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日本共産党

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赤旗

33、金融

異常円安・物価高騰をもたらした「異次元の金融緩和」を止めて金融正常化を進め、国民の暮らし、中小企業を支える金融政策に転換します

2024年10月

異常円安を容認する「異次元の金融緩和」路線を転換し、金融正常化を進めます

 日本銀行は2013年4月より、「アベノミクス第一の矢」として、民間銀行の保有する国債等を買い上げ、大量に資金を供給する「異次元の金融緩和」を進めてきました。この大量の資金供給に期待した投機的な動きが活発化したことにより、円安と株高が急速に進みました。この結果、富裕層や大企業には巨額の利益がもたらされました。

 異常円安・物価高騰で国民生活と中小企業への悪影響が拡大し、異次元金融緩和の破たんが明らかになる中、日銀は政策金利を引き上げる金融政策を正常化する方針を示しました。3月、7月の政策決定で、マイナス金利、ゼロ金利という超低金利からの脱却を決め今後、国債購入を減額していくとしています。

 異次元緩和政策を止め、異常円安を是正するのは当然です。政府・日銀には、異次元緩和への根本的な反省と政策転換が求められています。また、物価高で痛んだ家計や中小企業が今後、政策金利引き上げの悪影響を受けることが懸念されており、しっかりと手立てをとることが必要です。

 政府と日銀は、「異次元金融緩和」によって大量の資金を供給すれば、インフレ期待によって物価が上昇し、経済の好循環が生み出され、デフレ打開につながるとしてきました。しかし、異次元緩和は日本経済に深刻な弊害をもたらしました。

 株など資産価格の上昇で日本の大資産家、上位40人の資産は、12年間(2012年→2024年)で、7.7兆円から29.5兆円へと3.8倍にも膨れ上がりました。

 自動車などの大企業は史上最高益の水準を確保し続け、2012年から2023年にかけて、内部留保は200兆円以上増えて539兆円(2023年度末)を超えました。

 しかし、大企業や富裕層の利益は増えたものの、実質賃金は2012年の約404万円/年から2023年は371万円/年と約33万円も下がりました。さらに消費税増税の負担増も加わり、個人消費の長期に渡る低迷をもたらしました。

 さらに超低金利の長期化で、家計の利子所得は大きく減少しています。2022年度は6.4兆円で、「ゼロ金利政策」直前の1998年度比で約9兆円、91年度比で30兆円以上減り、その分、低利で多額の資金調達ができる大企業への所得移転が起きています。

 国民の消費が低迷するなかで、いくら日銀が民間銀行に大量の資金を供給しても、それが企業の貸出にはつながらず、民間銀行にたまる一方でした。銀行等が保有する日銀当座預金の残高は、安倍政権発足前の40兆円規模から、直近では約549兆円(2024年9月末現在)まで増加しています。

 実体経済が改善されず、株価の下落傾向も生じる中、「異次元金融緩和」路線の行き詰まりが明らかになってきました。日銀は2016年に、「マイナス金利」という異例の措置に踏み切りました。日銀当座預金の一部にマイナス金利を適用することで、さらなる金利低下と融資の活発化を狙ったものですが、金利は低下したものの、貸し出しが活発化することはなく、むしろ、銀行がマイナス金利による損失を顧客にしわ寄せするとか、国債等の金利低下で資金運用が困難になるなど、弊害の方が強くあらわれる状況となっています。

 一方、大量の国債を買い続けてきた結果、日銀が保有する国債等残高は、2024年9月末で約585兆円(国庫短期証券を含め)に達し、国債等残高(約1,265兆円)の46%にもなっており、財政を日銀が事実上「丸抱え」する異常な状況です。これは、高インフレなど経済混乱を招く危険性があるとともに、急拡大する軍事支出など財政の浪費をいっそう推進するものです。

