日本共産党

しんぶん赤旗

政策

日本共産党のかかげる政策をご紹介します

2025年参議院選挙各分野別政策

36、コメ問題

すべての国民が
安心して国産米を食べられる日本に

2025年6月

 昨年来、主食・米をめぐる危機的事態が続いています。1つは、深刻な米不足で消費者価格が昨年の2倍に高騰、国民の暮らしを直撃していることです。仕入難で廃業に追い込まれる米穀店も生まれています。

 もう1つは、米をつくる農家が激減し、米の生産基盤が急速に崩れていることです。2000年以降、米農家は175万戸から53万戸(24年)に減少し、その6割近くが70歳以上です。3月末に行われた「令和の百姓一揆」が「洪水のように離農者が増え、この国から、農家、農民が消えようとしている」と訴えていますが、これが現場の叫びです。

 この機に乗じて米の輸入も急増しています。食料自給率が極端に低い日本で、自給してきた米までが非常に危うくなっている。国民の生存を根底から脅かす事態です。

 米の危機を打開し、すべての国民が安心して国産米を食べられるようにすることは、国政に課せられた緊急かつ重大な責務です。

危機をもたらした自民党政府の大失政

 米をめぐる危機を招いた最大の責任は歴代自民党政府の農政にあります。

 2023年のコメ生産量(24年秋まで消費される)は、対応する期間の需要量より44万㌧も少なく、翌年6月の民間在庫が史上最低に落ち込みました。その結果、「スーパーから米が消える」事態になり、米流通業者による買い付け競争が過熱し、価格が急騰したのです。

 米不足と価格高騰は自然現象ではありません。歴代自民党政府の三大失政の結果です。

 1つは、米の消費が毎年減ることを前提に生産計画をギリギリに抑え、農家に米減らしを迫ってきたことです。とりわけコロナ禍で米需要が想定より減少した21年22年には2年間で50万㌧分の減反・減産を押しつけましたが、コロナ後の需要増に生産量が追い付かず、昨年夏以降の「令和の米騒動」に発展したのです。政府は猛暑による供給減少、インバウンドによる需要増などを要因にあげますが、わずかの需給変動で米が店頭から消える事態を生み出したのは明確な失政と言わなければなりません。

 2つは、米農家への支援策を切り捨て、米生産の基盤を弱体化させ続けてきたことです。民主党政権が導入した所得補償(10㌃当たり1万5,000円)を2014年に半減し、2018年には全廃しました。全国の米農家から年間約1,500億円の所得を事実上奪ったのです。

 一方でこの30年、米の価格や流通に政府が関与しないという「市場まかせ」政策によって、大手流通資本による買いたたき、安売り競争を横行させ、生産者米価を長期にわたって低下させました。かつては60㌔2万円を超えていたものが2、3年前には1万円前後まで落ち込み、“米作って飯食えねえ!”という悲痛な声が広がりました。このもとで米農家が激減し、生産基盤の崩壊という深刻な事態が広がったのです。

 3つは、国内の農家には減反・減産を押しつけながら、ミニマムアクセス米は減らさず、この20数年来、国内需要の1割に及ぶ77万㌧を輸入し続けていることです。それが農家の心をどれだけ折ったか、はかり知れません。この面でも、米の生産と農家経営への打撃となり、生産基盤の弱体化を加速させた自民党政府の責任は重大です。

 いま、2024年産の生産者米価が2万円台に回復したとはいえ、資材費も高騰し、多くの農家にとっては長年の赤字の一部を埋める程度に過ぎません。高米価が消費者の米離れを招き、米価が下落する不安も抱えています。高齢農家の離農が続くもとでは、米不足が常態化するのではないかと、多くの関係者が懸念しています。

 米不足と価格高騰を打開するには、減反・減産から増産への転換、市場まかせから国が責任をもって安定供給を進める農政への転換が必要です。政府が米の生産基盤を弱体化させたために「増産」の掛け声だけでは、米不足の不安を解消することはできません。危機をもたらした政治の責任に本格的なメスを入れ、米農家への支援を抜本的に強化する農政への転換も、あわせて明確にする必要があります。

米生産の弱体化を加速する小泉農相

 昨年来の政府の対応は事態を悪化させるだけでした。米不足が顕在化した昨年夏、日本共産党国会議員団をはじめ政府に備蓄米の放出を求める声が高まっても「新米が出回れば落ち着く」の一点張りでした。今年に入って江藤前農相も「米は足りている」「流通に目詰まりが」と繰り返し、小出しの対策にとどめてきました。米不足の深刻さに対する危機感も、みずからの失政への反省もなく、無責任な対応に終始してきたのです。

