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日本共産党

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赤旗

59、高等教育、大学改革

経済力にふさわしく大学予算を拡充し、
大学の多様な発展を支える政治に転換します

2022年6月

 高等教育は、市民、とりわけ若者の知的探求の自由、知る権利、職業選択の自由を含めた学び成長する権利を満たすための社会の営みです。

 戦後の経済成長、学術・文化、科学・技術の発展を背景として、国民の高等教育への要求は高まり、大学の進学率は5割を超え、専門学校を含む高等教育の進学率は8割に達しています。

 政治の中心的な役割は、憲法にのっとって、高等教育が個性豊かに多様性をもって自主的創造的に営まれるように、その基盤をしっかりと支えることです。そうしてこそ、日本社会の持続的な発展が可能になります。

 それは、気候危機などの地球規模の環境破壊や新型コロナウイルスをはじめとする新たな感染症の克服、貧富の格差の是正や恒久平和などの人類的課題の解決のためにも必要です。とくに今日、「戦争は人の心の中で生れるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」――ユネスコ憲章がうたう「平和のとりで」を築く役割を担うことが、高等教育機関にますます求められています。

 いま、政府には、とりわけ大学が公共財として、市民に開かれた高等教育機関へと発展するように支援を強めることが求められています。

社会の知的基盤としての大学の発展を支える政治への転換を

 ところが、日本はGDP(国内総生産)世界3位であるにもかかわらず、高等教育予算があまりに貧困です。高等教育機関に対する公財政支出は、GDP比でわずか0.4%に過ぎず、OECD加盟国で比較可能な37カ国中36位と最低水準です。その一方で、私費負担は0.9%で、OECD加盟国の平均0.4%の倍以上です。

 自民・公明政権は、国民の高まる高等教育要求のもとで、主に私立大学の入学定員を増やしてきました。一方で、"学費は利益を受ける学生本人が負担すべき"という「受益者負担主義」を教育に持ち込み、学費値上げを誘導し、私立大学への予算を抑制してきました。これは若者に自己責任を押し付け、政府の責任を放棄する新自由主義的政策です。異常な高学費は、低所得層の若者の進学を阻み、そのため、地方や中小の私立大学は定員割れに追い込まれています。異常な高学費は、少子化、人口減少の原因となっており、高等教育費の負担軽減は、国民的課題となっています。

 自民・公明政権は、新自由主義的な「構造改革」路線のもとで国立大学運営費交付金や私立大学経常費助成のような基盤的経費を、国の評価で傾斜配分する競争的な資金へと変質させる「選択と集中」を強めてきました。そのため、大学の教育・研究の現場に疲弊と歪みが広がり、若手研究者の減少と非正規雇用のまん延が深刻になっています。教員は資金集めに忙殺され、質の高い論文が減少するなど研究力の低下に歯止めがかかっていません。非情にも、定員割れ大学に対する経常費助成を減額するペナルティを強化し、地方や中小の私立大学をつぶそうとしています。

 さらに、岸田文雄政権は、「新自由主義の弊害」を口にしながら、ごく一部の大学のみに大学ファンドによる巨額の集中投資を計画する一方、基盤的経費を抑制し、その傾斜配分や競争的資金化を強めるなど、新自由主義的な「構造改革」路線を継続し、強化しようとしています。

 明治初期に誕生したわが国の大学は、150年近くの年月をかけて、国民共有の知的財産として発展してきました。その個性と多様性は日本社会の中で育まれたものであり、かけがえのない存在です。

 岸田政権がすすめる新自由主義的な大学政策では、国民の共有財産が失われてしまいかねません。経済力にふさわしく大学予算を拡充し、憲法の「教育を受ける権利」「学問の自由」の全面的な保障を根本にすえ、大学の自主的創造的な発展をしっかり支える政治に転換することは急務です。

日本共産党は提案します

物価高騰、コロナ禍のもとでの教育研究を支えるために予算措置を充実します

物価高騰のもとでの教育研究を支えるための予算措置――電気料金高騰により教員配分の研究費を3割カットする大学があるなど、物価高騰は大学等の経営を直撃しています。緊急措置として電気料金などの物価高騰分を補填する予算を臨時で交付します。

対面授業・業務を安全に行うことができる環境整備―――対面とオンラインを選択できるハイブリッド型の授業がさらに円滑にできるように通信環境の整備など財政支援を拡充します。対面授業を安全に行うために教職員・学生に対するPCR等検査の実施をはじめ定期的な消毒の実施、換気設備の設置など大学の感染症対策に対し、国公私を問わず全ての大学等に国が財政支援をします。

