70、高等教育、大学改革
大学の危機打開へ、教育研究の多様な発展を支え、学費高騰から無償化に転換します
2024年10月
高等教育は、市民、とりわけ若者の知的探求の自由、知る権利、職業選択の自由を含めた学び成長する権利を満たすための社会の営みです。
戦後の経済成長、学術・文化、科学・技術の発展を背景として、国民の高等教育への要求は高まり、大学の進学率は5割を超え、専門学校を含む高等教育の進学率は8割に達しています。多様な人々が高度に発達した社会を担いうるように高等教育を保障する段階(ユニバーサル段階)に達しつつあります。
しかし、学費高騰と保護者の所得減少の同時進行により、学費負担は限界に達しています。保護者の実質賃金は1996年から74万円も減少しています。アメリカではアルバイト時間がゼロという学生は7割ですが、日本では学生の8割が恒常的なアルバイトに従事しています。3人に1人が貸与制奨学金を借り、平均で300万円という借金を背負って社会に出ています。その総額は10兆円にも上ります。
いま、政治に求められているのは、憲法が定める教育を受ける権利を高等教育まで広く国民に保障できるように、高等教育機関の基盤をしっかりと支えるとともに、学費高騰から無償化にかじを切りかえることです。
学費値上げから無償化をめざす政治への転換を
2012年、当時の民主党政権は、国際人権規約の高等教育無償化条項の留保を撤回し、学費無償化を国際公約しました。
ところが、私立大学では無償化どころか、学費が高騰しています。国立大学でも東京大学など授業料値上げを決める大学が広がりつつあります。それは、政権に復帰した自民党が、「高等教育無償化」を国際人権規約にもとづいて実現するのではなく、消費税増税の口実に使い、肝心の大学の基盤的な予算を削減しているからです。
安倍晋三政権が高等教育無償化策として2020年度から導入した修学支援制度(低所得世帯に限定して授業料減免と給付奨学金を給付)は、あまりに要件が厳しく、学生の1割にしか支給されていません(2021年度実績)。この制度の創設の財源として、消費税増税が強行されたために、ほとんどの学生には負担増となっています。しかも、消費税増税で生み出した財源(4兆円)で「無償化」に7,600億円を使うとしていましたが、実際に支給されているのはその3分の1にとどまっています。高等教育無償化の財源を余らせ、軍事費などに流用しています。
一方、国立大学の運営費交付金は、2004年の法人化後、1,631億円、学生・院生一人当たり28万円も削減し、私立大学への国庫助成も経常費のたった1割に抑制してきました。
物価高騰や人事院勧告をうけての賃上げなどにより、国立大学からは「もう限界です」(国立大学協会声明、6月7日)という悲鳴が上がっています。にもかかわらず、自公政権はまともに予算を増やすことさえしてきませんでした。
東京大学が授業料の値上げを検討していると報道された直後の5月23日、自民党の教育・人材力強化調査会は「教育コストの増加をふまえて国立大学の授業料の適正化」を提言し、学費値上げを後押ししています。
「高等教育無償化」を口実にして国民に消費税増税を押し付け、無償化の財源が余っているのに、大学予算を削減し、さらに学費高騰で学生に負担増を押し付けようとする自民党政治は、今すぐ転換しなければなりません。
日本共産党はアピール「学費値上げを許さず、値下げにふみ出し、『学費ゼロ』の社会にむけて力を合わせよう」を発表し、国民に共同を呼びかけています。
➡アピール「学費値上げを許さず、値下げにふみ出し、『学費ゼロ』の社会にむけて力を合わせよう」(2024年10月2日)(https://www.jcp.or.jp/web_policy/2024/10/2024gakuhi-ap.html)
少子化対応――大学淘汰ではなく地方・中小大学支援の強化を
世界から見て異常な高学費は、日本の高等教育の土台を掘り崩すまでにいたっています。
文部科学省は、急速な少子化により2040年以降の大学進学者数は現在より2割減ると推計し、中規模の大学が1年間で90校程度、減少していくとして、「高等教育の全体『規模』の適正化」が必要だとしています。大学などの「再編・統合、縮小・撤退の議論は避けることができない」と強調し、個々の大学に少子化対応の責任を押し付けています。
しかし、急速な少子化の原因の一つは、重い教育費負担にあります。夫婦が理想の子ども数を持たない理由として最も多いのは「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」です(「こども未来戦略」)。こうした重い教育費負担をつくりだしたのは自民党政治です。その責任を自覚し、是正をはからなければ、少子化・人口減少は止まりません。
