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日本共産党

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赤旗


経済危機から国民の暮らしを守るために政治は何をなすべきか

――日本共産党の五つの提言

経済懇談会 志位委員長の報告

2010年3月11日


 日本共産党が開いた経済懇談会「経済危機から国民のくらしをどう守るのか」(11日)で、志位和夫委員長が行った報告を紹介します。

大企業の過剰な内部留保と利益を、国民の暮らしに還元せよ

 いま経済危機のもとで、国民の暮らしの実態はきわめて深刻です。失業、賃下げ、倒産など、どの指標をとっても史上最悪の数字が更新されています。経済危機から国民の暮らしを守るために政治は何をなすべきかについて、この間の一連の国会論戦、各分野の方々との懇談なども踏まえて報告させていただきます。

「成長の止まった国」「国民が貧しくなった国」――世界でも他にない異常

写真

(写真)経済懇談会で報告する志位和夫委員長=11日、党本部

 まず強調したいのは、一昨年秋の「リーマン・ショック」以降の日本の経済危機は、世界のなかでもとくに深刻なものだということです。日本の2009年のGDP(国内総生産)は前年比マイナス6・1%ですが、これは世界のなかでももっともひどい落ち込みです。なぜこういうひどい落ち込みとなったのか。私は、その答えは、実は「リーマン・ショック」前の10年間にあると考えています。

 先日の衆院予算委員会の質疑(2月8日)でも明らかにしましたが、10年間(1997年~2007年)でみまして、日本は主要7カ国のなかで、ただ一国だけGDPが伸びていない、「成長の止まった国」になってしまっています。また主要7カ国のなかで、ただ一国だけ雇用者報酬が減っている、「国民が貧しくなった国」になってしまっています(グラフ(1))。これは世界でも他にない異常な状況です。「中国にGDPで抜かれる」ということがよく言われますが、他の先進国と比べても日本だけが経済成長から取り残された状況にある。こういう状況が10年間続いたところに、「リーマン・ショック」という過剰生産恐慌が襲ってきた。これが日本の経済危機をきわめて深刻にしているわけです。

 なぜそういう状況がつくられたのか。その根底には日本経済の異常なゆがみがあります。同じ10年間に、大企業の経常利益は15兆円から32兆円に大幅に増えました。ところが労働者の雇用者報酬は、279兆円から直近では253兆円まで大幅に減っています。利益はどこにいったか。大企業の内部留保が142兆円から229兆円に急増した。ここに蓄積されたわけです。

 この間、正規労働者の非正規労働者への大量の置き換え、リストラと賃下げ、下請け中小企業の単価の買いたたきなどによって、国民から残酷な形で吸い上げたお金が、過剰な内部留保として蓄積しているのです。

 この内部留保はどういう形で現存しているか。国内の有形固定資本――機械や工場や土地など設備投資の形での内部留保は、この10年間でまったく増えていません。急膨張しているのは海外企業の株保有であります。その多くは、海外での子会社や買収した企業などの株保有です。日本国内で労働者や中小企業から搾りあげたお金が、国民の所得に回らず、国内投資にも回らず、海外でのもうけに振り向けられる。このシステムが、内需・家計をやせ細らせ、日本を「成長の止まった国」にしてしまったのであります。

グラフ(1)

「ルールある経済社会」を築くことこそ危機打開、日本経済の健全な発展の道

 ごく一握りの大企業が富を独り占めにする。このシステムを大本から改革しないと日本経済の明日はありません。大企業の過剰な内部留保と利益を、国民の暮らしに還元せよ、そのために各分野で暮らしを守る「ルールある経済社会」をつくろう、それこそが国民生活の危機を打開し、日本経済の健全な発展の道を開く、これが私たちの経済改革の大方針であります。

 内部留保の還元という提起は反響を広げています。2月17日の党首会談で、これを私が提起したのに対して、鳩山首相は「内部留保を還元させる具体的な方法を検討してみたい」とのべました。内部留保の国民への還元ということを、政府が正面からは否定できなくなったというのが、いまの論戦の到達点です。

 ただ首相は、何につけても、言葉でいっても実行が伴わないというのが実態ですから(笑い)、国民のたたかいの力で、実行を迫っていくことが大切であります。

 今日は、「ルールある経済社会」の具体的な中身として、「五つの提言」という形で、私たちの考えをまとまってお話しさせていただきます。

第一 人間らしい雇用のルール――働くものに利益を還元せよ

非正規から正規への雇用転換を大きな柱にすえる

 第一は、「人間らしい雇用」のルールをつくることです。

 日本ほど働く人が粗末に扱われている国はありません。とくに、労働者の3人に1人、青年と女性の2人に1人が、派遣、パートなど、非正規雇用での不安定な雇用を強いられている。これは、欧州では非正規雇用労働者が1割前後にとどまっているのに比較しても、日本の経済社会の最も異常な姿を示すものであります。

