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日本共産党

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赤旗

51、「民意の届く」選挙制度改革・「政治とカネ」

小選挙区制廃止、企業・団体献金全面禁止、政党助成金廃止、参政権行使の保障

2022年6月

 自民党政治は、あらゆる面で行き詰まり、政治への不信と将来への不安が広がっています。安倍・菅政権の9年間も、「政治とカネ」で刑事責任を問われ、閣僚辞任にいたった問題が後を絶ちませんでした。

 1990年代、リクルート事件、ゼネコン汚職など、自民党の金権腐敗政治に国民の厳しい批判が向けられました。国民が求める「金権腐敗政治の一掃」を逆手にとり、いわゆる「政治改革」と称して、小選挙区比例代表並立制と政党助成金制度が導入されました。この「改革」が、民意の反映を著しくゆがめ、「政党の堕落」と「政治家の劣化」をまねいたのです。

 日本国憲法の前文は、「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し」から始まり、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないよう」決意し、主権者が国民であることを明記しています。民意を正確に反映した国会での徹底した議論を通じて、国の進路を決めることこそが、国民主権の議会制民主主義です。

 「政治改革」からのこれまでを検証し、根本的に見直し、民主主義と政治の在り方について、改めて国民的な議論が必要ではないでしょうか。

「民意が届く国会」を実現するため、小選挙区制の廃止、比例代表中心の選挙制度に抜本改革し、民意を切り捨てる定数削減は断固反対します

多くの「死票」を生みだし、投票した過半数の民意を切り捨てる小選挙区制を廃止します

 この間、小選挙区制の下で9回の総選挙が行われました。小選挙区において第一党は4割台の得票率にもかかわらず、7~8割もの議席を占め、議席に反映しない投票、いわゆる「死票」は各小選挙区投票の半数にのぼっています。まさに、小選挙制の根本的欠陥を浮き彫りにしたものにほかなりません。

 今の自民党政権を支える衆院「絶対安定多数」の議席は、2021年総選挙で全有権者の18.9%(比例・絶対得票率)の支持で獲得したものです。民意をゆがめた「虚構の多数議席」のもとで、戦争法(安保法制)の強行成立を始め、沖縄県民の圧倒的な民意を踏みにじって辺野古の米軍基地建設を強行、世論調査で半数が反対する原発再稼働にも突き進んでいるのです。平和主義・立憲主義を破壊する暴挙が、現行の小選挙区制の害悪を明白に示しています。

 2016年、衆院選挙制度関連法で、定数10削減と同時に、自動的に定数配分(「アダムズ方式」)と区割を行う格差是正の仕組みを盛り込み、長期的に現行小選挙区制度を維持することを、自民党・公明党・おおさか維新の会(当時)が強行しました。自民党も公明党も民進党(当時)も、現行制度が「民意を過度に集約している」ことを認めながら、この根本的な問題を放置しています。

 「政治改革」において、政権交代を可能とするため、民意の集約が必要だと小選挙区を導入したことに諸悪の根源があり、「虚構の多数」による強権政治の害悪が明白となった今、「政治改革」を根本から問い直すべきです。

 また、小選挙区制のもとでは、1票の格差を解消するため、毎回、小選挙区の区割り変更が必要となります。

 少なくない有権者が、市町村の行政単位や地域社会を分断する異常な線引きを押し付けられ、選挙のたびに不自然な選挙区変更を強いられています。2017年の区割改定では、これまで最大数の19都道府県97選挙区におよび、区割で分割した市区町は105にのぼり、対象となる都道府県から批判の声があがりました。今年6月16日、衆議院選挙区画定審議会は2020年国勢調査をもとにした大幅な区割変更案を勧告しました。各都道府県定数を「10増10減」し、格差が2倍以上となる選挙区や市区の分断解消のための改定も含め、合計25都道府県140選挙区の区割りを変更するというものです。今回の区割改定案は、過去最多で、全体の半数の選挙区に及び、多くの有権者に影響を及ぼすこととなります。 毎回大きな区割変更を行っても、格差の問題が続くことは、小選挙区制がもともと投票権の平等という憲法の原則と矛盾する制度であることを示しています。

