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日本共産党

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赤旗

49、交通・運輸

交通・移動の権利を保障し、安全を大前提に公共性を重視した交通政策に転換し、人と環境に優しいまちづくり・交通体系を

2024年10月

 公共交通が危機に直面しています。地方の過疎化の進行や、地域社会の高齢化、人口減少、新型コロナウイルスの経験、気候危機問題など、交通を取り巻く社会経済情勢によって、これまで住民の足となってきた鉄道・バス・フェリーなどの路線廃止が相次ぎ、地域公共交通が衰退しています。自家用車を利用できない高齢者等、移動が大きく制限される「移動制約者」も増加しています。無秩序な郊外型開発や大型店舗の撤退による都市のスプロール化、中心市街地の"空洞化"がすすみ、"買い物難民"を発生させるなど交通弱者の日常生活を困難にしています。

 自民党政権のもとで進められてきたモータリゼーション推進、自動車優先・道路偏重の交通政策が、道路公害の発生や、地域公共交通の衰退など様々な弊害をもたらしたことは明らかです。

 同時に今、進行しているのは、赤字、採算性を理由としたローカル鉄道やバス路線の減便、廃止です。

 JR西日本、東日本は22年に、輸送密度2,000人未満の路線を相次いで発表しました。これらの路線は「100円儲けるのに数万円かかる」などと、その赤字ぶりを強調し、赤字ローカル線がお荷物であるかのような宣伝をしました。このJR旅客各社の主張と歩調を合わせるように、自公政権は、23年の国会で、ローカル鉄道の廃線に道を開く地域公共交通活性化再生法の改悪を強行しました。

 バス事業は、新型コロナウイルス感染症の影響で乗客が激減したことにより、多くのバス運転者がハンドルを手放し、5類に移行した後もドライバー不足は解消されず、地方部だけでなく都市部においてもバス路線の減便、廃止が相次いでいます。

 2021年5月28日に閣議決定された「第2次交通政策基本計画」(2021年度~2025年度)でさえ、「交通事業が独立採算制を前提として存続することはこれまでにも増して困難となっており、このままでは、あらゆる地域において、路線の廃止・撤退が雪崩を打つ『交通崩壊』が起きかねない」と、かつてない危機感を表しています。もはや事業者任せでは、公共交通を維持・確保・活性化することは不可能です。

 ところが自公政権は、住民に身近な公共交通には十分な対策を取らず、国際競争力強化を口実に、「高規格道路、整備新幹線、リニア中央新幹線、都市鉄道、港湾、空港等の物流・人流ネットワークの早期整備・活用、モーダルコネクトの強化、航空・海運ネットワークの維持・活性化、造船業の競争力強化等を推進」(骨太方針2024)など、相変わらず財界・大企業に奉仕する交通インフラの大規模開発事業に邁進しています。

 交通は、人やモノの交流や活動を支え、国民生活にとって欠かせないものであり、住民に身近な公共交通を維持・活性化・再生する交通政策に切り替える必要があります。

―――自動車優先・道路偏重の交通政策、財界・大企業奉仕の大規模開発優先の交通インフラ整備を根本的に見直し、住民の足を守り、人間を優先した政策に転換します。

国民の交通・移動の権利の保障を

交通政策基本法に国民の交通・移動の権利の保障を明記し、安全確保を基本理念の第一とする「交通基本法」への改正を

 2013年に制定された「交通政策基本法」は、「交通・移動権の保障」を盛り込まず、国際戦略港湾、首都圏空港、大都市圏環状道路など「国際競争力の強化」のための高速交通網の整備を想定したものでした。2020年の同法改正は、激甚化・頻発化する豪雨災害などが発生した場合でも交通の機能を維持し、社会・経済活動が持続可能となることを明記したり、「輸送サービスの提供の確保」として、国の関与を強め、赤字路線への国の補助金確保の契機になりうる規定を設けたりしています。しかし、「交通権」の明記を拒否しただけではなく、国内交通網及び輸送に関する拠点の形成に「基幹的な高速交通網の形成を含む」との文言を加え、リニアや東京外環道など大規模開発を重点的に進める姿勢を表しています。

 15人の死者、26人の負傷者を出した2016年の軽井沢スキーツアーバス事故や、死者107名、負傷者562名を出した2005年のJR福知山線脱線事故、最近も静岡県の県道「ふじあざみライン」で観光バスが横転し、1人死亡、28人が重軽傷を負う事故が2022年10月に発生するなど、公共交通機関の事故・トラブルが相次いでいます。

 事故の背景にあったのは、安全性・公共性を軽視し、市場競争を優先する規制緩和政策でした。規制緩和は、免許制から許可制にし、需給調整をなくし、市場競争原理を導入しました。行政が責任を持つべき安全確保のための監査制度など、事前チェックを事後チェックに切り替えました。さらには、派遣法改悪など労働法制の規制緩和とも相俟って、労働集約型の運転手の低賃金化、非正規・派遣、技能・経験不足など安上がりな労働力供給を可能にしました。

 その結果、自動車運送事業では新規参入する事業者が急増し、過当競争、運賃のダンピング競争が激化し、法令を守らない違法業者がはびこりました。「3K」職場として若者から敬遠され労働者不足も深刻になっています。人命を運び安全を担う運転手の賃金、労働条件が悪化し、過労運転など安全運行が確保できない状況を生み出しました。

―――交通政策基本法に交通・移動の権利の保障を明記し、交通の安全確保を基本理念の第一とし、規制緩和路線を転換と交通事業者に安全確保のための規制を強化する「交通基本法」に改正します。

