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日本共産党

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赤旗

62、消費者

消費者行政、食品安全、表示制度、悪徳商法対策、製造物責任法、消費者団体

2024年10月

「消費者の権利」を実効あるものにするために、消費者の立場にたった政治に転換します。

 食の安全、製品事故、不当契約や詐欺、偽装、個人情報の漏洩など、消費者の安心・安全を脅かす事件が後を絶ちません。また政府による情報の隠ぺいやねつ造など、国政の根本にかかわる大問題が起こっています。消費者基本法は「消費者の権利」(「基本的な需要が満たされる権利」「健全な生活環境が確保される権利」「安全が確保される権利」「選択の機会が保障される権利」「必要な情報が提供される権利」「消費者教育の機会が提供される権利」「消費者の意見が消費者政策に生かされる権利」「被害者が適切かつ迅速に救済される権利」)を明記し、国に「消費者政策を推進する責務」を課しています。これらは、憲法で保障された基本的人権を消費者の分野で具体化したものです。

 しかし、「消費者の権利」保障はまだまだ実現していません。2023年度『消費者白書』(消費者庁)によると、国民生活センターへ等の消費者相談は2023年度も約90.9万件と高水準で推移し、通信販売での「定期購入」に関する相談やSNSに関するトラブルが急増しています。「危害・危険情報」は約1万3,241件となっています。これは、あくまで国民生活センターに寄せられた件数だけです。2023年の1年間に消費者被害・トラブルによって発生した被害金額は8.8兆円に上っています。

 消費者被害の背景には、「市場への参入規制を取り払い、誰でも自由に市場に参入できるように」として進められてきた「規制緩和」路線があります。このもとで、「事前規制から事後チェック」の名で、国民の安全、財産を守るための規制までもが緩和されてきました。そもそも、事故や被害が起きてからの「事後チェック」だけでは、国民の生命や安全、財産を守ることにはなりません。その「事後チェック」さえ不十分なまま推移しています。「消費者重視」といいながら、「産業優先」の省庁からの骨抜きも繰り返されています。

 しかも、自公政権のもとで、消費者の安全・安心、財産を守るための規制を一段と緩和してきました。カジノ法を強行し、住民の財産を巻き上げ、ギャンブル依存症を増やすなど、大きな批判がわき起こっています。「契約書面等の電子化」、「一般医薬品のインターネット販売」や事業者の届出だけですまされる「機能性表示食品制度」が強行され、「医療関連業務における労働者派遣の拡大」「医薬品の承認期間の短縮」なども進められています。多重債務防止のためのクレジット過剰与信の規制も緩和されようとしています。

 自公政権は、2019年参議院選挙後、日米FTA交渉で農産物の関税を撤廃し、サービス分野も対象にするなど、大幅な譲歩を行いました。また、食の安全、医療や保険をはじめ「非関税障壁」についても撤廃するTPP11(環太平洋経済連携協定)を発効させました。TPPからアメリカは離脱しましたが、日米2国間協議によってさらに有利な譲歩を日本から引き出すためのものであり、日米FTAはそれを加速するものです。また、日本と欧州連合(EU)との「経済連携協定(EPA)」の発効も強行しました。多国籍企業の利益のために国の経済主権を放棄することになりかねません。すでに、BSE輸入規制を緩和し、アメリカの保険会社の営業利益を配慮してかんぽ生命の新規商品の販売中止などを行っています。TPP11や日欧EPAの発効によって、輸入食品が増加しています。企業の「稼ぐ力」のために、消費者の安心・安全さえもないがしろにしようとするものです。

 いま求められているのは、消費者の安全・安心よりも、大企業やアメリカ産業界のもうけを優先する政治を転換し、「消費者の権利」をまもる立場に立って実効ある措置を講じることです。日本共産党は、企業や産業界から一円の献金もうけていません。アメリカにも堂々とものをいい、「消費者の権利」を実現するため、全力をつくします。

食品安全行政の抜本的強化をはかります

 食品の検査体制について人員の抜本的増員をはかるなど強化し、食品衛生法違反の食品の国内流通を根絶します。子ども・妊婦・病弱者への影響を最大限配慮した安全基準の設定、消費者へのすばやくてわかりやすい情報の提供など、食品衛生法を強化、改定します。遺伝子組み換え食品の承認検査を厳密にし、遺伝・慢性毒性、環境への影響に関する厳格な調査・検証・表示を義務づけます。ゲノム編集技術による農林水産物が開発されていますが、食の安全や生態系への影響など懸念も指摘されています。実用化にあたっては、「予防原則」の立場から遺伝子組み換え食品と同等の規制が必要です。

