2025年参議院選挙各分野政策
87、核兵器
「人類の死活にかかわる核戦争の防止と核兵器の廃絶」(綱領)のために力を尽くします
2025年6月
日本共産党は、被爆国の政党として、一貫して核兵器廃絶のために力を尽くしてきました。原水爆禁止世界大会をはじめ反核平和運動に草の根からとりくむとともに、国連をはじめとする政府間会議への参加やアジアやヨーロッパへの訪問など、野党外交でも核兵器廃絶を訴えてきました。
今年はアメリカ軍が広島(8月6日)と長崎(8月9日)に、原子爆弾を投下してから80年目を向かえます。昨年は、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)がノーベル平和賞を受賞しました。唯一の戦争被爆国である日本の政府はいまこそ、核兵器禁止条約に参加し、「核兵器のない世界」の実現のために、世界の先頭に立つべきです。
核兵器をめぐる危険な情勢
核兵器使用の危険が高まっています。ウクライナを侵略するロシアが公然と核兵器による威嚇を繰り返し、ガザ攻撃を続けるイスラエルも核兵器をちらつかせました。他方、アメリカが核先制使用政策をとり、NATOでも「核の傘」の拡大など、核戦略の強化がすすめられようとしています。とりわけアメリカが、「核兵器開発疑惑」を理由にイランの核施設を攻撃したことは、国連憲章と国際法を踏みにじる蛮行であり、断じて許されません。
東アジアでも核保有国・中国や北朝鮮を含む緊張が続いています。核保有国であるインドとパキスタンの軍事衝突も深刻な懸念も広げました。アメリカの科学雑誌(”BulletinoftheAtomicScientists”)は1月28日 、「人類最後の日」までの残り時間を象徴的に示す2025年の「終末時計」について、これまでで最も短い「残り89秒」と発表しました。核兵器使用のリスクなどがその理由です。
世界の核兵器保有数-2025年1月時点
米国5,177
ロシア5,459
英国225
フランス290
中国600
インド180
パキスタン170
イスラエル90
北朝鮮50
合計12,241
出典:SIPRIYEARBOOK2025、ストックホルム国際平和研究所、2025年6月16日発表
核兵器の脅威
80年前に広島と長崎に投下された原爆は、現在のものよりはるかに小型のものでしたが、一瞬にして都市を破壊しつくし、その年(1945年)の末までに21万人の命を奪いました。かろうじて一命をとりとめた者も、放射線による原爆症など様々な健康被害に苦しめられました。核兵器は、決して使ってはならない「悪魔の兵器」です。
同時に核兵器は、人類全体への脅威でもあります。国際的な医師や科学者の団体による研究では、100発の核兵器が都市で爆発すれば、大気圏に舞い上がった粉塵によって気候変動が起き、農作物の不作などで、10年間で20億人が餓死するといわれています。それだけに、わが党は、「核戦争の防止と核兵器の廃絶」を気候変動とともに「人類の死活にかかわる」課題としてとりくんでいます。
「核抑止」論をのりこえる本質的な批判
「核兵器のない世界」への最大の障害が「核抑止」論です。
日本政府は、核兵器の非人道性を認めるものの、核兵器の使用を前提とした「核抑止」の立場にたって、アメリカの「核の傘」に依存し続けています。この根本的な矛盾をついて、本質的な批判を行ってきたのが日本共産党です。
志位和夫委員長(当時)は2021年8月、核兵器廃絶日本NGO連絡会の討論会で、「核抑止とは、いざという時には核兵器を使用するということを前提とした議論です。すなわち、いざという時には広島・長崎のような非人道的惨禍を繰り返すことをためらわない議論です」と批判し、「核兵器の非人道性を批判するのであれば、核抑止から抜け出す必要があります」と訴えました。
自公や多くの野党が、「日米の拡大抑止の深化」などを主張する中で、わが党の立場が際立っています。
核兵器禁止条約を力に前進する
今日の危機的な状況を打開し、「核兵器のない世界」へ前進するうえで核兵器禁止条約(2021年1月22日発効。以下、禁止条約)が重要な力となっています。
核大国の妨害にもかかわらず、禁止条約の批准国は74へと広がり、署名国も93と、国連加盟国(193カ国)の過半数に達しようとしています。ここに世界の本流があります。
禁止条約は、次のような点ですでに実効性を発揮しています。①核兵器の使用を許さぬ壁となっている。②金融機関が核兵器関連産業からの投資引き上げるなど、倫理的な力を発揮している。③核使用と核実験の被害者への支援、汚染された地域の環境修復など、条約に基づく具体的な活動がはじまっている。④ジェンダー視点を盛り込んだことで、国連の平和軍縮活動全体に影響を与えている。
日本共産党は次の「三つの力」をあわせて、核兵器廃絶に前進することを訴えています。①核兵器禁止条約そのものが持つ力、②条約をつくりあげた世界の多数の諸政府と市民社会の力、③核兵器保有国とその同盟国で、核兵器完全廃絶をめざす世論を多数とし、禁止条約の参加を求める運動、です。
