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日本共産党

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赤旗

34、被災者支援・復興・防災対策

住民のいのちと暮らしを最優先に、災害に強いまちづくり、国土づくりをすすめます。

2022年6月

 2011年3月11日に発生した東日本大震災は、巨大地震と大津波、福島第一原発事故による放射能汚染という、巨大かつ長期にわたる深刻な複合災害となりました。

 前回参議院議員選挙以後の3年間だけでも、東日本や房総半島の台風、熊本豪雨、連続した福島県沖を震源とする地震、火山噴火や豪雪など、甚大な被害をもたらした自然災害があいついでおり、日本列島のどこでも自然災害に対する備えが求められています。

 開発と防災対策のあり方、監視・観測や研究体制の脆弱さが改めて問われており、経済効率優先で被害を拡大させてきたこれまでの「防災対策」の根本的転換が求められています。パンデミックのもとでの被災者支援のあり方も問われています。

 災害対策は、災害が発生した後の応急対策や復旧・復興対策だけでなく、災害の発生を抑え、被害の拡大を防止するための予防対策を重視した政策に転換する必要があります。

 日本共産党は、(1)防災を無視した開発をやめ、必要な防災施設の整備と安全点検を徹底するなど防災まちづくりをすすめること、(2)観測や研究体制の整備をすすめ、消防や住民などを中心とした地域・自治体の防災力を強化すること、(3)災害が発生した場合には、再度災害を防止するとともにすべての被災者を対象にした生活と生業の再建、被災者の自立にむけた支援を国の責任でおこなうこと――このことを基本にすることが必要と考えます。

 そのためにも都市への「一極集中」など災害リスクの集中を改めるとともに、災害リスクに対する脆弱性の克服は最優先の課題です。

被災地の復興は被災者の生活再建を柱にすえ、支援を強化します

 被災者の住宅、生業が再建し、人が戻ってこそ、地域の復興といえます。道路や建物の復旧は、被災者の生活再建の手段にすぎません。被災者・被災地の再建・復興に困難をもたらしているのは阪神・淡路大震災や東日本大震災だけではありません。災害ごとの取り組みを検証し、教訓としなければなりません。

 被災者や被災地の生活再建、復旧・復興対策は、既存の制度を押しつけるのではなく、現場の声を反映させ、被災地にとって使い勝手のよい支援制度とすることが必要です。国は必要な財源を確保し、地域の判断でおこなう被災者支援を支えるようにすべきです。

 避難生活や仮設住宅での仮住まいを強いられ、生活と生業の一日も早い再建にむけ、多くの被災者の皆さんが苦闘しています。日本共産党は、被災者のみなさんの思いに寄り添い、一日も早い生活と生業の再建にむけ、ご一緒に全力をつくします。

 「災害関連死」など避難生活やその後の復興過程での犠牲をなくさなければなりません。「災害ケースマネジメント」の導入をすすめ、一人ひとりの被災者に寄りそった支援を可能とします。避難行動に支援を必要とする高齢者や障害者などの個別避難計画については、福祉関係者らの協力も得て作成できるよう自治体に対する国の支援を強化します。また、都道府県をこえた広域避難については、自治体まかせでなく国の責任で整備することが必要です。

(1)自宅避難者をふくめた被災者の当面の生活を確保します

 災害救助法にもとづく応急救助については、被災者の一日も早い生活再建に効果的に結びつくようにすることが不可欠です。

 避難所については、コロナ禍をふまえた感染症対策と財源措置を徹底するとともに、従来の指定避難所以外の既存の施設や宿泊施設等の活用を図る際には、災害救助法にもとづき国の負担でおこなう避難所の提供であることを明確にし、被災者や自治体まかせにしないこと。福祉避難所の整備、給食施設やトイレなど避難所としての機能と環境整備を確保すること、指定避難所以外の避難者の把握と避難生活の環境改善をすすめることは喫緊の課題です。

 避難所での男女別トイレや女性専用の更衣室の設置、避難所や仮設住宅などでの性暴力の防止、生理用品など女性、妊産婦に必要な物資や物品の提供などジェンダー平等にもとづく支援をすすめます。

