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日本共産党

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赤旗

物価高騰から暮らしと経済を立て直す緊急提案

2022年11月10日  日本共産党

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賃上げを軸に内需を活発にして実体経済を立て直す

 物価高騰と国民生活の悪化が深刻になっています。ところが岸田政権は、物価高騰と異常円安をもたらしているアベノミクス・「異次元の金融緩和」に固執し、対応不能に陥っています。「構造的賃上げ」と言いながら中身はなく、物価高騰のさなかに医療や介護の負担増を次々と押し付けるという血も涙もない政治を行っています。「総合対策」を打ち出しましたが、物価高騰はすべての分野で起きているのに、電気・ガス料金の抑制など、部分的・一時的対策に終始しています。

 現状を打開するためには、賃上げを軸に実体経済を立て直すこと、とりわけ内需を活発にすることに本腰を入れることが必要です。そこに踏み出してこそ、マイナス金利などという異常な金融を正常に戻すこともできます。

 賃上げがカギであることは、政府も、日銀も、経済界も、誰もが否定しません。しかし、実質賃金を10年間で24万円も減らしたアベノミクス・新自由主義を継続・継承するというのでは、まともな賃上げはできません。

 なぜ日本は、「賃金が上がらず、成長が止まった国」という、先進国の中でも特異な国になったのでしょうか。

 弱肉強食の新自由主義が日本の政治・経済を席巻し、「コスト削減による競争力強化」を振りかざして、リストラと非正規雇用の拡大で賃下げ構造をつくりました。その中で、産業の空洞化、技術力の流出もすすんでしまいました。そのうえ自公政権は、大企業・富裕層への減税の一方で消費税を2度も大増税し、年金削減や医療・介護の負担増など社会保障の連続改悪を強行しました。教育への公的支出が先進国で最低水準というもとで重い教育費負担が国民にのしかかっています。食料も、エネルギーも外国だのみで自給率を先進国で最低水準にしたことが経済の基盤を脆弱(ぜいじゃく)にしました。

 一部の大企業の利益と内部留保は巨額に膨れ上がりましたが、国民の所得と生活悪化が国内の消費と需要を冷え込ませ、貧困と格差を拡大しました。その結果、「強い経済」どころか「冷たく、弱い」経済にしてしまったのです。

 日本共産党は、物価高騰から暮らしと営業を守るために、賃上げを軸に実体経済を立て直す以下の緊急提案を行います。この緊急提案は、日本経済の脆弱な体質――「冷たく、弱い」経済を、「やさしく、強い」経済へと大本から改革し、持続可能な成長を実現する経済政策の抜本的転換の提案ともなっています。

 

1、働く人が豊かになってこそ、経済も強くなる......賃上げを実現する緊急で効果のある対策を

 「賃上げ減税」など、自公政権の「賃上げ対策」は完全に失敗しています。岸田政権は「構造的賃上げ」を言いますが、「新しさ」は"人への投資、リスキリング(学び直し)支援"程度です。働く人のスキルアップは大切ですが、「賃金が上がらない」のは「労働力の質の低下」=労働者の責任ではありません。

 政治の責任で、まともな賃上げを実現するために、日本共産党は、以下の提案を行います。

(1)大企業の内部留保に時限的に課税し、大企業も中小企業も賃上げを実現する

 大企業の内部留保は、アベノミクス以降で150兆円も増え、480兆円に達しています。内部留保は企業経営に必要なものですが、大企業の内部留保だけが巨額に積みあがるのは、日本経済の大きなゆがみです。日本共産党の提案は、大企業の内部留保を賃上げや国内投資で経済に還流させ、実体経済を立て直すうえでも大きな力になります。