地域公共交通

これ以上の衰退に歯止めをかけ、住民の足、地域の社会経済基盤の再生、活性化を

 路線バスの完全廃止路線は、2009年度~2023年度までの15年間で、全国で合計21,282km、地球の半周分の距離を超えています。その内、首都圏4都県での完全廃止路線は、22年度で313km、23年度で468kmと、近年は大都市部でも路線バスが消えていっています。主要な路線バス事業者(127社対象)は、その8割が23年以降に減便・廃止するとの調査結果も出ています(帝国データバンク)。

 鉄軌道の廃止路線も、2000年度~2024年4月1日までの間に、全国で47路線、1,275.3kmにのぼります。

 地域公共交通の衰退に歯止めがかかりません。そのもとで、住民の足が奪われ、高齢者等の移動が制限され、住民の日常生活や地域社会活動などに支障をきたしています。地域公共交通のこれ以上の衰退に歯止めをかけ、地域の社会経済基盤の再生、活性化を目指して取り組みを強めなければなりません。

 ところが自公政権は、民間事業者まかせで、国がとる対策は従来の延長線上にとどまっています。

 「地域の公共交通リ・デザイン実現会議」が今年5月に「とりまとめ」を公表しました。「とりまとめ」は、バス路線や鉄軌道の廃止の現状や、バス・タクシー運転者の労働環境の現状、運転者数の減少傾向などを紹介し、交通空白地については「地域交通が地域の基盤的・公共的サービスであることに鑑み、地方公共団体等の公的主体が、財政面も含めて従来よりも積極的に関与していくことが必要」と指摘しています。しかし、取り組みの方向性として打ち出しているのは「連携・協働」だけです。バス、タクシー、鉄軌道の事業者の赤字を補填し経営を支援するための財政援助の強化や、運転者の賃金引上げ、労働条件改善などには一言も触れていません。それどころか、自家用有償旅客運送(公共ライドシェア)を広げるための規制緩和や、自家用車活用事業(日本版ライドシェア)の柔軟な活用を打ち出しています。

 ライドシェアは、第二種運転免許を持たない一般のドライバーが、自家用車を使って有償で乗客を運ぶものです。ライドシェアを導入している米国などでは、犯罪や性被害が多発するなど、安全上の問題があります。

 タクシー事業者が運行に責任を持つとされる日本版ライドシェアは、現在、東京都特別区などの大都市部で12地域、362事業者(当該交通権におけるタクシー事業者総数は1,161者)が、軽井沢などの地方部等で36地域、229事業者(同703者)が運行しています(9月29日現在)。その上自公政権は、国民の厳しい批判の前に地域や時間帯を制限している日本版ライドシェアを、雨天時やイベント開催時にはこの限定を外して運行する規制緩和まで強行しています。ライドシェア普及の促進では、地域公共交通衰退の根本的な解決につながらないばかりか、乗客の安全が保障されない乗り物が増えかねません。

 さらに自公政権は、今年7月、国交大臣を本部長とする国土交通省「交通空白」解消本部を立ち上げ、「交通空白の解消」と称して、公共ライドシェアや日本版ライドシェアを全国に広げる方針を決め、来年度概算要求に、これまでバス路線や離島航路の赤字補填などに使われていた予算の一部を、はじめて2つのライドシェア普及のために充てることを決めました。地域公共交通政策の逆行だと言わなければなりません。

―――路線バスのこれ以上の減便・廃止を食い止めるために、5割弱にとどまっている地域内フィーダー系統補助を満額交付するとともに、現在2分の1となっている補助率を引上げるなど、バス事業者の経営を財政的に支援します。

―――バス、タクシー、離島航路など住民に身近な地域公共交通を支えるために、年間200億円強にとどまっている地域公共交通確保維持改善事業の予算を、当面、1,000億円に引き上げます。

―――財源を確保するため、フランスの事例などを参考に、JRなど大手事業者等からの拠出による「地域公共交通を守る基金」を創設します。

―――日本版ライドシェアは、廃止するとともに、自家用有償旅客運送については、規制緩和をストップし、旅客対象を観光客のみとする自家用有償旅客運送は禁止します。

―――公共性を著しく損ない、タクシー労働者の労働条件に悪影響を与える変動運賃制度(ダイナミック・プライシング)の導入は撤回します。

―――運賃の引き下げ競争を誘発しかねない協議運賃制度は廃止します。

―――タクシー運転者の賃金を引き上げるために、累進歩合制度廃止の確実な履行、オール歩合給賃金を改善し、最低賃金を固定給で保障する賃金制度を確立します。

―――今年4月に施行された「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)を再改正し法制化します。
 バス運転者は当面、① 拘束時間1日13時間以内、② 休息期間11時間以上、③ 1ヶ月の拘束時間240時間、④ 運転時間1日7時間以内、⑤ 連続運転時間2時間以内に改善します。
 タクシー運転者は当面、① 1日の拘束時間13時間以内、② 休息期間11時間以上、③ 1か月の拘束時間、日勤238時間、隔日勤務228時間以内に改善します。

鉄軌道

全国の鉄軌道網を維持・活性化し、未来に引き継ぐ鉄道行政に

 ローカル鉄道が危機に直面しています。

 自公政権は23年、地域公共交通活性化再生法を改定し、輸送密度1,000人未満の路線・区間について、JR旅客各社などの鉄道事業者から要求があれば、ローカル線の廃線に道を開く再構築協議会を設置できる新たな仕組みを導入しました。この改定法に基づき、JR西日本の芸備線(備中神代―備後庄原)で再構築協議会第1号が今年1月12日に設置されました。