 その点では、小泉進次郎新農相も同じです。「不足感」はあるとしながらも「全体として供給量はある」と強弁し、いまだに「米不足」を認めようとしません。

 小泉農相は就任早々、「異常な高米価を抑える」といい、随意契約による備蓄米の安値販売を次つぎに強行しています。「5㎏2,000円」を強調し、「必要なら無制限に放出する」と意気込みます。しかし、大手スーパーなど一部の店に安い備蓄米が一時的に並んだとしても、あくまでも対象療法であり、国産米の不足を生み出した自民党農政の根本を転換しようとする意思は見られません。

 備蓄米には限りがあります。中小スーパーや米穀店に届かず、多くの国民が手にできない不公平性さも指摘されます。「無制限の放出」となれば、“イザ”というとき大丈夫かと危惧の声も出ています。性急かつ乱暴なやり方での放出が米流通に混乱を持ち込み、中小米穀店の多くを苦境に追い込んでいます。

 なにより問題なのは小泉農相に、自民党政治によって苦しんできた米農家に寄り添い、支援する姿勢がないことです。「5㎏2,000円」ではコメ農家は大赤字です。さんざん低米価に苦しんだすえ、やっと一息つける水準に回復したのに政府の主導でまた米価が下がるのか――いま、小泉農相が発言するたびに、この不安が米農家に広がっています。

 小泉農相は、「これまでの農政は生産者の保護に重点があり、供給力や国際競争力を高める視点に欠けていた」「生産を増やして余ったら『国が(面倒を)』というのは間違いだ。需要に応じた生産が大事」(「日経」2025年6月8日インタビュー)と語ります。価格が下がっても「自己責任」で乗り切れという冷淡さです。これでは農村の崩壊に拍車がかかり、米不足が常態化するのは必至でしょう。小泉農政は「改革」どころか、危機を招いた旧来の自民党農政の基本路線をいっそう乱暴なやり方で徹底しようとするものです。

 米の輸入拡大についても「選択肢に入れる」と公言しています。「足りなければ輸入」という発想が、どれだけ日本の農業を衰退させてきたか。世界の食料情勢がそれを許さなくなっていることを直視しない、極めて無責任な議論と言わなければなりません。

米価の異常な高騰を抑え、増産で安定供給をはかる

 日本共産党は、米をめぐる危機を打開するために、市場まかせ、農家の自己責任まかせの農政を大本から転換し、主食・米の増産による安定供給をはかり、異常な米価高騰を抑えます。そのために生産者・農家への支援を抜本的に強化します。

 米の需給や価格、流通の安定に政府が責任をもつ――米は主食であり、すべての国民に年間を通じて安定した価格での供給が求められます。今回の米不足・価格高騰で備蓄米の放出を余儀なくされたのは、市場まかせ政策の破綻を意味するものです。

 ――米の需給や価格、流通の安定に政府が責任を持ちます。政府の米需給計画の作成にあたっては、気候や経済変動などで多少の需給ギャップが生じても米不足にならないよう、ゆとりある生産量を確保します。

 ――豊作などで民間在庫がだぶつき、大幅な価格下落が予測される場合は国が備蓄米の買い増しを行い、逆に米不足、流通の混乱が懸念される場合は備蓄米を放出します。

 ――世界の食料危機や気候変動に対応し、政府備蓄米の数量を現状の2倍、200万㌧以上に増やします。大量放出で備蓄米が極端に減っているもとで、それを補填するために26年産以降の備蓄米の買い入れ量を計画的に増やします。

 農家が安心して増産できる価格や所得を保障する――米は日本国民の主食です。「生産者に再生産可能な所得・価格を保障し、消費者には納得できる手頃な価格で提供する」――これは国の責任です。当面の米の増産でも、将来にわたる米生産の維持・安定にとっても、大多数の農家が安心して生産に励める米価と所得の実現は最低限の条件です。政府の強調する収入保険制度は、対象が大規模経営に限られたうえ、米価下落が続けば基準となる収入も減少し、生産コストを償わず、セーフティネットにはなりえません。

 ――米生産者に生産に要した経費と勤労者並みの労働報酬を保障する米価(農家手取り)を実現するために、市場価格がそれより下がった場合、差額を補てんする制度を創設します。当面、農家手取り60㎏あたり最低2万円~2万数千円を保障します。条件不利地域などには加算します。

