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政策

日本共産党のかかげる政策をご紹介します

2025年参議院選挙各分野政策

53、住宅・マンション

市場任せから「住まいは人権」の住宅政策へ
家賃補助・家賃減税を実現し、安心して住み続けられる住まいを

2025年6月

今こそ、国の責任による恒久的な家賃(住居費)補助制度の創設を

 日本の住宅政策は、長年の「持ち家政策」により、住宅確保を「自己責任」として市場原理まかせにし、公的責任を後退させる新自由主義的施策をとってきました。また都市部では、「国家戦略特区」制度等による規制緩和など、住民不在でデベロッパー(開発事業者)の利益優先の再開発を推進し、タワーマンションなどの高層住宅ばかりが建てられています。そのため、地価が上がり、固定資産税も上がり、住宅価格も家賃も上がりました。東京23区では、2023年に新築マンション、2025年5月には中古マンションの平均価格が1億円を超えました。高すぎる住居費のため、勤労世帯や子育て世帯が都心部に住めなくなる事態が、首都圏でも地方都市でも生じています。

 マンションを中心にした住宅が、投資、投機の対象とされていることも重大です。海外を含めた投機マネーが住宅市場に流れ込み、居住目的ではなく投機目的で住宅が購買、転売されています。

 ところが、政府はこの事態にほとんど無策です。特に、日本では約4割の世帯が賃貸住宅ですが、借家人への住居費軽減策はきわめて貧弱です。その結果、「家賃が高すぎて収入の7割以上、これでは生活を維持できない」と高齢者から悲鳴が上がるなど、収入が年金のみの世帯、低所得の単身者世帯、シングル子育て世帯等、賃貸住宅に暮らす世帯の多くで、高すぎる家賃が家計を圧迫しています。

 しかし、政府による家賃軽減策は、わずかに「セーフティネット住宅」に対する、最大月額4万円の家賃低廉化(家主に対する家賃値下げ分の給付、総額240万円を限度)のみです。同制度はスタートして9年目になるにも関わらず、その給付実績は、2023年度も全国でわずか27自治体630戸(給付額1億734万円)です。住宅困窮者対策としての役割をまったく果たしていません。アメリカやイギリス、フランスをはじめOECD諸国の大半が家賃補助制度を整備していることに日本政府は学ぶべきです。

 また、「住宅ローン減税はあるのに、なぜ家賃減税はないのか」という声もあがっています。住宅ローン減税は、年間8,000億円規模になっています。しかし、賃貸住宅の居住者には支援がありません。欧米では家賃減税制度を持つ国もあります。日本でも導入するべきです。

 ―――賃貸住宅での住宅費軽減のため、家賃補助を作ります。国の制度として、家賃補助制度をつくります。現行の家賃低廉化制度(セーフティネット住宅)を抜本的に拡充し、若者、高齢者、障害者をはじめとした住宅困窮者を対象に「月1万円、200万世帯」の規模からはじめて、順次拡大していきます。

 ―――家賃減税制度を、住宅ローン減税に匹敵する規模でつくります。家賃が所得の2割を超える人を減税の対象とし、2割を超える部分に最大15%減税します。例えば、13~15万円の家賃を払っている年収500~600万円の世帯では、年12万円の減税となります。

 ―――高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)の家賃補助制度など、以前国が行っていた家賃補助を、国の制度終了を口実に自治体が打ち切る事態が各地で発生しています。国の責任で、家賃補助を継続します。すでに打ち切った自治体でも、すみやかに「住宅セーフティネット」の家賃低廉化措置などにより、実質上家賃補助が続けられるようにします。

 ―――入居時に保証人に代わって利用されている家賃債務保証業者は、審査の名での入居者選別やつきまといなどの不当な債権取り立て行為を行わないよう、法律による規制を強化します。また、追い出し屋規制法をつくり、借家人が住まいを追い出されることのないようにします。

公的な賃貸住宅の充実を

公営住宅の抜本的充実

 自民公明政権は、住宅政策への公的責任を後退させてきました。「国及び地方公共団体が協力して、健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備」する公営住宅は、ニーズが一貫して高いのに、2005年度の219万戸をピークに、2021年度は213.3万戸まで減少しており、全住宅に占める比率はわずか3.4%に過ぎません。そのため、例えば東京都では都営住宅の新規建設は2025年、石原都政以来ゼロのままです。しかし、応募倍率は一般募集で約20倍、単身者向け募集は50倍を超えています。全国的にも、公営住宅を供給する必要性は都市部中心に引き続き高いですが、政府はその整備どころか自治体による削減をそのまま容認する一方で、公営住宅の更新にはPPP/PFI方式の検討を義務付ける(地域居住機能再生推進事業)など、公的関与も弱める施策を進めています。

