2025年参議院選挙各分野政策
64、マイナンバーカード
患者さんも医療機関も安心して受診できるよう、マイナ保険証の押しつけをやめ、保険証を復活させます
2025年7月
国民の反対を無視して、政府は昨年12月、健康保険証の新規発行停止を強行し、医療現場では混乱に拍車がかかっています。
開業医などでつくる全国保険医団体連合会が5月に公表した実態調査では、約9割の医療機関がマイナ保険証のトラブルに見舞われています。
最近でも、2025年6月17日、全国の複数の病院窓口でマイナ保険証を提示するとエラーとなり、資格確認ができないという重大な事故が相次いで起きました。
また、本人が知らぬ間に、重要な個人情報である所得区分が洩れていることも分かりました。2025年5月の国会で日本共産党の伊藤岳参議院議員が明らかにしました。
➡詳しくはマイナ保険証 知らぬ間に情報漏れ/医療機関で所得区分表示/参院特別委 伊藤氏追及(2025年5月16日 しんぶん赤旗)(https://www.jcp.or.jp/akahata/aik25/2025-05-16/2025051601_05_0.html)をごらんください。
マイナンバーカードと保険証との一体化押しつけをやめさせ健康保険証を存続させます
そもそもマイナンバーカードをつくるかどうか、また、マイナンバーカードを保険証として登録するかどうか、さらに、マイナ保険証を使うかどうかはまったくの任意であり、強制するようなやり方でごり押しすることは許されません。
また、マイナ保険証の利用率をもとに医療機関等への補助金に傾斜を設けたり、診療報酬制度に新たな加算制度をつくって、一定の利用実績を下回る医療機関等を加算の対象外とする制度を導入するなど、政府のやり方は、医療機関等にマイナ保険証利用を無理やり仕向けるものです。ましてや、利用実績の低い医療機関に対しては、「療養担当規則違反となるおそれ」を示すなどは、医療機関等に不当な圧力をかけるものであり許されません。
厚労省も、来年3月まで従来の保険証利用を認める方針へ
2025年6月27日、厚生労働省は有効期限が切れた従来型の健康保険証での受診を、来年(2026年)3月末まで認める方針を都道府県や医療関係団体に文書で通知しました。これまで多くの医療関係者や日本共産党が訴えてきたことがとうとう厚労省を動かしました。来年3月まで従来の健康保険証は存続させ、「暫定的」な措置にとどめることなく、引き続き保険証を使用できるようにすべきです。
――マイナ保険証の押しつけをやめさせ、健康保険証を存続させます。
――マイナ保険証の利用率による医療機関等への差別的な扱いを直ちにやめさせます。
マイナ保険証を持っている人にも、持っていない人にも、資格確認書は全員に国の責任で交付します
資格確認書はこれまでの保険証と同じように医療機関で使用できます
マイナ保険証を持たない方への資格確認書の発送が始まりました。資格確認書はこれまでの保険証と同じように医療機関で使用できます。
この資格確認書は「マイナンバーカードを取得していない方や、まだマイナンバーカードを健康保険証として利用する登録をしていない方に、マイナンバーカードによらず保険資格が確認できるように、ご自身が加入している医療保険者(勤務先や各自治体など)から無償で交付されます」(デジタル庁)というものです。
広がる資格確認書交付
マイナ保険証の利用率は、2025年5月時点で29.3%にとどまっています。一方で、資格確認書の交付を受ける目的などでマイナ保険証の登録を解除する方は、毎月1万人~1万5,000人にのぼっています。
政府はマイナ保険証の利用が困難な方(高齢者、障害がある方など)は、申請すれば、資格確認書を交付するとしていますが、それ以外のマイナ保険証を持っている人には交付しない方針でした。
一向にマイナ保険証の利用が進まない中、厚生労働省は2025年4月になって、マイナ保険証の保有にかかわらず、75歳以上の後期高齢者の方全員に、7月末までに資格確認書を送付することを決めました。
また、東京の渋谷区と世田谷区では、マイナ保険証を持っている人も含め、国民健康保険の加入者全員に健康保険証と同様に使える資格確認書の交付を決定しました。