学費無償化は、急速な少子化・人口減少のもとで、日本社会が持続的に発展するために不可欠な課題となっています。国民が少子化対策として求めているのは学費無償化です(「日経」6月6日付)。無償化は経済的理由であきらめていた若者、とりわけ進学率の低い地方の若者の進学機会を保障し、大学院進学者や社会人の進学者を増やします。少子化をすべての国民の高等教育の機会を保障するチャンスととらえ、学費無償化にかじを切ることこそが求められています。
ところが、文部科学省は、少子化による定員割れで大学の経営が悪化すると、教育の「質」を維持できないからと縮小・撤退を促しています。実際に、定員割れ大学に対する経常費助成を減額するペナルティーを強化し、地方や中小の私立大学をつぶそうとしています。
しかし、私立大学の経営悪化の最大の原因は、「経常費の2分の1助成」という国会決議を踏みにじって、国庫助成を経常費の1割にとどめていることにあります。私学助成を抜本的に拡充すれば、定員割れでも、経営を安定させ、少人数教育により教育の質を向上させることができます。大学淘汰ではなく地方・中小大学支援を強化すべきです。
明治初期に誕生したわが国の大学は、150年近くの年月をかけて、国民共有の知的財産として発展してきました。その個性と多様性は日本社会の中で育まれたものであり、かけがえのない存在です。
自民党政治は、受益者負担主義により、高等教育の量的拡大を図ってきましたが、その重い学費負担が少子化をまねき、高等教育の土台を掘り崩しています。大学淘汰ありきでは、地方・中小の大学がつぶされ、国民の共有財産が失われてしまいかねません。
そもそも、日本はGDP(国内総生産)世界4位であるにもかかわらず、高等教育予算があまりに貧困です。高等教育機関に対する公財政支出は、GDP比でOECD加盟国の中でワースト2位です。その一方で、私費負担率はOECD加盟国の中で3位の高さにあります。
経済力にふさわしく大学予算を拡充し、憲法の「教育を受ける権利」「学問の自由」の全面的な保障を根本にすえ、大学の自主的創造的な発展をしっかり支える政治に転換することは急務です。
日本共産党は提案します
学費をただちに半額にし、高等教育を充実させます
大学・専門学校の授業料をすみやかに半額にし、段階的に無償化する―――無償化にむけた学費負担軽減の第一歩として、大学予算を増やして、入学金を廃止し、大学・専門学校の授業料をすみやかに半額にし、段階的に無償化をはかり、誰もがお金の心配なく学べるようにします。社会人入学を促進し、大学を市民に開かれたものとします。
"学生ローン"でなく、本格的な給付奨学金を75万人に―――若者の人生の門出で、「奨学金」という名の多額の借金を背負わせる社会をあらためます。「自宅4万円、自宅外8万円」の給付奨学金を75万人(現在の奨学金利用者の半数)が利用できる制度をつくり、拡充していきます。すべての奨学金を無利子にします。奨学金返済が困難になった場合の減免制度を作ります。
21世紀の日本を担う豊かな社会人へと成長できる大学教育に―――変化する世界の中で、若い世代が新しい知識や技術、多様な価値観を身につけ、自らの将来を築いていくためにも、日本社会の発展にとっても、大学教育の充実はきわめて重要になっています。しかし、自民党政治のもとで、各大学では国の競争的資金を獲得できるような改革が優先され、良識豊かな社会人を育てる根幹となる教養教育が軽視されてきました。学生の8割近くを擁する私立大学などでは、マスプロ教育が主流となっており、学生が受け身でなく主体的に学ぶための教育体制としては不十分です。教育体制を抜本的に充実させる必要があります。
(1)人間形成や学問の基礎をつちかう教養教育を再構築します。学力に応じたわかりやすく学びがいある授業づくりへ、大学の改善努力を励ます支援策を強めます。
(2)少人数教育の本格的な導入や勉学条件の充実のために、大学予算を増やして教員の増員をはかり、非常勤講師の劣悪な待遇を改善します。
(3)私立大学がはたしている公共的な役割をさらに高めるために、大学の設置基準の緩和を見直し、設置審査を厳正な基準で行うように改善します。
(4)政府が「大学入学共通テスト」で、導入しようとした民間の英語試験や記述式採点の民間委託については、教育関係者や受験生からの反対で断念に追い込まれました。政府は、個別入試(一般選抜)における英語資格・検定試験の活用の押し付けはやめるべきです。「公正・公平」の原点にたって、入試改革を根本から見直します。
留学生に魅力ある環境を整備する―――留学生が安心して勉学できるよう、低廉な宿舎の確保、奨学金の拡充、日本語教育の充実、就職支援などの体制を国の責任で整備します。