 ローカル鉄道は、沿線住民の生活に必要な移動手段であるとともに、まちづくり、観光や産業振興など地域経済社会再生の基盤です。また、鉄道は、他の輸送機関に比してCO2排出量が少なく、脱炭素社会を目指すために失ってはならない地域の共有財産です。

 ローカル鉄道が今日の危機的状況にあるのは、自然現象ではありません。地方の人口減少を招いた東京一極集中の推進、マイカーへの転換を加速した高速道路整備の促進など、国の政策がもたらした結果にほかなりません。一方で、地方の移動手段としてのローカル鉄道の役割は縮小させられてきました。

 国鉄分割・民営化から37年が経過しました。不採算路線も含めて事業全体で採算を確保するとの当時の制度設計が維持できないというのであれば、ローカル鉄道の廃線ではなく、JRの在り方そのものを根本から問うべきです。

 国鉄分割・民営化を反省し、ローカル鉄道を維持、活性化させることこそ、国が取るべき責任です。

―――再構築協議会での協議は、鉄道輸送の維持、高度化に特化し、国が責任を持って鉄道ネットワークを維持、活性化させるため、ローカル鉄道の利用促進、利用者の利便確保、輸送サービスの向上などを検討します。

―――JR会社のローカル鉄道に関する施策については、国が責任を持って維持存続させる義務があることを明確にします。

―――鉄道事業の廃止に係る手続を国土交通大臣への届出制から許可制に戻します。鉄道の協議運賃制度は廃止します。

―――公共交通基金を創設し、安定的な財源を確保します。鉄道災害復旧基金をつくり、災害を原因とする鉄路廃止をなくします。

 ➡政策「鉄道路線廃止に歯止めをかけ、住民の足と地方再生の基盤を守るために――国が全国の鉄道網を維持し、未来に引き継ぐために責任を果たす」(2017年04月28日)(https://www.jcp.or.jp/web_policy/2017/04/post-744.html)

 ➡政策「全国の鉄道網を維持・活性化し、未来に引き継ぐために」(2022年12月13日)(https://www.jcp.or.jp/web_policy/2022/12/post-936.html)/PDF版

―――公共施設はもちろんのこと、多数が利用する施設、歩道、地方の駅や利用者数の少ない駅などのバリアフリー化をすすめます。

―――法基準の見直し、計画づくり、実施には、利用者、住民、NPOなどの参加と協働を広げます。

―――ホームドア設置を安全対策と位置づけ、鉄道事業者に設置を義務付けます。転落の危険性が特に高い駅を優先して直ちにホームドアを設置し、800駅の設置目標を引き上げます。技術開発を含め補助額・率を引き上げます。

―――無人駅の増加に歯止めをかけ、無人となった駅には、計画的に駅員を配置していきます。

―――鉄道駅のエレベーター・エスカレーターの設置などバリアフリー化を急ぎます。

―――大規模地震に備え、新幹線等の安全対策を緊急課題として強化します。

―――整備新幹線の並行在来線について、経営分離を前提とする「政府与党合意」を見直し、JRに社会的責任を果たさせます。

物流

トラック労働者が残業なしで生活できる賃金の確保、労働環境の改善を

 2024年4月からトラックドライバーの働き方が変わり、それまで規制のなかった時間外労働を年間960時間に規制しました。政府や荷主企業などは、「物流の2024年問題」として、ドライバー不足により2019年比で24年は約4億トンの荷物が運べなくなると大騒ぎしました。しかし、そもそも働き方改革は、ドライバーの過労死をなくすことに目的がありました。残業規制が適用されるまで5年間の猶予があったにもかかわらず、実効ある手立てをとってこなかった自公政権の責任が問われます。

 トラックドライバーは、劣悪な労働環境にもとで働いています。全職業平均と比べても、労働時間で年間約400~450時間長く、賃金で約20~60万円も低くなっています。また、過労死は14年連続でトップです。なり手がいなくて、有効求人倍率は全職業平均の約2倍となっています。

 こうした過酷な状況に置かれる要因になったのが、1990年施行の物流2法で規制緩和が大幅に進められたことです。需給調整規制が廃止され、事業参入しやすくなり、運賃も許可制から届出制へと緩和されました。その結果、トラック事業者は40,072者から2022年度末で63,127者と1.6倍に増加。仕事をとるために運賃引き下げ競争が起こり、それがドライバーの賃金低下に結びつきました。長距離運転を前提とした働き方が、過労死トップの要因となっています。ドライバーの労働環境を抜本的に改善することこそが喫緊の課題です。

 今国会で成立した物流関連2法の改正は、ドライバーの長時間労働や低賃金の改善を目指して、荷主や元請事業者などを規制する内容になっています。長時間労働の原因の一つである荷待ちや、契約にない荷役などの時間を短縮するためにトラック事業者に努力義務を課し、大手の事業者にはそのための中長期の計画を立てることを義務付け、取組が不十分なときは国が勧告・命令を実施します。また、低賃金の原因ともなり、実態がよくわからない多重下請構造の「見える化」をはかるために、実運送体制管理簿の作成を元請事業者に義務付けています。さらに、ドライバーの賃金の原資となる運賃について、国が定める標準的な運賃を平均で8%引き上げます。規制緩和の流れから規制強化に転じたと言えます。今後は、改正法の実効性が問われます。