 日銀は、異次元の金融政策の一環として行われていたETF(指数連動型上場投資信託受益権)の買入れを、新型コロナによる経済危機への対応で2021年3月、6兆円から12兆円に増額しました。さらに、2022年3月には「買入の上限を12兆円」とする枠組みは残したまま「年間6兆円を目安に増額する」という従来の方針は廃止しました。買入を株価大幅下落局面に限定し、まさに株価つり上げ策としての性格を鮮明にしました。2024年3月、「金融正常化」の中でETFの新規購入を中止することとなりました。

 日銀のETF保有残高は約37兆円(2024年3月末、時価)に達します。日銀のETF買入れのタイミングは、おおむね株式市場で株価が下落傾向の時で、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の株式投資とあわせて、株価の買い支えの役割を果たしてきました。この結果、株価の暴落が起これば日銀が債務超過となるリスクが高まっています。

 昨年来、アメリカや欧州各国が金融緩和政策を見直す中で、日本だけが「アベノミクス」で始めた「異次元の金融緩和」を続けてきたため、政策金利の差が広がり、その結果、異常な円安をもたらしました。とりわけ、「ウクライナ侵略」が始まってから、アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)は資源や食糧などの国際価格の急激な高騰が押し上げるインフレに対して追加利上げなどの措置で対抗してきたため、日米の金利差はますます広がりました。異常な円安をもたらし、物価上昇に拍車をかける「異次元の金融緩和」をからの脱却を確実に進め、日銀が「国民生活の安定」という本来の役割を果たすよう転換を図ります。 

中小企業と地域経済を応援する金融行政に転換し、コスト削減本位の地方銀行再編に反対します

 物価高騰、個人消費の低迷が中小零細企業を直撃しています。また、コロナ禍への対策で実施してきたゼロゼロ融資、コロナ借換保証などの支援策が早期に打ち切られたため、過剰な債務が大きな負担となっています。

 2024年上半期の中小零細企業の倒産は2014年以降で過去最多レベルの、4,870件と前年同期比で電話22.6%増です。特に個人事業主と資本金1千万未満の企業では3,464件27.4%増と深刻です。その内、物価高倒産は484件(前年の同期比29.1%増)と過去最多、ゼロゼロ融資後倒産は390件(前年同期比27.9%)と、これも過去最大規模です(帝国データバンク)。異常円安による原材料、エネルギー価格の高騰に苦しむ中小企業への支援策の拡充が急務です。

コロナ対応融資(ゼロゼロ融資)を「別枠債務」にして、事業継続に必要な新規融資が受けられるようにする。

 現在、日本政策金融公庫は、コロナ対策として、金融機関から企業への融資の一定部分を「別枠」にし、出資とみなして、新たな融資ができるようにする「資本性劣後ローン」を実施しています。しかし数年後に一括返済を求められ利子負担も高いなど、中堅企業でも使いづらい制度で、小規模事業者は対象外におかれています。

 新たな資金調達が可能となるように、事業者の規模に関係なく、「ゼロゼロ融資」をいったん通常の債務から切り離し、「別枠債務」とすることを提案します。

 ――「別枠債務」は、一定期間(1~5年程度、経済状況によっては延長あり)、無担保・無利子のまま返済を猶予します。

 ――金融機関は「別枠債務」を既存の融資残高から除外し、その融資枠を新規融資にまわせるようにします。

 ――「別枠債務」は保証協会が保証をつけ、返済猶予期間の利子など地域金融機関にも借り手の事業者にも負担が生じないよう国が支援します。保証協会の保証料は国が負担します。

 ――「別枠債務」の返済が可能になった時点でも、その後の事業に支障がない返済計画に金融機関が協力できるよう国が支援します。

債務の減免をふくめた「中小企業・事業再生スキーム」を、より小規模な事業者にも適用できるようにする。

 政府は「中小企業活性化パッケージNEXT」のなかで、関係金融機関が「事業再生スキーム」のもとで、借り手の中小企業にたいして債務の減免も含めた支援を行うことを要請しています。しかしあくまで関係者まかせで、すべての中小企業が対象にならず、小規模事業者は事実上の対象外となっています。

 ――小規模事業者であっても、関係金融機関から債務の減免が受けられるよう、「事業再生スキーム」を改善し、小規模事業者へのサポート体制の強化と、債務減免にともなう金融機関の負担軽減のために無税償却の積極活用など政府の支援を強化します。

