お詫び:音声ブラウザ用簡易ページは現在機能しません。このまま、通常のページをご覧ください。

日本共産党

  • 文字サイズ
  • 小
  • 中
  • 大

ENGLISH PAGE

赤旗

2022年6月14日

農林水産大臣 金子原二郎 殿

日本共産党国会議員団

農業経営への緊急支援を求める要請

 ロシアによるウクライナ侵略は、国連が「第2次世界大戦以来、最悪の食料危機」と警告する、深刻な事態を生み出している。農業資材の大半を輸入に依存するわが国の農業経営は、資材高騰の影響を強く受け、コロナ禍による需要減も相まって、危機に陥っている。

 極端な低米価にあえぐ米農家だけでなく、野菜、畜産、酪農、花卉の農家の多くが、採算割れの販売価格に苦しみ、借金を重ねて経営を維持するか、離農するかの選択を迫られている。この上、資材価格の高騰が襲えば、離農の続出は避けられない。

 農業の担い手と農地の減少など農業生産基盤の弱体化が加速しており、食料自給率は史上最低の37%に落ち込んだ。気候危機による世界的な食料生産の不安定化と新興国の急激な食料需要増により、食料や農業資材を十分に輸入できなくなる可能性すらある中で、直面する農家経営の危機を打開し、食料の増産、自給率の向上に踏み切ることは、国政に課せられた重大な課題である。

 しかし、政府の資材高騰対策には、農家を直接支援するメニューは見当たらない。それどころか、コロナ禍で生じた米や生乳の「過剰」を理由に減産を押しつけながら、水田活用の直接支払交付金の削減を強行しようとしている。全国の農家からは、「麦や大豆が作れなくなる」「農地の引き受け手がいなくなる」「耕作放棄地が増える」との声が噴出している。

 食料生産・供給を外国に依存する脆弱な体質を作ったのは政府であり、資材高を招く円安誘導策に固執してきたのも政府である。交付金の削減を中止し、離農を防ぐ緊急の支援策を講じるとともに、大小あらゆる農家のコストの不足分を補填する政策に転換するべきである。

1、水田活用交付金の削減を中止し、交付金は、米と他作物との収益性の格差を是正することを基本に維持・拡充すること。水田での畑作物等の作付けが長期化し、実質的に畑地化している場合には、麦・大豆・飼料作物の生産が維持できるよう他の手厚い支援策を措置すること。

2、秋肥の最大94%の値上げは、農家に衝撃を与えている。営農を支えるため、政府が肥料価格の高騰分を農家に直接補填する緊急対策を実施すること。中長期対策として、影響を緩和する肥料価格安定対策を国の負担により創設すること。堆肥や稲わらなどの利用拡大支援をさらに拡充すること。

3、現行の飼料価格安定制度では、積立金の農家の負担分が大きいうえに、前年の平均価格を基準とする高騰分の一部しか補填されないため、価格が高止まりもしくは高騰が継続すると、高騰前と比べ農家のコストは増大する。高騰前の価格との差額を農家に直接補填する仕組みに改めること。

4、粗収入が標準的経費を下回った場合、その差額を補填する肉用牛肥育経営安定交付金(牛マルキン)・肉豚経営安定交付金(豚マルキン)の制度も、一部を生産者が負担するうえ、基準となる経費が過去数年間の平均をとるため、コスト増が継続する場合には飼料価格安定制度と同様の問題が生じる。国の全額負担により実質的な生産費を全て補填する制度に改善すること。

5、政府として乳価の大幅引き上げをメーカーに要請するとともに生乳の生産費を販売収入が下回った場合、差額を補填する「酪農マルキン」制度を創設すること。加工原料乳の補給金単価を引き上げること。畜産クラスター事業で生乳生産を拡大した酪農家が、コロナ禍で生乳需要が落ち込み、生産制限を強いられて、借金が返せなくなるなど苦境に立たされている。乳製品の輸入を減らし、国産の備蓄を増やすなど政府の責任で生乳需給の安定をはかること。

6、野菜、果樹、花卉や施設園芸も、燃油・資材価格高騰が直撃しており、コスト増を販売価格に転嫁できない農家は不安の中、作付けを行っている。燃油価格の高騰にたいしては、石油元売メーカーへの支援にとどまらず農業生産者に対して直接補填すること。現行の野菜価格安定制度の対象品目や産地を拡大し、保証基準価格を生産費にみあう水準に引き上げる、事務を簡素化するなどの改善・充実を行うこと。

7、中山間地での営農は特に大きな影響を受けている。農地の荒廃を防ぎ、地方移住の流れをさらに大きく前進させるため、中山間地域等直接支払制度は、条件不利の補正だけでなく、中山間地域に居住すること自体を支援する性格のものに抜本的に拡充すること。

政策