 一方、4月から、高速道路での大型トラックの最高時速が80kmから90kmに引き上げられました。交通事故の減少を理由としていますが、これまで業界の要望があっても引上げを認めてこなかったのは、大型トラックの死亡事故率が普通乗用車と比べて高いからでした。この状況は今も変わっておらず、最高速度引上げには道理がありません。逆に、トラックドライバーへの身体的、精神的、心理的な負担が増し、働き方改革に逆行すると言わざるを得ません。

 さらに、4月に施行された改定改善基準告示では、ドライバーが2人乗車する場合、車両内に設置されたベッドを使って、1人が運転、1人がベッドで休憩(睡眠)を取ることで、長距離輸送を可能とする改悪を盛り込みました。この車両内ベッドは、燃えにくい材料を使うこと、との保安基準しかなく、シートベルトなど、ドライバーの安全確保策がとられていないことがわが党の追及で明らかになりました。

―――残業なしで生活できる賃金が、実運送ドライバーに届くようにします。そのために、荷主と運送事業者との契約の内容や運送の対価などを国が責任をもって調査します。

―――荷主が自らの地位を利用して低い運賃で契約を強要することを禁止します。

―――廃止された営業区域規制を復活させ、トラックドライバーがその日のうちに帰宅できるようにします。

―――高速道路における最高速度を80km/hに戻します。

―――「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」を再改正し法制化します。
 当面、① 拘束時間1日13時間以内、② 休息期間11時間以上、③ 1ヶ月の拘束時間252時間、④ 運転時間1日7時間以内、⑤ 連続運転時間2時間以内に改善します。車両内ベッドの使用は、トラックが停車中のときに限ります。

地球にやさしい交通
道路中心の輸送から鉄道、船舶へのモーダルシフトをすすめ、自転車の活用で気候変動対策の強化を

モーダルシフト

 単位輸送量あたりのCO2排出量は、旅客輸送で、鉄道は、乗用車の13%、航空機の17%、バスの30%、貨物輸送では、鉄道は、自家用貨物車の1.5%、営業用貨物車の8.0%、船舶の44%と、圧倒的な優位にあります。EUでは「グリーン・ニューディール」など、脱炭素社会に向けたとりくみに、鉄道の利用拡大が大きく位置づけられています。

―――旅客でも貨物でも乗用車、航空機による輸送から、鉄道、船舶輸送に抜本的にシフトします。特に、トラック輸送から鉄道、船舶輸送への切り替えを加速させます。

自転車の活用

 自転車は、最も身近な交通手段であり、自動車への依存度を低減させることで、交通混雑を緩和し、国民の健康増進の効果も期待できます。CO2等の温室効果ガスを発生せず環境にも優しい乗り物であることから、気候危機の打開にも寄与するものです。さらにコロナ禍のもとで、通勤・通学時の「密」を避けるために、自転車通勤・通学にも関心が高まっています。

 自転車の活用を推進するうえで、自転車の安全を確保することが重要です。安全確保のためには、歩道、車道と分離された自転車通行空間を整備することが求められます。しかし、実態は進んでいるとはいえません。政府は、歩道と分離された自転車通行空間を整備していますが、2022年度末で、全国で5,917kmとなっています。その内訳は、自転車専用道路54km、自転車道204km、自転車専用通行帯612kmと、歩道、車道と明確に分離した自転車通行空間は、全体の15%に過ぎず、85%は車道に矢羽根型路面表示等を記しただけの車道混在となっています。これでは、自動車との接触を恐れて歩道を通行する自転車があとを絶たず、自転車と歩行者との事故を減らすことも期待できません。

―――歩道、車道と分離された自転車通行空間を抜本的に整備し、自転車対歩行者事故を減らします。

―――無料の駐輪場を整備します。

―――自転車を安全に利用するために、学校における交通安全教育をすすめます。

―――自転車通勤の普及を促進するために、企業の責任範囲の明確化など環境整備を進めます。

―――通勤・通学、日常生活、観光などあらゆる機会に自転車の活用を推進し、交通における自動車への依存度を減らしていきます。

港湾・海運政策

知床遊覧船事故の教訓を生かし海の安全を守る

 2022年、多くの死者を出した知床遊覧船沈没事故は、国交省も重くとらえ、事故対策検討委員会を設置し中間とりまとめを経て、翌年、罰則強化などを盛り込んだ海上運送法の改正を行いました。その国会審議の中で、悪質事業者に対する国のチェック体制の甘さや、船舶検査を民間の機構丸投げするなど、国の監視・監督を弱めてきたことについて厳しく問われました。

 さらに、JR九州高速船(JR九州の子会社)が福岡と韓国を結ぶ高速船の浸水を隠蔽して運航を続けていたという重大な違法行為が発覚しました。高速船「クイーンビートル」は2024年2月、浸水が確認されていましたが、同社は国交省への報告を怠り、法令で義務付けられている修理と検査も行っていませんでした。5月30日に「亀裂が見つかった」として7月にかけて運休したものの、8月、国交省による抜き打ち監査により隠蔽が発覚しました。

 この問題が深刻なのは、浸水隠しのために、航海日誌などに「異常なし」と虚偽記載し、実際の浸水量を記録する裏の管理簿まで作成したことや、浸水警報センサー鳴動の高さを44cmから1mに上げる不正もしていたということです。さらに、同社は前年23年2月にも浸水を報告せず運航を続け、国交省からの安全確保命令を受け改善報告書を提出しながら、まったく改善していませんでした。

