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日本共産党

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赤旗

45、住宅・マンション

市場優先から「住まいは人権」の住宅政策へ

恒久的な家賃補助制度を実現し、誰もが安心して暮らせる住宅を

2022年6月

今こそ、国の責任による恒久的な家賃補助制度の創設を

 日本における住宅政策は、長年、住宅確保を「自己責任」として、公的責任を後退させる新自由主義的政策がとられてきました。アベノミクス以降の格差と貧困の拡大によりその傾向はさらに強まりました。しかし、政府は持ち家対策に偏重した住宅政策を取り続けています。その内容は持ち家取得・維持のための、ハウスメーカーと金融機関の要望を受けた「経済対策」ばかりです。

 その結果、「家賃が高すぎて収入の7割以上、これでは生活を維持できない」など、収入が年金のみの世帯、学生を含む単身者世帯、シングル子育て世帯等々、賃貸住宅に暮らす世帯で高すぎる住居費が家計を圧迫しています。加えて、引き続くコロナ禍や昨今の物価高騰が何重にも暮らしの危機的状況を招いており、ホームレス状態なども含めた住宅困窮者の生活はより深刻さを増しています。

 政府も、国民の暮らしの危機の広がりのなか住宅困窮者対策に取り組み始めましたが、必要な人にいきわたったとは到底言えません。

 政府の住宅セーフティネット制度に基づいた、最大月額4万円の家賃低廉化(家主に給付する家賃補助)の対象となる登録住宅居住者への給付実績は、2020年度は全国でわずか17自治体208戸、2021年度も21自治体の298戸(給付額4985万円)のみです。コロナ禍の住宅困窮者対策としての役割をまったく果たしていません。

 一方で、仕事を失うなどして家賃が払えなくなった人に対し、自治体が一定額を上限に実際の家賃額を支給する「住居確保給付金」の給付実績は、コロナ特例で要件緩和もされる中、2019年度の新規相談件数4270件、給付額5.8億円から、2020年度はそれぞれ15万3千件、306.2億円となり、件数34倍、給付額53倍へと激増しました。「住まいの貧困」を如実に示しています。もっとも、住居確保給付金も、給付期間が最大9か月のみとか、「収入制限が厳しく児童扶養手当等を合わせると対象から外れる」というシングルマザーの声があるなど多くの課題があります。しかし、入居者に直接家賃相当額が給付される点は他の制度と段違いに実効性が高く、生活困窮者の住まい確保に一定の役割を果たしました。

 政府の検討会でも、恒久的な家賃補助の必要性について議論が始まっています。今こそ、恒久的な家賃補助制度を創設するときです。

―――住居確保給付金の仕組みを参考に、国の責任による恒久的家賃補助制度を創設します。

―――入居時に保証人に代わって広く利用されている家賃債務保証業者は、審査の名で入居者選別を行わないよう規制を強化します。また、追い出し屋規制法をつくるなど、立場の弱い借家人が住まいを追い出されることのないようにします。

公的な賃貸住宅の充実を

公営住宅の抜本的充実

 自公政権は、住宅政策への公的責任を後退させてきました。「住宅に困窮する低額所得者に低廉な家賃で賃貸」する公営住宅はニーズが高いのに、05年度の219万戸をピークに19年度は214.8万戸まで減少し、全住宅に占める比率はわずか3.6%にすぎません。その結果、例えば東京都では都営住宅の新規建設は20年以上ゼロです。応募倍率は一般募集で約20倍、単身者向け募集は50倍を超えています。全国的にも、公営住宅を供給する必要性は都市部中心に引き続き高いですが、政府はその整備どころか削減の方向を強めています。

 また、公営住宅は、法制度の改悪により、月収15万8千円以下などのごく限られた低所得者しか入居できません。加えて、居住者の高齢化や外国人居住の増加等で住民間のコミュニケーションに新たな課題が生じ、自治会活動など住民の共同活動も困難を抱えています。自治体任せではなく、地域の実情を踏まえた国の支援が求められます。

―――公営住宅の新規建設を含む供給の増加をすすめるとともに、UR賃貸住宅の空き家や、民間賃貸住宅を借り上げて公営住宅にするなど、多様な供給方式の活用により、公営住宅の供給を大幅に増やします。

―――公営住宅については、法改悪で引き下げられた、現行の月収15万8千円の入居収入基準を、まずは引き下げ前の月収20万円に引き上げるとともに、子育て世代や単身者が入居しやすいようにします。収入が増えた入居者を「収入超過者」として、強制的に居住者を追い出すことをやめさせます。

―――入居時の保証人については、国土交通省が2018年3月、保証人の確保を入居の前提とすべきでないという通知を出しました。しかし、まだ多くの自治体で保証人を入居時に要求しており、保証人要件が住宅困窮者入居の障害となっています。公営住宅の保証人要件を残している自治体には、要件を撤廃させます。

公団住宅(UR住宅)の改善

 全国公団住宅自治会協議会が2020年9月に行ったアンケート結果によると65歳以上の世帯主は70.6%、約7割が世帯収入354万円未満です。また、現在の家賃負担が重いと答えた世帯は74.7%に上っています。加えて昨今の物価高騰で低所得入居者の生活は危機に瀕しています。高家賃対策は急務です。

 生活困窮者の家賃負担軽減のため、明確に法的根拠のある機構法25条4項の「家賃の減免」規定を現在の入居者に一刻も早く適用すべきです。国と機構が決断すればすぐにできることです。そのうえで、UR賃貸住宅は、生活に困窮する入居者に対し高すぎる家賃を引き下げるべきです。そのためにも、都市再生機構法を改正し、高すぎる家賃の原因となっている「近傍同種家賃」(民間と同等の市場家賃)制度を廃止することが必要です。