 私たちは、「非正規社員から正社員への雇用転換」ということを、雇用政策の大きな柱にすえて、共同のたたかいをさらに前進させたいと決意しております。

派遣法改正について――政府案の重大な問題点と日本共産党の修正提案

 いまその要となっている問題が、労働者派遣法の改正です。日本共産党は、先日、政府案に対する抜本的な修正案を提起しました。

 政府案は、「製造業派遣と登録型派遣の原則禁止」を看板にうたっています。しかし、この看板に偽りあり、財界の圧力に屈して、「二つの大穴」が開いているということが、私たちの批判です。

 一つの「大穴」は、「製造業派遣の原則禁止」といいますが、「常用型派遣」なるものを「禁止の例外」としていることです。「常用型派遣」と政府が定義するものは何かというと、1年を超えて働く見込みがあれば、3カ月の短期の雇用契約を反復更新している場合でも「常用型」になるというのです。政府は、「常用型」なら「安定性が高い」といいますが、「使い捨て」労働には変わりはありません。実際、厚生労働省の調査によっても、派遣先企業と派遣会社の間で派遣契約が解除された場合には、「常用型派遣」の場合で76・7%もの労働者が解雇されています。だいたい、製造業で働く派遣労働者は56万人おりますが、そのうち63%が「常用型」なのです。この部分を「禁止の例外」としてしまったら、製造業派遣の「原則禁止」ではなく「原則容認」となってしまいます。

 製造業派遣がどんな結果をもたらすかは、さんざん体験してきたことです。「リーマン・ショック」が起こると、トヨタ、パナソニック、キヤノンをはじめとする世界に名だたる製造業の巨大企業が、競い合って「派遣切り」「非正規切り」をすすめた。製造業で働く派遣労働者の場合は、その多くが寮に住んでおり、職を失うとともに住居も失い、ホームレスに転落させられる。こういう事態をさんざん体験してきたわけですから、製造業派遣については「例外なしの禁止」が必要だというのが、私たちの立場であります。

 もう一つの「大穴」は、「登録型派遣の原則禁止」ということをいうわけですが、「専門26業務」は「禁止の例外」とされていることです。「専門業務」だから「雇用の安定性が高い」として、期間制限もなく永久に派遣で使えるという仕組みを温存したままなのです。399万人の派遣労働者のうち100万人が「専門26業務」で働かされています。ところがこの中身をみますと、「専門業務」とはとうてい言えないものが多数含まれています。100万人のうち45万人は「事務用機器操作」というものでありますが、私は、先日の衆院予算委の質疑で、この「事務用機器操作」というのはいつ定義が決まって、その定義がどういうものなのかと政府にただしました。そうしましたら、決めたのは1985年で、その中身は、「電子計算機、タイプライター、テレックス、ワープロ」(笑い)だそうです。ワープロが「専門業務」ならパソコンも「専門業務」になるのか。そう聞くと、厚生労働大臣が「パソコンに入力するだけではだめで、グラフ化の作業まで一体にしなければ『専門業務』とみなさない」という通知を、「今日これから出すところです」と答弁しました(笑い)。ともかく、この問題については、首相に「見直し」を約束させましたので、規制の抜本的強化を強く求めていきたいと思います。

 政府提出の法案には、この「二つの大穴」という大問題にくわえて、事前面接の解禁など規制緩和の改悪も含まれています。事前面接を派遣先企業に許すということになれば、採用権を派遣先企業に握らせることになるわけで、現行の労働者派遣法の原則すら根底から変えてしまう改悪になりますから、これは絶対に削除が必要です。また、「みなし雇用」などの規定も入っていますが、事実上使えない実効性のない内容になっています。そのうえ、実施を3年から5年先送りするということになっています。

 派遣労働の問題は、労働者のみなさんのたたかいで、労働法制の規制緩和から規制強化への潮目の大きな変化をつくってきました。ぜひそれを実らせたいというのが、私たちの強い思いです。文字通り抜本改正といえるような派遣法改正をかちとり、「雇用は正社員が当たり前」の社会に進む第一歩にしたい。そのために、みなさんとごいっしょにたたかいぬく決意であります。

労働者の賃上げ闘争―奪われた所得を取り戻してこそ暮らしも経済も良くなる

 雇用の問題で、もう一点お話ししたいのは、正規も非正規も力を合わせて賃上げをかちとっていくたたかいが、いまこそ大切になっているということです。

 さきほど雇用者報酬の減少というお話をしましたが、世帯になおしてみますと、1997年をピークに、勤労者世帯の収入は1世帯あたり約92万円減少しています。この1年間だけで、1世帯あたり17万6000円も収入が減少しています。製造業(30人以上)でみますと、1年間でマイナス8%です。マイナス8%といえば、1カ月分の給料がなくなったということです。