 民意と議席に著しい乖離を生み出す小選挙区制は廃止し、民意を反映する選挙制度へ抜本的に改革すべきです。

参議院選挙制度をめぐる党利党略は断じて許しません

 参議院選挙制度の見直しは、2009年の最高裁判決が投票価値の平等のため「仕組み自体の見直し」を提起したことを受け、各党による議論を重ねてきました。

 日本共産党は、選挙制度を抜本的に見直し、多様な民意が正確に反映される比例代表を中心とした選挙制度にすべきと提起し、合意を形成する努力を続けました。

 ところが、自民党などは、2012年に「4増4減」で先送りし、2015年は「2合区10増10減」で糊塗したのです。

 2015年改定の附則には、抜本的な見直しについて「必ず結論を得るものとする」と明記されていました。しかし、2018年の参院選挙制度法案の審議において、自民党は「この法案は次善の策だ」「憲法改正こそが、抜本的な改正だ」などと開き直り、非拘束名簿式の比例代表選挙に「優先的に当選となる特定枠」制度を持ち込んだのです。

 最高裁判決が求めたのは投票価値の平等であって、憲法改正ではありません。抜本改革を棚上げするだけでなく、改憲の口実に使おうとするなど、自民党の党利党略そのものです。

 「特定枠」制度の導入について、自民党は「国政上有為な人材」「政党が役割を果たす上で必要な人材」を当選しやすくすることが目的だと言いました。ところが、自民党は、鳥取・島根合区と高知・徳島合区で、選挙区の候補者にならなかった者を「特定枠」としました。合区によって選挙区から立候補できない自民党の議員・候補者を救済するため、まさに、党利党略で、選挙制度を変更したことは明白です。

 これに対する国民の批判をかわそうとして、自民党・公明党は、参議院議員の歳費削減を持ち出し、これが頓挫するや、今度は、歳費を自主返納できるとする法案を提出し成立させました。これも、党利党略でしかありません。

 徹頭徹尾、二重三重の党利党略である一連の参院選挙制度関連法は、断じて認められません。

 参院は「再考の府」「熟議の府」としての役割が求められ、多様な民意を反映し、中長期的な観点から行政監視機能を発揮することが必要です。日本共産党は、基本的な考え方として「投票価値の平等実現めざす抜本改革とする」「多様な民意が正確に議席に反映する制度とする」「定数削減については、参院の立法・行政チェック機能を弱め、民意を削るものであり、行わない」との3点を、参院改革協議会において表明しています。

民意を正確に反映する比例代表中心の選挙制度に改革することを提案します

 国民は「私たちの声が届く国会を」と求めています。この声にこたえ、国民・有権者の参政権の点からも、民主主義の根幹をなす選挙制度を抜本的に見直し、多様な民意が正確に反映される比例代表を中心とした選挙制度にすべきです。

 衆議院選挙制度は、小選挙区比例代表並立制を廃止し、民意を正確に反映する比例代表制への抜本改革を行います。議員総定数は元に戻し、全国11ブロックを基礎とした比例代表制にすることを提案します。

 参議院議員選挙制度は、総定数の削減は行わず、多様な民意が正確に反映される比例代表で、全国10ブロックの非拘束名簿方式とする選挙制度にすることを提案します。

"民意を削減する"国会議員定数の削減に反対します

 国会議員定数のあり方は、国民の代表をどう選ぶかという選挙制度の根幹をなす問題です。国民の代表で構成される国会のもっとも大事な役割は、政府を監視し暴走させないようにすることです。定数削減によって、国会の政府監視機能が低下することは明らかです。

 日本の国会議員の総定数は、1980年代には、衆院512、参院252でした。ところが、「政治改革」以降、衆参ともに定数が削減され、現在では、衆院465、参院245(次回の参院選後248)となっています。わが国の男子普通選挙法1925年制定時には、人口は今の半分でしたが衆院定数は466で、「人口12万人で1議員を配当」したことからみても、議会政治史上もっとも少ない水準です。

 国会議員1議席が何人の国民を代表しているかをみると、現行は、人口約27万人に1議席の割合です。イギリス、フランス、イタリア、ドイツ、カナダなど諸外国(下院)は10万人に1議席の水準であり、国際的にみても、日本は議員が少ない国となっています。

 2016年、自民党・公明党などは衆議院議員定数10削減の法案を成立させました。しかし、「国民の代表」を削減する定数削減を行うことに合理的根拠は存在しないことが、法案審議でも明白となっています。

 この法案の元となった第三者機関「衆院選挙制度調査会」の答申は、衆議院議員定数について「国際比較や過去の経緯などからすると多いとは言えず」、「定数を削減する積極的な理由や理論的根拠は見出し難い」と、明確に書かれていました。