世田谷区の保坂区長は「マイナ保険証は5年に1度、自治体の窓口で、電子証明書の個人認証の更新をしなくては使えなくなります。カード保有者の多くは、2020年9月から2023年9月末までのマイナポイント付与キャンペーンでマイナ保険証を作っていて、その人たちが25年から続々と更新時期を迎える。そこで、役所の窓口が再び大混乱する可能性がある」と、全員への交付の理由を説明しています。
――今までの保険証の代わりとなる資格確認書は、高齢者・障害者にとどまらず、マイナ保険証を持っている人を除外せず、全員に国の責任で交付します。
マイナンバー制度を廃止します
マイナンバー制度は、日本に住むすべての国民・外国人に生涯変わらない12ケタの番号をつけ、さまざまな機関や事務所などに散在する各自の個人情報を名寄せ・参照できるようにし、行政などが活用するものです。2015年10月に付番が行われ、2016年1月から、希望者に対し、顔写真やICチップの入った「マイナンバーカード」が交付されています。
政府が国民一人ひとりに生涯変わらない番号をつけ、多分野の個人情報を紐づけして利用できるようにすること自体、プライバシー権の侵害の危険をもつ重大な問題です。
政府は、デジタル改革関連法で、政府が管理・運営しているウェブサイト「マイナポータル」を入り口とした情報連携を拡大させ、あらゆるデータを集積しようとしています。2023年や2024年のマイナンバー法改正では、もともと利用を限定していた社会保障制度・税制・災害対策の3分野に限らず、それ以外の行政事務についてもマイナンバー利用を可能とし、その情報連携についても省令改正で可能としました。マイナポータルでは、世帯・戸籍情報、健康・医療、年金関係など、様々な個人に関する情報が確認できるようになっていますが、その具体的な情報は各府省庁の判断で拡大が可能です。また、本人同意を要するものの、民間企業はマイナポータル上にある個人に関する情報をAPIにより取得することも可能です。本人同意の際には包括的同意が求められるなど、同意の在り方に問題があることや、APIで取得できる情報が拡大していけばより一層プロファイリングが進み、選別や排除、不当な差別や不公平が助長されかねません。
もともと、国民の税・社会保障情報を一元的に管理する「共通番号」の導入を求めてきたのは、財界でした。日本経団連は2000年代から、各人が納めた税・保険料の額と、社会保障として給付された額を比較できるようにし、”この人は負担にくらべて給付が厚すぎる”などと決めつけて、医療、介護、福祉などの給付を削減していくことを提言してきました。社会保障を、自分で納めた税・保険料に相当する”対価”を受けとるだけの仕組みに変質させる大改悪にほかなりません。社会保障を「自己責任」の制度に後退させ、「負担に見あった給付」の名で徹底した給付抑制を実行し、国の財政負担、大企業の税・保険料負担を削減していくことが、政府・財界の最大のねらいです。
国民の所得・資産・社会保障給付を把握し、国民への徴税強化・給付削減を押しつけるマイナンバー制度は、廃止すべきです。
行政データを「儲けのタネ」にする「デジタル改革」には反対し、個人情報を保護します
歴代自民党政権は、「データ利活用」を成長戦略と位置づけ、デジタルを「地方の社会課題を解決するための鍵」として、デジタルインフラ整備とともに、「地方におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)」、国主導の「データ連携基盤の構築」などを推し進めてきました。
2021年10月に成立した岸田政権も安倍・菅政権が進めてきた「デジタル改革」を引き継ぎ、同年9月に発足したデジタル庁を「デジタル改革」の司令塔と位置付け、「デジタル臨時調査会」(2022年1月始動)を「デジタル行財政改革会議」にリニューアル(2023年10月6日)して、規制改革推進会議、デジタル田園都市国家構想実現会議、行政改革推進会議といった政府施策の柱となる会議体と各府省のデジタル部門を系統下において、①国・地方・準公共分野のデジタル基盤の整備と各府省連携によるシステム整備を通じた情報システムの統一・共通化、②デジタル活用を阻害するアナログ規制や制度の徹底的な見直し、③政策効果の「見える化」をつうじた予算事業の「不断の洗い直し」を一体的にすすめてきています。
石破政権でも「AI 等のテクノロジーやデータを徹底活用して新たな価値やサービスを創出し、社会全体の生産性を向上させ、健全な競争や我が国の経済成長を実現」のため、データ連携や利活用推進が掲げられています。