 この奪われた所得を取り戻すことなしに、暮らしも経済も良くなりません。最低賃金の時給1000円以上への大幅引き上げをはかるとともに、リストラ・賃下げ反対、大幅賃上げを求めるたたかいに、多くの労働組合のみなさんがいまとりくんでおられると思いますが、私たちは、これは日本経済の前途を考えても社会的大義を持ったたたかいであると考え、わが党も大幅賃上げをめざす労働者のみなさんのたたかいに、固く連帯してがんばりぬく決意を申し上げるものです。

第二 大企業と中小企業との公正な取引のルールをつくる

賃金全体が下がるもとで、大企業との賃金格差が拡大している

 第二は、大企業と中小企業との公正な取引のルールをつくり、中小企業の振興に本腰を入れてとりくむことであります。

 働く人の7割は、中小企業で働いています。ところが、大企業との賃金格差が広がっています。大企業の労働者の賃金が下がっているうえに、大企業と中小企業との賃金格差が広がっています。従業員5人から29人の小企業を見ますと、大企業の賃金の50・5%にまで賃金が落ちています。

 なぜこれだけ格差が広がるか。原因はもろもろですが、一つの原因は、下請け中小企業の下請け単価が、際限なく切り下げられ、社長さんの給料はもちろん、従業員の給料も払えない事態に追い込まれているところにあります。私はここに、第二の「働く貧困層」が大量につくりだされていることを訴えなければなりません。

下請けいじめの深刻な実態――下請け2法の厳正な執行と法制強化を

 私は、先日の衆院予算委質問で、愛知県内の自動車関連の下請け企業からお聞きした話を国会で訴えました。この下請け企業は、4次ないし5次の下請けの企業ですが、金属部品の溶接加工の仕事をしています。溶接の長さで単価を決めるということになっていると聞きました。単価をうかがいますと、10年前に比べて、加工賃が1センチあたり65銭であったものが、30銭にまで下がった。単価が半分以下に下がったということでした。社長さんの訴えでは、「3人の従業員と話し合って、雇用保険も健康保険も年金も払っていない。法律違反だと分かっているが、払ったら従業員が食べていけなくなる」とのお話でした。ここまで追い込まれているのであります。

 トヨタの悪名高い標語に「乾いたタオルを絞る」という言葉があります。トヨタのある幹部は、「絞ったタオルでも、もう1回絞ればさらに水が出てくる」と言いました。そういうやり方で絞りに絞って、ここまで追い込んでいる。私は質疑で、「この下請け単価の水準は、公正・適正といえないと思うがどうか」と聞きましたところ、首相は「ご指摘は、厳しい中小企業の現実を言い当てている。下請け法の厳格な実施をはかる」と約束しました。これはぜひそれを実行させる必要があります。

 それでは下請け法が守られているか。下請代金法という規制法がありますが、これがほとんど機能していないというのが現状です。私が、衆院予算委の質疑で、下請代金法違反となる「買いたたき」の是正の勧告処分を受けたのはこの5年半で何件かと、公正取引委員長に聞きましたところ、たった1件という答えでした。これも下請代金法違反となる「下請け切り」――発注の一方的中止の是正の勧告処分を受けたのは何件かと聞きますと、1件もないゼロだという答えです。これだけ世間で「買いたたき」「下請け切り」が横行しているにもかかわらず、ほとんどまったく公正取引委員会が機能していないのです。

 なぜそうなるか。仕組みに問題があります。下請けからの申告があった場合、あるいは書面調査によって問題が明らかになった場合にのみ、公正取引委員会が検査に入るという仕組みになっているからです。しかし、下請けの社長さんにお話を聞きますと、親会社の不正を訴えるなどということは、よほどの覚悟がなければできない。つぶれてもいいという覚悟がなければできない。そんなことをしたら、すぐに仕事が打ち切られてしまう。そう訴えられました。下請けはモノ言えぬ立場におかれているのです。

 ですから下請けからの申告待ちで仕事をしているようだったら、無法はなくならないのです。受け身ではなく、主導的に検査をする、必要な抜き打ち検査もおこなう、下請検査官も抜本的に増員する、政府の責任で、大企業・親企業の無法を一掃し、公正な取引ルールをつくるために力をつくす。そういう責任ある仕事をせよということを、私たちは強く求めていきたいと思います。

