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日本共産党

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赤旗

72、スポーツ

もっと思いっきりスポーツを楽しめる社会へ

   ―賃上げと労働時間の短縮がスポーツ環境を切り開く―

2024年10月

 「スポーツを楽しみたいけど、時間もお金もない」―。私たちがスポーツに親しむ環境は年々悪化しています。スポーツ基本法では「スポーツは人々の権利」とうたいながら、自公政権は条件整備を怠っているだけでなく、その環境を悪化させる政策を推進しています。同時にスポーツ活動を阻む壁は、私たちの自由な時間が奪われている現実にもあります。自公政権が行ってきた労働法制の規制緩和によって、異常な長時間労働と低賃金が拡大してきました。欧州諸国に比べ日本の労働時間は年300時間も長く、実質賃金はこの10年余で年間33万円も低下しています。そのもとで、とくに働く世代を中心にスポーツする余裕が奪われています。スポーツは健康増進や人との交流、豊かな人間性を育み、子どもたちの成長にも寄与しています。その観戦も生活の楽しみを広げます。だれもが健康で文化的な生活を営む権利があり、国はそれを保障する責務があります。日本共産党は、条件整備はもとより、賃上げと一体に労働時間の短縮(1日7時間、週35時間)を目指し、自由時間の拡大で思いっきりスポーツを楽しめる社会を目指します。

スポーツができる環境をつくります

(1)スポーツ庁のスポーツ実施率(週1回以上スポーツする人の割合)調査では、日本の半分の人がスポーツに親しんでいるとしています(※1)。深刻なのは20代~50代の働く世代の落ち込み(40%台)です。その世代のスポーツ実施の最大の阻害要因は「仕事や家事が忙しいから」で、これが約半数を占めています。「お金がないから」(11%)、「子どもに手がかかるから」(8%)という声も少なくありません。国は「第3期スポーツ基本計画」(2022年)で実施率を7割に高めるとしながら有効な対策を示すことができていません。

 一方、海外のスポーツ実施率はスウェーデン69%、オーストラリア81%、フランス82%、デンマーク95%などがいずれも日本の52%を上回っています(笹川スポーツ財団調査 ※2)。それらの国々に共通するのは労働時間が日本より年間約300時間も短く、ゆとりのある自由な時間があることです。働く時間の短縮こそがスポーツ環境を豊かにする〝大道〟です。日本共産党は「自由時間拡大推進法案」でスポーツが息づく人間らしい生活を目指します。

(※1)スポーツ庁が毎年、調査・公表しているスポーツ実施率は、そもそもスポーツの定義があいまいで、2017年からはアンケート項目の「ウオーキング」に「ぶらぶら歩き、一駅歩き」を含むことを記し、「階段昇降」の項目を新設するなどして、実施率全体が約10ポイント上昇するなど、「調査の厳密性」に限界があることが指摘されています。

(※2)スウェーデン、デンマークは2014年、フランスは2020年、オーストラリアは2021年

(2)「第3期スポーツ基本計画」には、それまであった「スポーツは人々の権利」の文言がありません。これを象徴するかのように公共スポーツ施設はこの25年間で約6万5千カ所余から5万1千カ所に2割以上も減っています。学校体育施設も1990年代初頭に比べ4万以上(現在12万カ所)も減少する危機的状況です。総務省が全国の自治体に公共施設の集約化を求め続け、スポーツ施設や学校などの統廃合を進めている結果です。これにたいし、スポーツ庁の年間の施設整備費は32億円(2024年度)にすぎず、減少の歯止めとなり得ていません。身近なところで使える施設はますますなくなっています。

 また、国の公的施設の運営を民間に委ねる施策によって、使用料の値上げがすすんでいます。東京体育館では昨年、休日の団体利用料を2倍以上も引き上げ、1日約27万円となり、スポーツ団体が大会を開くことが困難な状況です。自公政権はスポーツを「成長戦略」の手段におとしめ、企業のもうけを支える一方、新自由主義的な施策でスポーツ環境を悪化させ〝権利〟は風前のともしびです。

 私たちはスポーツの施設整備費を1980年代の年間100億円並み(※3)に引き上げ、国の補助率も3分の1から2分の1とし、自治体が建設しやすい条件を整え、身近な公共スポーツ施設の増設やランニングコースの設置などに力を尽くします。また、公共施設の利用者や団体の声を行政に反映させる仕組みをつくりながら、利用料の適正化や上限規制、指導員の増員を図っていきます。

