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日本共産党

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赤旗

51、住民のための都市再生・まちづくり

特定大企業が稼げる都市再生・まちづくりではなく、住民の生活、福祉を支えるまちづくり政策への転換を

2024年10月

計画段階から住民の声を反映させた、まちづくりを

 大手デベロッパー中心の事業者が、住民の声を聞かずに一方的な説明をするのみで、大量の樹木伐採を伴う再開発事業が東京都を中心に各地で進めています。都市再開発法や都市再生特別措置法、都市公園法などの国の都市に関する法律は、デベロッパーが進める「儲かる公園づくり」「稼げるまちづくり」を制度面で支援するものであり、再開発の規制にはほとんど役に立ちません。そこに、税制優遇などのデベロッパー支援策が重なっています。この仕組み自体を、地域住民が住み続けられるまちづくりに役立つ法制度や予算に変えていくことが、再開発優先から住民生活・住民自治が優先されるまちづくりに変えていくことが緊急に求められています。

 特に、東京都の明治神宮外苑地区の再開発は、高層ビルを建てて3,000本もの樹木伐採を伴う計画であり、国会でも超党派の議員連盟ができるとともに、著名な音楽家や作家、俳優、知識人など広範な人たちが反対の声をあげている事業です。2023年9月にはユネスコの諮問機関・イコモスが出した再開発の中止を求める警告「ヘリテージ・アラート」を出して事業の中止を求めました。アラートの名宛人には、東京都知事のみでなく文部科学大臣や国土交通大臣なども含まれ、国が関与する独立行政法人のJSC(日本スポーツ振興センター)とUR都市機構がこの事業に関与しています。それにもかかわらず、政府はアラートへ応答せず、事業者と東京都が、計画の公表まで住民に情報を開示せず、住民や専門家の意見すら聞かずに、一方的に事業を進めていることに対し、何ら手立てをとっていません。

 このやりかたは、2017年の都市公園法改悪に伴うPark-PFI(公募設置管理制度)を用いて、全国で進められている「稼げる公園」づくりでも同様です。これらの手法は、一部デベロッパーのみが儲かる住民無視の都市開発を、公園や樹木なども組み込んで横行させるものであり、認められません。

―――まちづくりと都市計画に関わる再開発は、その計画段階から情報が住民に開示され、住民参加のもとすすめられるようにします。都市再開発法、都市計画法など再開発に関係する都市法制を、「住民が主人公」となる内容に改めます。

民間都市再生、国家戦略都市再生プロジェクト、国際金融都市構想など特定企業優遇事業は廃止します

 2005年頃から国の認定を受けた民間都市再生事業は166件、都市再生緊急整備地域には52事業が選定されています。(24年10月末現在)。民間都市再生事業は容積率緩和に加え税制優遇を受けており、実施する大企業・大手不動産会社への税制優遇措置は、2012年から2021年の10年間で約763億円になります。

 こうした、国家戦略特区の指定やPPP/PFI(官民連携、民間資金誘導)等による上からの都市の再編は、住民本位のまちづくりと相いれないものです。特定企業を優遇するための都市再生事業に国民の税金を投入したり、税金を負けたりすることは、直ちにやめるべきです。

都市の荒廃を招く超高層ビルの乱立を抑制します

 超高層ビル、超高層マンションは、高額な初期投資、維持管理・修繕費用がかかり、不況時の資産価値の下落リスクが高まること、建て替え時など区分所有権の合意形成がより困難なこと、長周期地震動、火災、電源喪失など災害時の超高層ビル特有の危険などのリスクが指摘されています。超高層ビル群の谷間、周辺住環境への被害、日照、強風、コミュニティ遮断など周辺住民への直接被害も発生しています。

 超高層マンションの乱立に伴い、国全体としては人口減少社会にある中、局所的に急増する人口に対応した学校や福祉施設、上下水道などインフラ施設の整備など公共投資の増大を余儀なくされています。超高層ビル向けの防災安全対策も考えなければなりません。

三大都市圏の開発中心、地方切り捨ての国土計画の転換を

 自公政権は2023年に、今後10年間の国土づくりの指針となる「国土形成計画」を改訂しました。その中心は、三大都市圏を結んだ「日本中心回廊」の形成と、地方の中心都市を核とし、市町村の境界にとらわれずに地域の行政サービスを再編する「地域生活圏」づくり、の2点です。