学生への緊急支援を抜本的に拡充―――2021年度で終わった学生支援緊急給付金を復活させ、要件を緩和して規模を拡大します。家賃支援、休学や卒業延期した学生の学費補助など個別支援を実施します。

学費をただちに半額にし、高等教育を充実させます

 コロナ禍のもとで、アルバイト収入が減り、食費にも事欠く学生が多数います。異常に高い学費や貧弱な奨学金が、学生の学ぶ権利を奪っていることが浮き彫りになりました。高等教育修学支援制度(授業料減免と給付奨学金のセット)は、あまりに要件が厳しく、学生の8%にしか支給されず(2020年度実績)、「高等教育無償化」とはほど遠いものです。この制度の創設の財源として、消費税増税が強行されたために、ほとんどの学生には負担増となっています。日本独自の〝慣習〟である入学金は、進学の足かせになっています。

大学・専門学校の授業料をすみやかに半額にし、段階的に無償化にする―――国際人権規約が定めた高校・大学の段階的無償化条項が、国民世論と運動におされて留保撤回されました(2012年)。これは高等教育無償化を国際的に約束したものです。無償化にむけた学費負担軽減の第一歩として、大学予算を増やして、入学金を廃止し、大学・専門学校の授業料をすみやかに半額にし、段階的に無償化をはかり、誰もがお金の心配なく学べるようにします。社会人入学を促進し、大学を市民に開かれたものとします。

"学生ローン"でなく、本格的な給付奨学金を75万人に―――若者の人生の門出で、「奨学金」という名の多額の借金を背負わせる社会をあらためます。「自宅4万円、自宅外8万円」の給付奨学金を75万人(現在の奨学金利用者の半数)が利用できる制度をつくり、拡充していきます。すべての奨学金を無利子にします。奨学金返済が困難になった場合の減免制度を作ります。

21世紀の日本を担う豊かな社会人へと成長できる大学教育に―――変化する世界の中で、若い世代が新しい知識や技術、多様な価値観を身につけ、自らの将来を築いていくために、また、日本社会の発展にとっても、大学教育の充実はきわめて重要になっています。しかし、自民党政治のもとで、各大学では国の競争的資金を獲得できるような改革が優先され、良識豊かな社会人を育てる根幹となる教養教育が軽視されてきました。学生の8割近くを擁する私立大学などでは、マスプロ授業の蔓延など劣悪な教育体制が放置されています。大学教育を抜本的に充実させる必要があります。

①人間形成や学問の基礎をつちかう教養教育を再構築します。学力に応じたわかりやすく学びがいある授業づくりへ、大学の改善努力を励ます支援策を強めます。

②少人数教育の本格的な導入や勉学条件の充実のために、大学予算を増やして教員の増員をはかり、非常勤講師の劣悪な待遇を改善します。

③私立大学がはたしている公共的な役割をさらに高めるために、大学の設置基準の緩和を見直し、設置審査を厳正な基準で行うように改善します。

④政府が「大学入学共通テスト」で、導入しようとした民間の英語試験や記述式採点の民間委託については、教育関係者や受験生からの反対で断念に追い込まれました。政府は、混乱を招いた責任を取り謝罪し、個別入試(一般選抜)における英語資格・検定試験の活用の押し付けはやめるべきです。自民党と試験業者との癒着の疑惑を全面的に明らかにし、「公正・公平」の原点にたって、入試改革を根本から見直します。

留学生に魅力ある環境を整備する―――今年1月まで、約3万人の留学生が、コロナ禍の入国制限に阻まれ、入国できずにいました。再びコロナ感染が拡大した時に、留学生の受け入れが止まらないようにこの間の対策を検証し、体制を整備します。留学生が安心して勉学できるよう、低廉な宿舎の確保、奨学金の拡充、日本語教育の充実、就職支援などの体制を国の責任で整備します。

大学の基盤的経費を増額し、「学問の自由」を保障する条件整備をはかります

国立大学の運営費交付金の傾斜配分を廃止し、基盤的経費として増額する―――国立大学の運営に必要な経費をささえる運営費交付金は、法人化された2004年度に比べ、年額で1,470億円を超えて減額されています。これをただちに回復し、増額をはかります。「実績」に応じた傾斜配分は廃止します。各大学の標準的な経費をもとに積算し、教育・研究費や人件費などを十分に確保するしくみに変更します。地方大学や文科系、教員養成系大学など財政力の弱い大学に厚く配分するなど大学間格差を是正する調整機能を持ったしくみにします。国立大学法人の施設整備補助金を増やし、老朽施設を改修します。

