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日本共産党

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赤旗

52、「国会改革」と議会制民主主義

行政監視機能、国政調査権、徹底審議、開かれた国会

2022年6月

国会の行政監視機能を強め、民意を反映した「徹底審議」の国会に改革します

 国民を代表する国権の最高機関であり、唯一の立法機関である国会の重要な役割は、政府行政を監視監督することです。

 この間、安倍・菅・岸田政権は、森友学園問題での財務省の公文書改ざん、加計学園の獣医学部新設への総理の関与、陸上自衛隊の日報隠ぺい、厚生労働省の裁量労働制のデータねつ造問題、「桜を見る会」の招待者名簿破棄、厚生労働省・国土交通省による基幹統計の不正問題など、民主主義の根幹を揺るがす大問題を引き起こしてきました。

 これに対して、国会の役割は、国政調査権を行使し、その真相を徹底解明することです。国会が政府行政を監視監督する責務を十分に果たし、国民の負託に応えることが、与野党を超えて求められたのです。ところが政府・与党は、国会に対して正確な情報や資料を提出することを拒みつづけてきました。

 また、安倍・菅政権は、野党が新型コロナ対策等を議論するため要求した、憲法53条に基づく臨時国会召集要求を無視したうえ、安倍、菅両総理の政権投げ出しによる首相指名選挙を行う目的の臨時国会にすり替えました。さらに、岸田政権は総選挙の争点を明らかにするための予算委員会の審議を拒否しました。

 議会制民主主義の危機的な状況のもとで、国会のあり方が問われています。

国会改革の基本は、国会の政府行政監視機能の強化です

 国会改革で問われているのは、国会の立法機能、行政監視機能を充実し強化していくことです。

 国民の意見を反映し、政府行政を監視監督するための国会の機能を強化し、「徹底審議」の国会に改革することが求められています。自民党などが主張する「国会改革」は、「総理・閣僚の国会出席の制限」「答弁の軽減」を中心としており、国会が政府を監視監督する機能を弱体化し、国会審議を形骸化するものです。

 憲法第66条は、内閣は、行政権の行使について、国会に対して連帯して責任を負うと明記し、第63条は、国会の要求に対し、内閣総理大臣や国務大臣が国会に出席し答弁することを義務づけています。国会審議への総理出席を制限することは、行政府の長である総理大臣の国会に対する責任をあいまいにし、国会による行政監督の権能を制限することになりかねません。

 政府提出法案の審議では、政府の責任で提出した法案について、担当大臣が責任をもって答弁し、とりわけ内閣の基本政策にかかわる重要法案の審議に総理大臣が出席し答弁するのは当然です。また、経済や外交など国政の重要問題で予算委員会の集中審議を行い、総理大臣が出席し質疑に答えることは、国民に対する説明責任を果たすうえからも必要です。

 質疑と討議・討論は本質的に異なります。総理大臣等への質疑は、政治家同士の討議や党首討論に置き換えられるものではありません。

 会期制は憲法上の規定です。法案は会期内に衆参両院で可決されなければ成立しないという仕組みは、国会による政府監視機能の一つです。会期中に成立しなかった政府提出法案は、国民の意見を反映して見直し、出し直すのが筋です。

国会審議の形骸化に対する"検証と反省"を

 「国会改革」の議論にあたっては、「国会審議活性化」「効率化」の名で何が行われてきたのか、きちんとした検証と反省が必要です。

 1999年の「国会審議活性化法」について、わが党は、国家基本政策委員会を設置することにより、内閣総理大臣の国会審議への出席を大幅に減らそうとするもので、行政府の長としての総理大臣の国会に対する責任をあいまいにし、国会による行政監督機能を制約し、弱めるものだと指摘し反対しました。

 同法の運用の「申し合わせ」として「党首討論(QT)を毎週水曜日に行う」としながら「本会議・予算委員会への総理出席と重複しない」こととされ、総理の国会出席制限がもちこまれました。そのもとで、従来、通常国会の総予算審議で7日間程度行われていた全閣僚出席の総括審議は2~3日程度の基本的質疑に短縮され、法案審議における本会議への総理出席は「重要広範議案」(4件程度)に限定され、著しい国会審議の形骸化をもたらしました。しかも、こうした総理出席を制限する「しばり」は、政府与党側が政府提出法案を押し通す上での妨げともなり、数年で事実上、破たんをきたしました。