中小企業憲章――日本経済の根幹に位置づけ本格的な振興を

 中小企業については、不公正な取引を一掃するとともに、国の責任で中小企業への本腰を入れた振興をはかっていくことが、もう一つの柱として重要です。下請けについても、下請代金法とともに下請振興法があり、それにもとづく「振興基準」が定められており、その中身は立派なものですが、まったく実行されておりません。中小企業全体を、日本経済の根幹と位置づけ、本格的な振興をはかることを、私たちは強く求めていきます。

 EU(欧州連合)では、2000年に「欧州小企業憲章」をつくり、小企業を「経済のバックボーン(背骨)」と位置づけ、本格的な振興策にのりだしています。先日私は、中小企業家同友会にうかがい懇談させていただきましたところ、同友会のみなさんは何度も欧州調査をおこない、「中小企業憲章」草案の第1次案をつくっておられます。これもたいへんに立派な内容のものです。この文書では、中小企業を「日本経済の根幹に位置づける」と、「根幹」という言葉が明記されています。中小企業は、木にたとえれば、経済全体の「根」であり「幹」であり、ここがしっかりしてこそ木の全体が茂る。国民の暮らしも良くなり、経済全体が繁栄することができる。「根幹」という位置づけをして、10項目にわたる指針がのべられています。欧州では「バックボーン」=背骨、中小企業家同友会は「根幹」という位置づけをしている。動物と植物との違いはありますが(笑い)、どちらも経済の中心に位置づけ、振興をはかるという見地が非常に大事だと痛感いたしました。

 この問題では、自治体が、中小企業振興基本条例をつくってとりくみをすすめているケースが全国各地で生まれています。東京の墨田区、北海道の帯広市などに先進的なケースもあります。製品開発、販路開拓、後継者の育成など、総合的な振興策を自治体として本腰を入れてはじめている。

 ぜひ国でも「中小企業憲章」をつくり、中小企業予算を抜本的に増額し、本腰を入れた振興に乗り出すべきであります。1999年に改悪された中小企業基本法を、抜本的に改正することも重要な課題となってきます。

町工場は「日本の宝」――直接補助の緊急の実現を

 中小企業の問題では、そうした仕事をやりながら、緊急の対策として、仕事がなく倒産のふちに追い詰められている町工場への家賃補助、機械のリース代補助など、固定費補助にとりくむことがどうしても必要です。

 「リーマン・ショック」以来16カ月にわたって、全国の多くの町工場はほとんど仕事がないという状況に追い詰められています。しかし町工場の多くは貸し工場ですから家賃が必要です。機械も多くはリースですからリース代が必要です。仕事がないのに固定費だけがどんどん出て行く。固定費が払えなくて機械が持っていかれたり、工場を追い出されたりするというケースがおこり、町工場がどんどんつぶされています。ですからここは、緊急に固定費補助がどうしても必要であります。

 私たちは、そのことを繰り返し求めてまいりました。町工場は「日本の宝」です。人工衛星も新幹線もつくる高い技術力をもっていますが、いったん壊したらとりかえしがつかなくなります。この宝を守るために、固定費補助はどうしても必要だということを訴え続けてまいりました。

 先日の党首会談で首相に「機械のリース代の支援を検討する」というところまで約束させました。何としてもすみやかな実現にこぎつけるよう力をつくしてまいります。

第三 農林水産業の再生――食料自給率向上のための本格的政策転換を

 第三は、農林水産業の再生です。4割まで下がった日本の食料自給率の本格的向上にとりくむことは、国政上の重要な課題であります。

 いま米価をはじめ、農産物価格の暴落がどの分野でもすすみ、農家は現金収入がほとんどないという状態におかれています。時給になおしますと、実収入は時給100円台というような状態です。農家の場合は家もありますし、現物で当座は食べていくものはありますから、労働者とは違うあらわれ方をしますけれども、私は、多くの農家が、第三の「働く貧困層」に陥っているというのが現状だと思います。

民主党政権の「戸別所得補償」――三つの問題点が噴き出す

 こうしたなかで、民主党政権が、「戸別所得補償」という制度を来年度から実施しようとしています。2010年度からモデル事業を始め、米の「戸別所得補償」には、全国一律で10アールあたり1万5000円を補てんするということです。これは補てんですから、経営の一定の下支えになりますが、問題点が多数噴出しているというのが実態ではないでしょうか。私は、この間、農民連のみなさんや、農協のみなさんと懇談して、三つぐらいの問題点が噴出しているということを実感したしだいです。

 一つは、所得補償の水準が全国一律で、あまりに低いということです。政府は標準的な生産費を、お米の場合、1俵1万3703円としています。しかし、農水省が公表している生産費調査によりますと、1俵1万6497円となる。政府自身の調査にてらしても非常に低い水準に設定されている。全体として生産費の補償には、とてもおいつかないというのが現状だという訴えが、次々と寄せられました。