■アベノミクスで増えた内部留保に5年間の時限的課税で、10兆円の財源をつくり、中小企業の賃上げ支援を行う、課税対象から賃上げ分を控除して賃上げを促進する。 

 ――資本金10億円以上の大企業が2012年以降に増やした内部留保額に対して、毎年2%、5年間で合計10%の時限的課税をします。

 ――この税収10兆円で中小企業・小規模企業の賃上げへの直接支援を行います。

 ――内部留保の課税対象額から賃上げ分や「グリーン投資」額を控除して、大企業の賃上げや気候危機打開に向けた「グリーン投資」を促進します。

■中小企業の賃上げへ直接支援を行い、最低賃金を1500円に引き上げる。

 最低賃金を時給1500円(手取りで月収20万円程度)に引き上げることは、最低限の生活という面でも、地域経済の底上げと日本経済の活性化のためにも急務です。

 カギは、中小企業・小規模事業者の賃上げへの直接支援です。岸田政権の「賃上げ減税」は、黒字企業だけが対象で、多くが赤字の中小企業の賃上げに結びつきません。政府の中小企業むけ賃上げ支援策は、新たな設備投資などの条件が厳しく、ほとんど利用できません。各都道府県の最低賃金審議会でも、"政府の支援策では不十分で賃上げへの直接支援を"という政府への「要望・意見」が相次いでいます。

 ――すべての企業で賃上げできるように、赤字企業も負担している社会保険料を賃上げに応じて軽減します。社会保険料軽減では賃上げできない事業者には「賃上げ助成」を行います。

(2)政府ができる賃上げ、国・自治体が管轄する分野での賃上げをすみやかに行う

 ――すべてのケア労働者の賃上げをすすめます。

 国が公定価格や報酬で水準を決めている保育・介護・障害などのケア労働者の賃金は全産業より平均で「月5万円」低いとされています。国の責任で全産業平均水準に引き上げます。

 ――国や自治体などで働く非正規労働者の時給を1500円以上に引き上げます。

 ――国や自治体と受注する事業者との間で結ばれる契約に、生活できる賃金など人間らしく働くことのできる労働条件を定める法律や条例(公契約法・条例)を制定します。

(3)男女の賃金格差を是正し、賃金の底上げをはかる

 男女の賃金格差は、年収で243万円(民間給与実態統計調査、国税庁)、生涯賃金で1億円にもなります。これが年金にも連動し、定年まで働いても年金で生活できない女性が少なくありません。

 世論と運動に押され、やっと政府も男女賃金格差の公表を義務付けるとしました。重要な一歩です。情報公開を力に男女の賃金格差是正に本格的に取り組むときです。

 ――企業に男女の賃金格差の実態を正確に公表させるとともに、是正計画の策定と公表を義務づけ、政府がそれを監督・奨励する仕組みをつくるよう、女性活躍推進法の抜本改正などの法整備をすすめます。

 ――実質的な女性差別を横行させている間接差別をなくします。労働基準法をはじめとする関係法令に、間接差別の禁止、同一価値労働同一賃金の原則を明記し、差別の是正を労働行政が指導できるようにします。

 ――パート労働法、労働者派遣法を改正するなど、女性が多く働いている非正規雇用の労働条件を改善し、正社員との不当な格差をなくします。

(4)労働法制の規制緩和路線を転換し、賃上げと正規化をすすめる

 労働法制の規制緩和が、低賃金でいつでも解雇できる仕組みをつくり、人間をモノのように使い捨てる働かせ方を拡大しました。正社員への労働時間規制の緩和によって、長時間労働を拡大していきました。非正規雇用と長時間労働の拡大は、労働者全体への「賃下げ圧力」となり、「賃金の上がらない国」に日本を落とし込みました。

 ――労働者派遣法を、派遣労働者保護法に抜本改正し、使い捨て労働をなくします。派遣労働を臨時的・一時的業務に厳格に制限し、常用代替を規制します。派遣受け入れ期間の上限を1年とし、違法があった場合は派遣先に期間の定めなく直接雇用されたものとみなし、正社員化をすすめます。

 ――違法・脱法的な解雇・雇い止めをやめさせ、同一価値労働同一賃金と均等待遇の原則を法律に明記し、非正規雇用の正規化をすすめます。

 ――残業時間の上限を「週15時間、月45時間、年360時間」とし、連続11時間の休息時間を確保します(勤務間インターバル制度)。高度プロフェッショナル制度を廃止します。

 ――非正規・フリーランスなどで働く人の権利を守るルールを確立します。フリーランス、ギグワーカー(雇用契約のない単発、短時間の労働)、請負や委託で働く労働者を保護し、生活と権利の保障する法整備をすすめます。フリーランスに労災保険と失業保険を適用します。