私立大学への「公費負担」原則を確立し、「経常費の2分の1助成」を実現する―――コロナ禍で、学生がキャンパスに入れず、私立大学の学生たちが学費返還を求めました。経常費の約7割を学費収入に頼る私立大学の経営基盤がいかに脆弱なものなのか、「受益者負担主義」の破たんがあらわになりました。今こそ、大学生の8割近くを擁する私立大学がはたす公共的役割にふさわしく、私学への国の支援を抜本的に強める必要があります。学生の学ぶ権利を保障する高等教育機関としては、国立と私立に差異はありません。私立大学にも国公立大学と同様に公費を支出する「公費負担」の原則を確立するべきです。その第一歩として、公費負担によって入学金を廃止し、授業料を半額化します。

 さらに「私立大学の経常費の2分の1を国庫補助」(1975年国会決議)をすみやかに実現します。「定員割れ」の大学に国庫助成を減額・不交付する措置は直ちに廃止します。中小私大、地方私大には増額配分し、定員確保の努力を支援する助成事業を私学の自主性を尊重しつつ抜本的に拡充するなど、私立大学の二極化の是正をめざします。「経営困難」法人への指導と称して私立大学の運営に国が不当に介入することに反対します。

公立大学への国の財政支援を強める―――公立大学は、学術の進歩に貢献し、住民要求にこたえた高等教育を行い、地域の文化、経済の発展に寄与しています。地方交付税の大学経費を引き上げるなど、国の財政支援を強めます。

国が各大学の改革を誘導する資金を廃止し、独立した配分機関を確立する―――国際卓越研究大学制度は、これまでにない規模の「選択と集中」で、新たな格差と分断をもたらし、「学術の中心」(学校教育法)であるべき大学を「稼ぐ大学」に変質させるものであり、廃止します。「スーパーグローバル大学」支援や「指定国立大学」制度、「私立大学等改革総合支援事業」など、一部の大学・大学院に対して多額の資金を投入し、文科省の関与も強めるような予算配分のあり方を見直します。大学に対する競争的な資金については、政府の裁量で配分する仕組みではなく、大学関係者、学術関係者を中心にした独立した機関を確立し、審査内容の公開をはかるとともに、公正な評価にもとづいて配分するようにします。 

大学附属病院の基盤整備をすすめる―――大学付属病院は、新型コロナウイルス感染症の重症患者の受け入れ・治療 をはじめ、ワクチン開発や新たな検査法の確立などにかかわる研究と人材育成を担うことが求められています。研究基盤設備・重症対応機器の整備、医療機器の継続的な更新、病院機能維持・向上などのために財政措置を講じます。国立大学附属病院への交付金を法人化前の水準に直ちに戻すとともに、法人化の際に背負った病院債務を軽減します。施設整備に必要な資金は、国が責任をもって確保する体制を維持します。

大学教職員の雇用を安定化させ、若手教員・研究者支援を充実させます

 国立大学の任期付き教員はこの20年(2001~2021年)で22,836人増える一方で、任期なしの教員(テニュア教員)は19,153人減っています。国立大学教員の38%が任期付きになっています。不安定な研究職は不人気となり、博士課程に進学する学生が激減しています。日本学術会議は流動性を高めることを目的にした任期制の導入は「失敗した」と断言しています(2019年10月)。欧州では、研究者も期間の定めのない労働契約が原則とされ、流動性は、研究者が専門家としての能力を高めるための手段として位置づけられています(欧州委員会「研究者採用行動規範」2005年)。任期付き雇用の拡大は、雇用主の都合で研究者を「使い捨て」にできるようにするだけで有害です。人間の尊厳を傷つけるような雇用のあり方は一掃しなければなりません。現状を放置するならば学術の後継者が不足し、日本社会の知的基盤を失いかねません。

大学の人件費支出を増やし、若手教員の採用をひろげる―――大学教員にしめる35歳未満の割合は10.3%に低下し、将来の学術の担い手が不足しています。国立大学法人が「総人件費改革」で5年間に削減した人件費だけで、若手教員1万6千人以上の給与に相当します。国立大学が削減した人件費分を回復するために、国から国立大学への運営費交付金を大幅に増額し、任期付き教員を無期雇用に転換し、教員の採用を大きくひろげます。