 そのうえ、現にすすんでいる2009年産米の暴落に対する本格的な手だてを取ろうとしていません。現にすすんでいる暴落への手だてをとらないまま、あまりに低い水準の所得補償を入れても、実効ある対策にならないという声が、多く寄せられています。

 また、補てん額が全国一律というのも問題です。全国一律のため、生産費とのギャップが、地域によってはいよいよはなはだしくなってくるわけです。たとえば、中国・四国地方ですと生産費が1俵あたり2万円くらいかかります。そのギャップはいよいよ激しくなってくるという声も寄せられております。

 二つ目の問題点は、転作作物への補助金を全国一律とし大幅に減額しようとしていることです。減反政策のもとで米をやめて転作し、厳しいけれどやっとなんとか軌道に乗りつつあったところに助成金カットが襲いかかっています。とくに、麦、大豆などの集団転作に対する補助金がばさっと切られて、集団転作が崩壊の危険にさらされる。このことが、大問題となりつつあります。地域の多様な農業経営のあり方を無視した、画一的で乱暴なやり方だといわなければなりません。

 三つ目の問題点は、「戸別所得補償」という方針が、農産物の輸入自由化の推進と一体に打ち出されているということです。わが党が国会質問で、日米FTA(自由貿易協定)など農産物のさらなる輸入自由化にきびしく反対する立場で政府の姿勢をただしますと、首相の答弁は、「農業の振興を損なうことはしない」といいつつ、「日米FTA、日豪EPA(経済連携協定)、WTO(世界貿易機関)交渉に前向き、積極的にとりくむ」というものでした。しかし、"農業の振興を損なうことなしの自由化"などありえません。歯止めのない輸入自由化こそ、日本の農業を壊してきた元凶だということは誰の目にも明らかであります。

 日米FTAの問題について、先日、茨城県の農協のみなさんと懇談しましたら、「まさかとは思うが、もしも出してきたら組織をあげて反対する」ということを、言われていました。しかし、「まさか」ということを何度もやってきたのが日本の農政ですから、きびしい警戒が必要であります。

 私は、首相に、この問題を繰り返しただしてきましたが、鳩山内閣というのは、あらゆる政策でぶれと迷走が多いのですが、農産物輸入自由化についてはぶれずに、一貫しているのです(笑い)。農業破壊のこの動きに、私たちはきっぱり反対してたたかいぬくものです。

価格保障・所得補償の抜本的充実、国境措置の維持・強化を一体に

 農業再生のためには、わが党が一貫して主張してきたように、二つの柱を一体にとりくむことがどうしても必要です。

 第一に、農産物の価格保障を中心に、所得補償を組み合わせ、生産コストをカバーする施策をしっかりおこなうということです。お米でしたら1俵1万8000円の価格保障・所得補償を、国の責任でしっかりおこないます。さらに、大豆や麦、野菜、畜産、果樹などにも価格保障・所得補償をおこなっていきます。そのさい、全国画一でなく、地域の条件も考慮して、これを実施します。これが私たちの主張であります。

 第二に、農業自由化をすすめては、どんな対策をやろうと、穴の開いたバケツに水を注いでいるようなもので、税金がいくらあっても足りませんし、日本の農業を立て直すことは決してできません。日米FTA、日豪EPAは中止する。ミニマム・アクセス米の「義務」的輸入も中止する。歯止めのない輸入自由化をやめ、国境措置を維持・強化し、WTO協定を抜本的に見直し、食料主権を保障する貿易ルールをつくる。「安全・安心な食料は日本の大地から」を共同のスローガンとして、頑張ろうではありませんか。

第四 社会保障――削減から本格的充実への転換を

税金と社会保障による貧富の格差の是正機能が、先進国で最も弱い国

 第四は、社会保障を削減から拡充に転換することです。

 社会保障と税金の本来の役割は、貧富の格差を是正する――所得の再配分にあります。ところが、OECD(経済協力開発機構)17カ国の比較で、社会保障と税金による相対的貧困率の改善効果が最も小さいのが日本なのです。税金と社会保障による格差の是正という機能が世界で最も弱い国になっているというのが現状であります(グラフ(2))。

 社会保障の問題では、日本共産党は、自公政権による社会保障費削減政策がつくった傷を、一刻も早く治していくことを訴え続けてきました。この点で、鳩山内閣の姿勢に、国民の期待を裏切り、自らの言明にも背く一連の問題点があらわれているということを指摘し、その姿勢の転換を求めてきました。

グラフ(2)

「医療崩壊」を立て直す四つの緊急課題を提案する

 社会保障はさまざまな分野がありますが、とくに今日は、いま日本列島のどこでも問題になっている「医療崩壊」について、新政権がまともな対応をしようとしていないもとで、わが党として「医療崩壊」を立て直す四つの緊急課題を提案したいと思います。