大学の基盤的経費を増額し、「学問の自由」を保障します
国立大学の運営費交付金の傾斜配分を廃止し、基盤的経費を増額する―――国立大学の運営に必要な経費をささえる運営費交付金は、法人化された2004年度に比べ、年額で1,631億円も減額されています。これをただちに回復し、増額をはかります。「実績」に応じた傾斜配分は廃止します。各大学の標準的な経費をもとに積算し、教育・研究費や人件費などを十分に確保するしくみに変更します。地方大学や文科系、教員養成系大学など財政力の弱い大学に厚く配分するなど大学間格差を是正する調整機能を持ったしくみにします。国立大学法人の施設整備補助金を増やし、老朽施設を改修します。
私立大学への「公費負担」原則を確立し、「経常費の2分の1助成」を実現する―――教員や学生数に基づき算定されている私立大学経常費補助(一般補助)は、算定額が予算額を上回る場合、予算内に収めるために「圧縮率」により調整され、減額されます。2023年度の算定額は約4,600億円でしたが56.9%に圧縮され、1,984億円も減額されています。今こそ、大学生の8割近くを擁する私立大学がはたす公共的役割にふさわしく、私学への国の支援を抜本的に強める必要があります。学生の学ぶ権利を保障する高等教育機関としては、国立と私立に差異はありません。私立大学にも国公立大学と同様に公費を支出する「公費負担」の原則を確立するべきです。その第一歩として、公費負担によって入学金を廃止し、授業料を半額化します。
さらに「私立大学の経常費の2分の1を国庫補助」(1975年国会決議)をすみやかに実現します。「定員割れ」の大学に国庫助成を減額・不交付する措置は直ちに廃止します。中小私大、地方私大には増額配分し、定員確保の努力を支援する助成事業を私学の自主性を尊重しつつ抜本的に拡充するなど、私立大学の二極化の是正をめざします。「経営困難」法人への指導と称して私立大学の運営に国が不当に介入することに反対します。
公立大学への国の財政支援を強める―――公立大学は、学術の進歩に貢献し、住民要求にこたえた高等教育を行い、地域の文化、経済の発展に寄与しています。地方交付税の大学経費を引き上げるなど、国の財政支援を強めます。
国が各大学の改革を誘導する資金を廃止し、独立した配分機関を確立する―――国際卓越研究大学制度は、これまでにない規模の「選択と集中」で、新たな格差と分断をもたらし、「学術の中心」(学校教育法)であるべき大学を「稼ぐ大学」に変質させるものであり、廃止します。「指定国立大学」制度、「私立大学等改革総合支援事業」など、一部の大学・大学院に対して多額の資金を投入し、文科省の関与も強めるような予算配分のあり方を見直します。大学に対する競争的な資金については、政府の裁量で配分する仕組みではなく、大学関係者、学術関係者を中心にした独立した機関を確立し、審査内容の公開をはかるとともに、公正な評価にもとづいて配分するようにします。
大学附属病院の基盤整備をすすめる―――大学付属病院は、新型コロナウイルス感染症の重症患者の受け入れ・治療 をはじめ、ワクチン開発や新たな検査法の確立などにかかわる研究と人材育成を担うなど重要な役割を果たしています。高度医療の提供と医療発展のための研究・教育研修の実施、研究基盤設備・重症対応機器の整備、医療機器の継続的な更新、病院機能の維持・向上などのために財政措置を講じます。国立大学附属病院への交付金を法人化前の水準に直ちに戻すとともに、法人化の際に背負った病院債務を軽減します。施設整備に必要な資金は、国が責任をもって確保する体制を維持します。
腰を据えて教育研究ができるよう雇用を安定化
➡各分野の政策「69、学術、科学・技術」をごらんください。
"自治と民主主義"を保障するルールを確立し、教育無償化計画を策定します
高等教育無償化を含めた高等教育振興計画を策定する―――そもそも大学は「学術の中心」であり、わが国の知的基盤として社会の知的・文化的な発展、国民生活の質の向上や地域経済などに大きな役割を果たしています。とりわけ大学が担っている基礎研究は、学術全体が発展する根幹となっています。大学が「学術の中心」であってこそ、市民、若者の学び成長する権利を満たすことができます。
ところが、中央教育審議会答申「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」(2018年)は、2040年に求められる人材像を描き、そうした人材を養成するための学位プログラムを中心とした大学制度への転換をめざしています。18歳人口の減少にあわせて高等教育機関の規模を抑制・縮小し、国公立大学の枠を超えた統廃合に導くものとなっています。