 ――シフト制労働者の権利を守るために、労働契約に賃金の最低保障額や休業手当の支給を明記するなどのルールをつくります。

 

2、消費税の緊急減税、物価高騰の中だからこそ、社会保障と教育の負担軽減を

 物価高騰は、あらゆる分野に及んでいますが、政府の対策は、ガソリンや輸入小麦、電気・ガス代といった部分的・一時的な価格抑制策だけです。物価高騰への対策としては、消費税の減税が最も効果的です。また、物価高騰の中だからこそ、社会保障や教育の公的負担を軽減して、国民の生活を守り、消費の減退と景気の後退を防ぐべきです。

(1)消費税を緊急に5%に減税する

 自公政権は、アベノミクスで消費税を5%も引き上げ、年額12・5兆円、国民1人当たり年間10万円もの大増税を行い、これが消費を冷え込ませ、経済の悪化をもたらしました。

 そのうえ物価高騰によって、1年前に比べた家計の負担増は、1世帯当たり約10万円にもなります。電気代の影響はこのうち2割程度にすぎません。

 ――物価高騰から家計を守り、消費をあたため景気を回復させるため、消費税を緊急に5%に減税します。コロナ以降、世界の100カ国・地域で、消費税(付加価値税)の減税が実施されており、日本でもただちに減税に踏み切るべきです。

(2)物価高騰に見合った年金額に引き上げる

 政府は、物価高騰にもかかわらず年金額を逆に0・4%引き下げました。安倍・菅・岸田政権の10年間で、年金の名目額から物価上昇分を引いた「実質年金額」は6・7%も減らされています。自公政権が「100年安心」の名で、年金の支給水準を減らし続ける仕組みを導入したことが異常事態の元凶です。1970年代のインフレのときには、年金額を何回も引き上げ、物価スライドの前倒し実施も行いました。物価が上がれば年金も上がる、これが当たり前の政治です。

 ――この間の物価上昇を反映した年金額の引き上げを年度途中でも実施します。その財源は、200兆円を超える年金積立金を活用すれば確保できます。

 ――物価が上がっても年金を上げない仕組み=マクロ経済スライドを撤廃します。高額所得者優遇の保険料を見直し、1兆円規模で年金財政の収入を増やす制度改革と、現役世代の賃上げと正社員化をすすめて、保険料収入も増やし、安定した年金財政を確立します。

(3)医療費・介護利用料の値上げを中止し、値下げに

 10月から高齢者の医療費値上げが強行され、高すぎる国民健康保険料(税)が470超の自治体で、さらに値上げされています。来年の介護保険法改定に向け、利用料の2割・3割負担の対象拡大、要介護1・2の在宅サービスの保険給付外し、ケアプラン有料化、介護保険料の支払い年齢の20~30歳代への引き下げなど、介護関係者が「史上最悪」と呼ぶ改悪案を政府が検討しています。

 物価高騰のなかで、医療・介護という命にもかかわるところでの負担増は、非人道的であるとともに暮らしを破壊します。負担軽減こそ行うべきです。

 ――公費1兆円を投入し、国保料(税)値上げをやめさせるとともに、「人頭税」のような「均等割」「平等割」をなくして、抜本的に引き下げます。

 ――75歳以上で所得が一定額を超える370万人に対して強行された、医療費の窓口負担2倍化の改悪を中止します。

 ――国の制度として、18歳まで医療費の窓口負担を無料にします。

(4)学校給食の無償化を

 学校給食費の値上げも家計を直撃します。そもそも憲法26条は義務教育を無償とすることを定めており、憲法どおりの政治を行う責任が国にあります。

 ――「義務教育の無償」をうたった憲法26条を踏まえ、国の制度として、学校給食費や教材費など義務教育にかかる費用を無料にします。

 ――地方創生臨時交付金などを活用して自治体が行っている、学校給食費の保護者負担の軽減・無償化を応援します。

(5)学費値下げ、奨学金を抜本拡充する

 物価高騰のなかで、学費のさらなる値上げの動きも出ています。重い教育費負担軽減は、国民生活の面でも、将来の日本社会という面からも、政治の重大な責任です。

 ――大学・専門学校の学費を半額にし、将来的には無償にします。入学金は廃止します。奨学金は欧米のように返済不要の給付制を中心にして拡充します。

(6)生活保護、就学援助、児童扶養手当などの増額と拡充を

 ――過去の物価高騰時にも実施された、生活保護基準の年度途中の緊急引き上げを行います。2013年からの保護費削減を違法とする判決が相次いでおり、削減前の水準に戻すことを求めます。