 表示についても義務化すべきです。BSE検査の緩和ではなく対策を強化し、牛肉の安全を確保します。牛成長ホルモン投与の米国産牛肉の輸入を規制するとともに、健康や環境へのリスクが懸念される農薬などの基準を「予防原則」にもとづいて厳しくします。

 食品安全委員会は「国民の健康の保護が最も重要であるという基本認識の下に、食品の安全性の確保」をはかるために設置されました。しかし、BSE問題をはじめ政治的な圧力にたいして、独立性・中立性を確保しているとはいえません。現行の食品安全行政を、独立性・中立性のあるものとして国民の立場に立って機能させ、実効あるものとします。

 ➡「食の安全」については、各分野の政策「38、農業と農山村」の項目もごさんください。

 食品の表示は、消費者が商品やサービスを正確に知るための権利であり、とりわけ、食品の安全を求める権利、食品の内容を正確に知る権利、食品選択の自由の権利などを実現していく必要があります。食品の安全性が確保されるとともに、消費者に役立つ表示こそ重要です。

 現在、健康への働きを表示できる保健機能食品には、「機能性表示食品」「特定保健用食品(トクホ)」「栄養機能食品」の3種類があります。「機能性表示食品」は、事業者の届出制ですまされ、安全性を確保する措置や担保がきわめて不十分です。また、「特定保健用食品」でも消費者に著しい誤解を招く広告がなされた例もあります。いわゆる健康食品は、一般の食品と比べてもより安全性が求められます。その「効果」は客観的に検証されるべきであり、消費者の誤解や過信を招くような表示や広告・宣伝は許されません。

 「加工食品の原産地表示」は、例外表示が多いことや監視体制が弱いなどの問題点も指摘されています。「消費者の権利」を拡充するように改善を求めていきます。

 福島原発事故を受けて、食品の放射能汚染にたいする国民の不安は取り除かれていません。行政として食品の安全検査を徹底しておこなうこと、生産者の検査への行政支援を強化すること、こうした情報の徹底開示を進めます。

 原発ではなく、再生可能エネルギーを選びたいとの願いを実現するために、電気小売事業の全面自由化において、電源構成の開示については努力規定ではなく、義務化すべきです。全面自由化後の電気料金、ガス料金、水道料金、鉄道料金、電話料金など公共料金については、その根拠となる情報の公開とともに、消費者委員会や消費者団体の関与によって、透明性や料金の適正性を確保します。

商法や悪質な取引から消費者をまもります

 政府が、商品先物取引法における不招請勧誘禁止規制を省令改正で緩和したことは、被害の実態からも、国際的な規制強化という流れに逆行していることからも許されません。直ちに、元に戻すべきです。事業者と消費者の間には、情報の質量や交渉力に差があります。そのため、消費者が求めてもいない不意打ち的な勧誘によって、不当・不正な契約を結ばされる被害も後を絶たず、悪質商法の温床ともなっています。悪質な電話勧誘や訪問販売をストップさせるためには、不招請勧誘の規制は有効です。同時に、クーリングオフ期間のさらなる延長やネット上の広告の改善など、事後についても消費者を守る施策を進めます。

 事業者の情報提供義務の明記、「適合性の原則」(消費者の知識・経験・財産の状況を事業者が配慮する)の導入、契約取り消し期間の延期、誤認して結んだ契約の取り消し範囲の拡大、未成年者取消権に匹敵する包括的な取消権の創設など、消費者契約法を改正します。

 スマートホン、携帯電話やインターネットを使った消費者被害が広がっています。2022年4月の成年年齢引き下げにともない、未成年者契約の取消権がなくなり、若年層の多重債務や消費者被害が懸念されています。被害を防止するための法的措置は急務です。また、この点でもクレジット過剰与信の規制を緩和することは大問題です。2021年の特定商取引法改正で、訪問販売等の事業者が交付を義務付けられている契約書面について電磁的方法(電子メールの送付)でおこなうことが可能とされ、消費者被害が拡大することが懸念されています。電子化部分を削除する法改正を求めます。

 ジャパンライフによる「オーナー商法」や高額の家賃収入を売り込むシェアハウス商法など、いわゆる預託商法による被害が大型化しています。これらに対応できる法整備が必要です。2017年は「架空請求」が大きく増えました。悪質商法には「過去の消費者被害者」「サラ金利用者」「高齢者」などの名簿が使われて2次被害も増えています。この背景に、悪質な「名簿屋」の存在も指摘されています。これらは詐欺幇助で立件できるものであり、取り締まりを強化すべきです。