「グランドデザイン」は「学術の中心」としての大学のあり方を歪める危険があると同時に、異常な高学費が、市民、若者の高等教育機関へのアクセスを阻んでいる現状を不問にし、国際人権規約が定めた高等教育の段階的無償化を実現する見通しを示していません。「グランドデザイン」は廃棄し、段階的無償化で、大学を市民に開かれた高等教育機関へと発展させる高等教育振興計画を、大学関係者の合議で策定します。
「大学の自治」を尊重するルールを確立する―――世界で形成されてきた「大学改革の原則」は、「支援すれども統制せず(サポート・バット・ノットコントロール)」であり、「大学の自治」を尊重して大学への財政支援を行うことです。国公私立の違いを問わず、大学に資金を提供する側と、教育・研究をになう大学との関係を律する基本的なルールとして、また、大学運営の原則として確立します。大学評価は、第三者機関により各大学の自主的な改革に資するために行われるべきであり、政府による改革誘導に利用する制度としては廃止します。また、大学における教育研究をはじめ財務・人事・組織などの運営、学長の選考などは、教授会の審議を基礎にし、すべての教員・職員・院生・学生など大学構成員の意思を尊重して決定できるように学校教育法などの法制度を改正します。
国立大学法人制度を抜本的に見直す―――多くの大学関係者の「教育研究の土台を壊す」という反対を押し切って、自公政権が国立大学を法人化してから20年がたちました。懸念は現実のものとなり、「法人化は失敗した」という評価はメディアでも一致しています。国立大学法人法は、2021年の改定で、国の監視体制・監査機能が強化され、画一的な中期目標計画の押し付けが強まっています。さらに2023年10月の改定により大規模大学に合議体の設置を押し付け、政権の意に沿った少数者が大学を支配・運営する道を開きました。法人化がもたらした現状と問題点を、これまでの改定も含めて検証し、大学関係者の意見を尊重して、法改正を含む制度の抜本的見直しを行います。
大学がどのような目標・計画をたてるかは、国が決定するのではなく、大学の自主性にゆだね、国に対しては届出制とします。国が大学の業績を評価して予算を削減する制度を廃止します。
私立大学の公共性と教育研究の質をさらに高める改革をすすめます――――私学経営者の教学への不当な介入を許さない制度的な保障、財務資料の公表促進など学校法人改革をすすめます。まともな教育条件を保障できない株式会社立大学の特区などの特例は廃止し、私立大学(学校法人)として再出発できる環境を整備します。安易な廃校による教職員の解雇を防止するため、私学の「募集停止」も報告事項にせず設置認可の審査の対象にします。
国公立大学の一方的な統合に反対する―――国公立大学、法人の再編・統合に一律に反対するものではありませんが、教育・研究を充実させる見地に立って、学内合意を基礎にした大学間の自主的な話し合いと、地域の意見を尊重することを前提とし、「一県一国立大学」の原則を守ってすすめるべきです。教員養成系大学・学部の県をまたいだ統廃合には反対します。大阪維新の府・市政によって大阪市立大学・府立大学が統合し、大阪公立大学が発足しました。研究費の削減など問題が噴出しています。大学リストラではなく、運営費交付金を増額し、教育研究条件を充実させることを求めます。
学術・高等教育分野でのジェンダー平等を推進します
学術・高等教育分野でのジェンダー平等を推進することは、日本社会全体のジェンダー平等を推進し、個人の尊厳が大切にされる社会をめざすうえでも、学術研究の発展を保障するうえでも大事な課題です。先進国では、男性より女性の方が、高等教育就学率が高い傾向にあります。しかし、日本は大学の進学率は男性が60.7%、女性が54.5%、大学院進学率は男性が16.04%、女性7.35%と、女性の進学率は年々伸びているものの、男性との格差は縮まりません(2023年度「学校基本調査」)。これが日本のジェンダーギャップ指数を大きく押し下げる一因となっています。また、日本の研究者に占める女性の割合が17.5%とOECD加盟国で最下位に陥っていることにもつながっています。大学では昇格するにつれて女性の割合が低くなる一方、専業非常勤講師のような不安定雇用職では女性の割合が5割を超えるなど、女性研究者は男性に比して劣悪な地位におかれています。家事・育児・介護などケアワークの大部分を女性が担っていること、出産・育児期間後の研究への復帰が困難なこと、採用・昇進などで男性が優先されやすい評価体制など、女性にとって不利な条件は数多くあります。これらを解決し、大学・研究機関においてジェンダー平等と男女共同参画を抜本的に推進します。そのために、以下の政策を推進します。