 ――就学援助の支給額・対象者を大幅に拡充します。児童扶養手当、障害者・原爆被爆者への各種手当なども物価高騰に見合って引き上げます。

 ――コロナの影響で収入が減った人に生活費を貸し付ける生活福祉資金の返済が負担となり、生活再建が困難となる事態が起こっています。返済免除・猶予の拡充、相談支援体制の強化をすすめます。

 

3、中小企業・小規模事業者をつぶさない――大量倒産・廃業の危機を打開する本格的な支援策を

 長引くコロナ禍、物価・原材料の高騰、過剰債務という「三重苦」が中小企業・小規模事業者にのしかかっています。「コロナ対応融資(実質無利子・無担保のいわゆる『ゼロゼロ融資』)」の残高(実績)は、今年3月末時点で約42兆円にのぼり、中小企業の約3割が過剰債務感を訴えています。「物価高倒産」や「過剰債務倒産」、長引く苦境で「心が折れてしまう」倒産・廃業などが激増する恐れがあります。

 ところが政府の中小企業・小規模事業者への支援策は、自己責任・自助努力を前提にした収益力改善や事業再生支援が主な内容です。「事業者支援については、新陳代謝を過度に抑制することなく、自律的な成長軌道に乗せていくよう見直していくべきである」(財務省 財政制度等審議会)としているように、「つぶれるものをつぶさないと経済の邪魔になる」という自己責任論、中小企業淘汰(とうた)論の立場です。

 しかし、中小企業・小規模事業者を苦しめている「三重苦」は、新型コロナ感染の拡大による経営難と異常円安・物価高騰に起因するもので、事業者が自己責任を問われる筋合いはありません。

 中小企業・小規模事業者は、地域に根をおろし、ものづくりやサービスの需要にこたえ雇用を生み出す、地域経済をになう最も重要な存在です。過剰債務問題も個々の事業者の借入金の問題にとどまらず、地域金融機関の今後の経営を左右する地域金融全体の問題です。いま重要なことは、中小企業・小規模事業者のかかえる困難を地域経済、地域金融全体の問題としてとらえ、国と自治体が全面的に支援し、地域経済の立て直しをはかることです。

(1)インボイスの中止、消費税の減免

 政府が来年10月から導入を予定しているインボイス(適格請求書)制度は、数百万もの小規模事業者やフリーランスで働く人々に、インボイスを発行するために消費税課税業者になることを余儀なくさせ、深刻な負担増をもたらします。全国で70万人の会員がいるシルバー人材センターの経営も脅かされます。多くの中小業者の団体が中止や見直しを求め、全国289自治体から中止・延期などの救済を求める意見書が543件も提出されています(9月末現在)。

 2021年度の消費税の新規滞納発生額は5121億円となり、コロナ前の2019年度に比べて1000億円以上も増えました。このままでは、消費税が払えなくて倒産・廃業する事業者が続出してしまいます。

 ――負担と混乱をもたらすインボイスの導入は中止します。

 ――納税困難な事業者に対する減免の特例の実施を求めます。

(2)過剰債務問題の解決

 過剰債務に陥ると、金融機関から新規融資が受けられなくなり、せっかく仕事が出てきても受けられない資金繰り倒産に追い込まれてしまいます。過剰債務問題の解決は、年末・年始にむけて、喫緊の課題となっています。

■コロナ対応融資(ゼロゼロ融資)を「別枠債務」にして、事業継続に必要な新規融資が受けられるようにする。

 現在、日本政策金融公庫は、コロナ対策として、金融機関から企業への融資の一定部分を「別枠」にし、出資とみなして、新たな融資ができるようにする「資本性劣後ローン」を実施しています。しかし数年後に一括返済を求められ利子負担も高いなど、中堅企業でも使いづらい制度で、小規模事業者は対象外におかれています。

