に外国軍の巨大基地を抱えている国は世界中で日本しかありません。しかも在日米軍基地はアメリカの世界戦略の前線基地であり、駐留する部隊は、海兵遠征軍、空母打撃群、遠征打撃群、航空宇宙遠征軍など、その名の通り、世界中の紛争地に真っ先に殴り込むことが任務です。「日本を守る」ためのものではありません。いま、この基地が、安保法制と「安保3文書」の強行と軌を一にして大増強されています。沖縄を除く全国の状況はどうでしょう。

 ➡沖縄については各分野の政策「86、沖縄」をごらんください。

 首都東京の横田基地をめぐっては、米軍が自衛隊との「シームレスな統合」のために新設する「統合軍司令部」が、同基地にある在日米軍司令部を再編してつくられる可能性が高く、そうなれば基地機能は格段に強化されることになります。現在の在日米軍司令部の機能は、米軍基地の管理運営などに限られ、部隊の指揮権はハワイにあるインド太平洋軍司令部が握っています。今回の「統合軍司令部」新設は、この指揮権(一部)を移すものであり、日米一体の対中国軍事包囲網づくりの「心臓部」となります。

 また横田基地の強化の象徴となっているのが、2018年に配備が開始された米空軍CV22オスプレイの問題です。オスプレイは21年には6機体制となり、今後10機まで増やす計画です。横田基地所属のオスプレイは首都圏はもちろん全国で飛行訓練を行っており、そんななかで23年11月に発生したのが、鹿児島県・屋久島沖での墜落事故です。搭乗員8人全員が死亡しましたが、一歩間違えば、住民を巻き込む大惨事となるところでした。にもかかわらず、墜落の原因も解明されていない今年7月には飛行を再開、今後も全国を飛び回ることは間違いなく、いつ重大事故を引き起こしてもおかしくない状況となっています。

 横田基地では、昨年7月と今年4月に核兵器の搭載が可能な米空軍B52戦略爆撃機が着陸を強行しました。「安保3文書」策定以降、同機と航空自衛隊機との共同訓練が急増していることが背景にあるとみられます。「非核3原則」に照らしても絶対に許されない事態が今後もつづく危険性があります。米政府が2022年に発表した「核態勢見直し(NPR)」は、インド太平洋地域における戦略原潜や戦略爆撃機の任務増加など、核戦力の「可視化」を同盟国とともに進めると明記しています。

 空母打撃群の一大拠点である横須賀基地は、1973年10月に空母ミッドウェーが横須賀基地を母港にしてから半世紀以上が、2008年9月に初めて原子力空母ジョージ・ワシントンが配備されてから16年が経過しました。今年5月には、2015年から配備されていたロナルド・レーガンが交代のためアメリカに向け出港。今年後半にはジョージ・ワシントンが改良を加えたうえで再び配備される予定です。米本土以外に空母の母港があるのはこの横須賀だけです。

 21年8月には、横須賀を母港としない米原子力空母としては12年ぶりにカール・ビンソンが寄港。22年5月にもエーブラハム・リンカーンが寄港するなど、複数の空母の運用に不可欠な基地と化しています。同じく横須賀を母港としない強襲揚陸艦などの寄港も相次いでいます。

 横須賀基地の空母母港化を開始した当時、日本政府はその期間はおおむね3年と、市民や国民に説明していました。にもかかわらず半世紀以上にもわたって、空母の唯一の海外拠点となり、湾岸戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争など地球規模で戦争をおこなうための出撃拠点となっています。原子力空母の母港化以降は、つねに放射能被害の危険にもさらされつづけているのです。

 横浜港のど真ん中に陣取る横浜ノースドックでは今年2月8日、「小型揚陸艇部隊」の運用が始まりました。計画では当面、13隻・280人の体制になるとされます。同部隊新設は、岸田政権による「安保3文書」策定の直後、昨年1月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)の合意文書に明記されたもので、それは「同盟の戦力態勢の最適化」の文脈で位置付けられています。そして同時期に防衛省と外務省が作成した参考資料は、「小型揚陸艇部隊」の新設が、沖縄の米海兵隊の改編、つまり新たに「第12海兵沿岸連隊」を創設することとセットの計画であることを前面に出しています。昨年11月に創設された「第12海兵沿岸連隊」とは、米軍がすすめる新たな対中国軍事作戦である「遠征前進基地作戦(EABO)」を担う部隊です。横浜ノースドックの強化は、たんなる物資や兵力の輸送能力の強化などではなく、日米一体の戦争態勢構築の重要な一部であり、横浜を戦争拠点に変えるものに他なりません。

 岩国基地をめぐり政府は今年7月15日、山口県に対し、同基地に米海軍のCMV22オスプレイが新たに配備されると伝えました。日本国内初となります。昨年11月に屋久島沖で横田基地所属の米空軍CV22オスプレイが墜落し、その事故原因が明らかになっていないにもかかわらずです。