 また公営住宅は、多くの自治体で、政令月収(月15万8千円など)以下のごく限られた低所得者しか入居できません。加えて、居住者の高齢化や外国人居住の増加等で住民間のコミュニケーションに新たな課題が生じ、自治会活動など住民の共同活動も困難を抱えています。自治体任せではなく、地域の実情を踏まえた国の支援が求められます。

 ―――公営住宅の新規建設を含む供給の増加をすすめるとともに、UR賃貸住宅の空き家や、民間賃貸住宅を借り上げて公営住宅にするなど、多様な供給方式の活用により、公営住宅の供給を大幅に増やします。

 ―――公営住宅については、法改悪で引き下げられた、現行の月収15万8千円の入居収入基準を、まずは引き下げ前の月収20万円に引き上げるとともに、子育て世代や低所得の若者、単身女性やDV被害者などの住宅困窮者が入居しやすいようにします。収入が増えた入居者を「収入超過者」として、強制的に居住者を追い出すことをやめさせます。

 ―――入居時の保証人については、国土交通省が2018年3月、保証人の確保を入居の前提とすべきでないという通知を出しました。しかし、まだ多くの自治体で保証人を入居時に要求しており、保証人要件が住宅困窮者入居の障害となっています。公営住宅の保証人要件を残している自治体には、要件を撤廃させます。

公団住宅(UR住宅)の改善

 全国公団住宅自治会協議会が2023年に行ったアンケート結果によると65歳以上の世帯主は73.5%であり、世帯収入245万円未満の低所得世帯が5割を超えます。また、現在の家賃負担が重いと答えた世帯は75.5%に上る一方で、このまま公団住宅に住み続けたいとの切実な回答が78.2%もあります。高齢化の進む入居者が安心して住み続けたいとの希望が多いにも関わらず、昨今の物価高騰で低所得入居者の生活はますます危機に瀕しており、高家賃対策は急務です。

 生活困窮者の家賃負担軽減のため、明確に法的根拠のある機構法25条4項の「家賃の減免」規定を現在の入居者に一刻も早く適用すべきです。国と機構が決断すればすぐにできることです。加えて、UR賃貸住宅は、生活に困窮する入居者に対し高すぎる家賃を引き下げるべきです。そのためにも、都市再生機構法を改正し、高すぎる家賃の原因となっている「近傍同種家賃」(民間と同等の市場家賃)制度を廃止することが必要です。

 ―――UR機構法25条4項の「家賃の減免」を条文通り実施させて、いまUR賃貸住宅に居住している、高齢者や低所得者の居住安定をはかります。

 ―――UR賃貸住宅は、住宅セーフティネットを担う公共住宅として位置づけます。戸数削減や民間売却をさせずに国民の財産として守り、充実させます。「ストック活用・再生ビジョン」は、白紙撤回させます。

 ―――住み続けられる家賃にするため、低所得世帯(公営住宅入居対象世帯)の家賃は近傍同種家賃制度や「継続家賃改定ルール」によるのではなく、公営住宅同様の家賃制度(応能家賃)にします。そのため現行のUR機構法等の改正を行います。

 ―――2018年12月に、畳床、ふすまの枠等の修繕負担区分の見直しが実現しました。まだ、畳表・ふすま紙の入れ替え等、民間賃貸住宅でも家主負担が多い項目が入居者負担とされています。これらの修繕をUR都市機構の負担で進めます。

マンション対策

分譲マンションの維持・管理への支援

 分譲マンションは国民の1割、1,400万人の人々が暮らす場であり、都市におけるコミュニティの場でもあります。マンションの維持・管理に対する公的な支援を充実し、安全、快適で、長持ちするマンションをめざすとりくみへの支援が求められています。

 2025年の通常国会で、区分所有法等のマンション関連法が改正されました。

 マンションでは、建物の老朽化と居住者の高齢化による「2つの老い」の問題があります。高経年マンションには、1981年以前の古い耐震基準で建てられたものも多く、防災上も建て替えや大規模修繕が必要なマンションは急増しています。一方で、建築費用が高騰しており、現状の修繕積立金では要求される修繕費用を出せないなど、建て替え費用を出せず、建て替えの必要性を認めつつも計画には同意できない等の問題が生じています。

 マンション関連法改正では、建替え要件を現行の5分の4以上の多数決決議から4分の3以上に緩和するなど手続き面の要件緩和を行いますが、いくら建替え決議の要件を緩和しても、資金がないなどの理由で建替えに参加できず、そのマンションを退去せざるを得なくなる方はなくなりません。ところがそういう方々への支援策はほとんどないのが実情です。

 マンション管理業者の提携業者が修繕も行うなど、住民と利益相反を起こしかねない事態がひろがっています。特に、大手マンション修繕業者を含む談合事件が発覚し、公正取引委員会の調査が行われている事態は重大です。