 一つは、後期高齢者医療制度のすみやかな撤廃です。この問題では、民主党はこの制度をすみやかに撤廃し、まずは老人保健制度に戻すということを、公約にしました。ところが、「『新しい制度』をつくる4年先まで撤廃を先送りする」という方針に転換しました。この公約違反に対して多くの方々の怒りが広がりました。「4年も待てない」という強い怒りであります。しかも総選挙後公約した国としての保険料の負担軽減策を実行しない。そのため、多くの都道府県でこの4月から保険料が値上げになるという事態も、怒りの火に油を注いでいます。

 それにくわえて、最近明らかになりつつあるのが、4年後につくるという「新しい制度」とは何かという問題です。この間、「新しい制度」についての厚生労働省の試案が報じられ、大きな怒りを広げています。その試案とは、「65歳以上の高齢者を国保に加入させたうえで、現役世代とは別勘定にする」という制度であります。「別勘定」というところが重大です。国民が、後期高齢者医療制度に激しく反対した最大の理由は、75歳以上を「別勘定」にして差別医療を強いることにありました。高齢者だけを「別勘定」にすれば、際限のない負担増は避けられない。これが「姥(うば)捨て山」という批判となって広がったのであります。ところが75歳を65歳として「別勘定」にするということが、「新しい制度」の素案として出されている。これはまさに、高齢者を差別する「姥捨て山」の拡大ではないか。4年間待たされたあげく、「姥捨て山」の「入山年齢」を10歳前倒しさせられるとなったら、これは二重三重に許すわけにはいきません。

 こういうとんでもない試案が出てきているもとで、後期高齢者医療制度をすみやかに撤廃することは、いよいよ急務であります。

 二つ目は、高すぎる医療費の窓口負担の引き下げです。「現役世代3割、高齢者は1割から3割」という窓口負担に、多くの国民のみなさんが悲鳴を上げ、深刻な受診抑制がおこっています。

 この問題では、小泉・自公政権による健保の3割負担への引き上げのさいに、当時の野党4党は「3割負担凍結法案」を出しました。そのさい民主党の代表者は、「3割負担は、さらなる受診抑制をまねき、国民の健康がないがしろにされる」としてきびしく批判しました。そこで私は、さきの国会の質疑で、「3割負担になって、受診抑制がおこなわれているという認識がありますか」と首相にただしました。それに対する首相の答弁は「必要な医療が妨げられているとは思っていない」、つまり受診抑制はないというものでした。おかしいですね。野党の時には受診抑制があって、与党になったら受診抑制がなくなった。そんなことは断じてありえないわけであります。

 欧州の多くの国では窓口負担は無料が当たり前です。日本でも無料をめざし、ぜひ軽減に向けて踏み出していきたい。この点では、日本医師会が昨年10月の提言で、窓口負担の軽減を打ち出したことは心強い限りです。

 わが党は、3月1日に穀田国対委員長の衆院予算委質疑で、子どもの医療費無料化を国の制度にするという提案をいたしました。現在すべての都道府県と多くの市区町村で、子どもの医療費の助成制度を実施しています。「これを国の制度にすべきではないか」という穀田議員の追及に対して、首相も「優先課題としてあつかいたいテーマだ」と答弁しました。これを実行させるのは、今後のたたかいにかかっていますが、その足がかりをつくりました。ぜひ国民の共同の力で実行への道を開きたいと決意しています。

 三つ目は、高すぎる国民健康保険料の引き下げです。この問題については3月4日、小池政策委員長が参院予算委で質問しました。

 小池議員は、「高すぎる国保料が払えず、収納率が8割台に低下した。払えない人から保険証を取り上げ、資格証明書に置き換える。重症化して亡くなるケース、自殺に追い込まれているなどの悲劇がくりかえされている」と、事実を生々しく告発しました。そして、民主党が、「政権を取ったらただちに9000億円の国庫負担を増やす」ということを言っていたにもかかわらず、新たに増やしたのはたった40億円だということを明らかにし、国庫負担の増額を迫りました。

 わが党は、9000億円の国庫負担の半分以下の4000億円あれば、1人あたり1万円の国保料の引き下げができる、国民の命にかかわる重大事にそのぐらいの手当ては当たり前だと要求しています。小池政策委員長の追及に対して、首相は「財源を見いだしたい」と言いました。この約束を守らせる必要があります。国の責任で保険料の引き下げをはかり、保険証の取り上げはきっぱり中止させる必要があります。

 四つ目は、診療報酬の抜本的な引き上げです。診療報酬という問題は、決してお医者さんだけの問題ではありません。お医者さんの経営が成り立たなくなれば、地域医療は崩壊します。国民の健康と命がかかった問題だということを強調しなければなりません。