 定数削減の提案者は、国会議員数をなぜ削減しなければならないのか、合理的な根拠を示せず、ただ、声高に「身を切る改革」を叫んでいるだけです。

 「身を切る改革」は、国民に消費税増税を押しつけるときに持ち出されました。「国民の皆さんに消費税増税をお願いする以上、政治家も身を切る改革が必要だ」などというものです。消費税増税を押し付けるために、定数削減を行うことは、全くのすり替えであり、何の道理もありません。

 しかも、法案審議の中で、各党の提案者らが、「選挙区の代表だから、できるだけ多い方がいいのではないか」、「国民の声を代弁する貴重な議席は国会議員のものではなくて国民のものだ」、「定数を減らしていけば、議員が様々な法案に接する機会が減っていく。国会にかかっている案件数、重さと比較して、(定数削減が)妥当なのか」と答弁していました。定数削減によって切り捨てられるのは、主権者・国民の声であり、国会の政府監視機能が低下するという弊害を、提案者自ら認めているのです。理由も根拠も見いだせず、国民の声を代弁する国会議員定数を削減するなど、断じて許されません。

 主権者・国民の代表の選びかた、国民の参政権の在り方について、国民的な議論を呼びかけます。

カネで政治をゆがめる企業・団体献金を全面的に禁止し、政党助成金を廃止します

 金権腐敗政治を根絶するうえで、企業・団体献金の全面禁止と政党助成金の廃止を一体として行うことが不可欠の道です。

 同時に、日本共産党は、こうした方向を主張するだけでなく、企業・団体献金も政党助成金も受け取らないことをみずから実行しています。

金権腐敗政治に対し、自浄能力のない自民党に政権を担う資格はない

 9年間の安倍・菅政権のもとで、河井克行元法務大臣・案里夫妻の大規模選挙買収事件、秋元司担当副大臣のカジノ汚職事件、吉川貴盛農林水産大臣の鶏卵汚職事件、甘利明経済再生担当大臣(前自民党幹事長)のUR口利き疑惑、安倍総理の「桜を見る会」前夜祭の買収問題など、「政治とカネ」をめぐる疑惑が続出していることは重大です。

 「桜を見る会」疑惑では、安倍総理が政府の公的行事を地元後援会の接待につかった許しがたい国政私物化とともに、前夜祭参加者の飲食費用の一部を補填していたことが問われています。安倍氏は、国会で虚偽答弁を繰り返し、公選法違反の有権者買収疑惑の責任を秘書におしつけ、いまだに説明責任を果たしていません。今年5月には、前夜祭にサントリーが多量の酒を無償提供し安倍氏が有権者にふるまっていたことを、「しんぶん赤旗」日曜版が報じました。前夜祭をつかって公選法違反の有権者買収がおこなわれていた疑惑はますます深まっています。岸田総理は「個別の案件について申し上げることは控える」と述べるだけです。カネの力で政治をゆがめ、有権者を買収した疑惑を放置することは許されません。

 また、河井元法務大臣夫妻に対して自民党本部から交付された1.5億円の資金が選挙買収に使われたのではないかという疑惑も解明されていません。岸田総理が、買収事件の再調査を否定していることは重大です。

 「政治とカネ」にかかわる事件・疑惑の真相を徹底解明するため、関係する政治家の国会への証人喚問を求めます。自民党の腐敗政治と自浄能力のなさを見ても、自民党に政権を担う資格はありません。

企業・団体によるパーティー券購入を含む企業・団体献金を全面禁止します

 このような問題が浮上するたび、「国民に疑惑をもたれてはならない」との議論がおこりますが、今こそ、金権腐敗政治の根源である企業・団体献金の全面禁止に踏み出すべきです。

 1994年に成立した「政治改革」関連法は、「企業・団体献金については、廃止の方向に踏み切る」といいながら、実際には、「政党支部への献金」「政治資金パーティー券の購入」という二つの抜け道をつくり、企業・団体献金を温存してきました。

 政界全体へのカネの流れをみると、企業・団体献金総額は80億8900万円にのぼり、さらに政治資金パーティー収入の総額は127億400万円となっています(直近2020年分、総務大臣届出分と都道府県選管届出分の合計)。

 「政治家個人に対する企業・団体献金は禁止するが、政党には認める」とされたため、現在、総務省に届けられている各党の支部は9000以上にのぼり、この党支部を受け皿に、企業・団体献金を受け取っているのです。

 パーティー券は、その大半を企業・団体が購入しているのが実態であり、形を変えた企業・団体献金にほかなりません。この巨額の政治資金パーティー収入は、献金に比べ、名前や金額を公表されにくく透明度が低いことも問題です。