 新たな資金調達が可能となるように、事業者の規模に関係なく、「ゼロゼロ融資」をいったん通常の債務から切り離し、「別枠債務」とすることを提案します。

 ――「別枠債務」は、一定期間(1~5年程度、経済状況によっては延長あり)、無担保・無利子のまま返済を猶予します。

 ――金融機関は「別枠債務」を既存の融資残高から除外し、その融資枠を新規融資にまわせるようにします。

 ――「別枠債務」は保証協会が保証をつけ、返済猶予期間の利子など地域金融機関にも借り手の事業者にも負担が生じないよう国が支援します。保証協会の保証料は国が負担します。

 ――「別枠債務」の返済が可能になった時点でも、その後の事業に支障がない返済計画に金融機関が協力できるよう国が支援します。

■債務の減免をふくめた「中小企業・事業再生スキーム」を、より小規模な事業者にも適用できるようにする。

 政府は「中小企業活性化パッケージNEXT」のなかで、関係金融機関が「事業再生スキーム」のもとで、借り手の中小企業にたいして債務の減免も含めた支援を行うことを要請しています。しかしあくまで関係者まかせで、すべての中小企業が対象にならず、小規模事業者は事実上の対象外となっています。

 ――小規模事業者であっても、関係金融機関から債務の減免が受けられるよう、「事業再生スキーム」を改善し、小規模事業者へのサポート体制の強化と、債務減免にともなう金融機関の負担軽減のために無税償却の積極活用など政府の支援を強化します。

■「地域経済再生給付金」(仮称)を創設し、困難に直面している中小企業・小規模事業者への直接支援を行う。

 コロナ危機の影響、原材料高の影響、過剰債務の状況は、地域、業種によって格差があります。全国一律の対策だけでなく、地域、業種の実情に応じた支援の仕組みが必要です。

 ――都道府県、政府系金融機関、地域金融機関、地域中小企業団体などで構成する「地域経済再生委員会」をつくり、基準と要件を明確にし、透明性を確保したうえで、「委員会」が必要と判断した地域の産業、業種の事業者の再生を支援する「地域経済再生給付金」(仮称)を創設します。給付額は、持続化給付金以上の水準とし、事業所の規模などに応じて給付します。このスキーム(枠組み)を国が明確に示したうえで、地方創生臨時交付金を拡充します。

 

4、食料・エネルギーの自給率向上――国民生活と経済の安定のためにも、食料危機・気候危機打開という人類的課題のためにも

 異常円安と世界的な農産物・エネルギー価格の高騰は、食料自給率38%、エネルギー自給率10%という、食料とエネルギーを外国に大きく依存し続ける経済の危うさを浮き彫りにしています。食料・エネルギーの自給率向上は、地球規模での食料危機、気候危機の打開のために急務であるとともに、国民の生活と経済の基盤を強化するためにも待ったなしの課題です。

(1)円安・コスト高から食料生産を守る

 大半を輸入に依存する肥料、飼料、燃油、タネなど資材価格が急騰し、このままでは、農業と農山村、漁業の存続が危うい状況です。円安・コスト高から農業、漁業を守ることは、国民の食料生産を確保する緊急の課題であると同時に、食料自給率向上という国民生活と経済の基盤強化のために不可欠の課題になっています。

■農業、漁業への資材・飼料・燃油高騰に対する支援を抜本的に強化する。

 ――政府が肥料価格の高騰分を農家に直接補てんする緊急対策を行います。中長期対策として、影響を緩和する肥料価格安定対策を国の負担で創設します。堆肥・稲わらなどの国内資源の利用拡大への支援を拡充します。

 ――飼料価格安定制度を高騰前の価格との差額を農家に直接補てんする仕組みに改めます。

 ――燃油高騰に対しては、石油元売りだけではなく、農家・漁家に直接補てんします。

 ――漁業資材や餌料費等の養殖資材の高騰などで困窮する漁業者への支援を行います。

■価格保障・所得補償に踏み出し、自給率を向上させる。

 ――農業の基幹的な担い手を維持・継承し、耕作放棄地の縮小を図るためには、市場まかせの輸入依存・低価格競争を放置するのではなく、他の先進国で実施されているように価格保障・所得補償を抜本的に拡充します。

