56、通信・郵政
どこでもだれでも安心して利用できる通信を確保します
民営化による矛盾をただす抜本的見直しで郵政事業を再生します
2024年10月
通信のユニバーサルサービス制度を拡充し、だれでも安心して利用できる通信に
通信技術の発展は、国民生活の利便性の向上にとって大切です。どこでもだれでも安心して利用できる通信を確保することは、国民のいのちと安全を守り、暮らし・営業を維持していくうえで欠かせません。
政府は、デジタル化の遅れを課題としてあげ、官民のデジタル化、5G、光化など基盤整備の推進をかかげ、5G減税や設備整備に対する支援、5Gの次世代通信技術の開発などに多額の税金を投入しています。しかし、国民だれでも安心して通信を利用できるのかについての検証は、二の次です。日本共産党は、国民が主役となった通信技術の発展と利用のために、その在り方を見直していきます。
通信のユニバーサルサービス制度の確立・拡充を
日本共産党は、通信のユニバーサルサービス制度(全国あまねく提供すること)の確立・拡充が必要であると考えます。ユニバーサルサービスの対象は、固定電話、公衆電話、緊急通報とされていました。しかし、このユニバーサルサービスを確保する仕組みには、NTTにコスト削減(サービスの縮小、拠点再編やアウトソーシング、人員削減)を求めるという問題があり、通信の安定提供と矛盾するものとなっています。日本共産党は、その見直しを求めています。
2022年の通常国会では、固定ブロードバンド通信(光ファイバーやCATV等)をユニバーサルサービスの対象に追加する電気通信事業法改定案が成立しました。しかしこれは、ブロードバンド通信を「全国あまねく提供」する責務についてはあいまいで、不採算地域において、通信事業者の赤字を補てんするしくみはあるものの、経営判断で撤退も可能とするなど問題があるものです。
NTT法廃止に反対します
今年の通常国会で行われた法改定では、附則にNTT法の廃止を含めた制度の在り方についての検討を加え、次期通常国会で法律案を提出することを規定し、法の廃止に布石を打ちました。さらに、研究開発の推進責務や普及の責務の廃止など、規制の緩和を行い、NTTの公的役割を後退させるものでした。そもそも、NTTに関する法律は、公社時代に国民負担で築き上げた国民の財産である通信インフラを承継したNTT持ち株会社とNTT東西両会社に、果たすべき業務と電話のあまねく提供、研究開発の推進、普及といった責務を定め、それを行わせる会社とするために必要な担保措置を定めたものです。NTTの株売却による軍拡財源確保ありきの議論はもってのほかです。
日本共産党は、ユニバーサルサービスの対象やあり方含めた制度について、その見直しを求めていきます。また、無線ブロードバンド通信などへもユニバーサルサービスの対象とすることを求めています。
安心・安全に利用できる環境の整備が切実な課題です
国民生活を支える通信に障害がおこれば、社会的影響は甚大なものとなります。
特に、能登半島地震でみられたように、携帯電話基地局、電柱、ケーブルなどの通信設備の被害、停電などによる長期の通信障害は、深刻な影響を与えます。災害時の通信確保のために、公衆電話の確保と公共施設等避難場所となる施設への通信確保対策も求められます。国民のいのちと安全確保に欠かせない重要な課題として、電気通信事業者に対策を求めていきます。国に対しても災害時の通信障害への対策強化、通信確保のための対策の徹底を求めていきます。
聴覚障害者等きこえない人ときこえる人をオペレーターが通訳してつなぐ「電話リレーサービス」が公共インフラとして開始されました。日本共産党は、国会審議で「当事者の声が反映される仕組みの明記を」という声を反映するため、各党と協議し、与野党の合意で政府提出法案が修正されました。当事者の参画による電話リレーサービスの前進に取り組んでいきます。
また、高齢者や障害者にも使いやすい情報通信端末の開発を支援するなど情報格差の解消も欠かせません。