 そもそも、企業の政治献金は、本質的に政治を買収する賄賂であり、ただちに全面禁止すべきです。

 国民一人ひとりが、自ら支持する政党に寄附することは、主権者として政治に参加する権利そのもの、「国民固有の権利」です。選挙権を持たない企業が献金することは国民主権と相いれず、国民の参政権を侵害するものです。

 企業献金を容認する人たちは、1970年の八幡製鉄最高裁判決を持ち出し、「企業も社会的存在である」などといって正当化します。しかし、今なお、この判決にしがみつくのは、国民の権利を侵害している実態から目をそらし、立法府が積み重ねた企業・団体献金禁止の議論を無視するものです。

 営利を目的とする企業が、個人をはるかに超える強大な財力で、カネの力で政治に影響をあたえ自己の利益をはかれば、政治は大企業、財界に向けたものになってしまうことは明らかです。

 2022年通常国会で、日本共産党は「企業・団体献金全面禁止法案」を国会に提出しました。パーティー券購入も含め企業・団体による寄付の禁止、収支報告書への記載を免れる目的での分散寄附の禁止、収支報告書の公開の迅速化、罰則の強化などを盛り込んだものです。

 政治のゆがみをただし、国民主権を貫くためにも、企業・団体献金の禁止がどうしても必要です。

政党助成金制度を廃止します

 政党助成金制度は、90年代の「政治改革」で「企業・団体献金の廃止」とひきかえにという名目で導入されました。しかし、実際には、政党本部・支部への企業・団体献金は温存され、もう一方で国民の税金である政党助成金を受け取り、「企業・団体献金も、政党助成金も」"二重取り"が続けられています。

 1995年に政党助成法が施行されて以降、国民に1人当たり250円を負担させ、毎年約320億円もの税金が日本共産党以外の各政党にばらまかれました。その総額は約8618億円(~2022年4月分)に達し、自民党だけで約4129億円にものぼります。

 そもそも、国民は、自らの思想、政治信条に従い、支持政党に寄附する自由と権利をもっており、政治資金の拠出は、国民の政治参加の権利そのものです。ところが、税金を政党に配分する政党助成金の仕組みによって、国民は、自ら支持しない政党にたいしても強制的に寄附させられることになります。

 日本共産党は、このような制度は、「思想・信条の自由」や「政党支持の自由」を侵かす、憲法違反の制度であると指摘し、その創設に反対するとともに、一貫して政党助成金の受け取りを拒否してきました。

 重大なことは、政党助成金制度が、きわめて深刻な形で「政党の堕落」をまねいていることです。

 政党助成金を受け取っている各党の本部収入に占める比率(2020年分)は、自民党が71.7%、日本維新の会が80.2%などです。この制度の導入の際には提案者から「税金に過度に依存しないことが必要」との議論がありましたが、いまや政党助成金を受け取っている多くの党が、その運営資金の大半を税金に依存しているのが実態です。自らは税金に依存しながら、国民に増税を押し付ける、まさに厚顔無恥の態度であり、断じて許されません。

 また、制度導入以来、政党助成金を受けとった政党は47党、2022年の4月分を受けとった政党は8党です。「5人以上の国会議員を集めれば政党助成金をもらえる」ことから、理念も政策もぬきに、政党助成金目当てに、おびただしい数の新党の設立と解散が繰り返されてきたことも、問題です。

 政党は、何よりも、国民の中で活動し、国民の支持を得て、その活動資金をつくる、ということが基本です。政党が、国民・有権者から「浄財」を集める努力をしないで、税金頼みになっていることから、カネへの感覚が麻痺し、庶民の痛みがわからなくなり、腐敗政治をつくりだす一つの根源になっていることも重大です。

 このように政党助成金頼みの政党をつくりだす制度は、「虚構の多数」をつくりだす小選挙区制とあいまって、「政党の堕落」や「政治家の劣化」を生み出しています。民主主義を壊すきわめて「有害」な税金の使い方は許されません。

 2022年通常国会、日本共産党は「政党助成法廃止法案」を提出しました。

 政党助成金制度はきっぱり廃止します。

参政権の行使を保障し、選挙活動の自由の拡大します

 日本の公職選挙法は、「べからず法」といわれるように、立候補や選挙運動にさまざまな規制が設けられています。民主主義や国民の参政権の保障という点で、重大な問題です。

 選挙権、参政権は、国民主権・議会制民主主義の根幹をなすものです。民主主義の土台を決める選挙制度は、国民の参政権にかかわる問題であり、十分な議論と国民の合意を得ていくことが必要です。この間の選挙制度改革においても、一部の政党で談合し多数の力で押し付けるのではなく、全党全会派参加の下での協議とともに、主権者国民に開かれた議論を行うことを求めてきています。