 診療報酬は、2002年度から2008年度まで下げられ続け、合計2・6兆円も削られ、地域医療がズタズタにされました。このもとで民主党は「大幅引き上げ」を公約しました。ところが、2010年度の診療報酬の増額はわずか700億円。しかも中身を見ますと、そのうち600億円は薬価削減で消えてしまって、実質の増額は100億円、0・03%増にすぎません。この「ゼロ回答」に全国の怒りが広がっております。しかも全体のパイを大きくしないことにくわえて、高度医療を担う大病院に重点的に配分し、地域医療を担っている診療所や中小の病院は引き下げるというやり方をとろうとしています。しかし大病院と診療所は両方がしっかり協力してこそ、国民の命と健康を守れるわけです。一方を削って一方を増やすというやり方は、絶対にとるべきではありません。診療報酬は抜本的な増額で医療崩壊を立て直す必要があります。

 この問題では、日本医師会のみなさんが、診療報酬の大幅増額を医療費の窓口負担の軽減とセットで打ち出している、これはたいへんに大事だと思います。診療報酬の増額を求めますと、厚生労働省はそうなったら患者さんの自己負担が増えますよと、それを理由に抵抗します。これに対して窓口負担の引き下げということをセットで打ち出している。こうなりますと、国民全体が団結してこの問題にとりくむことができると思います。

 「医療崩壊」を立て直すこれらの四つの緊急課題は、どれも民主党が公約したことばかりなのです。街を歩いていますと、鳩山首相のポスターが張ってあります。「公約実行」と書いてあります(笑い)。民主党は、国民への公約を実行せよ。このことを強く迫っていこうではありませんか。

介護、障害者福祉、年金――あらゆる分野で削減から拡充への転換を

 社会保障の問題は、介護保険の利用料・保険料の減免、介護現場の待遇改善、基盤整備の拡充などの問題などについて、この間、仁比議員、穀田議員が相次いで質問し、利用料の1割負担が、いかに介護サービスを必要とする人々を排除しているかという生々しい実態も示し、抜本的改善を求めてきました。

 障害者自立支援法の問題について、応益負担のすみやかな廃止が求められていますが、新政権が当初言明していた、住民税非課税世帯への応益負担をすべて撤廃するという公約から後退し、応益負担の撤廃を福祉部分しかやらないで、医療部分は残すという対応をしたことにも失望と怒りが広がっています。応益負担の撤廃を、すみやかにかちとるために力をつくします。

 さらに、低年金、無年金をなくす年金制度の抜本改革――最低保障年金の導入も大きな課題となっています。生活保護の老齢加算の復活も、急務であります。自公政権時代の傷を治し、社会保障の抜本的充実に転換していくとりくみを、ごいっしょにすすめていきたいと思います。

第五 財源問題――軍事費と大企業・大資産家優遇税制に抜本的メスを入れよ

「二つの聖域」を設けつづけることの理不尽さ

 第五は、財源問題についてです。

 私たちは、この問題については、軍事費と大企業・大資産家優遇税制――「二つの聖域」にメスを入れるべきだと繰り返し訴えてきました。いま、この二つを「聖域」にしつづけることの理不尽さが誰の目にも明らかになりつつあります。

 軍事費は、来年度予算案では4兆7903億円で、前年度よりも162億円増やす結果になりました。あれだけ「事業仕分け」で大騒ぎしたのに、軍事費はさっぱり対象にならなくて増額です。わけても、米軍への「思いやり」予算、SACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)経費、米軍再編経費は、史上最高の3430億円とされ、これが軍事費全体を押し上げることになりました。しかし、民主党は、グアムへの費用負担について、「国際的に前例がない、積算根拠もはっきりしない」と言って、反対していたのです。にもかかわらず、これを増額するというのは、説明がつかないことです。こうして、軍事費の増額というのは、誰が見ても理不尽な状況になっているというのが現状であります。

 大企業・大資産家優遇税制という点でも、理不尽な事態がいよいよ明瞭(めいりょう)です。申告納税者の所得税の負担率をみると、驚くことに所得1億円を超えますと、所得税の負担率が下がってくるのです。累進どころか、逆進そのものです(グラフ(3))。なぜ下がるかといえば、所得税の最高税率を引き下げてきたうえに、株や土地の売買によるもうけが分離課税とされ、「証券優遇税制」によって株の売買にかかる税金はわずか10%という軽減税率が続いている。そういう要素があわさって、大金持ちほど税負担率が下がっていく。これは誰がどう見ても、不公平税制の極みであります。「証券優遇税制」を見直す、総合課税にする、所得税の最高税率を引き上げるなどは、待ったなしの課題となっています。

グラフ(3)

