2026年衆議院選挙各分野政策
13、リプロダクティブ・ヘルス&ライツ
リプロダクティブ・ヘルス&ライツの視点にたった政治を
2026年1月
リプロダクティブ・ヘルス&ライツ(性と生殖に関する健康と権利)は、子どもを産む・産まない、いつ何人産むかを女性が自分で決める基本的人権です。性と生殖に関する健康や、それについての情報を最大限享受できることも、大事な権利の一環です。
ところが日本では、性教育がきわめて不十分です。子どもたちは、人間の生理や生殖、避妊についての科学的な知識も、互いを尊重し合う人間関係を築く方法も、自分の心や体を傷つけるものから身を守るすべも十分に学べないまま、成長していきます。
社会には意図的に中絶へのスティグマ(負の烙印)が広げられ、明治期から残る刑法の自己堕胎罪もあいまって、多くの女性が深い苦しみを抱えてきました。予期せず妊娠し、誰にも相談できず、たった一人で自宅や公園のトイレなどで出産した女性が逮捕される悲しい事件が、後を絶ちません。
日本では、避妊法として、女性に選択権がなく失敗率の高いコンドームが多用され、他の先進国に比べて、低用量ピルやIUD(子宮内避妊具)の使用率が極めて低くなっています。性交後、72時間以内に服用すれば約8割の妊娠を防げる緊急避妊薬は、昨年8月に一般薬局での販売が認可されました。しかし、価格は約7,500円と高額です。年齢制限はありませんが、薬局で薬剤師と対面して服用が求められ、価格とともに大きなハードルになることが予想されます。
フランスでは、緊急避妊薬を2022年からすべての年齢の女性が処方箋なしで、無料で入手できます。イギリスでは、誰もが数種類の避妊法を無料で利用できます。避妊方法のアクセスは、日本が世界的にみても遅れているのが実態です。
中絶法は、掻爬法という、戦後直後当時の方法が、今も主流です。WHO(世界保健機関)は「安全な中絶」として、妊娠初期には中絶薬と吸引法を推奨していますが、日本では普及が遅れています。
日本の中絶は公的医療保険が適用されず自由診療であるため、妊娠初期でも10万~20万円の費用がかかります。一方、中絶薬の海外での平均卸価格は780円程度です。安全性が高くセルフケアが可能だとされているため、自宅での服用ができる国もあります。日本は2023年4月に承認されたものの、価格は手術と同等の約10万円です。価格や運用により必要な人が必要なときに使えない可能性があります。
刑法には現在も、「妊娠中の女子が薬物を用い、又はその他の方法により、堕胎したときは、1年以下の懲役に処する」(第212条)という自己堕胎罪が規定されています。さらに母体保護法に基づき人工妊娠中絶の手術を受けるときには、原則、配偶者の同意が求められます。女性の自己堕胎を処罰する法律が残され、母体保護法でも女性の自己決定権を認めていないため、配偶者と連絡がとれずに中絶を断念するという事態も起きています。
以上のような遅れに対し、国連からは、▽思春期の女子および男子を対象とした性と生殖に関する教育が学校の必修カリキュラムの一部として一貫して実施されることを確保すること▽刑法の堕胎罪をなくすこと▽母体保護法を改正し、配偶者の同意要件をなくすこと▽すべての女性と少女に、緊急避妊を含む安価な近代的避妊法への十分なアクセスを提供すること――などの勧告を受けています。
一方、生理用品の入手に苦労したことがある若者が5人に1人にのぼることが明らかになり(2021年3月、「みんなの生理」アンケート)、「生理の貧困」がみんなの問題として議論されてきました。学校や公共施設への生理用品設置は、経済的な理由などで生理用品を購入できないという「生理の貧困」がコロナ禍で顕在化したのをきっかけに広がり、国や自治体の施策にもなってきました。しかし、「生理用品を市役所のトイレに設置してほしい」と発信した三重県の共産党県議に8,000件におよぶ殺害予告が届きました。ミソジニー(女性嫌悪)に基づき、女性が上げた声をたたく行為を許してはなりません。「生理の貧困」をなくすためにさらに声をあげましょう。
リプロダクティブ・ヘルス&ライツの視点に立った政治への転換が、求められています。