被選挙権年齢を引き下げます

 日本共産党は、1922年の党創立いらい、「18歳以上のすべての男女に対する普通選挙権」を掲げ、綱領に位置付け、その実現に力をつくしてきました。

 2016年の参院選から、18歳以上の若者も投票と選挙運動を行えるようになりました。これにより、240万人の有権者が増え、さらに幅広い民意が議会に反映され、議会制民主主義の発展につながる、70年ぶりの歴史的な改正です。

 この改正では、18歳からの投票と選挙運動だけにとどまり、被選挙権の引き下げは盛り込まれませんでした。

 参政権は、候補者を応援し投票する権利だけでなく、自ら候補者となり政治に参加する権利も当然含まれています。選挙権と被選挙権を一体として考えるべきであり、若者の政治参加を保障する上でも被選挙権の引き下げが必要です。そのために力を尽くします。

 また、高校生だからと言って政治活動を禁止・制限することは許されません。主権者国民の権利である政治活動の自由を守ります。

供託金を大幅に引き下げます

 国政選挙に立候補する際、比例代表で600万円、選挙区で300万円の供託金が必要です。巨額の供託金制度が、「カネを持っている人でなければ選挙に出られない」立候補阻害要因として、主権者国民の被選挙権の行使を妨げていることは、明らかです。

 2020年、自民党などは、町村議会議員選挙の立候補時に供託金15万円を負担させる法案を提出し成立させました。町村議選には、これまで供託金はありませんでした。現在、町村議のなり手不足が深刻となっているにもかかわらず、立候補に新たなハードルを設けるというのは筋が通りません。

 総務省の研究会報告は「供託金引き下げ」に言及し、都道府県議会議長会の研究報告書も「女性や若者等にとって立候補の際に要求される供託金の負担が大きなハードルになっている」として供託金見直しの必要性を指摘しています。また超党派の「若者政策推進議連」は若者の政治参加を促進するため「供託金の大幅引き下げ」を各党に要望するなど、供託金引き下げの議論や要求に逆行するものです。

 また、国際的に見て、こんなに高い供託金を取っている国はありません。制度そのものがない国が多く、アメリカ・フランス・ドイツ・イタリアに供託金はありません。イギリス下院は制度がありますが、数万円です。カナダでは2017年に違憲判決があり、すでに供託金を廃止しています。世界の流れは、供託金をなくす方向です。

 そもそも供託金制度は、1925年の男子普通選挙の実施に伴い導入されました。それまでは、資産家でなければ選挙権も被選挙権もありませんでした。普通選挙運動が広がり、男子のみですが普通選挙が実現した際に、資産要件を撤廃しながら供託金を持ち込んで、立候補を制限するハードルとして設けられたのが始まりです。成り立ちそのものが民主主義に逆行する時代遅れの制度です。

主権者国民が選挙に気軽に多面的に参加できるよう、選挙運動の自由を広げます

 選挙権の行使は主権者である「国民固有の権利」です。国民・有権者の自由な選挙活動を妨げている規制をなくし、国民が主権者として、自らの代表を選び、政治に積極的に参加していくため、選挙に気軽に多面的に参加できるよう、公職選挙法を抜本的に見直します。

 日本のように戸別訪問を禁止している国はほとんどありません。諸外国の選挙ではボランティアが戸別訪問をして、ひとりひとりと対話することで、支持を広げていきます。日本では立候補者だけでなく、支持者による戸別訪問も禁止されており、有権者と戸口で質疑や討論することもできません。「戸別訪問の禁止」をはじめ選挙運動規制を抜本的に見直す協議を、各党に求めます。

 2013年の参院選からは、インターネットを利用した選挙運動が可能となり、WEBやSNSを利用して、投票を訴える選挙運動ができるようになりました。一方、ネット上では選挙運動の自由を拡大しながら、実社会では、選挙期間になると候補者氏名が入ったビラ・ポスターが極端に減るといった配布規制をはじめ、候補者討論会など、従来と変わらない規制や禁止規定が依然として残ったままです。