任期制の導入に歯止めをかける―――大学教員、研究員の任期制は、任期制法の廃止を含めた見直しを行い、任期付き雇用は限定し、欧州のように無期雇用を基本にすべきです。大学や研究機関が期限のある国の資金でプロジェクト研究を行う場合に、その資金で有期雇用される研究者や職員を期限終了後も雇用するための国の財政支援を実施します。

有期雇用の5年・10年経過後の無期転換を促進する―――国立の大学・研究機関の任期付き研究者のうち最大4,500人が、無期転換逃れのために2022年度末までに雇い止めにされる恐れがあることが、日本共産党国会議員団の追及で判明しました(5月17日、参議院内閣委員会)。無期転換逃れのための雇い止めは違法であり、行政指導でやめさせます。

 有期雇用の大学教職員、研究者、非常勤講師に5年・10年の契約更新上限をあらかじめ求めることは、雇用の安定化をめざした労働契約法改正(2013年施行)の趣旨に反する脱法行為であり、やめさせます。有期契約から無期契約に転換した場合に、国が大学に対して財政支援する奨励制度をつくります。

若手研究者の待遇改善をはかる―――ポスドクなどの若手研究者がいだく不安は、雇用の不安定です。大学や独法研究機関が、期限付きで研究者を雇用する場合に、テニュアトラック制(期限終了時の審査をへて正規職に就ける制度)をさらに充実させ、期限終了後の雇用先の確保を予め義務づける制度を確立します。そのために必要な経費は国が責任をもちます。ポスドクの賃金の引き上げ、社会保険加入の拡大をはかります。

博士課程院生への経済支援を強化する―――日本共産党国会議員団の質問がきっかけとなり、博士課程院生への経済支援の対象が1割から2割に拡大しました(2019年11月27日、衆院科学技術イノベーション推進特別委員会)。しかし、新たに設けられた次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)などは、対象が「破壊的イノベーション創出を目指す」分野に限定され、大学別、分野別に偏りが生じます。ピア・レビューにもとづいた審査ではなく、公平性、透明性が担保されない選考となる危険があります。博士課程院生への経済的支援の強化は、日本学術振興会の特別研究員制度の拡充と大学院生に対する給付制奨学金の創設で図るべきです。

大学職員を増員し、教育・研究・診療への支援体制を充実させる―――大学は、教員だけでなく、技術、事務、医療などの職員によって支えられています。大学の基盤的経費を増額して職員を増員するとともに、雇用は正規が基本となるよう促します。

専業非常勤講師の処遇を抜本的に改善する―――大学非常勤講師で主な生計を立てている「専業非常勤講師」は、私立大学の教育を支えています。処遇を抜本的に改善するために、労働条件などの調査を政府に実施させます。専任教員との「同一労働同一賃金」の原則にもとづく賃金の引き上げ、社会保険への加入の拡大など、均等待遇の実現をはかります。また、一方的な雇い止めを禁止するなど安定した雇用を保障させます。

"自治と民主主義"を保障するルールを確立し、教育無償化計画を策定します

高等教育無償化を含めた高等教育振興計画を策定する―――中央教育審議会答申「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」は、2040年に求められる人材像を描き、そうした人材を養成するための学位プログラムを中心とした大学制度への転換をめざしています。18歳人口の減少にあわせて高等教育機関の規模を抑制・縮小し、国公立大学の枠を超えた統廃合に導くものとなっています。

 大学は「学術の中心」であり、わが国の知的基盤として社会の知的・文化的な発展、国民生活の質の向上や地域経済などに大きな役割を果たしています。とりわけ大学が担っている基礎研究は、学術全体が発展する根幹となっています。大学が「学術の中心」であってこそ、市民、若者の学び成長する権利を満たすことができます。

 「グランドデザイン」は「学術の中心」としての大学のあり方を歪める危険があると同時に、異常な高学費が、市民、若者の高等教育機関へのアクセスを阻んでいる現状を不問にし、国際人権規約が定めた高等教育の段階的無償化をめざしていません。「グランドデザイン」は廃棄し、段階的無償化で、大学を市民に開かれた高等教育機関へと発展させる高等教育振興計画を、大学関係者の合議で策定します。

