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日本共産党

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赤旗

43、住民のための都市再生・まちづくり

特定大企業が稼げる都市再生・まちづくりではなく、住民の生活、福祉を支えるまちづくり政策への転換を

2022年6月

コロナ禍でもスーパーメガリージョン、東京一極集中を加速

 コロナ禍で感染拡大防止のため、人の移動を減らし「密」を避けることが求められています。これに逆行し、移動を促進して「密」をつくり、東京一極集中を加速してきた政府の都市政策の破綻は明らかです。

 自公政権は、都市再生政策を「成長戦略」と位置付けて都市再生基本計画の改定などを進め、スマートシティの推進など「世界と戦える国際都市の形成」(日本再興戦略)で都市間競争に勝ち抜く、「稼げる都市」づくりを加速させてきました。これは、スーパーメガリージョン(リニアで結ぶ巨大都市圏)構想や、大規模開発型のコンパクトシティづくりなどと相まって進められています。

 これらの都市政策は、人の移動を増やすとともに、都市機能を集約して「密」をつくり、大都市圏への一極集中を加速させるものです。政府はコロナ禍でも、局所的に生じる「密」を避ければ問題ないと強弁してこれらの施策に固執していますが、都市部の感染爆発をみても、人の移動を促進し「密」をつくることを避けられません。

 こういう都市政策は抜本的に見直すべきです。

 そのもとで、民間都市再生事業の一件当たりの事業費も2011年度の約735億円から2020年度は2,590億円へと大規模化が進んでいます。都市再生事業への支援は税制優遇がその柱ですが、民間都市再生事業を実施する大企業・大手不動産会社への税制優遇措置は、2011年から2020年の10年間で約643億円になります。

 また政府は、都市計画手続きを簡素化する「国家戦略特区」の認定や容積率等の更なる緩和、不動産証券化など不動産投資、PPP/PFIなど民間資金活用等のやり方で、大手不動産・都市開発会社がすすめる大規模再開発事業の誘導・支援を制度面からも強めています。

 特に東京では、「世界で一番ビジネスのしやすい国際都市づくり」、「国際金融都市構想」などを口実に、グローバルな都市間競争に勝ち抜く国際競争拠点都市へとタワーマンション・複合ビルが乱立する"東京大改造"を進行させています。「ポスト五輪」でも、首都圏中心に大型再開発が目白押しで、大手デベロッパーとゼネコンが群がっています。政府の都市政策はこれら特定大企業の儲けに奉仕するものです。

 今の都市政策は、人口減少社会のもとでも、いっそう大都市一極集中を加速し、ストロー効果による地方の衰退と疲弊をさらに押しすすめ、地域間格差を拡大させるものであり、日本の国土を荒廃させる道です。

 政府も「東京一極集中の是正」を言わざるを得なくなりました。しかし、東京圏への公共投資の集中や規制緩和を改めようとせず、逆に地方都市にまでオフィスビル中心の再開発を拡大しています。

 こうした「国際競争力強化」を口実にした再開発は、一方でまちづくりに大きなゆがみをもたらしています。

 高価格住宅、公共交通の長時間通勤や過密問題に加え、増加する高齢者に対する福祉の切り下げ、非正規雇用増加による貧困と格差の拡大、そして、首都直下地震、南海トラフ地震など大規模な災害リスクなどが顕著になっています。

 加えて、コロナ禍で、東京都心部では再開発の目玉とされるオフィスビルの空室率が上昇し6%に迫るなど、需要が減少しています。また、テレワークが広がる等働き方も大きく変わっています。