 また、日本は、選挙運動を行える期間が定められています。参議院選・都道府県知事選は17日間、指定都市長選は14日間、衆議院選は12日間、都道府県議選・指定都市議選は9日間、一般の市長・市議選は7日間、町村長・町村議選は5日間です。この期間以外は、選挙運動が禁止されています。これは国際的にみても稀な制限です。本来、「選挙運動」は「政治活動」の一部であり、日常的に行うものです。選挙運動期間の見直しも必要です。

 このような選挙運動規制があっては、有権者が十分に政策比較できるとは言えません。誰が立候補し、どのような公約を出しているのか、有権者に候補者情報がきちんとわたることが必要です。そして、有権者が、自分がいいと思った候補者の支持を周囲に広げていく活動が保障されなければなりません。そうしてこそ、有権者が憲法上の権利である参政権を行使できます。

投票機会の保障、投票環境の改善をすすめます

 国民の参政権行使を保障するには、投票機会の保障が不可欠であり、これなしに選挙権の保障はありません。

 また、投票や開票に不正があっては、選挙無効になりかねず、ひいては選挙権を行使できなくなることになります。選挙権行使の保障と選挙の公正性の確保を同時に追求し、投票機会を最大限保障することが必要です。

 この25年ほどで、投票所は約6500箇所も減り、閉鎖時間を繰り上げる投票所が激増し3分の1の投票所が20時前に投票を締め切っています。日本共産党は、投票権の行使を制約することにつながると、何度も指摘してきました。総務省も、「投票機会を広く確保する観点から、閉鎖時間の繰り上げは厳正に対処するよう」各選挙管理委員会に、国政選挙や統一地方選挙のたびに要請を行うようになりました。

 期日前投票が増えているからと言って、選挙当日の投票環境を後退させたままでよいとはなりません。有権者の投票機会を奪わないよう、投票所そのものを増やし、閉鎖時間の繰り上げを行わないようにします。

 国政選挙は選挙権年齢以上の日本国民が選挙権を有しているにも関わらず、投票できない事態が生じています。この間、一部改正をはかりましたが、今後も、不在者投票、在外投票、洋上投票など、投票機会の保障をはかります。

 2017年総選挙において、住民票を異動せずに遠方に進学している大学生ら3462人が投票を認められなかったことを、総務省が明らかにしました。住民票異動の周知徹底は当然であり、当時の総務大臣が「投票機会が得られるよう、周知したい」と表明しました。選挙権を保障する立場から、国政選挙において選挙権を有していても住民票移動していないことで権利行使できない事態を解消するための協議を、各党に呼びかけます。

 また、障害をもつ方、高齢の方が「投票所が遠い」「バリアフリー化されていない」などの理由で投票所へ行きにくいという問題もあります。外出が困難な有権者の投票行動を制約させることがないよう、投票環境の改善をすすめます。選挙管理委員会が立会人と一緒に、投票箱を持って車に乗り、施設や自宅など要望がある場所に行くことで投票ができる「巡回投票」を提案します。

 コロナ禍においても、感染者を含めすべての有権者の投票権を保障することが、大原則です。感染症拡大のリスクを減らし、投票権を保障する方法を考えなければなりません。自民党などは、21年都議選の直前に、コロナの宿泊療養者・自宅療養者の「特例郵便投票」法を押し通しました。「特例郵便投票」は、何万人もの自宅療養者がいることを前提とし、知っている者だけが使える制度と言わざるを得ない状況で、問題の多い制度です。法施行前には、宿泊療養施設で期日前投票・不在者投票が行えましたが、都議選・総選挙では設置されませんでした。コロナ感染者の自宅療養は解消すべきで、入院・宿泊療養の措置に切り替えることが感染症法対策として基本です。感染者が、入院先や期日前投票・不在者投票ができる宿泊療養先で投票することが、感染症のリスクも減らし、投票権も保障することになります。この方法であれば点字投票や代理記載も可能であり、その時間その場にいれば投票できます。宿泊療養施設に期日前投票所・不在者投票記載台の設置を行わせます。

 この10年間に、国政選挙において、選挙管理委員会の開票不正が3回起こり、選挙執行上のミスが約3倍に増加、現憲法下でなかったことが立て続けに起こっています。この背景には、選挙経費の基準の切り下げにより、開票所の大幅削減や開票時間短縮のプレッシャーを招き、経費・人員の確保が困難となっている現状があります。日本共産党が重ねて要求してきたことで経費基準は微増に転じましたが、未だ以前の基準から低いものです。

 選挙の正当性・公正性を担保するためにも、管理・執行・啓発にかかる経費と選挙事務に従事する人員は十分に確保すべきです。

政策