「地域経済再生給付金」(仮称)を創設し、困難に直面している中小企業・小規模事業者への直接支援を行う。

 コロナ危機の影響、原材料高の影響、過剰債務の状況は、地域、業種によって格差があります。全国一律の対策だけでなく、地域、業種の実情に応じた支援の仕組みが必要です。

 ――都道府県、政府系金融機関、地域金融機関、地域中小企業団体などで構成する「地域経済再生委員会」をつくり、基準と要件を明確にし、透明性を確保したうえで、「委員会」が必要と判断した地域の産業、業種の事業者の再生を支援する「地域経済再生給付金」(仮称)を創設します。給付額は、持続化給付金以上の水準とし、事業所の規模などに応じて給付します。このスキーム(枠組み)を国が明確に示したうえで、地方創生臨時交付金を拡充します。

 自民党政府は従来から、コスト削減・利益本位の銀行再編を進めてきました。「地方銀行の数は多すぎる」とする菅前政権以来、その圧力がいっそう強まり、金融サービス・利便性の低下が懸念されています。最近では青森県の青森銀行とみちのく銀行が2021年5月に、長野県の八十二銀行と長野銀行が2022年9月に合併する方針を発表。それぞれ2025年と2026年の元旦の合併に向けて準備を進めています。住民、地元企業からは「店舗統廃合で利便性が低下する」「競争が無くなり融資条件が厳しくなる」と不安の声が上がっています。銀行の統合・再編はあくまで当事者の自主的判断で行われるべきであり、コスト削減、利益本位の再編は直ちにやめるべきです。

 金融円滑化法の期限到来後も、中小企業の貸し付け条件の変更の申し込みに対する実行率は、9割を超えています(2024年8月まで)。金融機関の中小企業に対するコンサルティング機能の強化を推進します。

 いま必要なことは、民間金融、公的金融がともに、利益本位ではなく、本来の役割を発揮できるように金融行政をおおもとから転換することです。日本共産党は、企業の99%、雇用の7割を支える中小企業を支え、地域経済に円滑に資金が供給されるよう金融行政を転換します。

「地域金融活性化法」を制定し、資金繰りを円滑化します―――短期のもうけを最優先する規制緩和や地域金融の切り捨て路線を見直し、中小企業をはじめ実体経済に貢献する金融へ転換します。「地域金融活性化法」を制定し、地域金融の再生をはかり、資金供給を円滑化するルールをつくります。

 政策金融と信用保証を見直し、中小企業の資金繰りを下支えするという、本来の役割を果たさせます―――➡各分野の政策「36、 中小企業」をごらんください。

 個人保証の原則廃止を実現します―――2017年の民法改正が踏み込まなかった第三者保証の全面禁止を実現します。また経営者個人保証や担保に依存しない金融システムを推進します。

 地域に密着した中小損保代理店の営業と権利を守ります。

 ――中小損保代理店は災害などいざという時の地域のセーフティーネットの役割を果たしてきました。にもかかわらず、長い間、中小代理店は、大手損保会社から手数料ポイント制をつうじた一方的な手数料の減額や「乗り合い拒否」など不当な扱いを受けてきました。しかしこの数年、現場の運動と日本共産党の国会論戦によって金融庁を動かし、一定の改善を進めてきました。大手損保の優越的地位の乱用、不当なやり方の根底には、ビッグモーター事件で顕在化した目先の利益ばかり追求する損保業界のゆがんだ体質があります。

 中小代理店の営業と権利を守るとりくみは業界の正常化をすすめることにもなります。引き続き、わが党は、優越的地位の乱用をやめさるために、公正取引委員会のとりくみの強化や、金融庁にたいし、大手損保と代理店の対等平等な関係をつくるための指導やガイドラインの策定を求めていきます。