 応急仮設住宅の建設は、自宅敷地内への設置やコミュニティや被災者の生活の便を考慮するとともに、木造仮設住宅の活用をすすめることなどは被災者の生活再建を効果的にすすめるうえで必要です。仮設住宅への入居や被災住宅の応急修理、障害物の除去など、高齢世帯や母子世帯など、実際に救助を必要とする世帯はすべて救助の対象とすること、特別基準による基準額や適用期間の延長をはじめ、現金供与による救助の実施も含めて被災の状況に見合った全面的な活用を追求します。応急修理期間中の仮設住宅利用については、被災者の実態にあわせた見直しを図るとともに、災害救助法にもとづく国庫負担を最大で全額とするなど必要な見直しをおこなうべきです。

(2)被災住宅の改修・再建に対する支援を抜本的に強化します

 「被災者に公的補償を!」―阪神・淡路大震災被災者の粘り強い運動と世論の力で「被災者生活再建支援法」は創設されました。当初、住宅の再建には直接使えなかったものの、被災者と被災地の実態を背景にした運動で、改善を重ねてきました。しかし、制度の支援対象は住宅に被害のあった被災者の一部にすぎず、もじどおり「再建」を支援するための拡充は急務です。全壊や大規模半壊だけでなく中規模半壊にいたらない半壊や「一部損壊」に支援対象をひろげるとともに支援金を当面500万円に引き上げることが不可欠です。また、市町村で10以上の全壊世帯などの適用条件の緩和や国庫負担の拡充をおこなうなど、被災者の生活再建を直接支援する制度とすることが必要です。

 被災住宅の被害判定については、宅地被害を含め、失われた住宅としての機能を反映した判定基準とすることが求められています。

(3)中小商工業者や農林漁業者の事業の再建に対する支援をつよめます

 地域経済とコミュニティの担い手である中小商工業者や農林漁業者の事業の再建をすすめるため、事業所や事業(営農)用施設・設備再建に対する直接支援など、生業再建に対する支援を本格的につよめます。また、災害により休業を余儀なくされている間の経営の維持への支援や既存ローンの負担軽減に対する支援を強化します。

(4)再建途上での被災に対して、必要な支援をおこないます

 再建途上での被災に対しては、生活の維持や生業再建に向けた新たな負担を軽減するために必要とされる支援をおこないます。

乱開発を規制し、災害に強いまちづくり、国土づくりをすすめます

 大都市部では、「再開発」や「都市再生」の名による超高層ビルの建設ラッシュ、無秩序なまちづくりによって、雑居ビルや老朽木造住宅が混在しています。通勤や通学のため大規模な人口移動が繰り返され、迷路のような駅ターミナルに人があふれています。一方、地方では、山地の荒廃がすすみ、集落の維持そのものが大きな問題となっています。市町村の広域合併は、住民と行政の距離をますます広げています。地域医療や介護・福祉の後退も深刻です。

 いったん地震や豪雨・洪水などが発生すれば、被害を拡大することにつながるこのような状況を、一つひとつ具体的に克服してゆくことが災害に強い社会を実現することになります。

 日本共産党は、災害による被害を拡大・深刻にするこうしたあり方を根本的に転換するため、住民のみなさんと力を合わせます。

 公共交通やガス・上下水道などライフライン施設、河川堤防、がけ崩れや土石流などの危険カ所、老朽化したため池など、災害危険カ所の調査・点検をおこない、その結果にもとづき補強や防災対策をすすめます。安全な避難を確保するとともに危険区域の住宅などの移転に対する支援を強化します。その際、住民自らが危険個所を把握し防災対策の点検をおこない、その結果にもとづき地域防災計画の見直しをすすめることを重視します。高齢者や障害者、住民の安全な避難など、住民の知恵と力をいかして地域の防災対策を強化します。

 開発行為に対する防災アセスメントの導入をはじめ、災害の危険を無視した開発行為の規制など、経済効率最優先でなく防災を重視したまちづくり・国土づくりをすすめます。災害復旧にあたっては「原形復旧」をおしつけるのではなく、再度災害を防止するため必要な「改良復旧」をすすめます。

