職場から性差別やハラスメントをなくす実効ある法律の制定を
男女雇用機会均等法施行40年にあたっての提言
2026年4月23日
男女雇用機会均等法(均等法)が施行されてこの4月で40年になります。職場の平等はどれほど進んだでしょう。数度の改正を経た今も、女性の賃金は男性の7割台にすぎず、ハラスメントを禁止・是正する実効ある法ももたない日本で、40年の間にどれだけ多くの女性が職場を去り、「非正規」を「選んだ」でしょう。はるか前を行く世界に追いつくため、今切実に求められるのは、「機会の均等」にとどまらず、女性差別撤廃条約が求める「男女の完全な平等の達成」をめざし、「結果の平等」を実現する力をもった法律です。実効ある法律の制定をめざす幅広い共同をよびかけます。
賃金の平等は、ジェンダー平等社会を築くうえで、土台中の土台です。しかし日本では、先進国の中で突出した格差が残され、賃金格差は正社員でも経済協力開発機構(OECD)加盟国平均の2倍にもなっています。女性の過半数はパートタイマーや派遣社員などの非正規雇用で、最低賃金ぎりぎりの時給で働く人も少なくありません。管理職の女性比率も1割台で、すでに3割以上、4割台になっている諸外国と比べて低い水準にとどまります。
こうした賃金格差と雇用形態にもとづく差別は、若い女性をふくむ女性のさまざまな困難や老後の貧困をつくりだしています。女性の社会的地位を低め、DVや性暴力、ミソジニー・女性蔑視などの背景でもあります。雇用における平等がなければ、ジェンダー平等は実現できません。
しかし現在の均等法には、性別を理由とする差別の禁止規定はあるものの、差別是正のための実効性ある罰則や救済機関も、ハラスメント禁止規定もありません。均等法に力がないことが、差別に苦しむ女性たちの声を届かなくさせ、深刻な差別や格差が残る要因となっているのです。日本は世界から大きく取り残されています。性差別をなくすためには、世界的な水準に立った、実効ある法律がどうしても必要です。
この間、男女賃金格差や女性管理職比率の公表制度が実現し、コース別雇用管理にもとづく住宅手当の格差を均等法によって初めて「間接差別」と認定する判決が出されるなど、重要な前進がありました。今年3月には、国際女性デーを前後して、アイスランドのたたかいに学んで、ジェンダー平等を求める初の日本版「女性の休日」が日本各地で多彩に繰り広げられました。
ジェンダー平等の前進に対して、自民党・高市早苗首相は第6次男女共同参画基本計画に選択的夫婦別姓制度の導入阻止のために「通称使用の法制化」を盛り込む一方で、最低賃金1500円への引き上げ目標を投げ捨て、労働時間法制の「規制緩和」を指示するなど、逆流も強まっています。これらを乗り越えて、アイスランドで同一賃金を求めて「女性の休日」をたたかい「賃金平等法」を実現させたように、日本でも共同と連帯の力で、実効ある法改正を実現し、ジェンダー平等を大きく前進させましょう。多くの皆さんと議論を広げて、実現に向けてとりくんでいくことを心からよびかけます。
雇用におけるジェンダー平等法(仮称)の制定を
男女雇用機会均等法と関連法を抜本的に改正して、性別、性的指向・性自認などによる差別を明確に禁止し、格差の是正を積極的にすすめる「雇用におけるジェンダー平等法」(仮称)を制定しましょう。雇用におけるジェンダー平等法には、次のような内容を盛り込むことが必要だと考えています。
--雇用におけるジェンダー平等法の理念・目的に「結果の平等」の実現をかかげる
現在の均等法は「雇用の機会の均等」を目的にしています。この目的を抜本的に見直し、女性差別撤廃条約にもとづいて、差別を定義し、差別禁止と是正措置を通じて「結果の平等」をすすめることを明記します。長時間労働の是正、固定的役割分担を打ち破り、誰もが仕事と家庭が両立できることは、雇用におけるジェンダー平等をすすめるために不可欠です。国にその実現の責任があることを明記します。
--賃金格差などの公表制度を拡充して、企業に是正計画の策定と公表を義務づける