包括的性教育の導入、権利として国際水準の避妊・中絶医療を保障します
――学習指導要領の“歯止め規定”をなくし、子どもの年齢・発達に即した、科学的な「包括的性教育」を公教育に導入します。
――避妊も中絶も、女性の大切な権利です。避妊薬と緊急避妊薬を安価で入手しやすくします。世界では、注射、シール、インプラントなどの身体に負担の少ない避妊方法が導入されています。日本も無償かもしくは低下価格でアクセスできるようにします。中絶薬を、適正な価格で誰もが入手・利用しやすくし、中絶医療を国際水準まで高めます。
――明治期から残る刑法の自己堕胎罪や、母体保護法の配偶者同意要件を廃止します。
――生理用品の恒久的な無償配布、学校など公的施設のトイレへの設置を進めます。非課税の対象とするなど、より安価で入手しやすくします。生理による心身への負担を軽減する医療の拡大をはかります。
――職場や学校などでも生理に関する知識や理解を深め、女性が過ごしやすい環境を整えます。
女性の健康を守り、安心して妊娠・出産できる体制を充実させます
――安全な妊娠・出産のための周産期医療体制を充実させます。産科医不足を解消するために、国の責任による産科医の育成・研修をすすめます。地域の産院・産科病院への公的支援を強化し、産科・小児科・救急医療などの診療報酬を引き上げます。国公立病院の産科切り捨てをやめ、周産期医療を守る拠点として支援します。産科医の過酷な労働条件の改善をすすめます。女性産婦人科医の妊娠中の当直免除、産休・育休中の身分保障、代替要員の確保、職場内保育所の設置、職場復帰に向けた研修など仕事と家庭の両立支援をすすめます。助産師・助産院への公的支援をすすめます。医師と助産師の連携を国の責任ですすめます。
――妊婦検診や出産費用の軽減、ベビー服や哺乳瓶などの育児用品を贈る制度の導入など、妊娠・出産にかかる経済的負担を軽減します。出産に関わる費用の負担軽減のため、出産一時金の制度を拡充します。
――産後ケア事業は、心身ともに不調になりやすい産後の支援としてとても大切です。しかし、産後ケア事業における事故を防ぐマニュアルは市区町村に任されています。国の事業として、母子の命を守れる安全規準をつくります。国の予算を増やし、すべての自治体が退院直後の母親の心身のケアや育児サポート事業を継続してすすめていけるようにします。
――不妊治療の経済的、精神的負担の軽減をはかります。保険適用の範囲の拡大が実現しました。引き続き経済的負担の軽減をすすめるとともに、女性の不妊専門相談センターの整備・拡充、リプロダクティブ・ヘルス&ライツにもとづいて女性の自己決定権を保障する立場から、カウンセリング体制を強化し、悩みや思いに寄り添ったアドバイス、支援ができるようにします。生殖補助医療においては、生まれた子どもの「出自を知る権利」保障など人権とリプロの立場をつらぬきます。
――乳がん、子宮頸がんの早期発見と治癒率向上をめざし、国の予算を引き上げ、自己負担の軽減、無料化をはかります。2022年4月から子宮頸がん予防のHPVワクチンの積極的勧奨が再開されました。引き続き、副反応被害者に対する補償と支援、治療体制の整備などの救済策を進め、副反応についての調査・原因究明を行いながら、希望するすべての人が安全・迅速に接種を受けられる環境の整備をすすめます。骨粗しょう症や甲状腺障害など女性に多い疾病の予防・健診の充実をはかります。
――女性が健康に生涯をおくるための支援、性差を考慮した医療の充実をすすめます。若い女性をはじめとして、女性が生理やホルモンバランスによる体調不良、避妊、更年期障害など、様々な悩みや不調を気軽に相談でき、女性の権利やプライバシーを守りつつ、親身に対応でき、必要な医療につなげられる窓口を整備します。
――働く女性の健康をまもります。長時間の残業や深夜労働による過労・ストレスで体調を崩す女性が増え、生理休暇も多くが利用できていないのが実態です。男女ともに長時間労働を規制するとともに、生理休暇を気兼ねなく取得できるように、制度の充実、周知徹底、企業への指導をつよめます。働く女性の長時間労働、深夜労働の実態・健康影響調査をすすめます。