こうした政府の「デジタル改革」は、行政保有のデータを企業に開放し、「儲けのタネ」として企業の利益につなげるための「改革」です。国・自治体が保有する個人情報は、公権力を行使して取得、申請・届出に伴い義務として提出されるもので、企業が保有する顧客情報とは比べ物にならない、多岐にわたる膨大な情報量となります。これを利活用するには「行政のデジタル化」や、個人情報保護を緩める必要があり、情報提供者の本人同意がないまま、行政から民間へデータ提供を可能とする制度が設けられてきました。
2021年通常国会で審議され、同年5月に成立した「デジタル改革関連法」は、デジタル庁の設置をはじめ個人情報保護法制の一元化とオープンデータ化、国と地方自治体の情報システムの共通化・統一化、マイナンバー制度の利用拡大など「デジタル改革」のためのツールを設けるもので、「デジタル改革関連法」の成立と関連法の累次の改正は、プライバシー権の侵害、利益誘導・官民癒着の拡大、行政の住民サービスの後退、健康保険証の廃止とマイナ保険証の強要、国民への負担増と給付削減の押し付けなど重大な問題をもたらしてきています。
個人情報を保護し、安心と信頼、透明性がしっかりと確保され、住民自治と団体自治という地方自治の原則が貫かれることはデジタル化の前提です。行政データを「儲けのタネ」にする「デジタル改革」には反対です。
利益誘導・官民癒着を拡大しかねないデジタル庁は必要ありません
「デジタル改革」を強力に進める「司令塔」として設置されたデジタル庁は、「勧告権」を持ち、他の事務次官より大きな権限をもつ「デジタル監」を置き、これまでにない強力な権限を持った組織です。全府省庁にとどまらず、自治体、補助金を受給している医療・教育といった準公共部門の民間事業者に対しても、デジタル庁が予算配分やシステムの運用について口を挟むことが可能です。
デジタル庁は、約700人のうち民間出身者が3分の1を占める職員数で発足していますが、2024年7月現在の職員数は1,105人に膨張しており、その構成は、民間出身者が528名で全体の48%を占め、行政からの人材445名より多くなっています。さらに、今年2025年6月の「重点計画」改定において、「1,500人規模の組織を一つの目安に」体制整備を進めているとしています。この民間出身者で、ほとんどの職員が非常勤です。兼業・テレワーク可、出身企業の給与補填も認められているので、企業からの「出向」という立場です。企業からの「出向」職員は、企業の意向に従わざるを得ず、利益誘導につながりかねません。また、特定企業・業界団体の利益を優先するような政策の推進、都合のよいルールづくり、予算執行など、更に官民癒着が広がるおそれがあります。
デジタル庁では、NEC、富士通、パナソニック、日立製作所、東芝、電通、NTTデータ、NTTドコモ、ヤフー、ソフトバンク、LINE社などの大企業・大手IT企業からが非常勤職員として在籍していることが明らかになっています。政府は、この非常勤職員が、「兼業」も「出身企業からの給与補てん」も受けられることを認め、当時の平井大臣は「ベンダーとして大型案件に関わった経験は重要だ」と正当化しました。
国だけでなく自治体も含め、ICT化する業務が増え、この間で情報システム関係予算は大きく増加しています。政府のガバメントクラウド(情報システム)の運用経費の受注実績(2017年度)をみると、その受注はNTT、富士通、日立といった上位5グループで全体の4分の3を占め、これらの企業からの「出向」職員がデジタル庁の母体である内閣官房IT総合戦略室に在籍していたのです。
デジタル庁は、発足前から平井担当大臣(当時)による「脅し発言」や一部企業への優遇が発覚し、批判をかわそうと、民間出身者の事前登録による入札制限策などを設けています。しかし、調達業務に限定しており、抜け穴もあります。さらに、政策やルール作りに対する利益誘導の防止策はなく、官民癒着の排除には程遠いものです。一部の大企業は「IT特需」にわき、国民には負担がのしかかり続けるということになります。
デジタル庁は、強力な権限で、官邸と民間の意向を、政府全体・自治体にまで、スピーディーにストレートに反映させる組織だということです。このような組織は必要ありません。
安全をないがしろにしたデジタル化による規制緩和をやめさせます
「アナログも、デジタルも」行政手続の多様化で住民サービスの向上をはかります