(※3)1982年は118億円

(3)パリ五輪・パラリンピックでは、多くの選手が活躍しました。トップ選手は競技を通じて人間の可能性を追求し、その魅力を広げる社会的な存在です。それだけに競技力向上には選手の人権と自主性を保障し、国の安定的な財政支援が必要です。しかし、現在の選手強化費(157億円)を含めた国のスポーツ予算の全体は361億円にすぎません。ドイツ458億円、オーストラリア663億円、フランス1,164億円(笹川スポーツ財団23年調査)などを大きく下回っています。国には、私たちの生涯スポーツ予算も含めた大幅な予算の増額を求めます。同時に国はスポーツ団体にたいし、お金を出すが口は出さないという基本原則が求められます。国がスポーツ組織にたいし、ガバナンスの確立やコンプライアンスの順守を求めることは当然ながら、組織の自主性や自立性を尊重したあり方が求められます。

(4)1年に1度もスポーツをしない障害者は4割(健常者は18%)にも及びます。スポーツができる環境が整っていないことが大きな要因です。地域の拠点となる「障害者スポーツセンター」は全国で19都道府県29施設にとどまっています。国には早急に全都道府県での設置を促す施策を求めます。また、障害者が利用できる多機能型スポーツ施設の増設、障害者スポーツには欠かせない指導者・ガイド・介添え者の育成、配置促進などに財政的な支援をするなど、身近なところでスポーツができる環境づくりを求めていきます。

環境の持続可能性をもとにスポーツの発展を目指します

(1)地球温暖化によりスポーツ活動が脅かされています。酷暑で熱中症の危険が高まり、雪不足によりスキーなどの冬のスポーツの存続も危ぶまれています。夏の高校野球ではけいれんを引き起こす選手が相次ぎ、小学校の屋外プールは「熱中症の危険から中止」という事態にまでなっています。競技団体や地域により安全な対策が求められますが、同時にCO2の大幅削減で温暖化を食い止めることはスポーツ活動にとっても喫緊の課題です。「気候危機を打開する日本共産党の2030戦略」の実施を求めます。
気候危機打開の日本共産党の2030戦略(2021年9月1日)(https://www.jcp.or.jp/web_policy/2021/09/post-882.html)

(2)自然と共生するスポーツのため環境アセスメントを順守し、環境破壊を許しません。山岳自然を破壊するメガソーラーや大型風力発電に対し、環境の規制を強化し、乱開発を許しません。南アルプスにトンネルをあけ、生態系に重大な影響を及ぼすリニア中央新幹線の建設に反対します。

(3)山岳や海の遭難救助ヘリの増設とパイロット養成の充実、登山リーダー養成をはかる国立登山研究所の機能拡充をはかります。遭難救助や自然保護の拠点となる山小屋への公的支援をすすめます。管理者不在のまま現在にいたっている多くの登山道は、これまで山小屋や山岳会が自主的に整備を担ってきました。しかし、それが難しくなっています。管理者を置いて適切に維持管理するための施策、予算措置を国に求めます。

(4)東京・神宮外苑の再開発では、多くの樹木伐採など都心の貴重な自然が破壊されるとともに、都民に親しまれる草野球場、フットサル場など市民スポーツ施設が消滅します。一方、190m級の巨大ビル建設が計画され、都民の反対の声が広がっています。計画の見直しを求めます。

競技者の人権を守り、ジェンダー平等を実現します

暴力やハラスメントをなくします――日本のスポーツ界が発した「暴力行為根絶宣言」から10年余りが経過しました。スポーツに暴力はあってはならず、どんなハラスメントも許されません。各競技団体を中心にその根絶のための努力は続いていますが、いまだ暴力的な指導や封建的な上下関係、虐待やいじめなどが根深く存在しています。これらを背景とする重大事故も起きています。海外では、暴力やハラスメントの対応を統一的かつ実効的に行い、啓発活動や指導者への教育活動など総合的に対処する「セーフスポーツセンター」を国として設立し対応しています。日本でも同センター設立の研究・検討を働きかけていきます。

ジェンダー平等を目指し、LGBTQ+が参加できる環境づくりを――スポーツ界における男女格差は依然大きなものがあります。女性がプレーする環境や報酬にはまだまだ男子と大きな開きがあり、競技団体の役員の女性比率も低く、指導者の数も限られています。スポーツ団体自身の努力や改善が求められるとともに、国としてこれを支援する施策が求められます。