第3回締約国会議(2025年3月)に党代表が参加
日本共産党の吉良よし子参院議員と笠井亮前衆院議員が、核兵器禁止条約の第3回締約国会議(3月3日~7日)に参加し、以下の点で要請を行いました。
1.被爆者と核実験被害者の証言を聞く機会を国際的にも、各国でも実現し、核兵器使用が破滅的な非人道的結末をもたらすことを世界に広げるイニシアチブの強化。被害者を招き、為政者や広範な市民がその証言を聞くことができるよう、市民社会と協力したとりくみを訴える。
2.「核抑止」論を克服する国際的なとりくみの強化。ヒロシマ・ナガサキの惨禍の非人道性を認めながら、核兵器の使用を前提とした「核抑止」政策をとることは根本的に矛盾し、全人類の安全を危険にさらすものである。それは、軍拡競争をつくりだし、仮に抑止が破綻した場合、全世界にとって取り返しのつかない大災厄をもたらす。「いかなる場合にも核兵器が再び使用されないことを保証する」には「核抑止」ではなく核兵器廃絶しかない。
3.条約が義務付ける被爆者と核実験被害者の支援と環境修復のための具体化を。被害者とともに、その支援を行っている市民社会の参加、非締約国の協力が重要である。私たちは、日本政府にたいし、本条約参加以前にも、この課題で積極的に貢献するよう求めている。
なお、要請文では、日本共産党が日本政府にたいし、「核抑止」と決別し、禁止条約に参加すべく力を尽くしていることや東アジアでは、包摂と対話で平和を構築することを提起していることなども紹介しました。
禁止条約の成立に尽力した日本共産党
日本共産党は、核兵器禁止条約がまだ形をとる前から、その実現のために力を尽くしてきました。その先駆的な役割は、日本の政党の中でも際立っています。
オバマ米大統領宛て書簡―2009年
オバマ米大統領が2009年、プラハで「核兵器のない世界」の演説をしたことを受けて、志位委員長(当時)は、「核兵器廃絶に向けた国際交渉へのイニシアチブ」を求める書簡を同大統領に送りました。オバマ大統領の約束は、裏切られる結果となりましたが、時宜を逸さず積極的に働きかける努力をしてきました。
NPT再検討会議―2010年
志位委員長を団長とする党代表団が参加し、「核兵器廃絶のための国際交渉を開始する合意をつくること」を会議や各国政府に要請しました。会議は、「すべての国が、核兵器のない世界を達成し維持するために必要な枠組みを確立するための特別なとりくみを行う必要について確認する」との最終文書を採択し、禁止条約の成立につながる成果を収めました。
NPT再検討会議―2015年
15年のNPT再検討会議は、最終文書案で、「核兵器のない世界を達成し維持するのに必要な法的規定を明確にし、包摂的プロセスに参画するよう勧奨する」として、核兵器禁止のための「法的枠組み」への道に初めて言及がなされました。
核兵器禁止条約の採択―2017年
志位委員長を団長とする団は、止条約を交渉する国連会議に2度にわたって参加し、条約の成立を強く要請しました。志位委員長は市民社会の一員として国連の演壇に立ち、「日本国民の多数は核兵器禁止条約を願っている」とのスピーチを行いました。この歴史的な会議に欠席した日本政府とは対照的でした。また、ローマ教皇庁代表の司教との会談では「核兵器は悪であり廃絶しかない」という重要な一致点を確認しました。
核不拡散条約(NPT)再検討会議と日本共産党
核不拡散条約(NPT)は、米ロ英仏中の五大国にだけに核保有を認め、他の国には禁じるという不平等な条約ですが、その第6条で核軍備縮小撤廃の交渉義務を定めています。5年に一度開催されるNPT再検討会議は、核大国に核兵器廃絶を迫る重要な国際会議になっています。この2回(第9回2015年、第10回2022年)は、核大国などの反対によって、最終文書を採択することが出来ていません。それだけに、2026年に開かれる第11回再検討会議が注目されます。前回第10回再検討会議あたって、わが党は以下の要請(要点)を行いました(2021年12月27日)。これらは、今日でも重要な意義があります。
1、核兵器の非人道性を、締約国の共通の認識とすること
被爆者や核実験被害者の声に真摯(しんし)に耳を傾け、核兵器使用の壊滅的な人道的結末―その非人道性を締約国の認識とすることを求める。
2、2000年合意、2010年合意の再確認、具体化、実行をおこなうこと
五大国だけに核保有を認め、それ以外の国には禁じる、差別的な体制が認められたのは、第6条で核軍備縮小撤廃を義務づけたからにほかならない。この履行への誠実な態度こそ、会議成功の土台である。再検討会議は、「適切な限り早期における、自国核兵器の完全廃絶にいたるプロセスへのすべての核保有国の参加」と「自国核兵器の完全廃絶を達成するという全核保有国の明確な約束」(2000年)、「核兵器のない世界を実現、維持する上で必要な枠組みを確立すべく、すべての加盟国が特別な努力を払うことの必要性」(2010年)を全会一致で確認してきた。これらを再確認し、具体化、実行に足をふみだすべきである。