 「国際競争力強化」を口実に都市機能を集約する、一握りの財界本位のまちづくりは時代遅れです。住民本位のくらしやすいまちづくりへと都市政策を転換することが必要です。

「国際競争力強化」を口実に大規模開発を推進し、東京圏一極集中を加速する都市再生政策を改めます

 国際金融都市構想はじめ外資系ビジネス企業を東京都心部に誘致する動きが加速し、超高層オフィスビル、マンションなどが乱立する状況が今後も継続する見通しです。

 加えて、菅前首相は官房長官時代の2019年12月、国内で多くの消費活動が見込める海外富裕層、たとえば1泊500万円クラスの超高級ホテルに泊まるセレブを呼び込むためとして、各地に世界レベルの超高級ホテルを50か所程度新設する方針を示し、コロナ禍でもこの政策は継続させています。

 外資系企業や外国人が増加するだけでなく、仕事を求めて地方からヒト、モノ、カネが集中し、その弊害として、地方の衰退、疲弊が広がります。リニア中央新幹線を核としたスーパーメガリージョン構想が拍車をかけます。その行きつく先は、IR・カジノ施設の誘致です。

 こうした、東京圏一極集中を加速する大規模開発を推進する都市再生政策は改める必要があります。

特定企業が稼げる都市再生政策

 2000年以降、バブル破綻の後遺症を残したまま、都市再生政策が敢行されてきました。都市の競争力強化、都市間競争を煽り、都市再生緊急整備地域の設定、民間都市再生事業など税制優遇と規制緩和で民間開発を支援し、そこに、公的な市街地再開発事業などの公共投資を組み込み、民間大企業、大手不動産、デベロッパーが進める大規模開発を支援してきました。

 都市再生本部の設置や都市再生特措法を制定した当初は、金融危機、企業破綻、地価下落など景気が悪く、開発事業も低迷、大手事業者の収益も減退していたことから、その打開策として都市再生政策が打ち出されました。

 しかし、現在では、東京都心部や大阪、名古屋など大都市中心部で超高層オフィスビルや超高層マンションが乱立(東京都ですでに100棟近くが建設され、約70棟が新たに計画されている)。インバウンド需要を見込んだホテルや国際会議場や興行施設などの建設も目白押しです。オリンピック、リニア建設など巨大イベントを見込んだ不動産投資事業の推進、ミニバブルの様相を呈した地価高騰が拍車をかけています。こうした中、大手建設、不動産、開発事業者はコロナ禍直前まで史上最高の利益を更新。コロナ禍でもこの傾向は続き、四大ゼネコンは2021年になっても手持ち工事を8兆円以上も抱え、収益を上げ続けています。こうした現状は、当初に政府が意図した都市を再生する政策の必要はなくなったことを示しています 。

民間都市再生、国家戦略都市再生プロジェクト、国際金融都市構想など特定企業優遇事業は廃止します

 2005年頃から認定を受けた民間都市再生事業は147件、都市再生緊急整備地域には51事業が選定されています。(22年6月末現在)。民間都市再生事業は容積率緩和に加え税制優遇を受けており、実施する大企業・大手不動産会社への税制優遇措置は、2012年から2021年の10年間で約763億円になります。

 また、安倍政権が導入した国家戦略特区都市再生プロジェクトは、あえて都市計画法の手続きを排除し、民間都市再生事業の認定手続きを省略するものです。どれも外資系ビジネス拠点となる超高層オフィスビルなど巨大再開発事業です。例えば、リニア中央新幹線の開業、国際ビジネス拠点を名目にした品川駅周辺開発は、旧国鉄操車場だった品川駅隣接地を都市再生機構が区画整理し、JR東日本が超高層オフィスビル、外国人富裕層向け住宅などを建設、東京都が進める泉岳寺駅再開発などと一体にした超巨大な再開発事業です。国家戦略特区都市再生事業であるとともに東京都の国際金融都市構想にも指定されています。

 こうした、国家戦略特区の指定等による上からの都市の再編は、住民本位のまちづくりと相いれないものです。こうした特定企業を優遇するための都市再生事業に国民の税金を投入したり、税金を負けたりすることは、直ちにやめるべきです。