 岩国基地はこの間、米軍厚木基地の空母艦載機約60機が移駐し、東アジア最大の航空基地へと変貌しています。しかも同基地には、普天間基地所属のMV22オスプレイや横田基地のCV22オスプレイが訓練のために相次いで飛来しています。ただでさえ多くの住民がオスプレイの危険に対する不安を高めているのに、さらに配備まですることは絶対に許されません。

 CMV22オスプレイ配備伝達と同時に、政府は空母艦載機であるFA18スーパーホーネットの一部を、最新鋭ステルス戦闘機F35Cに切り替えることも明らかにしました。横須賀母港の原子力空母ドナルド・レーガンがジョージ・ワシントンと交代することにともなう措置とみられます。F35Cも国内初配備です。岩国基地では2017年にF35Bが配備されましたが、22年には追加配備が完了し、32機体制になっています。海兵隊が「遠征能力」を自慢する最新鋭ステルス戦闘機の大増強です。

 遠征打撃群の拠点である長崎県佐世保基地では、岩国基地にF35Bが配備されたことを受け、2019年に、それまでの強襲揚陸艦ワスプに代えて、同揚陸艦アメリカが配備されました。このアメリカは、「海兵隊のF35B統合打撃戦闘機の能力を最大限活用することを目的」(米海軍報道資料)につくられたものです。沖縄・普天間基地所属のMV22オスプレイも運用することから、佐世保・岩国・沖縄一体となった基地機能強化の一環です。

 佐世保基地には、「遠征洋上基地」と呼ばれる米海軍の大型艦艇「ミゲル・キース」(母港サイパン)も21年の就役以降、毎年のように寄港しています。同艦艇は米海兵隊の遠征・揚陸作戦を支援するためのもので、大型の飛行甲板に加え、航空機の整備施設、指揮・通信機能を備えていることから、「動く海上基地」の役割を果たしています。佐世保基地だけでなく岩国基地にも寄港しています。

 青森県三沢基地をめぐっては、米国防総省が今年7月、同基地に配備しているF16戦闘機36機を、ステルス戦闘機F35A48機に置き換えると発表しました。三沢基地にはすでに空自のF35Aが配備されていますが、米軍の配備は初めてです。2022年の「核態勢見直し(NPR)」は同機を核・非核両用機(DCA)と位置付けています。国防総省は「日米同盟や地域の抑止力を強化し、インド太平洋地域における平和と安定を高める」などと強調しています。F35はF16よりもエンジン音が大きいとされ、機数も大幅に増えることから、騒音や事故など住民への影響が強く懸念される事態ともなっています。

――安保法制・「安保3文書」の強行と軌を一にした米軍基地の強化に断固反対します

米軍のやりたい放題の根底にある日米地位協定

 米軍基地は、日本国民の生命と暮らしに重大な被害と苦痛を与え続けています。戦闘機・ヘリの墜落や米兵による殺人・強姦・放火・ひき逃げなど、米兵の犯罪、事件・事故は、日本の主権を踏みにじる大問題です。1952~2023年度の米軍による日本国内の事件・事故の件数は、政府が明らかにしているだけでも、21万4,417件(72年の施政権返還前の沖縄は含まれていない)、日本人死者数は1,101人に達しています。

 相次ぐ犯罪に加えて、異常な低空飛行訓練など米軍の横暴勝手の根底には、屈辱的な日米地位協定があります。米軍に対し、全国どこでも部隊を自由に配備し、国内法も無視して自由に訓練するなどの特権を与えている国は、世界でも日本だけです。沖縄県はこれまでに、米軍が駐留する欧州諸国を調査し、日本と比較した結果を発表しています。米軍に国内法が適用されない、米軍基地などへの立ち入り権がない、訓練・演習の規制ができない、航空機事故のさいの捜査権を行使しないなどの日本の実態は、どれも欧州諸国には見られないものであることが明らかとなっています。横田空域のような米軍が管理する広大な空域も、欧州諸国には存在しません。在日米軍のなかでも新型コロナウイルス感染が広がりましたが、政府が世界最多の感染者を出している米国からの入国を原則拒否する措置をとっていた下でも、米軍関係者は自由に出入国し、検疫も米軍任せとなってきました。このような植民地的特権を保障した日米地位協定が、1960年の締結以来、一度も改定されていないことは、まともな主権国家ではありえない異常極まることです。

 2018年7月には、全国知事会が「日米地位協定抜本見直し」を求める「提言」を全会一致で採択しています。「提言」は、「日米地位協定を抜本的に見直し、航空法や環境法令などの国内法を原則として米軍にも適用させることや、事件・事故時の自治体職員の迅速かつ円滑な立ち入りの保障などを明記すること」を求めています。独立国としての当然の要求であり、屈辱的な現状をただすために、地位協定の抜本改定がまったなしとなっています。

――日米地位協定を抜本的に改定し、世界に例のない米軍の特権をなくします

「戦争国家」づくりを中止し、憲法9条をいかした平和外交を

 「日米同盟」「抑止力」強化をスローガンにした軍事一辺倒の対応が東アジアにさらなる戦争の危険をもたらすものでしかない以上、解決の希望は、大軍拡を中止し、外交に本気で取り組むことでしか見えてきません。日本共産党が外交の役割を訴えると、軍拡論者は「理想論」「お花畑」などといって批判しますが、「抑止力」を口実にした軍事対応ですべてうまくいくと思っている人々の方が、よほどお花畑で無責任だといわなければなりません。