 ――水田のはたす環境・国土の保全など多面的機能に配慮した所得補償を実施します。

 大小多様な稲作経営を支援する――自民党政府は米農家の激減を前提にして経営の大規模化、効率化、スマート化などを重点的に支援しています。しかし、それが可能なのは一部の恵まれた地域に限られます。大規模経営が“ポツン”と残っても、畦草刈りや水路整備などはできなくなり、地域のコミュニティも維持できず、環境や生物多様性も守れません。

 ――大規模経営とともに中小農家、兼業農家、新規参入者なども含めて大事な担い手に位置づけ、その経営が維持できるよう支援します。

 ――米作りの新たな担い手を確保するために、国、自治体、関係団体が連携し、農地や機械などの無償貸し出しなどを含め、思い切った支援を行います。

 米の輸入拡大は許さない――トランプ政権の関税要求に米の輸入拡大を貢ぎ物として差し出す動きが伝えられますが、国際ルールに反したトランプ関税は毅然として抗議し、撤回を求めるべきです。財務省の財政審議会も、米不足を口実にミニマムアクセス米の主食枠の拡大を提言しています。

 ――米の生産基盤をいっそう弱体化させる米の輸入拡大には断固反対します。

 ――国内産を圧迫しているミニマムアクセス米の削減・廃止をめざします。ミニマムアクセスは輸入機会の提供に過ぎないもので、当面、全量義務輸入は中止します。

 輸出拡大より国内需要を重点に――政府は人口減少で米の国内需要が減少するので輸出拡大に力を入れとして2030年には現状の8倍に増やす目標を立てています。個々の生産者や産地が輸出に活路を見出すのはあっても、米不足が深刻な日本で政府が力を入れるべきは足元の国内需要を満たすことです。

 ――主食に限らず加工用、飼料用を含めれば国内の米需要の伸びしろは大きいものがあり、その生産拡大にこそ農政の力を集中します。

 水田のもつ豊かな生産力を生かし、総合的な利用を推進する――水田は災害防止、水源涵養、景観維持など国土や環境を保全する大事な役割をはたしています。政府は、財政負担軽減を優先する立場から、水田の畑地化などで水田つぶしを推進してきました。

 ――食料自給率の向上という点からも、可能な限り水田を維持します。

 ――主食用米も、加工用・飼料用米、麦・大豆・飼料作物なども、地域の条件に応じて増産できるよう支援します。

 農水省は27年度から水田活用直接支払い交付金を廃止し、水田・畑にかかわらず作物別に支援する方向で見直すといいます。その財源は水田交付金の廃止等でねん出するとしており、水田における麦・大豆等への支援単価が薄まり、生産の縮小を招きかねません。飼料用米への支援も大幅に削減しようとしています。

 ――財政支出削減を最優先する立場からの水田の畑地化や、水田活用交付金制度の見直し・削減は中止します。畜産農家と結びついている飼料用米への支援は継続します。

 ――水田における主食用以外の作物への支援については、主食米と他作物との収益性の格差を是正することを基本に維持・拡充します。

 ――畑作物等の作付けが長期化し、実質的に畑地化している場合でも、麦・大豆・飼料作物の生産が維持できるよう手厚い支援を行います。

 低所得者などへの食料支援を抜本的に強化する――米を食べたくても食べられない生活困窮者が増えています。米国では農務省予算の7割以上(約23兆円)を国民への食料支援に充て、国内の農産物の需要を喚起しています。

 ――学校給食、医療・福祉施設などに備蓄米が直接届くようにします。子ども食堂やフードバンクへの無償交付を大幅に増やすなど低所得者への食料支援を抜本的に強めます。

 ――備蓄米が一部の大手スーパー、コンビニだけでなく末端の米穀店などに届くよう政府が責任をもちます。

 ――米不足で資金繰りなどで苦境に陥る零細米小売業者への支援を強めます。

 米・水田農業への国の予算を抜本的に増額する――農林水産予算は年々減り続け、異常突出を続ける軍事費の4分の1にすぎません(2024年)。自公政権は、軍事費を毎年1兆円増やしていますが、国民の命、国土を守るというのなら国民食料の安定供給の予算こそ抜本的に増額すべきです。。

 ――農林水産予算を1兆円増やして価格保障や所得補償の抜本的な充実、備蓄米の増加、新規就農者の本格的な確保など米、食料の安定供給に責任を持つ政治を進めます。