 また2009年には、官僚答弁禁止、法制局長官の答弁禁止、大臣答弁は月1回、委員会定例日の廃止などという「国会改革」構想がもちだされましたが、議会制度を根本的に変質させるという批判のもとで頓挫しました。

 こうした経緯の検証と反省がいまこそ必要です。

 自民党は、「国会改革」と称して「総理の国会出席制限」や「政府提出法案の優先審議」などを繰り返しもちだしてきました。政権与党の側から提起される「国会改革」は、結局、国会を政府提出法案の追認機関にしたいというものにほかなりません。

 国権の最高機関としての国会の行政監視機能を弱体化させる一方で、政府の側は官邸主導のトップダウン機能を強化し、「秘密保護法」で情報統制と国民監視の仕組みをすすめていることは、絶対に許されません。

国会改革についての日本共産党の提案

 国会改革について、わが党は従来から様々な提案をしてきました。中心問題は、少数会派の議員にも十分な質疑時間を保障し、徹底した審議を通じて問題点を国民の前に明らかにし、国民的な議論を反映して審議をつくす国会にすることです。同時に、議会制民主政治の土台である選挙制度を、民意を正確に反映する比例代表中心の制度に改革することが重要です。

「徹底審議」の国会をめざします

 政府提出法案等の審議では、本会議・委員会での徹底した質疑を通じて問題点を国民の前に明らかにし、国民的な議論を反映しながら審議をつくす「徹底審議」が不可欠です。

 そのため質疑時間は議席率による按分ではなく、少数会派の議員にも十分な質疑時間を保障すること、修正案についても十分な質疑を求めます。また専門家や関係者を参考人招致し、多様な国民の意見を直接聞く公聴会をもっと活用します。

 衆参いずれかの院で10議席以上なければ党首討論ができないというような、少数政党を不当に国会審議の場から排除したり、発言の機会を少なくしたりしている取り決め(申し合わせ)を抜本的に改めることを要求します。「国会活性化」の名で首相・閣僚の国会出席義務を制限する取り決めは廃止します。

 政府が何本もの法案を「束ね」て一つの法案として提出することが容認され、また数本の法案を「関連」と称し一括して委員会付託し、審議することもまかり通っています。このことも十分かつ徹底した審議を妨げており、法案毎の審議に改めます。

 2021年の通常国会で24本の政府提出法案と1本の条約に法案条文・参考資料の間違いがあったことが問題となりました。コロナ関連の感染症法案では、政府は罰則条項に誤りがあることを知りながら国会に報告せず、結果として間違った法案で審議が行われていました。このような極めて深刻な事態を繰り返さないために、誤りがあった場合には、速やかに国会に報告し、国民への周知のため官庁ホームページに修正部分と訂正日を掲載する対応を求めます。

 国会請願について、現状は会期末の審査となっていますが、審査を会期半ばに行い、請願者から趣旨を聴取し質疑するとともに、審査結果の理由を請願者に明らかにするなど、運用の改善を提案します。

 議案提案権の人数要件を緩和し、議員立法の活発化を図ります。

国会の国政調査権を行使し、行政監視機能の強化をすすめます

 国会のもっとも重要な役割は、政府行政を監視監督することです。そのため、国会が求める資料・情報を政府が提出することは当然の前提です。

 国政調査権を行使し、国会による政府・行政を監視する機能の強化を求めます。行政実態の解明のため、行政責任者(官僚)、公的機関への質疑、関連企業の責任者の証言を求めます。政府・行政機関等が議事録の作成・公表を怠り、「黒ぬり公開」などの情報隠しの横行を許さず、国会の行政監視活動に必要な行政資料・情報の公開を徹底して求めます。

 国会に「行政監視院」を設置します(2019年に5野党共同で法案提出)。衆議院議員21名、参議院議員11名の要求で行政から資料を提出させる法的な強制力をもって、政府を監視し行政実態の解明をすすめます。