(1)女性の高等教育進学率を引き上げるために、各大学では、女性の進学率が低い分野の入試に「女子枠」を設けるなどのポジティブ・アクションが取り組まれています。そうした取り組みが国民的な合意を得ながら広がるように支援します。医科大学での女子受験生の減点が問題になったことをふまえ、入試などでの女性差別を根絶します。女子学生・大学院生が生活や勉学・研究をしやすい環境整備を積極的に支援します。
(2)大学・研究機関の中で、ジェンダー平等や性差別についての教育、研修、啓もう活動を促し、性差に対するアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)を払拭していきます。女性差別撤廃条約が求める「家庭及び子の養育を男女及び社会全体が担うべき」という考え・意識をひろげます。
(3)大学・研究機関が、教員、研究員、職員の採用、昇進にあたって女性の比率を高め、機関運営における意思決定過程に女性参画を拡大するなど、目標の設定、達成度の公開をふくめていっそう強めることを奨励・支援します。男女格差是正のための暫定的措置(ポジティブ・アクション又はアファーマティブ・アクション)の活用、ワーク・ライフ・バランスのとれた就業形態を推奨し、女性研究者のキャリア形成を支援するプログラムの形成も抜本的に増やします。
(4)大学・研究機関が、性差別やセクシャルハラスメント・アカデミックハラスメント・パワーハラスメントなどの人権侵害を防止する専門家を専任で配置し、苦情をうけた場合の公正な対応と懲戒の手続きを確立するよう支援を強めます。被害者が安全に通報でき、安心してカウンセリングを受けられる制度を確保できるようにします。
(5)大学・研究機関の中で、女性差別やLGBTQ+(性的マイノリティ)差別をなくし、個人の尊厳とSOGI(性的指向・性自認)に関する多様性を尊重する環境をつくります。女性研究者へのメンタル面のサポート体制、LGBTQ+への相談・支援の態勢(就職活動支援や性についての専門相談員の配置など)をつくるとりくみを支援します。
(6)出産、育児・介護などのケアワークにあたる研究者にたいする業績評価での配慮や研究支援の充実、育児休業による不利益あつかいの禁止、育児支援資金の創設をはじめ休職・復帰支援策の拡充、大学・研究機関で働き・学ぶすべての者が利用できる保育施設の設置・充実など、研究者としての能力を十分に発揮できる環境整備促進に力を尽くします。文科省が実施している女性研究者支援のための補助事業を大幅増額するとともに、採択枠を文系・理系を問わずすべての分野に拡大し、保育所の設置・運営なども経費負担に含めるなど現場の実情に即して柔軟に利用できる制度に改善します。非常勤講師やポスドクについても出産・育児にみあって採用期間を延長し、大学院生に出産・育児のための休学保障などの支援策をひろげるなど、ワーク・ライフ・バランスを実現できる取り組みを支援します。
(7)民間企業の研究者における女性の比率は9.6%でとくに低いことから、企業に対しては、研究・技術職に女性を積極的に採用すること、採用・昇進・昇格・仕事内容において性差別をしないことを求めるとともに、採用面接でのセクハラを禁止します。
大学への公費支出を欧米並みにひきあげます
わが国の大学がかかえる最大の問題は、大学関係予算がGDP(国内総生産)比で欧米諸国の半分の水準にすぎず、そのことが主な原因となって、教育研究条件が劣悪で、学生の負担が世界に例をみないほど重いことです。学術、教育の発展は「国家百年の計」であり、将来をみすえた大学への投資こそ、次代を担う若者を育み、21世紀の社会発展に貢献します。
日本は大学予算を抑制していますが、諸外国は大幅に増やしています。2000年を1として大学部門の22年の研究開発費(名目額)を見ると、日本は1.0で伸びていません。一方、米国3.1、ドイツ2.6、フランス2.0、中国28.4、韓国6.6と大きく伸ばしています(文部科学省 科学技術・学術政策研究所「科学技術指標2024」)。教育研究条件の整備をはかることは国の責任であり、欧米並みの大学予算を確保するために力をつくします。
日本共産党は、大企業・富裕層優遇の不公正税制を見直すなど税財政の改革で20兆円の財源を生み出す「経済再生プラン」を提案しています。その一部を活用して大学予算を抜本的に拡充します。軍事費は文教関係予算の2倍です。逆立ち政治を切り替えれば、予算は十分にあります。
➡日本共産党の経済再生プラン「30年におよぶ経済停滞・暮らしの困難を打開するために――三つの改革で暮らしに希望を」(2023年9月28日)(https://www.jcp.or.jp/web_policy/2023/09/post-966.html)