インターネットの利用環境の安心・安全の確保は重要です。Webサイトやアプリの利用者情報の取り扱いについて、事前同意はもちろん、収集情報の安全管理の徹底、オプトアウト(事後的な同意等の撤回)のしくみの義務化などの必要な保護規制を求めます。
通信料金値下げは、消費者保護の立場ですすめます
通信料金の家計負担は大きくなっており、その軽減が必要です。自公政権は、参入事業者を増やす規制緩和をすれば「公正な競争が促進され、通信料金の低廉化等が実現する」と言ってきました。しかし、このやり方では値下げが進まないことは明らかになりました。菅前政権がすすめた「値下げ」は、これまでのやり方を見直すものではなく、「要請」という形で事業者に「値下げ」実施をせまるものでした。
日本共産党は、料金の上限ルールや契約の在り方などを見直し、消費者保護の立場にたって、料金値下げを求めます。
「郵政民営化」の矛盾を抜本的に見直し、郵政事業を再生します
郵政事業は、全国あまねく郵便や金融のサービスを提供する、国民生活にとって欠かせない役割を果たしています。政府は「民営化で郵便局はもっと便利になる」と説明しましたが、2007年10月の郵政民営化から17年、事業はゆきづまっています。
民営化によって、簡易郵便局の相次ぐ閉鎖、郵貯ATMの撤去、各種手数料の引き上げ、時間外窓口の閉鎖、集配郵便局の統廃合など、国民サービスは大きく後退しました。
その後おこなった、ゆうパック(旧小包)事業と日通・ペリカン便の宅配便事業の統合、豪・トール社買収などが、事業に大きな損失を与えるものとなりました。
郵便局ネットワークの維持も懸念されます。利用の減った郵便局の移転・再編が進められています。郵便局がなくなった地域では、住民の利便性が後退させられています。
第三種郵便の利用のための登録承認の「取り消し」が急増しています。民営化直後の2007年に1.2万近くあった承認団体数は3千まで減り、5.3億通あった取扱数も3分の1以下の1.6億通にまで落ち込んでいます。国民文化の普及向上に貢献する定期刊行物の郵便料金を低廉化して、購読者の負担を軽減するとした趣旨に逆行する状況がうまれています。この10月に行われた郵便料金の値上げも国民の郵便利用を遠ざけるものになりかねない状況です。
かんぽ生命の不正販売問題では、保険の営業で、事実と異なる説明や、顧客の意向に沿わない契約、不利益な契約変更、被保険者を高齢者から子や孫へ変更する不合理契約などが行われ、高齢者をはじめ多くの利用者に被害が及びました。この問題の背景には、「成長」のための過度な目標設定と現場へのノルマの押し付けがあったことが浮き彫りとなりました。責任を現場の労働者に押し付け幕引きするのではなく、組織としての解明と責任が問われています。
これらは民営化をつきすすんでも解決しません。郵政事業の再生こそ必要です。
日本共産党は、分社化を見直し3事業の一体経営、郵便貯金・簡易生命保険にユニバーサルサービスの義務付け、公共の福祉の増進を目的とする公的事業体として再生する抜本的な見直しを行います。
郵政事業の労働条件――非正規雇用、長時間労働、低賃金の改善を求めます
相次ぐ郵便事業に関わる失敗や効率化を理由に、郵政事業を担う労働者の労働条件悪化が強いられてきました。また、郵便事業は規制緩和でコスト競争にさらされています。郵便事業と宅配便事業で働く労働者の非正規雇用や、長時間で過酷な労働、低賃金といった労働条件の悪化がまん延しています。
日本共産党は、郵便の規制緩和の見直しと非正規労働者の正社員化や均等待遇、有給休暇や賞与、退職金各種手当など労働条件の格差是正・雇用改善を求めてきました。
郵政事業は多くの非正規労働者によって支えられており、未払い残業代の支払い、非正規の正規化、非正規労働者の均等待遇が課題となってきました。労働者のたたかいによって、2020年最高裁で正社員と非正規の手当・休暇の格差は「不合理」とされ、非正規の労働条件の引き上げがかかせないことが示されたことは画期的であり、改善が急がれます。
労働者が安心して働き続けられるよう、引き続き改善を求めていきます。