3、以下の核軍縮の部分的措置の前進をはかること
包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効
(注)発効要件は、核兵器保有国を含む指定44か国すべての批准が必要。186カ国が署名、178カ国が批准しているが、米国、中国、インド、パキスタン、北朝鮮など指定44カ国の批准が達成されていないので未発効。
兵器用核分裂物質の製造禁止条約(カットオフ条約)
(注)核兵器の原料となる高濃縮ウランやプルトニウムの生産、輸出、技術供与を禁止する条約。1993年に米政権が国連総会で提案したが、条約交渉は開始されていない。
核兵器の先制不使用
非核保有国への核兵器使用・威嚇の禁止
(注)消極的安全保障と呼ばれるもの。核五大国はNPTの無期限延長を決めた第5回再検討会議(1995年)で、消極的安全保障を宣言したが、法的拘束力を持たせることには反対している。
世界各地の非核地帯条約の創設・強化
中東非核兵器地帯創設をめざす決議(1995年)の完全な履行
あらゆる国際活動で核廃絶を提起―ICAPP総会、東南アジア訪問、欧州歴訪
あらゆる国際活動で、核兵器廃絶を訴えることは日本共産党の一貫した方針です。
アジア政党国際会議(ICAPP)総会で、日本共産党は常に核兵器問題を取り上げることを提起してきました。ICAPP執行部のある幹部は、「日本共産党はさすがに核被爆国の代表で、核兵器廃絶の訴えを最終文書の提案においても、スピーチにおいても欠かしたことがない」と語っています。
志位氏、田村氏など日本共産党代表団による2023年12月のインドネシア、ラオス、ベトナム訪問の際も、核兵器禁止条約の推進を重要なテーマにすえました。東南アジア諸国連合(ASEAN)と協力し、ASEANインド太平洋構想(AOIP)を成功させて戦争の心配のない平和な東アジアをつくること、「核兵器のない世界」をつくるために協力していくこと、をベトナムやラオスとの首脳会談で確認しました。
2024年8月の志位議長のドイツ、ベルギー、フランス歴訪でも、核兵器問題がテーマの柱の一つでした。ベルリンで開かれた国際平和会議でのスピーチで、核兵器禁止条約の推進を訴えた際には、参加者から拍手が起こりました。
日本―唯一の戦争被爆国にふさわしい政府を
被爆80年のいまこそ日本には、唯一の戦争被爆国にふさわしい政治と外交が求められます。
日本政府に禁止条約への参加を求める
日本共産党は政府にたいし、「核抑止」論の呪縛から抜け出して、禁止条約への参加を決断するよう強く求めます。
日本は、核兵器の使用や威嚇を「援助、奨励、勧誘」しないなどの禁止条約の義務を履行しさえすれば、条約に参加することは可能です。「核抑止力」論から抜け出しさえすれば、すぐにでも決断できることです。
唯一の戦争被爆国である日本が参加すれば、禁止条約の政治的、道義的力はいっそう強まり、核兵器をめぐる危機的な状況を打破する力になるでしょう。そして、世界の世論と運動を大きく励まし、「核兵器のない世界」へと前進する力となるはずです。
日米核密約を破棄し、非額三原則の厳守・法制化を
「日米核密約」を破棄し、非核三原則を厳守・法制化するなど、「非核の日本」に進む実効ある措置をとることを強く求めます。
日米間には、日本に寄港・飛来するアメリカの艦船・航空機の核兵器搭載については、「条約上の権利」として認めた秘密があります。返還後の沖縄にも、「重大な緊急事態」には核兵器の再持ち込みの権利をアメリカに認めた密約も存在します。この「権利」がいまも有効であることを示す米国防総省の文書が2015年に明らかになりました。核戦争の足場とされる危険をはらむこの「密約」の破棄が強く求められます。
「核の傘」からの離脱を
アメリカの「核の傘」からの脱却を強く求めます。「核抑止」を含むアメリカの「拡大抑止」政策への加担をやめるべきです。
昨年の日米首脳会談は共同声明(2024年4月10日)で、「(米政権は)核を含むあらゆる能力を用いた(中略)日本の防衛に対する米国の揺るぎないコミットメントを改めて表明」しました。岩屋毅外相も「核兵器の使用をほのめかす相手を通常戦力だけで抑止できない。核による拡大抑止は不可欠だ」(2025年2月18日)と発言しています。
この流れのなかで、アメリカが「有事の際の核使用について日本と意思疎通する」枠組みと言われる「拡大抑止に関するガイドライン」(2024年12月27日)が策定されました。自衛隊が米軍に対の核兵器使用に関与しかねないものどあり断じてゆるされません。今年3月には、外国軍艦に非核証明書提出を義務づけた(非核「神戸方式」)神戸港への、米軍の掃海艇の入港を、神戸市当局が許可するという事態も起きています。アメリカの「核抑止」政策への加担は、東アジアに破滅的な事態を招きかねません。
こうした逆流を許さず、唯一の戦争被爆国にふさわしい日本の政治を実現するために、尽力します。