 地震による被害を最小限にくい止めるうえで、学校などの公共施設や緊急輸送路沿いの住宅などだけでなく、社会福祉施設、病院や大規模集客施設をはじめ地盤を含めたすべての住宅の耐震診断と耐震補強を計画的にすすめるとともに、そのために必要な財政支援を強化します。長周期地震動や地盤の液状化などへの対策を強めます。

 多くの人的被害や住家被害がマグニチュード6~7クラスの地震によって引き起こされてきました。地震による被害が発生する都度対策の遅れが指摘されており、こうした課題を克服することなしに住民の安全はあり得ません。地震防災対策は、特定の想定にもとづく大規模地震だけに限定せず、日本列島のどこでも起こりうる地震を対象に、防災対策に必要な予算と人材を確保することが必要です。東海地震の予知を前提に、住民の生活・営業の制限を可能とする大規模地震対策特別措置法については、廃止をふくめた見直しをおこないます。

防災対策を支える人員体制を強化します

 発災時の応急対策や被災者支援だけでなく、防災や復旧に関する計画の作成や修正、防災情報の観測・伝達など、防災に関する人員体制を充実させなければなりません。その際、障害者や高齢者など要援護者、女性や性的マイノリティの人たちを含めた人権に配慮した対策をすすめることができる体制づくりをすすめます。

 大規模な災害発生にあたって、消防や警察などの救援部隊を全国的に派遣する体制は急速に整備されてきました。一方、地域の防災対策を日常的に点検・強化し、災害発生時には被災者救助の中心的役割を担う市町村消防の実情は、職員の不足が常態化しており、広域化による市町村災害対策本部との連携や地理不案内による初動体制の遅れなどが懸念されています。防災行政無線の整備を含め、消防職員の増員や消防水利の整備など、消防力を強化することは地域の防災力にとって不可欠です。

 突風・竜巻や台風・豪雨などによる被害の拡大を防止するうえで、気象現象の的確な把握と住民の確実な避難をおこなうことが切実に求められています。地震・津波や火山、気象の観測・監視体制を強化するとともに、市町村長による避難の指示等や住民への伝達が的確におこなえるようにするための支援を強化します。また、住民の避難をすすめるためには、土砂災害や豪雨害、地震など、住民自身が自らの住宅や地域のなりたちをふまえた災害に対する脆弱性を把握したうえで気象や避難情報を活用できるようにすることが何よりも求められており、学校教育を含めた検討が求められています。

 御嶽山(2014年)や草津本白根山(2018年)の噴火は、観測・研究体制の脆弱さとともに住民や登山者などの安全確保対策の不十分さを明らかにしました。火山噴火にともなう避難情報の根拠となる噴石の観測の不十分さも指摘されています。火山噴火の研究・観測と防災体制については、研究と防災に関わる人材や予算を抜本的に強化します。

石油コンビナートなど大都市圏臨海部の安全対策をすすめます

 東日本大震災では広域にわたり大規模な液状化が発生、東北地方だけでなく千葉県など臨海部の石油コンビナートでも火災・爆発事故が発生しました。「令和元年度決算検査報告」で会計検査院は、20製油所のうち12製油所において、耐震性に係る南海トラフ地震や首都直下地震の被害想定が政府の報告に照らして不十分だったとする検査結果を明らかにしました。地盤の耐震化、液状化対策も不十分なまま放置されています。

 東京湾だけでなく大阪湾や伊勢湾など、大都市圏の臨海コンビナート地区は住宅密集地に隣接しています。政府が想定している南海トラフ地震や首都直下地震だけでなく、大規模災害が発生した際の労働者・住民の安全、ライフラインの確保だけでなく、応急対策をすすめるうえでも臨海部の安全対策はとりわけ急務です。

 事業所まかせというあり方を改め、都道府県単位の防災計画だけでなく臨海部一帯の防災対策に国が責任を持ち、国と地方の関係行政機関と事業所が連携して、消防・防災体制と避難体制を抜本的に強化することが必要です。

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