都市の荒廃を招く超高層ビルの乱立を抑制します

  東京オリンピック・パラリンピック後の、不動産価格の下落、オフィス需要低下など不動産のミニバブルの崩壊が指摘されているもとでも、超高層ビルの建設は増加を続けてきました。しかし、コロナ禍で、東京都心部では再開発の目玉とされるオフィスビルの空室率が上昇し6%を大きく超えるなど、オフィスビル需要が減少し、まちづくりのあり方を再考する時期に来ています。テレワークが広がる等働き方も大きく変わっています。

 超高層ビルは、高額な初期投資、維持管理・修繕費用がかかり、不況時の資産価値の下落リスクが高まること、建て替え時など区分所有権の合意形成がより困難なこと、長周期地震動、火災、電源喪失など災害時の超高層ビル特有の危険などのリスクが指摘されています。超高層ビル群の谷間、周辺住環境への被害、日照、強風、コミュニティ遮断など周辺住民への直接被害も発生しています。

 超高層マンションの乱立に伴い、国全体としては人口減少社会にある中、局所的に急増する人口に対応した学校や福祉施設、上下水道などインフラ施設の整備など公共投資の増大を余儀なくされています。超高層ビル向けの防災安全対策も考えなければなりません。

住民が主役の都市計画、まちづくりを

 都市計画、まちづくりの主体である地方自治体も稼げる都市づくりを推進しています。まちづくりの計画、設計、施工の全工程を特定事業者に依拠、丸投げしている実態が多く見られます。官民連携(PPP/PFI)の推進など公的部門の民間移譲、民営化による自治体経営の効率化と相まって、建設、不動産、デベロッパー等の事業者が稼げる大規模再開発事業に傾注しているのです。

 地方自治体では、コンパクトシティ(立地適正化計画)や公共施設等総合管理計画に基づくまちづくりがすすめられています。

 集客施設や住宅を中心市街地に誘導集約し、郊外集落には公共交通ネットワークで結ぶのがコンパクトシティ+ネットワーク政策です。ところが、中心市街地への誘導ばかりが計画され、郊外集落への公共交通路線を整備せず、交通不便地域のまま放置しているケースも少なくありません。

 激甚化・頻発化する豪雨災害など相次ぐ災害に備えたまちづくりが求められています。

 従来、コンパクトシティ(立地適正化計画)の中には、住民の居住誘導区域が、ハザードマップで示す災害危険区域と大きく重なる等、整合性のない計画が散見されました。しかし、地域住民の運動もあり、2020年、居住地域とハザードマップとの整合性をとるよう、土地利用規制も含めた法改正がされました。今後とも、住民合意のない居住誘導区域の設定や、ひとが住みにくいまちづくりをさせないために、声を上げていくことが重要です。

 また、人口減等を理由に、学校や福祉施設の集約、統廃合、縮小廃止を優先させている自治体も少なくありません。この元になっている、公共施設等総合管理計画は、全国の自治体でほぼ計画が策定されています。本来は、老朽化が進むインフラ施設の維持管理更新を促進することを目的なのに後回しにされているのです。

 都市計画・まちづくりは、地域住民が安全で、安心して暮らし、住み続けることができるための生活基盤をつくることです。特定企業や富裕層の身勝手な利潤追求の道具にしてはいけません。地域の開発事業を営利目的で利用する特定企業に差し出すなど、あってはならないことです。

 まちづくりは、持続可能な地域経済社会の基盤づくりでもあります。そのためには、地域住民の計画づくりへの参加と合意形成が不可欠です。計画段階から検討委員を公募するなど、市民参加を徹底し、営利企業等に依存するやり方は抑制する必要があります。

 都市計画、まちづくりは

―――巨大地震や豪雨など大規模災害に備えた対策を優先し、災害危険地域などの土地利用規制も含め住民のいのち・安全、暮らしを最優先する政策に転換します。

―――住民不在の都市計画・まちづくり政策を抜本的に見直し、「住民が主人公」のまちづくりを支援し、住環境や景観、コミュニティを守り、改善します。

―――まちづくり事業への住民参加、住民主体の計画づくりを推進する都市計画制度への改正をめざします。

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