 なお、今年度からUR賃貸住宅も対象となる「セーフティネット登録住宅制度」の家賃低廉化は、本来民間の空き家等を対象に住宅を確保し、家主に家賃値下げ分を給付する制度です。UR賃貸住宅の家賃低廉化の適用自体は住居費負担軽減につながりますが、本来UR賃貸住宅は、国が関与する公的賃貸住宅ですから、国の責任で家賃を値下げすべきです。

―――UR機構法25条4項の「家賃の減免」を条文通り実施させて、いまUR賃貸住宅に居住している、高齢者や低所得者の居住安定をはかります。

―――UR賃貸住宅は、住宅セーフティネットを担う公共住宅として位置づけます。戸数削減や民間売却をさせずに国民の財産として守り、充実させます。「ストック活用・再生ビジョン」は、白紙撤回させます。

―――住み続けられる家賃にするため、低所得世帯(公営住宅入居対象世帯)の家賃は近傍同種家賃制度や「継続家賃改定ルール」によるのではなく、公営住宅同様の家賃制度(応能家賃)にします。そのため現行のUR機構法等の改正を行います。

―――2018年12月に、畳床、ふすまの枠等の修繕負担区分の見直しが実現しました。まだ、畳表・ふすま紙の入れ替え等、民間賃貸住宅でも家主負担が多い項目が入居者負担とされています。これらの修繕をUR機構の負担で進めます。

CO₂排出削減のため、住宅の断熱・省エネ化をすすめます

 深刻な「気候危機」のもと、CO₂排出削減のためには、住宅の断熱・省エネ化を新築・改築時に進めることが必要です。また、WHO(世界保健機構)は、2018年11月に「住宅と健康ガイドライン」を発表し、各国に対し住生活の観点から寒さ対策(冬季室内温度18℃以上)を強く勧告しています。日本も対応を迫られています。

 新築のすべての建築物に2025年を期限に省エネ基準への適合を義務化する「建築物省エネ法」の改正がされました。これを第一歩に、住宅の断熱・省エネ化を、新築・改築時に進めることが必要です。とくに、既存住宅の省エネ基準適合率は2019年時点で約13%にとどまっています。中小の建設業者が各地域の事業に参加しやすい環境づくりを行い、既存住宅の省エネ・断熱改修を進めることが重要です。

―――新築・改築時の省エネ・再生エネ化を規制と助成一体にすすめます。一定規模の建物建設に断熱化、太陽光パネル設置などの脱炭素化対策を義務化するとともに、住宅建設への省エネ減税・住宅ローン減税の上乗せなどを行います。

―――政府は2030年までに段階的に省エネ基準を引き上げ、「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」、「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)」の基準を新築建築物に義務化するとしていますが、段階的にではなく当初からZEH・ZEB基準を義務付けます。

―――住宅の耐震化やバリアフリー化、長寿命化とあわせて、安全で快適な住宅をめざす住宅リフォーム事業をしっかり位置付けるとともに、自治体の取り組みを支援します。

―――中小の建設業者が省エネ改修事業に参加するうえで大手ハウスメーカーと格差が生じないように、技術面も含めた支援を行います。

参照:「気候危機を打開する日本共産党の2030戦略」
https://www.jcp.or.jp/web_policy/2021/09/post-882.html

マンション対策、空き家、サブリース

分譲マンションの維持・管理への支援

 分譲マンションは国民の1割、1400万人の人々が暮らす場であり、都市におけるコミュニティの場でもあります。マンションの維持・管理に対する公的な支援を充実し、安全、快適で、長持ちするマンションをめざすとりくみへの支援が求められています。

 住民の立場で活動するマンション管理士の育成や、管理組合団体などの自主的なとりくみへの支援、行政の相談体制の整備など支援体制を充実します。

 また、老朽マンションの建て替え・修繕が増えてきましたが、管理組合の積立額では要求される修繕費用を出せないなどの問題が生じています。修繕費用が払えないことを理由に建て替えに反対する居住者もいます。安易な建て替え要件の緩和は、財産権侵害を招きます。あくまで判明している居住者全員の合意を原則として、建て替えを進めるべきです。

空き家・既存(中古)住宅対策

 空き家が増えています。その数は全国で849万戸に上っており、そのうち利活用方法(賃貸、売却、二次的利用など)も定まっていない「その他空き家」は、349万戸にのぼっています(2018年住宅・土地統計調査)。空き家は利活用こそが必要で、管理されない「放置空き家」としないことが重要です。

 とくに、日本は既存住宅(中古住宅)の流通が少なく、10%程度しか住宅として活用されていません。既存住宅市場の活性化のため、政府は安全性や市場価値を高める「長期優良住宅」制度の対象を既存住宅のリフォームにも広げるなど施策をとり始めています。既存住宅を長持ちさせ、有効活用する施策を支援する等、市場任せ、家主任せではなく、行政が住民とともに対策を進める仕組みを作ります。 

サブリース業者への実効性ある規制

 サブリース業をめぐり、賃貸アパートのオーナー(投資主)への不正融資や、共同住宅の違法建築が社会問題化しています。サブリース規制立法が成立し、義務的な登録制度ができましたが、相変わらずオーナーに契約内容の十分な説明もないまま一方的に家賃値下げを迫る等の行為が続いています。サブリース事業者に対しては、借地借家法の借家人としての地位に基づく主張を認めない等、オーナーや入居者の生活と権利を保護するためにより実効性のある規制を行います。

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