 「日本中心回廊」とは、リニア中央新幹線に、新東名・新名神等の高速道路を加え、三大都市圏を1つに結ぶネットワーク構想です。これは、従来の国土形成計画にあった、リニアを軸とする「スーパーメガリージョン」がうまく進まないので、高速道路を移動手段として加えたものに過ぎません。従来の試作の焼き直しである以上、地方の人口が東名阪に集まり、またそこから東京一極集中が進むのではないか、という従来からの疑問に何ら答えるものではありません。オンライン会議などテレワークの普及によりビジネス目的での都市間移動の減少が見込まれる中にあっても、高速道路とリニアの建設を続けることに固執した、開発中心の国土づくり構想と言わざるを得ません。

 また、「地域生活圏」づくりは、自治体をまたいで公共施設の統合を進めることを内容の1つとするもので、人口減少下でデジタルにより地域の行政サービスを「兼ねる、束ねる、繋げる」との発想により、例えば「全ての自治体に高校がなくても構わない」などとして、地域公共交通の再編、ドローン物流、遠隔医療等を用いた広域的なまちづくりを進めようというものです。自治体をまたいで広域連携を進めると言いながら、まちづくりへの住民意思の反映という発想がほとんどない政策で、地方議会の関わり方や、従来政府が進めてきた「コンパクトシティ」「立地適正化計画」とどう繋がるかすら不明確な政策です。憲法上の住民自治の理念を掘り崩すことにもなりかねない懸念があります。

 24年の通常国会では、二地域居住を促進する法律が成立しました。二地域居住自体は都市部と地方をつなぐ人の行き来を促す点で過疎地にもメリットがありますが、人口減少の進む自治体の活性化にどう繋げるのか、実効性ある施策のため注視が必要です。

三大都市圏中心の開発支援に固執する国土政策を改めます

 また、都市再生事業への支援は税制優遇がその柱ですが、民間都市再生事業を実施する大企業・大手不動産会社への税制優遇措置は、2019年から2023年の5年間で約548億円にもなります。これに、都市計画手続きを簡素化する「国家戦略特区」の認定や、容積率等の更なる緩和、ESG投資の呼び込みや、PPP/PFIなど民間資金活用等のやり方で、大手不動産・都市開発会社がすすめる大規模再開発事業の誘導・支援を制度面からも強めています。

 特に東京では、「世界で一番ビジネスのしやすい国際都市づくり」、「国際金融都市構想」などを口実に、グローバルな都市間競争に勝ち抜く国際競争拠点都市へとタワーマンション・複合ビルが乱立する"東京大改造"を進行させています。「ポスト五輪」でも、首都圏中心に大型再開発が目白押しで、大手デベロッパーとゼネコンが群がっています。政府の都市政策はこれら特定大企業の儲けに奉仕するものです。

 今の都市政策は、人口減少社会のもとでも、いっそう大都市一極集中を加速し、ストロー効果による地方の衰退と疲弊をさらに押しすすめ、地域間格差を拡大させるものです。この施策が日本の国土を荒廃させかねないことは、能登地震後の被災地をみても明らかです。

 「国際競争力強化」を口実に都市機能を集約する、一握りの財界本位のまちづくりは時代遅れです。住民本位のくらしやすいまちづくりへと都市政策を転換することが必要です。

住民が主役の都市計画、まちづくりを

 地方自治体では、コンパクトシティ(立地適正化計画)や公共施設等総合管理計画に基づくまちづくりがすすめられています。

 集客施設や住宅を中心市街地に誘導集約し、郊外集落には公共交通ネットワークで結ぶのがコンパクトシティ+ネットワーク政策です。ところが、中心市街地への誘導ばかりが計画され、郊外集落への公共交通路線を整備せず、交通不便地域のまま放置しているケースも少なくありません。

 激甚化・頻発化する豪雨災害など相次ぐ災害に備えたまちづくりが求められています。

 都市計画・まちづくりは、地域住民が安全で、安心して暮らし、住み続けることができるための生活基盤をつくることです。特定企業や富裕層の身勝手な利潤追求の道具にしてはいけません。地域の開発事業を営利目的で利用する特定企業に差し出すなど、あってはならないことです。

―――巨大地震や豪雨など大規模災害に備えた対策を優先し、災害危険地域などの土地利用規制も含め住民のいのち・安全、暮らしを最優先する政策に転換します。

―――住民不在の都市計画・まちづくり政策を抜本的に見直し、「住民が主人公」のまちづくりを支援し、住環境や景観、コミュニティを守り、改善します。

―――コンパクトシティ(立地適正化計画)の中には、住民の居住誘導区域が、ハザードマップで示す災害危険区域と大きく重なるとか、能登地震では浸水想定区域に多数の仮設住宅がつくられるなど、整合性のない計画があります。住民合意のない居住誘導区域の設定や、災害ハザードエリアへの公共施設の建設はさせないなど、住民参加、住民合意による都市計画を進めます。

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