 銀行カードローンの利用者の多くが生活苦から借金を始め、多重債務に陥っています。銀行カードローンについて、貸付額を年収の3分の1以下に制限(総量規制)すべきです。また、テレビCMなどについても、貸金業法で自主規制が求められる消費者金融と同じレベルまで自粛すべきです。

 改正貸金業法ではグレーゾーン金利は廃止されましたが、法定金利そのものが高すぎます。利用者の7割が20代~30代であり、非正規労働者がふえるなかで、「生活費のため」に借りるケースが多くなっています。法定金利の引き下げが必要です。また、多重債務者にたいする相談体制の強化、生活福祉資金の改善などで生活の建て直しが図れるようにします。

製造物責任法(PL法)を抜本的に改正し、消費者の生命・身体の安全をまもります

 欠陥製品による消費者被害は後を絶ちません。被害者の救済は不十分です。製造物責任法(PL法)を抜本的に改正し、企業責任を追及しやすくし、公正で迅速な被害者救済へと道を開く必要があります。欠陥や因果関係の推定規定の導入、企業側による立証責任、リコール隠しをするような悪質企業には懲罰的賠償を命じる、内部告発者の保護、消費者団体訴権の導入などの改善をおこないます。

 日常生活用品や遊具・建造物などの安全確保に努めます。日常の生活用品での死傷事故、エレベーター、エスカレーター、プール、ジェットコースターなどの設備による事故や建物の耐震強度の偽装などが相次いでいます。消費者庁の消費者安全調査委員会に事故情報が一元的に収集されるようになりましたが、原因調査の件数が少なすぎ、報告も遅いと批判されています。事故情報のさらなる収集、分析、公開のためには、体制の充実が必要です。事故分析の上に立って、行政と企業の責任による安全基準のいっそうの厳格化をはかります。

地方消費者行政を拡充します

 消費者にもっとも身近な地方の消費相談体制を強化する必要があります。そのためには、消費生活相談員の研修強化と労働条件の改善は欠かせません。相談員の8割が非常勤職員であり、契約上の雇用期間をみると1年以下が9割にのぼります。労働条件を改善することは、専門性の高い相談員自身の改善とともに、消費者にとっても質の高い相談・救済を受けられることにつながります。

 そのためにも、消費者行政の予算を拡充することが不可欠です。地方自治体の消費者行政の充実・拡充を図ることを目的にした「地方消費者行政活性化交付金」は恒久財源措置をとって増額し、相談員の処遇の改善や増員、地方消費者行政の拡充をはかります。

消費者、消費者団体への支援を一段とつよめます

 消費者団体は、消費者問題の解決のためには欠かせない存在であり、公益性の高い団体でもあります。消費者被害が多発し、被害救済が求められているにもかかわらず、たとえば適格消費者団体でも会員からの会費とボランティアなどによって支えられているのが現状です。「消費者庁及び消費者委員会設置法」では、付則で、「適格消費者団体による差止請求関係業務の遂行に必要な資金の確保」を掲げています。また、「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」では、付則で、政府にたいして、特定適格消費者団体にたいする必要な資金の確保、情報の提供、その他の支援を求めています。消費者団体の自主性を尊重しつつ、相応の財政支援、事業者からも含む情報の提供など早急に具体化します。

 消費者団体をはじめとした関連団体の長年の努力によって、集団的消費者被害回復訴訟制度(消費者裁判手続特例法)ができたことは画期的なことです。これを実効あるものとしていくためには、消費者の利益に配慮し、特定適格消費者団体にとって使い勝手のいいもの、自主的な裁量を生かせるものにしていく必要があります。

 NPOの自主的な活動は、国民生活を豊かにする上でも、社会全体の発展のためにも重要な役割をもっています。NPOの自主性を尊重し、行政との対等の関係を保ちつつ、活動資金の助成や活動に必要な施設・設備の提供、寄付が受けやすくする制度への改善など、支援を強化します。

 ➡各分野の政策「63、NPO新法」をごらんください。

 スマートホンやインターネットを使った消費者被害が広がっています。未成年者契約の取消権がなくなり、若年層の多重債務や消費者被害が懸念されています。学校での体系的な消費者教育や公的機関による消費者教育の充実をすすめるとともに、社会教育活動として、地域の住民や団体を対象にした、自主的な消費者教育運動への支援を強化します。

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