 私たちの目の前には、東南アジア諸国連合(ASEAN)が粘り強くとりくんできた平和の地域共同体づくりのリアルな経験があります。今年1月の日本共産党第29回大会決議は次のように呼びかけました。

 「相手に『恐怖』を与えるのでなく、『安心』を供与する外交こそ大切である。それを実践しているのが東南アジア諸国連合(ASEAN)の国ぐにであり、ASEANと協力して、東アジアを戦争の心配のない地域にする『外交ビジョン』を進めることこそ、憲法9条をもつ日本がなすべきことである」

 ASEANは、紛争の平和解決を定めた条約(1976年締結の東南アジア友好協力条約)を土台に、徹底した対話を積み重ね、かつて戦乱に覆われていたこの地域を平和の共同体に変えました。それだけではありません。いま、平和の流れを域外に広げ、日本、中国、アメリカを含む18カ国で構成される東アジアサミット(EAS)を活用・発展させ、東アジアの全体をASEANのような戦争の心配のない平和な地域にしようという大構想(2019年の首脳会議で採択した「ASEANインド太平洋構想」=AOIP)を推進しているのです。

 日本共産党大会決議を踏まえ、志位和夫議長は4月17日、国会内で21カ国の駐日大使・外交官の参加を得て、「東アジアの平和構築への提言――ASEANと協力して」と題する講演を行い、次の3点について、党の「外交ビジョン」をさらに豊かにしました。

①ASEANと協力して東アジア規模での平和の地域協力の枠組みを発展させる

②北東アジアの諸問題の外交的解決をはかり、東アジア平和共同体をめざす

③ガザ危機とウクライナ侵略――国連憲章・国際法にもとづく解決を

 この「外交ビジョン」の方向にこそ、絶対に戦争を起こさない希望があり、そしてこれへの共感は日米安保条約を支持している人も含めた超党派の人々の間でも大きく広がる可能性を持っているのではないでしょうか。

 ➡詳細は、各分野の政策「94、紛争の平和的解決へ」をごらんください。

――ASEANと協力し、憲法9条をいかした外交の力で東アジアに平和をつくります

日米安保条約を廃棄し、対等・平等・友好の日米関係を築く

 異常な「アメリカ言いなり」政治の根底には日米安保条約=日米軍事同盟があります。

 日米軍事同盟には、他の米国との軍事同盟にない特別の異常さがあります。世界では海外駐留の米軍が大きく減少しているのに、在日米軍だけが増加しています(1990年~2019年 世界=60万9千人⇒17万人。日本=4万6千人⇒5万7千人)。在日米軍は、海兵遠征軍、空母打撃群、遠征打撃群、航空宇宙遠征軍など、「日本防衛」とは関係のない、海外で戦争する「殴り込み部隊」ばかりです。世界に類のない「治外法権」が在日米軍に認められ、米軍の起こした事件・事故に日本政府の警察権は及ばず、日本の航空法を無視した危険な低空飛行訓練が全国で繰り返されています。

――国民多数の合意で、日米安保条約を、条約第10条の手続き(アメリカ政府への通告)によって廃棄し、アメリカ軍とその軍事基地を撤退させ、本当の独立国といえる日本をつくります。対等・平等の立場にもとづく日米友好条約を結び、日米友好の新時代を開きます。

――自衛隊については、憲法9条と自衛隊との矛盾を、憲法9条の完全実施(自衛隊の解消)に向かって、国民多数の合意で段階的に解決していきます。日本共産党が参加した民主的政権ができた場合にも、自衛隊をすぐになくすことはありません。民主的政権が、憲法9条を生かした平和外交によって、世界とアジアのあらゆる国ぐにと友好関係をつくり、日本をとりまく安全保障環境が平和的に成熟し、国民の圧倒的多数のなかで「もう自衛隊なしでも安心だ」という合意が生まれたときに、憲法9条の完全実施にむかっての本格的な措置にとりくみます。そこに至る過程(自衛隊と民主的政権が共存する時期)で、万が一、急迫不正の侵害を受けた時には、国民の命と人権、国の主権と独立を守るために、自衛隊を含めあらゆる手段を活用します。憲法9条を将来にわたって守り生かすことと、どんな場合でも国民の命を守り抜く―――その両方に対して政治の責任を果たすということが、日本共産党の立場です。

――日本共産党としては一貫して「自衛隊=違憲」論の立場をつらぬきますが、党が参加する民主的政権の対応としては、自衛隊と共存する時期は、理の必然として、「自衛隊=合憲」の立場をとります。「憲法違反の自衛隊を活用するというのは矛盾している」という議論がありますが、民主的政権としての憲法判断が「自衛隊=合憲」である以上、その政権が自衛隊を活用することに何の矛盾もありません。

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