 生保の営業職の「大量採用・大量離職」(ターンオーバー)の慣行を見直します―――日本の生命保険会社には、営業社員を大量採用し、過剰なノルマ、給与の査定落ち、パワハラなどで業績の悪い職員を辞めさせるターンオーバーの慣行が残っており、いまでも5年のうちに8割の職員が辞めるといわれます。また、日本の大手生保の営業社員の約95%が女性で、男女賃金差別の温床にもなっています。人権をも無視する労働慣行をやめさせ、営業社員の権利を守り、安心して働ける環境への改善を図ります。

カードローンなどによる多重債務問題の解決をはかるとともに、個人向けセーフティーネット貸出を拡充します

 物価高で生活が圧迫される中、民間の調査では銀行、貸金業者のカードローンの利用目的の約5割が「生活費」に充てるためとなっています(2024年6月実施)。貸金業者からの借り入れによる多重債務者(3件以上)は2020年度の114.2万人から増加傾向が続き、2023年度は139.8万人となっています。

 銀行カードローンは消費者金融(サラ金)なみの高金利でありながら、年収の3分の1を超える貸付けを禁じる「総量規制」がなく、「第2のサラ金化」しています。政府は「多重債務問題は解決した」と主張してきましたが、銀行カードローン利用者を含めた多重債務者の正確な状況を把握していません。クレジットカードの「リボ払い」利用から借金を重ね、多重債務化する問題も生まれており、見過ごせません。

 日本共産党の指摘で金融庁がメガバンクに指導し、「貸出制限」など自主ルールを決めさせる改善は進みましたが、高金利の引下げなど抜本改正に取り組みます。本当に資金を必要とする人が、安心してお金を借りることのできるセーフティーネット貸出制度を緊急に拡充・強化することが必要です。

―――銀行カードローンに総量規制を導入し、貸金業法と同等の規制を設けます。

―――だれでも利用できる身近な金融相談窓口を整備します。低利の生活福祉資金貸付制度や緊急小口資金貸付制度を抜本的に拡充するなど、個人向け、離職者向け、個人事業者向けのセーフティーネット貸出制度を拡充・強化します。その際、生活再建のためのカウンセリングと組み合わせるなど、制度の運用改善をすすめます。

―――貸金業法の改悪を狙う動きを許しません。利息制限法の上限金利(20%)の更なる引き下げを求めます。

―――貸金業法の円滑な施行をすすめるとともに、形を変えて暗躍しているヤミ金、偽装質屋などに対する取締りを抜本的に強化します。警察、金融庁、金融機関などによる総合的なとりくみをすすめます。

災害被害者の「二重ローン」問題の解決を急ぎます

 東日本大震災や熊本地震で被災した住民や事業者の「二重ローン」の解消は、地域再生のためにも重要です。

 中小企業庁の産業復興機構と復興庁の事業者再生支援機構が、再建の意欲のあるすべての中小事業者を救済するため、金融機関への指導など支援を強めるよう求めます。

 個人事業者・個人の銀行からの負債を軽減し再生を目指す「私的整理ガイドライン」は、日本共産党や地元弁護士の要望を受け、一定の基準の見直しがすすんできましたが、被災者の生活再建のために、いっそうの制度の運用と内容の改善をすすめます。

「貯蓄から投資」、金融自由化路線を転換し、投機マネーの規制、金融被害の根絶、金融機関に社会的責任を果たさせるルールをつくります

 1990年代の「日本版金融ビッグバン」以降、銀行・証券業界の後押しで、金融自由化・規制緩和が進められ、それと一体に預貯金を投資に誘導する「貯蓄から投資」政策が実施されてきました。岸田前政権は「資産所得倍増プラン」(2022年12月)、「資産運用立国実現プラン」(2023年12月)を策定し、「貯蓄から投資」路線をいっそう強め、石破政権はその路線を継承するとしています。その狙いは、株価つり上げと金融業界の利益拡大です。

 「倍増プラン」では、NISA(少額投資非課税制度)の最低投資額を大幅に引き上げるなど抜本的に拡充すること、また学校や職場で投資推奨の教育を進める行政機関として金融経済教育推進機構を設立する方針を打ち出し、昨年の国会で法改正が行われました。