アイスランドでは、25人以上を雇用する企業・組織に年1回、第三者機関の監査を受け、賃金格差がないことを証明して認証を受けることを義務づけています。公表制度を抜本的に拡充して、雇用におけるジェンダー平等法の大きな柱として位置づけます。
公表対象を拡充するとともに、企業に、格差是正のための計画の策定と公表を義務づけます。国の責任で企業のとりくみを促進し、指導します。
--間接差別を幅広く禁止する
「総合職」「一般職」など、コース別雇用の制度によって、結果として多くの女性が不利益を受けています。こうした「間接差別」を実態にもとづいて広く禁止し、不利益と格差を解消させる実効性をもたせます。
--同一価値労働同一賃金の原則を明記する(非正規ワーカーも対象に)
仕事や業務の内容、雇用形態が違っても、仕事の内容を分析して公平な賃金を保障するため、同一価値労働同一賃金の原則を明記します。
--男女50%50%の目標をかかげ、女性の役員、管理職登用をすすめる
国際的には、意思決定機関を男女同数にすることがあたりまえの目標です。役員、管理職比率について、国として男女50%50%の目標をかかげます。企業や地方自治体にも、短期、中・長期の目標と計画をもってとりくむことを義務づけます。
--包括的なハラスメント禁止を明記し、国際労働機関(ILO)190号条約を早期に批准する
ILOの「仕事の世界における暴力およびハラスメントの撤廃に関する条約」(第190号条約)にもとづいて、暴力とハラスメントを包括的に禁止し、被害者の救済と支援、制裁規定などを盛り込んだ必要な法律を制定するとともに、条約を早期に批准します。
--罰則を設け、救済制度を抜本的に強化する
違反した企業への罰則を明記し、ジェンダー平等をすすめる企業の責任を明確にします。実効ある救済機関がなければ問題が是正されません。独立した国内人権機関を設立し、国際的な人権基準にもとづいて、迅速に調査、救済、是正ができる権限をもたせます。不合理な差別がないことを示す立証責任は、企業に負わせます。
男女の固定的役割分担の解消、仕事とプライベートが両立できる働くルールの確立を
雇用におけるジェンダー平等法の理念、目標を実現するためには、労働時間の短縮と男女の固定的な役割分担の解消、仕事とプライベートが両立できる社会をつくることが不可欠です。次のような施策を同時にすすめていくことが大事だと考えています。
--「1日7時間、週35時間」制をめざす
賃金の引き上げと一体に、「1日7時間、週35時間」へ労働時間の短縮をおこないます。中小企業やケア労働への支援、時間外・休日労働の上限規制(週15時間、月45時間、年360時間」)、残業割増率の引き上げを行います。労働時間の「規制緩和」をすすめる労働基準法などの改悪は許しません。
--非正規ワーカーへの差別と格差をなくし、正規雇用化をすすめる
均等待遇の原則、同一価値労働同一賃金の原則で、非正規を理由とする差別を禁止します。全国一律最低賃金制の確立、最低賃金1500円を実現し、1700円をめざします。会計年度任用職員など非正規公務員の待遇改善、無期雇用への転換をすすめます。
--ケア労働の処遇改善をすすめる
医療、介護、福祉、保育、学童保育など、ケアにたずさわる労働者の賃金を抜本的に引き上げ、処遇改善をすすめます。
--働く女性の健康を守る
健康で働きつづけられるために、産前産後休業の拡大と所得保障100%への増額、国民健康保険にも出産手当金制度の創設、生理休暇の有給化、性別にかかわりなく利用できる健康のための休暇制度の創設をすすめます。
--両立支援制度を抜本的に拡充する
育児介護休業の所得保障の引き上げ、介護休業の期間延長、短時間勤務制度や子ども看護休暇などの制度を大幅に拡充し、所得保障を充実・創設します。本人が希望しない単身赴任や長時間通勤を伴う転勤は、原則禁止とします。
--妊娠・出産、子育て・介護等による不利益をなくす
両立支援制度を利用したことや、残業、長時間労働をしないことによる人事評価の引き下げ、勤続年数の減少などによって、結果的に昇進昇格が遅れるといった不利益をなくします。マタニティーハラスメントなどの不利益取り扱いは厳しく罰します。