 もともとJR九州の日韓高速船事業は、国鉄分割民営化後、同社が鉄道の赤字を鉄道以外でうめようと1991年から始められたものです。コロナ禍を機に複数あった高速船を売却、1隻にしたため、不具合が生じたときに代替船を出せず運休を余儀なくされ、払い戻しなどで損益が出る状況にありました。安全を軽視し利益を優先してきたことは重大です。

―――自民党政治が1990年代後半から行った規制緩和で、安全よりもうけ優先の悪質業者が参入しやすくなりました。規制緩和路線を見直し、安全な海上輸送を取り戻します。

―――悪質事業者を退出させるため、十分な監査ができるよう運航労務監理官などの定員を拡充します。

島民の足-離島航路を地域公共交通として位置づけ、維持・存続する

 離島航路は、島と本土、島と島を結ぶ離島住民の足であるとともに、生活物資等の輸送手段としても重要な役割を果たしています。離島航路は、少子高齢化に伴う人口減少等の進行から利用者数はこの20年で約3割減少しており、その維持・存続は重要な課題です。

 離島航路は、2022年に291航路ありましたが、新型コロナの影響で廃止になった航路もあり、2024年度は276航路になってしまいました。

 離島航路事業者の多くは厳しい経営状況にあります。国の補助制度としては、地域公共交通確保維持改善事業による離島航路補助制度があり、2024年度は70.5億円の予算が計上され、125航路が補助を受けています。その内訳は、離島航路運営費補助約64億円、離島住民運賃割引補助約0.5億円、離島航路構造改革補助約5.9億円となっています。予算額は、この10年間、70億円前後と横ばいが続いていますが、離島航路を維持・存続させるために、国の支援を抜本的に強化する必要があります(離島に対する補助は、ほかに日本の領海、排他的経済水域等の保全を目的に、有人国境離島に対して行われている特定有人国境離島地域社会維持推進交付金等があります)。

 2022年、離島振興法が改正され、高速船(ジェットフォイル)建造や更新に対する支援が盛り込まれました。また、2024年の奄美・小笠原振興法の改正によって、奄美群島-沖縄間が運賃軽減対象路線に追加されました。

―――離島航路は地域公共交通として維持・存続を前提に、運賃値下げ、十分な運航便確保など利便性の向上を図ります。

国際戦略港湾政策から地方港湾活性化への転換を

 国際貨物物流では、船舶の大型化に対応できる国際コンテナ戦略港湾(京浜港・阪神港)を整備するとともに、コンテナ貨物を集荷するために、高規格道路の整備などもすすめるとしています。国交省は、地方港湾の貨物を、内航フィーダー輸送(支線輸送)の強化で、国際戦略港湾に集約するなどとしています。しかし、自動車産業が釜山港等の活用を考えて九州に事業所を集約するなど、輸送のコスト削減圧力が強まっている状況の下では、簡単な話ではありません。

 もともと、港湾整備事業は、90年代以降、アメリカの要請などによる公共投資拡大策で、「船の来ない港」「1,000億円の釣堀」など揶揄される港を全国各地につくってきました。その既存の港湾を地方活性化のため活用していくことが必要です。例えば、釜山などアジアのハブ港湾を中継すれば、直接、地方都市への貨物輸送が可能になり、三大都市圏の港湾に荷揚げされた荷物を陸路でトラック輸送しなくても済みます。モーダルシフトとしての内航海運の利活用の促進にもつながります。

―――国際戦略港湾事業は中止を含め抜本的に見直します。新規の大型港湾開発事業から、既存港湾の耐震化・老朽化対策など維持更新事業に重点を切り替えます。

―――物流貨物の大都市圏港湾集中から、地方に直結した物流へ転換します。

―――近隣国の港に奪われた「荷物を奪還する」など競争至上主義の発想ではなく、すでにハブ港となっている近隣諸国の港湾を活用し、日本の既存地方港湾と直接結ぶ輸送を重視するなど、「協調」による物流戦略に転換します。

―――モーダルシフトや地域の循環型経済を推進するため、内航海運の振興を強めます。

港湾、海運業の「規制緩和」・民営化に反対し、船員・労働者の雇用・労働条件を守る

 1990年以降の規制緩和、弱肉強食など新自由主義的な政策が、富の一極集中を進める一方で、庶民の生活を圧迫しています。しかし、自公政権は、港湾や海運業の規制緩和等を改めようとはしていません。

 海運において、90年代からの「需給調整規制の廃止」など規制緩和は、内航海運の船腹需給調整、旅客船事業や港湾運送事業での新規参入・運賃規制の緩和などとして進められてきました。その結果、過当競争によるサービスの質や安全性の低下、運賃のダンピングによるコスト削減が横行し、下請け事業者、船員・港湾労働者などにしわ寄せされました。また、離島航路も維持・存続が脅かされる状況が続いています。

 「港湾運営会社」を設立するなど、港湾運営の民営化に反対します。国際競争力強化や効率化と称して、もともと公共財である港湾を、特定の民間事業者の儲けの場として提供する懸念が払拭できません。これまでも規制緩和がすすみ、コスト削減競争が激化し、港湾で働く労働者に犠牲が押し付けられてきましたが、民営化で更に労働者の雇用・労働条件は深刻化することが危惧されます。