 ―――公営住宅への受け入れや家賃補助、公的な特別融資など抜本的に支援する様々な制度を創設します。

 ―――マンションの建替えは、マンション管理組合における民主的な議論により決められるように、コミュニティの再生と管理組合への行政の支援を強化します。

 ―――住民の立場で活動するマンション管理士の育成や、管理組合団体などの自主的なとりくみへの支援、行政の相談体制の整備など支援体制を充実します。

CO2排出削減のため、住宅の断熱・省エネ化をすすめます

 深刻な「気候危機」のもと、CO2排出削減のためには、住宅の断熱・省エネ化を新築・改築時に進めることが必要です。また、WHO(世界保健機構)の「住宅と健康ガイドライン」を発表し、各国に対し住生活の観点から寒さ対策(冬季室内温度18度以上)を強く勧告しています。

 日本でも、2025年4月から、新築のすべての建築物に省エネ基準への適合が義務化されました。これを第一歩に、住宅の断熱・省エネ化を、新築・改築時に進めることが必要です。とくに、既存住宅の省エネ基準適合率は2022年時点で約18%にとどまっており、大幅な引き上げは急務です。

 ―――新築・改築時の省エネ・再生エネ化を規制と助成一体にすすめます。一定規模の建物建設に断熱化、太陽光パネル設置などの脱炭素化対策に、省エネ減税・住宅ローン減税の上乗せなどを行います。

 ―――政府は、2030年までに段階的に省エネ基準を引き上げ、「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」、「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)」の基準を新築建築物に義務化するとしていますが、段階的にではなく当初からZEH・ZEB基準を義務付けます。

 ―――住宅の耐震化やバリアフリー化、長寿命化とあわせて、安全で快適な住宅をめざす住宅リフォーム事業をしっかり位置付けるとともに、自治体の取り組みを支援します。

 ―――中小の建設業者が省エネ改修事業に参加するうえで大手ハウスメーカーと格差が生じないように、技術面も含めた支援を行います。

 ➡気候危機を打開する日本共産党の2030戦略(2021年9月1日)(https://www.jcp.or.jp/web_policy/2021/09/post-882.html)もごらんください。

空き家、サブリース

空き家・既存(中古)住宅対策

 空き家が増えています。その数は2023年時点で900万戸(2018年比51万戸増)に上っています。そのうち利活用方法(賃貸、売却、二次的利用など)が定まっていない「その他空き家」は、385万戸と、この5年で37万戸増加しました(2023年住宅・土地統計調査)。空き家は利活用により、管理されない「放置空き家」としないことが重要です。とくに、日本は既存住宅(中古住宅)の流通が少なく、全住宅流通量の15%程度しかありません。これは、欧米諸国の5分の1~6分の1にとどまります。

 ―――既存住宅を長持ちさせ、有効活用する施策を支援する等、市場任せ、家主任せではなく、「空き家バンク」の仕組みも活用しながら、行政が住民とともに対策を進める仕組みを作ります。

適正な不動産取引への規制を

サブリース業者への実効性ある規制

 サブリース業をめぐり、賃貸アパートのオーナー(投資主)への不正融資や、共同住宅の違法建築が社会問題化しています。2020年にサブリース規制立法が成立し、義務的な登録制度ができましたが、相変わらずオーナーに契約内容の十分な説明もないまま一方的に家賃値下げを迫る等の行為が続いています。サブリース事業者に対しては、借地借家法の借家人としての地位に基づく主張を認めない等、オーナーや入居者の生活と権利を保護するためにより実効性のある規制を行います。

住宅の押し買い・リースバックへの法規制を

 持ち家所有の単身高齢者などをターゲットに、「まとまった生活資金が調達でき、そのまま住み続けられる」という宣伝文句で、持ち家の売却と賃貸が一体の「リースバック」契約を結ばされた後、その家が転売されて家賃値上げや立ち退きを迫られるなどの被害が多数顕在化し、社会問題となっています。高齢者の認知症など、判断能力が低下していることに付け込んだ、悪質な詐欺的商法ともいうべき手法が用いられているのが特徴です。差し迫った資金需要がない場合、持ち家を市場の評価額よりも相当低い価格で買い取られて、高家賃で賃借するリースバック契約を締結することのメリットはほとんどありません。現状ではクーリングオフの適用がなく、いったん契約してしまうと高額の違約金や「手付倍返し」を迫られるため、あきらめてしまっている被害者が多数います。ほとんど詐欺的な手法で契約させられている事案が多いことから、クーリングオフの導入や、誇大広告の規制など、宅建業法や消費者関連法による法規制をすすめ、高齢者などを被害から守るしくみをつくります。