 「体育・スポーツにおける多様な性のあり方ガイドライン」(日本スポーツ協会発行)にあるように、LGBTQ+などの人々がスポーツ活動をする上で、指導者やチームメートの無理解など、いまだ多くの課題があります。またトランスジェンダー女性の大会の参加資格のあり方など、スポーツ界が全体として人権をきちんと位置付け解決が求められる状況もあります。一方、自民党はトランスジェンダー女性の女子競技への参加をめぐり、政治的な介入・利用や人権を不当に侵害する攻撃を行っています。私たちはこうした介入に反対し、国際オリンピック委員会(IOC)が打ち出しているスポーツ団体の科学的かつ人権尊重の立場での解決を支持します。

野球くじの創設、「スポーツ賭博」の解禁に反対します

 自民党は国による予算の充実に力を尽くさず、「スポーツ振興くじ」の拡大をすすめてきました。それは健全なスポーツを汚染し、破壊する道です。「スポーツ振興くじ」は2001年の創設以来、最高賞金を12億円まで引き上げる一方、当せん確率が競馬並みに上がるくじを加えるなど、その販路拡大に躍起となっています。その対象もJリーグだけでなくBリーグにも広げ、自民党は来年にもプロ野球に拡大すると公言しています。そのためスポーツ基本法の改悪も狙っています。背景にあるのは、「部活動の地域移行」の予算確保です。それはスポーツ庁の「検討会議」の提言に盛り込まれています。教育にかける予算をギャンブルで捻出しようとする本末転倒な発想は許されません。

 同時に見過ごせないのは「スポーツ賭博」解禁の動きです。自民党や経産省、スポーツ庁は数年前から研究会を立ち上げています。米国では2018年の解禁以来、民間のとばく会社が競って販路拡大すると同時に、ギャンブル依存症が急増し深刻な社会問題を引き起こしています。米プロバスケットボール協会(NBA)で選手や監督を脅す事件が報告され、米大リーグの現役選手が試合に賭けて永久追放(24年)になるなど、スポーツを汚し、健全なあり方が歪められています。今春、大リーグの通訳水原一平氏が逮捕されましたが、スポーツ賭博の解禁が「違法賭博」を助長するなどの社会的な悪影響は計り知れません。日本共産党はスポーツ振興くじの創設以来、その導入に反対してきました。野球くじの創設、スポーツ賭博の解禁に断固反対します。

部活動の原点に立ち返った改革をすすめます

 ➡各分野の政策「67、教育」のうち「部活動――子どもを真ん中に部活動のあり方を検討し、必要な予算と体制を」をごらんください。

五輪・パラリンピックの検証と国スポの改革を

 東京五輪・パラリンピック以来、巨大スポーツイベントの開催には、国民による厳しい批判の目が注がれています。そもそも東京大会は、開催に反対する世論に耳を貸さなかったことに加え、肥大化した大会の現状や膨大な経費、商業主義優先の運営、IOCの非民主的なあり方などが批判の的となりました。大会後に組織委員会での汚職・談合事件が発覚し、いまだ解明は尽くされていません。昨年、札幌冬季五輪招致を「停止」に追い込んだのは、市民・国民の五輪にたいする強い不信感でした。これらを払拭するのは、東京大会の根本にメスを入れた深い検証でしかありません。国や東京都、スポーツ界が市民、国民の声を十分に反映させながら、汚職・談合事件を踏まえたさらなる総括が必要です。すべての情報を開示し徹底した解明を求めます。それは五輪が抱えるさまざまなゆがみを乗り越え、五輪憲章がうたう平和や人権、フェアなあり方に転換を果たす大きな一歩となります。同時にこれが五輪運動に貢献する東京大会のレガシーになると考えます。

 戦争が暗い影を落とす中、パリ五輪・パラリンピックが開かれ、選手による平和を求める発信が数多く見られました。五輪は文化、国籍などの差異を超え、友情や連帯感、相互理解を深めます。スポーツは平和を求め、平和とともにあります。日本共産党はスポーツの持つこの平和の精神が、日本や世界に広がることに努めます。

 国民スポーツ大会には今春、全国知事会から「財政的な負担が重すぎる」として「見直し」の強い要望が出されました。ここにも大会の肥大化、経費負担の重さがあり、国の補助金(約5億円)の少なさがあります。ほとんどの大会で開催地が優勝するいびつな構造の問題もあります。スポーツ振興を図るために国スポがどうあるべきかを検証しつつ、簡素で持続可能な大会を目指す抜本的な改革を求めます。 

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