―――港湾運営の「規制緩和」・民営化に反対し、労働者の雇用労働条件を守ります。

 内航海運は、国内貨物輸送の約4割、鉄鋼、石油製品、セメント等の産業基礎物資輸送で見ると約8割を担っており、国民生活や経済活動を支える基幹的輸送インフラとして重要な役割を果たしています。能登半島地震はじめ災害時には緊急輸送など陸上輸送の代替機能として重要性が改めて認識されているほか、「2024年問題」(トラック運転手不足)が深刻なもとでモーダルシフトの受け皿としてより多くの貨物輸送を担っていくことが求められています。

 しかし、内航海運業者は、99.7%が経営基盤の脆弱な中小企業であり、寡占化された荷主企業への専属化・系列化が固定化しているという重層下請け構造であるうえに、船員も50歳以上が半数近くを占めるという問題も抱えています。これらの問題は、若い船員の定着率を引き上げるためにも解決が必要です。

 2021年5月に成立した改正内航海運業法では、①契約の書面交付の義務付け・契約事項の法定化、②船員の労働時間を考慮した運航計画の作成、③荷主への勧告・公表制度などが盛り込まれました。重層下請け構造の是正に向けて前進面はあったものの、労働環境の改善にはまだまだ不十分です。

 カボタージュ規制は、自国海運事業と自国船員の維持,国内産業物資の安定輸送、安全保障の観点から、自国内の物資または旅客の輸送は自国籍船に限る、というもので、国際的な慣行かつ世界共通の要件・規則です。収益を優先する企業は、コストで勝る外国籍船を導入するため特区や特許を利用しようと国や地方公共団体に働きかけるなどしてきました。緩和が進めば、外国籍船による国内海運業への深刻な打撃は避けられません。

―――船舶の安全な航行に直結する船員の労働環境を守り、船員不足の解決をはかります。

―――内航海運を守るカボタージュ規制を堅持し、安定的な海上輸送と安全保障、労働者の安全を確保します。

―――重層下請構造を見直し、船員の働く権利を守ります。

―――船員養成のための学校への交付金を増やし、船員を育てます。

―――労働環境改善のための法整備をすすめます。

航空・空港政策
安全・公共性を優先した航空・空港政策を

航空機事故の再発防止

 2024年1月2日、前日の元旦に起こった能登半島地震被災地への救援物資を運ぶために待機していた海上保安庁機と着陸のため進入してきたJAL機が衝突するという悲惨な事故が起こりました。JAL機に死者はありませんでしたが、海保機の乗員6名のうち5名が亡くなりました。

 羽田空港での事故を通して、空の安全を守る上で、航空管制官の過密労働が問題となっています。

 日本の航空管制が取り扱う機数は463万(2004年)から695万(19年)に1.5倍化しています。インバウンド(訪日客)拡大や航空機の小型化、格安航空の参入などで機数が増える一方、管制官は1,900~2,050人で推移し、運航情報業務や管制技術業務などを含む「航空管制官等定員数」は4961人(04年)から4,134人(23年)に減少。1人当たりの負荷が増えています。

 羽田空港の発着枠では、1993年の年間約19.6万回から現在、約49万回と増大しました。93年度に4,165万人だった旅客数は18年度には8,605万人に倍加しています。1日の利用者数は23万人で航空機の発着回数は約1,200回に上ります。

 2分に1回着陸する航空機に対応する羽田空港の管制塔(飛行場管制)では約90人の管制官が昼夜交代で24時間勤務しています。羽田空港で主に使用する滑走路は3本で、管制官は管制席に座る約7時間、常に緊張を強いられています。

 航空管制官には「疲労管理制度」があり、一定の時間(90分から120分)連続で対空通信業務をした後は、休息も含めて対空通信以外の席に着くことなど規制値を含め定められています。しかし、羽田空港のみならず全国的に余裕のない人員配置により、「疲労管理制度」が決して十分とは言えない状況です。

 国土交通省は、8月1日から羽田など離着陸回数の多い5空港で、管制官を計14人増やすと発表しました。うち羽田では6人の増員です。増員により、管制官の定員は2068人となりますが、120人程度の欠員が生じています。

 事故を受けて設置された有識者らによる対策検討委員会は6月、管制官が複数の作業を同時並行で行っている状態にあるとして、業務分担の見直しや増員を提言しました。

 日本共産党国会議員団は先の通常国会で、航空機の取り扱い数が増えているにもかかわらず航空管制官数は横ばいだと指摘し、管制官の大幅増員を要求しました。

―――自公政権が進める「定員合理化計画」をやめ、管制官の大幅増員とともに、事故に関わるメンタルケアの拡充を進めます。

 羽田事故では、客室乗務員の保安要員としての重要性があらためて認識されました。

 事故機には、ドア8カ所に対して9人の客室乗務員が編成されていました。しかし、路線や機材によってはドア数より少ない客室乗務員編成になる場合があります。

 要因のひとつに、国の示す基準が客席50席に1人となっていることがあげられます。席とドア数との比率でドア数より少ない客室乗務員編成が発生します。旅客機のドアは隣どうしにあるわけではありません。2つ以上のドアを使用不可能な場合ふさぐことも含めて1人で対応できません。

 世界の運航基準を定める国際民間航空機関(ICAO)は、「客室乗務員の最低必要人数の設定に関するマニュアル」(2017年)で、「客室乗務員の数とそのパフォーマンスは、航空機の脱出が成功するかどうかの重要な要素だ」と各ドアに配置することが有効だったと指摘し、ドアごとに客室乗務員を配置するよう推奨しています。

 客室乗務員連絡会(客乗連)は、航空機にドア数以上の客室乗務員を配置することと同時に、客室乗務員をライセンス制にして、保安要員としての役割を明確化することも以前から求めています。