 東電福島原発事故では、国会の国政調査権を背景に、政府からも事業者からも独立した調査委員会として「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(国会事故調)」を設置し、事故原因と責任の究明を行いました。政府が事故原因の究明と責任をあいまいにし、事故を過去のものにしようとしているもとで、国会事故調が提言した、第三者機関として「原子力臨時調査委員会(仮称)」を設置し、「事故を継続して厳しく監視、検証」することを求めます。

 国立国会図書館は「真理がわれらを自由にする」との理念の下、国会の立法・調査機能の強化に奉仕し、国民の図書館要求にも応える機関として設立されたものです。国会図書館の充実、強化は不可欠です。

 秘密保護法は、国会の国政調査権を侵害し、国会の政府監視を不能にするものです。秘密保護法の廃止を求めます。

国会の公文書管理・情報公開をすすめ、「開かれた国会」にするために提案します

 国民主権の議会制民主主義において、何よりも主権者国民に「開かれた国会」でなければなりません。開かれた国会は、国民が積極的に政治に参画し、国政を監視することにつながります。

 日本共産党は、立法府の公文書管理法・情報公開法の制定をすすめるよう提案してきました。とくに、国会の公文書管理について、国会事務局の「議院行政文書」だけでなく、議員による立法作業や調査活動に係る「立法調査文書」等も、その文書の管理・公開を図るようルール制定に向けた議論が必要です。

 衆議院の「憲政記念館」は、2028年度末以降に開館予定の新国立公文書館と併設となり、規模も拡大することになっています。これを機に、議会制民主主義について国民の理解を深めるため憲政資料の収集・保管・展示の場としての「議会資料館」の役割、国会参観者への学習・研修の場としての「議会ビジターセンター」の役割に加え、立法府の重要公文書を保管・公開する「議会公文書館」としての役割をもつ施設として位置づけることを提案します。

 東京電力福島第一原発国会事故調査委員会(国会事故調)の調査資料の管理、公開の法体制整備を求めます。

 国会のICT活用について、ペーパーレスなどコスト削減の観点から出発するのではなく、国会審議の充実をはかる観点からの議論を行うことを提案します。さらに、国民に対し、衆議院の情報公開拡大に向け衆議院サイトの改善、迅速なインターネット公開を進めるよう求めます。

 「衆議院インターネット審議中継」は、衆議院では現在2010年の第174回国会以降の審議が公開されています。映像が残っている99年以降の審議も、作業が終了し次第インターネット公開するよう求めます。さらに「審議中継」に字幕を入れるよう提案します。

文通費の使途・公開のルールづくりを求めます

 国会役員を特別扱いする特権的な制度である委員長手当の廃止を求めてきました。文書通信交通滞在費(文通費)については、1993年に「東京滞在の助成」が目的に追加され増額されたことに、わが党は、在京議員にも「東京滞在」費を支給することは国民から見て合理的説明がつかないと反対し、以来、議院運営委員会における毎年度の国会予算の協議の際に、文通費の見直しを主張してきました。経費の面で不合理なものは改めるべきです。

 2022年通常国会では、文通費に係る与野党協議会が設けられ、文通費の「日割り支給、使途、公開、国庫返納」について議論してきました。日本共産党は、「文通費は、国民の代表である国会議員の活動を支えて行政監視機能を果たし、議会制民主主義を支える上で必要な経費です。原資は税金であり、国民の理解が必要です。」との見地から、文通費の使途・公開・返納のルールづくりを主張しました。ところが、自民党などは協議途上の4月に、文通費の名称を「調査研究広報滞在費」に変更する法改正を日割り支給とパッケージで押し切り、成立させました。文通費の日割り支給は当然の措置です。しかし、文通費の名称と目的は、文通費の使途と不可分のものです。わが党は、使途や公開の在り方についての議論に先んじて名称と目的を変更することは順序が逆だと批判しました。

 4月の与野党国対委員長会談では、「引き続き、使途、公開、返納について議論し、今国会中に結論を得る」ことを確認し、与野党協議会で10回の協議を行いましたが、会期末になって、自民党は、協議会の報告を聞くこともなく、今国会中の使途・公開・返納についての法改正の断念を表明し、一方的に先送りしました。自民党の後ろ向きの姿勢が厳しく問われます。

 日本共産党は、文通費の使途、公開、返納のルールについて各党間の協議を行い、実施に向けた結論を出すことを求めていきます。

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