 NISAは2014年に導入され、それ以来拡大されてきました。小規模な投資を行う「庶民投資家」への課税を富裕層より軽減するのは必要なことですが、今回の改正のように富裕層向けの大幅拡大は問題です。モデルとされたイギリスの個人貯蓄制度(ISA)が預金利子も非課税の対象となっているのと違って、日本の制度は株式投資だけに限定された歪んだものです。対象を狭めない小口投資の非課税枠をつくり、投資先は投資家の判断にゆだねるようにすべきです。

 金融庁所管の金融経済教育機構が行う教育に対して、教育専門家、消費者問題に関わる弁護士などから、「投資のメリットが強調され、投資被害が増える」と懸念の声が上がっています。教育に投資勧誘ビジネスを持ち込むのではなく、教育や消費者問題の専門家が教育内容を主導する体制とするべきです。

 この間、若者を含めNISA口座数が増え、投資への関心も高まっています。その背景には、政府と金融業界による「日本人はリスクを取っていない」という宣伝とともに、公的年金など社会保障が削減され老後への不安が高まっていることがあります。社会保障を削る一方、「老後の資金は自己責任で」と投資を勧めることは、政府としての責任放棄に他なりません。

 個人の金融資産をねらった被害が多数にのぼっています。上場株や投資信託、債券について、国民生活センターに寄せられた相談件数は、金融・保険サービス全体では2023年度に63,983件で前年度比3,457件の増加です。その中で「株一般」については2023年度1,025件と前年度比216件増加、外国為替証拠金取引(FX)は3,907件と前年度比1,371件の急増です。銀行、保険会社、郵便局が投資信託、保険などの金融商品を、リスクの説明が不十分なまま販売するなどの事例が後を絶ちません。投資詐欺が急増しており、SNS型投資詐欺の被害額は今年1月から8月で641億円(4,639件)、前年同月比で500億円以上の急増です。

 一方、自民党政権は金融業界の要望を受け、規制緩和を進めて消費者保護、投資家保護策を弱体化させてきました。2020年には、「スマホ投資」「スマホ金融」を普及するため、銀行、証券、保険など金融仲介業の兼業を容易にし、さらに一般事業者の金融仲介業への参入要件を緩和する法改正を行いました。また、岸田前政権はスタートアップ育成政策の一環で、リスクの高い未公開株への投資を促進する規制緩和を進めました。未公開株に投資できる個人投資家の範囲を大幅に拡大するとともに、未公開株をNISAの対象となる投資信託に組み込めるルール改正を行いました。

 銀行、証券、保険などすべての金融商品について、「不招請勧誘」(望まない人への勧誘)の禁止と「適合性原則」(消費者の財産、知識や目的などに合わない取引の禁止)の徹底など、国民が不当な金融被害を受けないような仕組みをつくります。

―――金融被害の温床となっている金融商品販売担当者に対する過大なノルマのおしつけをやめさせます。

―――無登録金融業者による未公開株詐欺など金融犯罪を取り締まるため、証券取引等監視委員会の人員、権限を抜本的に強化します。

―――裁判外の苦情・紛争解決支援制度(金融ADR)の更なる充実や、被害回復給付金支給法の改善など、金融被害を受けた方への救済制度を拡充します。

―――高齢者などをねらった「振り込め詐欺」などの「特殊詐欺」とされる件数が、1万9千件を超え(前年比8.4%増)、被害額も約453億円(前年比22%増)となるなど最悪水準となっています。こうした被害は、警察、自治体、関係団体と連携し、ただちに根絶します。

 投機マネー規制、国際金融機関の改革など国際的なルール作りを進めます

 世界経済を混乱と不況に陥れたアメリカ発金融危機から16年余り。投機マネーの規制、バブルの防止、金融危機への対応策をめぐって、欧米各国においても、「先進国」の枠を超えたG20、FSB(金融安定理事会。各国金融当局等が参加する国際協力機関)、IMF(国際通貨基金)などで国際的な議論が進められてきました。