 国際運輸労連(ITF)は2004年、「航空会社は客室乗務員の『女性らしい』サービスを重視するあまり、保安のプロとしての役割を軽視している」と問題提起し、客室乗務員を保安要員として認識させる運動を世界に呼びかけました。この20年でライセンス制を導入する国が広がり、世界の多数派になりました。

―――コストカット政策を改め、航空機にドア数以上の客室乗務員を配置するルールを作ります。

 羽田事故では、すぐに警視庁が業務上過失致死の疑いで捜査を始めました。しかし、航空事故調査の国際標準は、ICAOの条約付属書で、〝事故調査の目的は再発防止にあり、罪や責任を科す目的ではない〟と明記し、調査で集めた証言などを別目的に流用することを禁じています。調査当局は独立性を有し、刑事捜査とは分離すべきだとしています。

 ところが、日本政府は国際標準と異なる調査方針をとっていると宣言する「相違通告」をICAOに提出しています。

 日本での事故調査は運輸安全委員会が担いますが、警察に協力する「覚書」が結ばれており、関係者の証言は刑事捜査に流用される可能性があります。これでは、安心して証言できず、原因究明を阻害することになります。日本の事故調査は、世界の流れから取り残されています。

―――ICAOのルールにのっとり、事故調査を行う運輸安全委員会を刑事捜査から独立させ、原因究明、再発防止優先の事故調査制度にします

首都圏空港の更なる増便・拡張ありきを改め、空の安全、住民の生活環境を優先し、一極集中の是正を
羽田空港の都心ルート変更、成田空港の深夜飛行制限の緩和を撤回し、「機能強化」の見直し・転換を求める

 自公政権は、「首都圏空港の機能強化」として、羽田空港と成田空港の発着回数8万回増便(2020年までに)と滑走路増設を計画しています。羽田空港は、国際線の昼間時間帯を年間3.9万回増便するために、現在の海上ルートから都心上空に飛行ルートを変更して、新宿や渋谷、品川など都心部から埼玉県南部の市街地上空、川崎コンビナート上空を超低空で飛行させようとしています。5本目の滑走路を増設することも検討しています。成田空港は、年間約4万回を増便し、3本目の滑走路増設とあわせて、夜間に航空機を飛ばせない時間を7時間から4時間半に短縮する夜間飛行制限の緩和を提案しています。

 首都圏空港は、今でも混雑しています。航空機が住宅の密集する都心上空を低空で飛行すれば、騒音被害や落下物の危険をまき散らすことになります。これ以上、深夜の飛行制限を緩和すえば、静かな夜、睡眠時間を奪うなど生活環境を破壊します。最近の航空機パネル落下事故が相次ぎ、住民は、心配し、大きな不安を訴えています。

住民との約束を反故---住民無視、不在の住民合意のないまま強行することは、絶対認められない

 もともと空港整備は、航空機の騒音、墜落、落下物など住民生活、環境に対する配慮、住民との合意形成が前提です。そのため、羽田空港は、沖合展開の際に、都心上空ルートを避け、東京湾海上のルートを選択し、自治体と「確認書」を結んできました。成田空港も、周辺住民の生活環境を守るため、周辺自治体や住民との協議において、2013年に「確認書」を結び、夜間飛行を制限する措置をとってきました。

 ところが、今回、政府は、増便・増設を前提にした説明に終始し、一方的に住民や自治体に政府案を押し付けようとしています。これまでの住民との約束を反故にし、根底から覆すものと言わざるを得ません。住民無視、不在の住民合意のないまま強行することは、絶対認められません。

首都圏の空の安全を脅かす---混雑状態を緩和し、余裕を持って運航できる安全最優先の航空行政を

 政府の航空需予測では、首都圏空港の空港処理能力(75万回)が限界に達するのは、2020年代前半だと見込んでいます。2020年までに4,000万人の訪日外国人客を受け入れる目標は、容量拡大しなくても現状のままでも可能です。あえて20年までに8万回増便する必要はありません。羽田空港は、航空会社が要望する昼間時間帯が混雑し満杯状態にあるからです。成田空港は、夜間飛行制限の緩和による増便はカウントされておらず、24時間利用できる空港に近づける狙いがあるからにほかなりません。首都圏空港の現行の処理能力は、都心上空飛行禁止や夜間飛行制限など生活環境を守る約束のもとで許容されてきたものです。航空会社などの要望に応えるために、住民に犠牲を強いて処理能力を向上させるというのは本末転倒です。

 政府は、「東京湾上空は大変混雑」「新しい滑走路を作ったとしても、それだけでは便数を増やすことはできません」(羽田のこれから)と、都心上空ルート変更の必要性を説明しています。航空管制の指示で離発着する航空機の混雑は、瞬時の判断を一歩間違えば、大事故につながる危険性も高くなります。都心上空ルートに変更することで、混雑、危険度を軽減できるわけではなく、墜落や落下物の危険を増すだけです。

 羽田空港の機能強化で優先すべきは、増便のための容量拡大ではありません。今やるべきは、首都圏空港の混雑状態を緩和し、管制も機長も余裕を持って運航できる安全最優先の機能強化です。

