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日本共産党

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赤旗

農業と農家経営を守る最低限で当たり前のルールの確立を

──価格暴落が広がる異常事態を打開する日本共産党の緊急提案

2000年10月30日


放置すれば日本農業が崩壊する、米、野菜をはじめとする農産物価格暴落

 今、全国の農業者に米、野菜の価格暴落が襲いかかっています。米は、8月、9月と2000年産の自主流通米の入札価格が前年を大きく下回 り、9月末の自主流通米価格は、60キロ1万6070円(全銘柄平均)と前年同期比で6・2%もの下落を示しました。ここ数年の暴落続きで、すでに昨年産 の平均1万6904円は5年前より21%も低く、10アール当たり稲作所得は30年前の水準に逆戻りです。農協が生産者に支払う米の仮渡金も前年を下回っ ています。北海道では、返還する場合もあるとする経営対策費2000円を入れた仮渡金が1万2000円にすぎず、米生産の存続さえ危ういほどの状況に追い 込まれ、地域経済にとっても深刻な事態となっています。
 タマネギ産地では、前年より30%も価格が下がり、再生産が不可能になったとして栽培をやめる農家が広がっています。シイタケは、再生産価格の6割にま で価格が下落し、福島県内のシイタケ生産者は、5年間に4割も減少しています。ナスも昨年の3分の1の価格にまで下落し、高知県では「このままでは、倒産 する農家が出る」と危機感が広がっています。ネギ価格の低落で、主産地の一つ深谷市では補正予算を組んで対応しなければならない事態にまで追い込まれてい ます。ミカンなど果樹農家も価格暴落に苦しめられています。
 今回の米や野菜の価格暴落は、一過性のものでなく、WTO協定の受け入れ以降年々ひどくなっており、放置すれば、農家経営の破綻を招き、農業の崩壊は必至で、ひいては21世紀の国民の主食・生存基盤を根底から脅かすことにならざるをえません。

農産物価格暴落の原因

 この米や野菜などをはじめとする農産物価格暴落の原因はどこにあるのでしょうか。米についてみれば、新食糧法で市場原理に任せた上、米の輸 入で米をだぶつかせ、政府買い入れの極端な削減、値幅制限の撤廃などで量販店などの買いたたきを野放しにしたことに原因があります。過去最大規模の96万 3000ヘクタールもの生産調整をしてきたにも関わらず、自主流通米価格が下落したのは、今年の8月までに277万トンも輸入されたミニマムアクセス米が 米の需給バランスを大きく崩しているからです。しかもこれからも毎年68万2000トンも輸入され続けるのです。輸入自由化・市場原理最優先の農政をすす めてきた政府自民党の責任は重大です。
 野菜価格についてみれば、安価な輸入野菜の急増が、国内の野菜価格の暴落をもたらしています。タマネギでいえば、今年6月までの上半期のタマネギの輸入 量は、前年同期比70%増の14万6000トンにもなり、輸入タマネギの国内市場シェアは、昨年の15%から今年は20%を超える勢いです。外食産業や食 品メーカーは、輸入タマネギにシフトをはじめ、計画生産をしている国産を無視して、無秩序に入ってくる輸入タマネギが、加工需要を奪っています。
 生シイタケは、輸入生シイタケが、98年、99年と2年連続3万トンを超し、今年は上半期だけで1万8700トンも輸入され、その数量は前年比4割以上 の増となって、価格低迷を招いています。長ネギでは、99年11月の輸入量は、東京市場に入荷される4県分の量に相当する急増ぶりです。

対策と称して新たな犠牲を農民に強いる政府与党

 これに対する政府自民党の対応は、米についていえば、これまで何度と緊急対策を打ち出しましたが、それらは、価格下落の原因にメスを入れな いためほとんど効果をあげていません。米価は下落し続けています。そればかりか、減反の大幅拡大や豊作時のえさ米処分など農家に負担を押しつけるものでし た。そして、食料自給率は、40%にまで下落しているのです。この9月に打ち出された「緊急総合米対策」もその延長線上にあります。米輸入にいっさい手を 付けず、これまで以上の国産米減らしを農家に強要するもので、来年の減反目標は史上空前の最大106万ヘクタールを超えます。その上、5万ヘクタールの青 刈りを制度化しました。この減反面積は実に、静岡以西の九州、四国、中国、関西、愛知、岐阜の水田面積に相当します。また、政府買い入れ数量は、わずか 40万トンで政府の責任をまともに果たすものではありません。値幅制限や価格の下支えを食管制度に戻るなどといって拒否する態度は、価格下落の絶えざる不 安のなかで生産を続けなければならない農家の実情を全く無視したものです。政府は、この「緊急総合米対策」を「90点」と自賛しましたが、この対策を発表 した当日の自主流通米の入札価格は上がるどころか、8月より1・7%も下がり、さらに上場された米の3分の1が落札残という無惨な結果となりました。まさ に、市場まかせの新食糧法の破綻は明らかであり、その見直しは不可欠です。
 また、野菜についていえば、価格暴落の原因が輸入野菜の急増にあることは明らかなのに、切実に発動を求められているセーフガード(緊急輸入制限)には、 全く手をつけようとしません。行っているのは、逆に国産野菜の過剰分を廃棄する産地廃棄と野菜価格補てん事業だけです。野菜価格補てん事業といっても流通 している野菜の2割しか対象とならず、補てん基準が低く、「制度が発動されるときにはもう生産をやめている」といわれるお粗末な事業です。
 このように平然と農業者に過酷な負担を押しつけようとする自民党農政の抜本的転換が必要なことは、いうまでもありませんが、今、当面の緊急対策として、次のような農業と農家経営を守る最低限で当たり前のルールの確立を求めるものです。