「デジタル臨時行政調査会」は、2022年6月3日、「デジタル原則に照らしたアナログ規制の一括見直しプラン」を取りまとめました。そして、3年間(河野大臣は2年間に前倒し)の集中的な改革期間でアナログの一括見直しをおこなっています。そのなかでは、「目視規制」「実地監査」を見直すとして、例えば、防災や介護など、国民の安全にかかわる項目を含めた条項について、現在、河川やダム、都市公園の管理者は、維持修繕のための点検を目視で実施することが定められていますが、これらにドローンや水中ロボット、画像解析等の活用を進め「目視規制」をデジタル技術によるものに置き換え、また、介護サービス事業所ごとに管理者1人が常駐する基準について、テレワークを活用することで複数の事業所を管理できるように見直すなどが内容となっています。
経済界からの要望のままに、国民の安全をないがしろにした、アナログ規制の見直し、デジタルへの規制緩和は許されません。
アナログとデジタルによるハイブリッド方式で、住民サービスの向上や充実をはかります
行政にデジタル化を生かすことで、行政手続きの迅速簡便化が図られ、住民の選択肢を増やすことはいいことです。しかし、政府の「デジタル改革」では、自治体に及ぼす影響があり、住民へのサービスが低下しかねない問題があります。
1つ目は、対面サービスの後退につながるという問題です。実際に、「デジタル化」を口実に、窓口の減少、紙手続きの取りやめ、対面サービスを後退させる事例が相次いでいます。群馬県前橋市では移動困難者の方にタクシー利用を補助するマイタク制度があり高齢者が多く利用していますが、2022年4月から紙を廃止しマイナンバーカード利用しか認めないとしました。コンビニで住民票発行が可能になったからと、東京都北区では区民事務所7分室を撤廃、練馬区でも11出張所を廃止しています。
また、例えばICT企業のスマートフォンアプリを利用した「プッシュ型子育て支援」では、「行政が先回りをして、その人の状況に応じたサービスをプッシュ型でお知らせ、申請後迅速にサービス提供」(2023年12月「行財政改革会議中間取りまとめ」というように行政サービスの主導はICT事業者となって自治体の公的な責任と役割が大きく後退しかねない事態ともなりかねません。
2つ目に、減免や免除といった自治体独自の施策を抑制するという問題です。2021年のデジタル改革関連法では、全ての自治体に対し、国が決めた基準に適合したシステムの利用を義務付けています。また、政府は、全ての自治体の基幹業務システムを、2025年度までに、デジタル庁が統括・監理するガバメントクラウドに移行することを目指しています。現に、複数の自治体が共同でシステムを利用する「自治体クラウド」で、国が仕様変更(カスタマイズ)を認めないことが問題となっています。富山県上市町ではわが党町議の「3人目の子どもの国保税免除、65歳以上の重度障害者の医療費窓口負担免除」の提案に対し、町長が「自治体クラウドを採用しているため、町独自の減免はカスタマイズできない」と答弁し、提案を拒否しています。自治体は国が作る鋳型におさまる範囲の施策しか行えず、住民サービスが後退しかねません。地方自治の侵害です。また2024年の改正デジタル手続法では、自治体などが支払うガバメントクラウド利用料を国が保管し、一括契約する制度創設等を定めましたが、一部の自治体では現行の自治体クラウド等の運用経費等よりも、負担額が増加する見込みであり、自治体財政を圧迫する恐れがあります。国策として自治体情報システムの標準化を推進してきたことに鑑み、運用経費等の増大分については国の責任で財政措置を講ずべきです。
3つ目は、自治体リストラの懸念です。総務省は、半分の職員数でも担うべき機能が発揮される「スマート自治体」への転換を目指す、と打ち出しています。総務省幹部は、デジタル化で「無人窓口も実現可能ではないか」と主張しています。総合的な住民サービスを後退させることになる職員削減は、認められません。
日本共産党は、行政手続きのデジタル化を全否定しているわけではありません。しかし、原則デジタル申請である持続化給付金・家賃支援金・文化芸術支援金では、支援を受けられない事業者が多数生まれました。また、災害時では、電源の確保、情報通信機能のマヒ、自治体のサーバーの水没などが問題となるデジタルよりもアナログの方が安定的な手段となっています。行政サービスでは、住民の実情やアナログとデジタル双方の特徴を踏まえて行うことが必要です。