消費税増税に反対する大闘争を――欧州の税率を持ち出すことに道理なし

 最後に消費税の問題についてのべておきたいと思います。

 この間、鳩山内閣の閣僚から増税に関する発言が相次いでいます。財界や自民党などは、増税を迫る大合唱をおこなっています。こうして消費税増税問題が、大きな争点に浮上してまいりました。消費税は、低所得者ほど負担が重くなる逆進的な税制であり、貧困と格差に追い打ちをかける悪税であり、わが党は消費税増税には絶対反対をつらぬき、食料品などへの非課税措置を強く求めます。

 ここで強調しておきたいのは、増税勢力がいう「ヨーロッパの消費税に比べれば日本の消費税は軽い。税率引き上げは当然ではないか」という議論が成り立たないということであります。

 別紙のグラフ(グラフ(4))は、所得課税と消費課税の「ジニ係数」に与える効果の各国の比較です。「ジニ係数」というのは、社会の格差を表す係数で、高いほど格差が大きい、低いほど格差が小さいという係数です。グラフを見ますと、所得課税と消費課税をあわせて、税の総合的な効果を考えた場合に、ジニ係数が悪化する国は、先進17カ国のうち、フランスとノルウェーと日本だけです。フランスの悪化はごくわずかです。ノルウェーは0・003の悪化、日本は0・004の悪化ですから、日本は現状でも世界で一番悪いわけです。現状でも税というものが、消費課税と所得課税とあわせた場合に、「ジニ係数」を改善するどころか、悪化させている。税が、世界でも最もひどい形で貧富の格差の悪化をもたらしている国なのです。

 ヨーロッパではたしかに消費税率が高い。そのことによって格差が拡大する効果がありますが、それが所得課税の累進性の効果によって打ち消され、高い社会保障の効果が丸々きいてくるわけです。ところが日本では、現在の消費税率でも税全体としてマイナス効果となっており、消費税率を上げたら、それがますますひどくなる。税による「ジニ係数」の悪化の効果が、ただでさえ低い社会保障の効果を減殺し、ますます貧困と格差が広がる。ですから、ヨーロッパをひきあいに出して、消費税増税を合理化する議論は成り立たないということを私は強く言いたいと思います。消費税増税絶対反対の世論と運動を大いに広げていこうではありませんか。

グラフ(4)

一つひとつのたたかいが、日本経済の健全な発展の道を開く

 雇用、中小企業、農林漁業、社会保障、財源問題と、五つの角度から「ルールある経済社会」を築く、わが党の提言をのべさせていただきました。

 最後に申し上げたいのは、この「五つの提言」は、その全体が、直面する経済危機から国民の暮らしを守るとともに、日本の経済システムを大本から変え、日本経済の健全な発展の道を開くものとなっているということであります。

 冒頭に、日本が「成長が止まった国」になってしまった、「国民が貧しくなった国」になってしまったという問題を明らかにしました。大企業が利益をあげても、国民は貧しくなる、そして富が大企業の内部留保となって蓄積する、その多くが海外でのもうけに回される。こういう事態がつくられ、日本のGDPは少しも伸びないというシステムがつくられてしまっているということをお話ししました。

 このシステムをどうやって変えるか。大企業にため込んだ金を出せといっても出さないわけでありまして、国民に還元するためには社会的ルールをつくっていく必要がある。もちろん、当面の緊急の対応として、内部留保をとりくずしても雇用と中小企業を守る責任を果たさせる必要があります。多くの大企業は、大株主への配当は、内部留保をとりくずしてでも払いつづけているわけですから、それができない道理はありません。同時に、経済システムとして、国民がつくった富が大企業の内部留保として蓄積され、それが海外でのもうけにまわされ、国内の経済にはお金がまわらない、このシステムを改革する必要があります。そうした経済システムの改革をすすめていく、その具体的な内容が今日お話しした「五つの提言」ということになってくると考えております。

 社会保障などの財源を考える際にも、まずは軍事費と大企業・大資産家優遇税制にメスを入れて財源を捻出(ねんしゅつ)する、このことが大切なわけですが、中長期で考えますと「成長の止まった国」のままでは、財源の展望もありません。やはり健全な形での経済成長があってこそ、財源問題の抜本的な解決の方途も見えてくると思います。

 私がお話しした「五つの提言」は、雇用でも、中小企業でも、農林水産業でも、社会保障でも、財源問題でも、それぞれをしっかりとりくんでこそ、日本経済の全体をほんとうに内需主導、家計主導で発展させていく道が開かれるのです。

 私たちがいまとりくんでいる一つひとつの国民生活擁護のたたかいが、日本経済を健全な発展の軌道にのせていく、大義あるたたかいでもあることに、おたがいしっかりと確信をもって、共同のたたかいを発展させたいと思います。ありがとうございました。(拍手)


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