「大学の自治」を尊重するルールを確立する―――世界で形成されてきた「大学改革の原則」は、「支援すれども統制せず(サポート・バット・ノットコントロール)」であり、「大学の自治」を尊重して大学への財政支援を行うことです。国公私立の違いを問わず、大学に資金を提供する側と、教育・研究をになう大学との関係を律する基本的なルールとして、また、大学運営の原則として確立します。大学評価は、第三者機関により各大学の自主的な改革に資するために行われるべきであり、政府による改革誘導に利用する制度としては廃止します。また、大学における教育研究をはじめ財務・人事・組織などの運営、学長の選考などは、教授会の審議を基礎にし、すべての教員・職員・院生・学生など大学構成員の意思を尊重して決定できるように学校教育法などの法制度を改正します。

国立大学法人制度を抜本的に見直す―――国立大学が法人化されて18年がたち、様々な問題が噴出しています。国立大学法人法は、昨年の改定で、国の監視体制・監査機能が強化され、画一的な中期目標計画の押し付けが強まっています。法人化がもたらした現状と問題点を、今回の改定も含めて検証し、大学関係者の意見を尊重して、法改正を含む制度の抜本的見直しを行います。

 大学がどのような目標・計画をたてるかは、国が決定するのではなく、大学の自主性にゆだね、国に対しては届出制とします。国が大学の業績を評価して予算を削減する制度を廃止します。

私立大学の公共性と教育研究の質をさらに高めるため私立学校法の改正を含む改革をすすめる―――私立学校法において学校法人が教育・研究に介入する余地のある条項を見直すとともに、学校法人の役員(理事、監事)は基本的に評議員会において選任・公表する、評議員会を学校法人の重要事項の議決機関とする、財務資料の公表をはかるなど、私学関係者の合意をふまえて法改正を含む学校法人改革をすすめます。まともな教育条件を保障できない株式会社立大学の制度は廃止し、私立大学(学校法人)として再出発できる環境を整備します。大学の設置審査の緩和を見直し、私学のもつ公共性をさらに高めるにふさわしい基準で、設置審査を厳正に行うように改善します。特定の学校法人の経営者が政治家と癒着し、「留学生ビジネス」や「入試における不正」など、教育を食い物にする事件が明るみに出ています。大学設置認可の機能を強め、こうした事例を見逃すことのないように、文科省による調査と厳正な指導がなされるよう求めます。安易な廃校による教職員の解雇を防止するため、私学の「募集停止」も報告事項にせず審査の対象にします。

国公立大学の一方的な統合に反対する―――国公立大学、法人の再編・統合に一律に反対するものではありませんが、教育・研究を充実させる見地に立って、学内合意を基礎にした大学間の自主的な話し合いと、地域の意見を尊重することを前提とし、「一県一国立大学」の原則を守ってすすめるべきです。教員養成系大学・学部の県をまたいだ統廃合には反対します。大阪維新の府・市政によって大阪市立大学・府立大学が統合し、大阪公立大学が発足しました。大学リストラではなく、運営費交付金を増額し、教育研究条件を充実させることを求めます。

大学への公費支出を欧米並みにひきあげます

 わが国の大学がかかえる最大の問題は、大学関係予算がGDP(国内総生産)比で欧米諸国の半分の水準にすぎず、そのことが主な原因となって、教育研究条件が劣悪で、学生の負担が世界に例をみないほど重いことです。学術、教育の発展は「国家百年の計」であり、将来をみすえた大学への投資こそ、次代を担う若者を育み、21世紀の社会発展に貢献します。

欧米諸国は、この10年で大学への研究開発費を3~5割増やし、韓国は2倍化、中国は4倍化し、学術論文数が飛躍的に増えています。教育研究条件の整備をはかることは国の責任であり、欧米並みの大学予算を確保するために全力をつくします。

 その財源は、消費税増税によるのではなく、税金の集め方、使い方をかえる「改革」によって生み出します。第一に「『税金は負担能力に応じて』の原則に立った公正で民主的な税制への改革」として、「アベノミクス」で大儲けした富裕層と大企業への優遇税制を改め、応分の負担を求める税制改革を行います。もっぱら大企業が利用している研究開発減税をはじめ各種の優遇税制があるために、大企業の法人税実質負担率は10%にすぎず、20%程度を負担している中小企業より低いという「逆転現象」が起きています。大企業に、中小企業並みの税負担を求めます。また、富裕層に対しても、所得税の最高税率を引き上げ、高額の株取引や配当への適正な課税を行うなどの課税を強化します。第二に、税金の使い方を変えます。海外で戦争をするための大軍拡をやめ、5兆円を超える軍事費を削って、社会保障、教育、子育てに優先して税金を使います。これによって、大学の授業料半額化や教育・研究への国のとりくみの抜本的強化も可能となります。

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