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日本共産党

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赤旗

新農業基本法案にたいする日本共産党の修正案

1999年5月31日


 食料自給率は今や四一%に低下し、世界でも最低水準です。農家は何を作っても採算がとれず、農家数は、一九六〇年の六百五万戸から九八年には 三百二十九万戸とほぼ半減し、専業農家も同期間に五分の一にまで激減しています。耕作放棄地は、四国全体の耕地面積に相当する十六万二千ヘクタールにも達 しており、このままでは、わが国の農業が崩壊し、日本は食料自給の基盤を失った国になりかねません。

 国連食糧農業機関(FAO)など国際機関が、二十一世紀の世界的な食料危機を警鐘しているもとで、わが国の食料自給率を回復・向上させることは、国民の生存にかかわる問題であるとともに、国際的な責務でもあります。

 ところが、政府提出の食料・農業・農村基本法案(新農基法)は、つぎのような重大な問題点をもっています。

 (一)新農基法は、国民的課題となっている食料自給率の引き上げについて、基本理念にかかげられておらず、具体的な数値目標も法文上に明記されて いません。政府が基本計画でさだめることになっている「食料自給率の目標」も、その位置づけは、農業者や消費者のたんなる「指針」にすぎず、政府の農政上 の課題となっていません。

 (二)新農基法の最大の特徴は、食料供給における輸入依存の明記です。基本理念に、「食料の安定供給の確保」を、国内農業生産とともに、「輸入と 備蓄を適切に組み合わせ」ておこなうことをかかげ、これを受け、「国は、安定的な輸入を確保するため必要な施策を講ずる」とまで明記しています。この規定 は、現行農業基本法(農基法)にはないもので、新農基法が、日本農政の基本を、コメの関税化を含め、「例外なき関税化」=全面自由化というWTO(世界貿 易機関)体制に組み込むものといえます。

 また輸入依存政策を受けて新農基法では、自然環境保全など農業の多面的機能の発揮が強調されていますが、現行農基法に明記されていた「農業総生産の増大」という、「増産」すら農政の課題から欠落させています。

 (三)農業生産発展の決め手である価格政策について新農基法は、「農産物の価格が需給事情及び品質評価を適切に反映して形成される」と”市場原理 万能”をうちだし、生産費にもとづく農産物価格支持制度の全面解体をうちだしています。これは、現行農基法が、政策の目標として「農業従事者が所得を増大 して他産業従事者と均衡する生活を営むこと」をかかげ、農産物価格について「農業所得の確保」を明記していたことと比べて、決定的な後退です。

 (四)農業生産の担い手については、「効率的、安定的な経営体」を育成するとして、稲作で十~二十ヘクタールという大規模農家を「育成」し、九割 以上の農家をきりすてる方向を、新農基法農政の中心にすえています。また、新農基法は「農業経営の法人化を推進する」と企業形態の農業経営推進もうたって おり、これは、株式会社による農地所有という農地制度の改悪にもつながるものです。現行農基法が、「農業構造改善」を施策の柱としつつも、その担い手とし ては、法文上も「家族農業経営の発展と自立経営の育成」として、家族労働主体の経営をめざすことを明記しており、これも重大な後退です。

 このように現行農基法からみても、新農基法は、これまでの農政とは質的にも区別される、本格的な農民選別であり、国内農業の全面縮小に道を開くものです。これでは、食料自給率のいっそうの低下と、日本農業の崩壊に拍車をかけることは必至です。

 日本共産党は、政府提出の新農基法案の問題点を是正し、日本農業の再建と食料自給率の向上にむけた農政転換の第一歩とするために、以下の修正がどうしても必要であると考えます。


修正提案要綱骨子

 一、農業を国の基幹的産業に位置づけ、食料自給率向上を農政の中心課題にすえる。

 食料自給率を抜本的に引き上げるためには、基本法に、農業を国の基幹産業に位置づけるとともに、自給率目標を明記し、国の責任によってそのための 総合的施策を実施する体制をとります。そして、現在四一%に低下している食料自給率を一刻も早く五〇%へ引き上げ、さらに六割、七割をめざす総合計画を策 定します。

 二、食料の輸入依存政策を転換し、WTO協定の改正交渉を政府に義務づける。

 食料自給率向上のための基本方針に、食料の輸入依存政策の転換を明記します。また、米の関税化の撤回をはじめ、WTO協定の改正をふくめ、関係諸国との協議など、政府が必要な施策を講ずることを明記します。
 また、輸入安定化規定は、削除します。

 三、家族経営を農業経営の基本に位置付け、条件不利地域での農業と農村が維持できるように直接的補償措置を導入する。

 家族経営は日本農業の中心的担い手です。その発展を基礎に日本農業の再建が図られなければなりません。農家を規模や専業・兼業で区別するのではな く、現に生産を担っている大多数の農家が安定的に経営を営める施策を農政の基本に据える規定を明記します。また「新農政」関連規定、法人化推進規定は削除 します。
 条件不利地域の農民は食料生産と合わせて国土の管理人の役割を果たしており、平地との生産条件の不利を補正し、事実上無償となっている国土管理の労働を正当に評価する特別の補償措置をとる規定を明記します。

 四、農産物価格の市場原理万能主義を改め、食料自給率向上のために価格・所得対策を重視するとともに、農業予算の重点を農業公共事業から農家経営の維持・改善に移す。

 農業を市場原理に全面的にゆだねては成り立ちません。これらの規定は削除します。再生産を確保し、農家経営を安定させるために、生産費を償い、他産業並みの労働報酬を保障する農産物価格の実現が必要です。弱められてきた農産物の価格制度を再構築する規定を明記します。
  農業予算の過半以上は、ゼネコン奉仕の公共事業予算となっています。一方、価格所得対策費は農業予算のわずか一割前後です。この農業予算の逆立ちを改める 規定を明記します。価格・所得対策費の割合をEU並みの五割以上にすれば、現在の予算規模でもその予算は四倍前後に増えます。

 五、安全で健康な食生活の確立を重視する。

 残留農薬などの食品安全基準をWTO協定に合わせて緩和するやり方を改め、国民の食料と健康を守る立場から厳しく設定しなければなりません。ま た、検疫体制を抜本的に強化するとともに、国民が健康で安全な食生活を営めるように必要な情報の提供と研究の強化を行い、遺伝子組み換え食品の表示や農産 物の加工食品を含めた全面的な原産国表示を行います。これらの規定を明記します。

 


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