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日本共産党

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赤旗

47、動物愛護

ペットの殺処分ゼロをめざし、人と動物が共生する社会を

2024年10月

 犬や猫などのペットは、こんにちでは単なる愛玩動物としてだけでなく、コンパニオン・アニマル=「伴侶動物」と考えて飼育する人も少なくありません。保健所への持ち込みや捕獲による犬や猫の殺処分数は、この間、市民団体や保健所の譲渡・返却の懸命の努力で2010年度には年間20万件を超えていたものが、2022年度には1万2,000件まで減少しました。

 また、愛護団体の粘り強い働きかけを受けて、超党派の「犬猫の殺処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟」が提案した改正動物愛護法が19年6月に可決、成立し、昨年6月から施行となりました。飼育頭数など数値規制については2024年6月に完全実施となります。

改正された動物愛護法の確実な実施を

 改正法では、ペットショップなど動物取扱業者に順守を義務付ける基準として、飼う施設の構造や広さ、従業者数、環境管理、疾病への対応、展示・輸送方法、繁殖回数・方法などについて環境省が定めました。その完全実施を図るため、事業者の実情をよく把握し、必要な場合はアドバイスや支援を行えるよう、対応・支援策を業者と自治体が連携して議論する場を国が設けるべきです。

 犬や猫を親から早く引き離すと、かみ癖など問題行動が出る可能性、ひいては飼育放棄、殺処分つながる恐れがあるため、子犬・子猫の販売を始められる時期を、生後56日(8週)超とする規制が実施されました。なお、特定の条件で繁殖か販売される「天然記念物として登録された犬」(日本犬)が例外として、生後7週超となっています。しかし、「8週齢規制」に違反して販売する悪質業者の存在が指摘されており、改正法の確実な実施のための体制づくり、国からの自治体への支援が必要です。

 マイクロチップ装着の義務化は、繁殖業者などが対象で、犬猫の生年月日や業者の情報が分かる識別番号が記録されたチップを、犬猫に装着されます。犬猫を買った人は飼い主情報を登録する義務が生じます。すでに飼っている人は、装着は努力義務となります。しかし、「8週齢規制」の潜脱のため、繁殖業者が生年月日を偽装している事例があるとの指摘もあり、偽装への対策が必要です。

 後を絶たない多頭飼育崩壊問題については、改正法の罰則強化により立ち入りがしやすくなったものの、高齢者や一人暮らしの人が、多頭飼育に陥らないうちに相談やアドバイスができる体制をつくります。

 犬猫の殺傷事件やインターネット上に犬や猫の虐待動画を投稿するなど、悪質なケースが後を絶たないため、改正法は動物虐待罪の罰則を強化しました。ペットの殺傷に対する罰則を改正前の「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」から「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」に引き上げました。虐待や遺棄は、100万円以下の罰金から、1年以下の懲役(または100万円以下の罰金)に引き上げました。虐待を把握した獣医師による通報の義務化なども盛り込まれています。

 動物愛護法の改正で、愛護団体の要求も取り入れられましたが、殺処分を減らすためには、なによりも飼い主の責任として、終生飼育が基本です。同時に、引き取り手の見つからないまま子猫・子犬が処分されることがないよう、里親を探すなど譲渡する数をふやすことが依然として重要です。改正法では動物愛護管理センターを都道府県は設置し、動物の適正飼養・保管の専門知識をもつ動物愛護管理担当職員を置くと定め、政令市・中核市、特別区にも動物愛護管理担当職員を置くよう努めるとしています。さらに自治体と「民間団体との連携の強化」や、「地域における犬猫等の動物の適切な管理」が加わり、国はそのための情報提供、技術的助言など必要な措置を講じるとしていますが、現状では担当する自治体職員の補充や予算の確保が進んでいません。改定内容を具体化するためにも、国・自治体が計画的に取り組むことを求めます。

 子犬は引き取り手が見つかりやすいのに比べ、成犬はみつけにくく処分されることが多いといわれています。譲渡の可能性を広げるためには、性格を知り、生活ルールなどを身に付けさせ、一定期間の健康管理をするなど手間と時間が必要です。行政だけでこうした措置をカバーすることは困難ですが、愛護団体やNPO、地域の住民の協力なども得られる仕組みをつくります。動物の保護に力を尽くしている支援団体の中には、ボランティアの確保や財政的な基盤に困難を抱えている団体もあり、政府は、市町村による動物との共生の地域ビジョンの作成を支援し、不妊手術への助成制度の創設や、譲渡促進のとりくみへの支援などに乗り出すべきです。

動物実験に関して「3Rの原則」の遵守の法的義務化、動物実験施設の把握を

 現行の動物愛護法では、国際的な共通認識となっている「動物実験の3Rの原則」うち、「苦痛の軽減」は義務規定となっていますが、「動物を用いない方法への代替」や「実験動物数の削減」の遵守は配慮規定となっています。EUやアメリカの研究協議会の取り組みに学び、「動物実験の3Rの原則」のすべての法的義務化をするべきです。また、現状を理解するために、動物実験を取り扱う施設や実験動物の把握を義務化することは、国民の理解を高め、透明性の向上のためにも必要です。

 動物の安楽死の問題では、国際的なルールをよく検討し、苦痛をできるだけ与えない方式を目指します。

災害時の動物保護に備える

 気候変動の影響もあって、豪雨、風水害などの気象災害が増加しており、また地震国としての地震・津波被害への対応も常に心掛けなければなりません。自宅からの避難を余儀なくされた場合にそなえ、避難計画に、ペットの避難を位置付け、同伴・預かりの体制を検討することが必要です。

アニマルウェルフェア・ワンヘルスを踏まえた基準・支援策を進める

 EUに牛肉などを輸出する場合には、アニマルウェルフェア(動物福祉)を踏まえた飼養管理・輸送・屠畜がなされたかが問われるなど、アニマルウェルフェアの取り組みが進んでいます。アニマルウェルフェアは、動物の本来の自然なふるまいを尊重し、生活環境からのストレスを減らし、空腹・不快・苦痛・恐怖を与えないように動物の生活の質の改善を図ることです。そのために能力・エサ・空間における集約化を緩和することになります。また、ワンヘルス(人・動物・環境の健康はつながっているという考え方)の観点も踏まえる必要があります。日本は、ブロイラーや採卵鶏の飼育のように大規模な工場的な生産が行われているものや、肉牛・乳牛飼育、養豚のように小規模生産が多数存在する分野もあり、状況をよく踏まえて、基準や支援策を定める必要があります。

エキゾチックアニマルの飼育ルールの整備を

 主に海外から輸入され、特に珍しい動物や飼育例が少ないマイナーな動物である「エキゾチックアニマル」の輸入、販売、飼育に関しては、飼育のガイドラインや届け出制を検討する必要があります。

多様な動物への考え方を情報共有する

 動物に関する考え方は、愛玩動物、畜産などの産業動物、実験動物、動物園などの展示動物、盲導犬・救助犬などの支援用動物、野生動物などのそれぞれの分野や、あるいは国ごとの文化で、異なります。人と動物が共生できる社会を目指していくには、各分野の状況を情報提供し、認識の共有を図る必要があります。

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