農業と農家経営を守る最低限で当たり前のルールの確立を──日本共産党の緊急提案

(1)米価暴落に歯止めをかけ、最低価格を保障するルールを

 今何よりも必要なことは、自主流通米取引に下限価格を設定し、米価の暴落をくい止めることです。3前までは、価格の乱高下を防ぐため、自主 流通米価格形成センターにおける取引に値幅制限措置がとられてきました。価格形成センターの業務規定を見直すことで、その措置は今日でも可能です。当面、 下限価格を2年前の米価水準(全銘柄平均で1万8504円)とします。
 また、それを実効あるものにするために、下限価格でも落札されない事態が出た場合には、政府が買い支えるべきです。
 米の需給と価格の安定にとって国産米需給を大きく崩しているミニマムアクセス米の輸入規制を避けては通れません。ミニマムアクセスは、WTO協定上は、 輸入義務ではなく、輸入機会の提供に過ぎません。WTO加盟国は、例外なく自由化対象品目にミニマムアクセスを設定していますが、国内に需要がなければ、 アクセス数量以下の輸入ですませているのが普通です。韓国でも米の輸入はアクセス数量を下回っています。現在の日本は、大幅減反にも関わらず国産米が 200万トン以上備蓄ないし在庫となっており、外国産米の需要は、本来あり得ません。需要のないのに輸入する政府与党のやり方は、不当なものです。当然、 ミニマムアクセス米の輸入量を大幅に削減すべきです。また、すでに輸入された米については、加工用を含めて国産米の需給と完全に切り離し、海外援助などに まわすべきです。
 適正水準を超える政府在庫についても加工用などで処理し、減反の新たな拡大や青刈りなどを中止します。

(2)輸入急増を抑え、野菜などの国産農産物を守るルールを

 野菜価格の暴落の原因が輸入野菜の急増にある以上、その規制は当然行わなければなりません。そのために、まず現行のWTO協定でも認められているセーフガードの発動を機敏に行うことが必要です。
 一般セーフガードの発動は、その国の農業や産業を守ろうと思う当たり前の主権国家ならば、当然発動すべきものです。1950年から93年の44年間に セーフガードは、世界各国で147回発動されており、アメリカが27回、ECが21回、カナダが22回、オーストラリアが38回発動しました。WTO体制 以降もアメリカ、アルゼンチン、韓国など9カ国が発動をしています。これに対して、日本は一度も発動したことがありません。では、日本だけが条件がなかっ たのでしょうか。そんなことはありません。セーフガードは、発動条件として「国内産業に重大な損害を与え又は与えるおそれがあるような増加した数量」とし ており、増加数量を何%とか何万トンとか、定量的に規定しておらず、その判断を当該政府に委ねているのです。当該政府が、自国の国内産業を守るという決意 があれば、当然発動できるようになっているのです。
 セーフガードの発動とともに、国産野菜を安心してつくれる環境づくりが必要です。日本共産党は、一九九六年に「国産野菜を安心して生産するためにー野菜 の生産と流通を改善する日本共産党の緊急政策」を発表しました。その中で、野菜価格安定制度の充実・改善を図るとして、価格補てん制度を生産の実情にあわ せて改善する([1]補償基準価格を引き上げ、対象品目を広げる[2]対象を全国の産地に広げる[3]基金に対する国の負担割合を増やす[4]少量生産の 野菜を対象にした都道府県の対策を充実させる)、異常時の減収補償を行うなどの提案を行いました。今、まさに、この緊急政策の実現こそが、野菜生産の安定 のためには必要で、至急法案化を図り、実現をめざします。

(3)不要不急の公共事業を削減し、価格保障の財源に

 先進国の圧倒的多数は、自国の農産物の生産を守るために、あらゆる手だてをつくしています。アメリカでさえ、主要作物収入の30~50%が 政府からの支払いとなっており、主要作物の生産者に手厚い補助を行っています。その補助総額は、98、99年の2年間で2兆2000億円にものぼります。 EU諸国では、伝統的に手厚い農産物価格支持を行ない、食料自給率を引き上げてきました。その後、支持価格の引き下げを行ったものの、直接支払いによっ て、農業生産者には、影響を与えない万全の措置をとっています。農業予算に占める価格所得保障の割合は、約9割にもなります。
 先進国のなかで、主食まで市場原理に任せ、価格下落の影響をストレートに農業生産者にぶつけている国は、日本以外ほとんど例を見ません。どこの国でも認められている当たり前のルールが成立する農政をどうしても確立しなければなりません。
 公共事業が半分以上を占めるという農業予算の逆立ちを改め、当面、諌早湾干拓事業など不要不急の公共事業の中止・削減などによって必要な財源を確保します。

(4)当面するWTO交渉で、輸入規制・価格保障が可能となる貿易ルールを

 食料輸入国が、食料自給率を引き上げるためには、WТО農業協定改定が不可欠です。この協定では、米の輸入制限を認めず、生産刺激的な農産 物価格政策を採用することを規制しています。食料輸入国が食料自給率を引き上げることができるようにWТОの農業協定の枠組みを米を輸入自由化の対象から 外すなど実効ある輸入規制ができ、価格保障が十分出きるように変えることがどうしても必要です。


 

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