 EUでは、投機的取引の規制と金融機関への社会的責任を求め、株、債券、デリバティブ(為替取引を含む)取引など幅広く金融取引に課税する金融取引税の議論が進んでいます。既にフランス、イタリアでは一部を先行導入し、ユーロ圏11カ国での共通の金融取引税の導入に向けて取り組んでいます。

 しかし、全体として、アメリカでヘッジファンドや銀行の投機的取引に抜本的な規制を加えるボルカー・ルールが骨抜きにされるなど、「金融自由化路線」の抜本改革にはほど遠い状況です。米国発金融危機、コロナ危機などで強化された金融緩和により、ヘッジファンド、資産運用会社など規制の緩いシャドーバンク(銀行以外の金融仲介機関)に巨額の投機マネーが流入し、株価や地価の乱高下をもたらしました。IMFやFSBもリスクを警告しています。

 またウクライナ、中東の危機的な情勢と相まって、投機マネーの流入が資源エネルギー、食料の価格高騰をもたらし、世界経済に深刻な打撃を与えています。日本でも、円キャリー取引(低利の円を調達し高利回り通貨で運用)による為替相場の乱高下、国債のカラ売りによる金利急騰などが問題になっており、ヘッジファンドなどの投機的取引への規制は急務となっています。

 国連やG20で進められている国際的なルールづくりにおいて、積極的なイニシアチブを発揮します。巨大金融機関の投機活動を規制して、公的責任を果たさせるルールづくり、ヘッジファンドなどの投機筋やデリバティブなどの投機的取引の規制、バブルの防止と金融危機への対応策の強化を進めます。国際連帯税(通貨取引税など)など、投機を規制するしくみを検討します。

 IMFなど国際金融機関の意思決定のあり方について、途上国、新興国といったグローバルサウスの国々の代表制、発言力を高めるとともに、「先進国」とくにアメリカ主導のしくみを改めます。

大資産家優遇の証券税制を改めます

 不公平税制の最たるものである証券優遇税制は、税制民主化の運動と日本共産党の追及もあり、所得税・住民税あわせた税率は2014年から20%に引き上げられました。一方、欧米の富裕層の株式配当への最高税率は、アメリカ(ニューヨークの場合)38.6%、イギリス39.35%、ドイツ26.375%、フランス30%です。株式譲渡所得への最高税率も、アメリカやドイツ、フランスは配当と同じ(いずれも2024年1月現在)であり、日本は依然として低い状況が続いています。アメリカのバイデン政権は、さらに5%の引き上げを提案しています。これによる減税額は、財務省の見込額(所得税のみ)で、安倍政権下の2016年度には1兆円を超えています。

―――世界に例を見ない大資産家優遇の配当や株式譲渡所得の税率軽減措置を改めます。株式配当は少額の配当や低所得者の場合を除き、勤労所得などとあわせた総合課税を義務づけ、富裕層の高額の配当には所得税・住民税の最高税率が適用されるようにします。譲渡所得についても将来的には総合課税とすることを検討しますが、分離課税が続いている間も、欧米諸国の水準にあわせて高額所得者には30%以上の税率が適用されるようにします。

―――証券優遇税制の廃止にともない、2014年に「少額投資非課税制度(NISA)」が創設され、その後に拡充で得られる試算を公表して年間120万円、最高600万円までの株式投資から得られる配当や譲渡所得が非課税となり、2018年1月からは積立NISAが新設されました(最高800万円)。23年度改正で、一人当たりの投資可能上限額が大幅に引き上げられ、1,800万円とそれまでの倍以上となりました。夫婦で3,600万円もの資金を、株などでリスクの高い投資ができるのは、ごく一部の富裕層レベルの金融資産保有者です。高額な資産家にまで減税を行うのは制度の主旨に反します。

 小規模な投資を行う「庶民投資家」への課税を富裕層より軽減するのは必要なことですが、モデルとされたイギリスの個人貯蓄制度(ISA)が預金利子も非課税の対象となっているのと違って、日本の制度は株式投資だけに限定された歪んだものです。対象を狭めない小口投資の非課税枠をつくり、投資先は投資家の判断にゆだねるようにすべきです。

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