 ――水田活用交付金の削減を中止し、拡充へ転じます。実質的に畑地化している場合は、麦・大豆・飼料作物の生産を維持するための支援策を独自に行います。

 ――粗収入が標準的経費を下回った場合に差額を補てんする「肉用牛肥育経営安定交付金」「肉豚経営安定交付金」は、国の負担で実質的な生産費に見合う制度にします。

 ――生乳の生産費を販売収入が下回った場合に差額を補てんする「酪農マルキン」制度を創設し、乳製品の輸入を減らし、政府の責任で需給安定をはかります。

 ――中山間地域等直接支払制度を、条件不利の補正だけではなく、中山間地域に居住すること自体を支援するものへと抜本的に拡充します。

(2)省エネ・再エネを強力に推進し、気候危機打開、負担抑制、地域経済振興を

 日本はかつて言われたような「資源がない国」ではありません。自給率を向上させ、国民生活と経済基盤を強化させるために力を注がねばなりません。

 省エネによるエネルギー需要の削減=光熱費負担の抑制と、「国産エネルギー」である再生可能エネルギーの拡大によって供給の安定をはかることができます。しかし、政府のエネルギー基本計画では、2030年度の再生可能エネルギー電源の比率は36~38%と、ドイツ、イギリス、イタリアなどではすでに達成している低い水準にすぎません。環境省の調査でも、再生可能エネルギーの潜在量は、現在の電力使用量の5~7倍にもなるのに、政府が、石炭火力、原発にしがみつき、再生可能エネルギーを後景に押しやっていることが、遅れの最大の要因です。

 省エネ・再エネを強力に推進することは、気候危機打開への責任を果たすとともに、国民負担を抑制し、エネルギーの安定供給をはかる保障となります。それは、雇用を増やし、地域経済を振興するうえでも、希望ある未来を開くものとなります。

 ――省エネルギーと再生可能エネルギーを組み合わせて、2030年度までにCO2を50~60%削減する(2010年度比)を政府の目標にします。エネルギー消費を4割減らし、再生可能エネルギーで電力の50%をまかなえば60%の削減は可能です。

 ――再生可能エネルギーの優先利用の原則を確立し、大手電力会社が原発や石炭火力を優先し、太陽光の出力抑制を行っている現状をあらためます。再エネを最大限活用できる電力網などのインフラを整備します。

 ――CO2排出量が大きい業界、大規模事業所に、CO2削減目標と計画、実施状況の公表などを「協定」にして政府と締結することを義務化します。

 ――農地でのソーラーシェアリング、小規模バイオマスの発電の普及など、脱炭素と結びついた農業・林業の振興をすすめます。

 ――住宅・建物の断熱化をはじめ、省エネの取り組みを産業、都市・住宅など、あらゆる分野ですすめます。

 

富裕層・大企業に応分の負担を求め、暮らしも経済も押しつぶす大軍拡をやめる――財源についての日本共産党の立場

 以上のような総合的な対策を進めると同時に、富裕層や大企業に応分の負担を求めるなど、税財政の抜本的な改革をすすめます。これは、二つの意味で重要になっています。

 一つは、経済政策の転換のための恒常的な財源を確保することです。以上にのべた総合的な経済政策を実施するためには、消費税の減税だけでも約12・5兆円、全体では20兆円程度の財源が毎年必要になります。コロナ対策のような一時的に必要となる財源は別として、将来にわたって必要となる財源を安易に国債発行に頼るのでは、政府債務の急増を招き、それを支えるために超低金利政策から抜けだすことが困難になり、さらに円安・物価上昇を招くという事態になりかねません。

 もう一つは、アベノミクスのもとで広がった格差を是正することです。格差の是正は、社会的な不公平をただすという道義的な意味だけでなく、大企業や富裕層がためこんだ余剰資金を有効活用し、社会全体としての消費を活性化して経済成長をもたらすことにもつながります。

 政府は、「5年間で軍事費を2倍化」という自民党の公約を受けて、暮らしの予算を犠牲にする大軍拡に踏み出そうとしています。政府の「物価高・円安対策」の中にも、巨額の軍拡予算を盛り込もうとしています。このような大軍拡を中止し、暮らしを守り、日本経済を立て直す予算・財政への転換を求めます。

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