地方の活性化、東京一極集中の是正、安全安心の機能こそ強化を

 首都圏空港にヒト・モノ・カネが集中すれば、東京一極集中を加速することは目に見えています。国際金融都市構想など外資系金融会社等の誘致など都市再生・再開発事業が目白押しで、超高層オフィスビルも都心のいたるところで建設されています。首都圏空港を国際線と国内線との中継拠点とする「際内航空ネットワーク」を強化すれば、地方の活性化や一極集中の是正にも役立つどころか、地方から東京へ流出するストロー現象も加速されるだけです。

 訪日客の多くが東アジア、東南アジアなど近隣諸国である現状からすれば、地方の空港へ直行する航空路を結ぶことは難しくありません。多くが赤字経営の地方空港に、直結する航空旅客が増えることのほうが地方活性化に役立つのは明白です。

 安倍政権の成長戦略により、航空需要の増加を理由にして、空港の容量を拡大して、増便や拡張をすすめるなら、次から次へ野放図な税金・公的資金の投入が懸念されます。いま、緊急に求められているのは、首都直下型地震など大地震に備えた羽田・成田空港施設の耐震改修や老朽化対策など空港機能の安全安心です。テロ対策などセキュリティ、保安対策、航空管制の体制強化なども重要です。

空港の民営化(事業運営権売却・コンセッション方式)に反対し、空港経営のあり方を見直します

 国と地方が管理する空港は、全国に98空港もあります。採算を度外視した過大な需要予測によってつくられましたが、その多くが、いまでも採算が取れず赤字経営を続けています。

 政府は、空港の事業運営権を民間に売却する(コンセッション契約)などで採算がとれる空港経営をめざしています。しかし、実際には、採算の取れる事業分野を民間企業に売却し、利潤獲得のために利活用させるもので、空港の安全性や公共性を確保する公的な責任をあいまにするものです。

 政府は、コロナによる航空便数の廃止・大幅減によって収入減少・経営難に陥った空港運営会社の救済策として、コンセッション(民営化)空港に対し、施設整備費用への無利子貸付や運営権対価分割金等の猶予などの支援に乗り出しました。

 しかし、もともと2013年の民活空港運営法により、空港経営改革として導入された空港コンセッション(民営化)の目的は「民間の知恵と資金の活用等により空港経営の徹底的な効率化を図る」ことでした。今回の支援により、コンセッション導入の目的に照らしても、何のための民営化だったのか、破たんが明らかになっています。空港経営のあり方を見直すべきです。

※「民活」方式の失敗で巨額の負債を抱えた旧関西空港と国直轄の伊丹空港を民営化・統合し、新関西国際空港(株)が2012年7月発足。関西エアポート株式会社(「オリックス、ヴァンシ・エアポート コンソーシアム」が設立した新会社)が2016年4月から運営開始したのがコンセッション空港の始まりです。これまでに国等の管理で、仙台空港、高松空港、福岡空港、熊本空港、北海道内7空港、広島空港が運営開始し、地方管理では、但馬空港(兵庫県)、神戸空港(神戸市)、鳥取空港(鳥取県)、静岡空港(静岡県)、南紀白浜空港(和歌山県)で開始しています。

 政府は、PPP/PFI推進アクションプラン(令和6年改定版)で「原則として全ての空港への公共施設等運営事業の導入を促進するもの」としています。

――離島航空路など住民の空の足を確保する公共交通として必要な空港は、維持・存続させ、支援を強化します。

――空港の民営化(事業運営権売却・コンセッション方式)に反対します。

――空港の安全対策、航空機の騒音対策など住民が安全・安心して暮らせる周辺対策を優先して取り組みます。

航空業界の雇用を守る支援こそ、JAL解雇争議の早期解決を―――コロナ禍を理由にしたリストラや安全規制の緩和を許さず、航空の安全、雇用を守ることを最優先にするよう監督・指導を強めます

 これまで、航空業界の経営難に際し、政府は、航空会社に対して、支援の前提条件として、徹底した合理化、コスト・人件費削減などの事業計画を作成させてきました。また、航空会社の要求に応え、安全規制の見直し・緩和を行なってきました。

 2009年リーマンショック後の日本航空(JAL)の経営破たんでは、国の支援と引き換えに、再建計画に基づいて1万6千人の人員削減が行なわれ、それに伴い、不当解雇が行われました。このリストラは、すでに人員削減目標も達成し、再生計画を上回る利益(2010年12月時点で1,586億円)をあげ、稲盛会長(当時)が解雇の必要がないことを認めていながら、165人のパイロットと客室乗務員の解雇を12月31日に強行するという、不当極まりないものでした。この「整理解雇」は、たたかう労働者・労働組合を狙い撃ちにした、労働者・国民の権利を奪う攻撃であるとともに、航空の安全運航を支えてきたベテラン労働者を対象にした航空の安全を軽視する「利益なくして安全なし」を実践するものでした。解雇裁判では、JALの不当性は認められませんでしたが、労働組合に対する不当な介入は不当労働行為だと最高裁で断罪されました。

 ILOから4次にわたる勧告を受け、JAL社長が「解雇問題を早期に解決したい」と発言したにもかかわらず、いまだ、解決にいたっていません。

 JALは、165人の整理解雇を強行したことから、"雇用を守ると言っても信用できない"との不信や不安を払しょくできていません。公的支援を受けるJALは、争議の解決をはかり、雇用を守る責任を果たすべきです。

 政府は、165名の解雇問題・争議を一日も早く解決するため手立てをうち、JALにその責任を果たさせるべきです。

――日本航空が公共交通機関として、航空の安全と公共性の確保を最優先するよう監督・指導を強めます。

――日本航空によって不当に解雇された乗務員の争議の早期全面解決を求めます。

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