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100、万博、カジノ――ただちに中止せよ

万博開催、カジノ計画はただちに中止を。 ギャンブル依存症(賭博中毒)問題 

2025年6月

来場客の安全と健康の脅威に――夢洲での万博開催とカジノ誘致

大阪・関西万博は、多くの不安と疑問をかかえたまま2025年4月13日に開幕しました。

万博は、大阪の人工島・夢洲で開かれることから、開催する前からさまざまな危険と矛盾が明らかにされてきました。これから本格的な夏を迎えるにあたり、来場客の安全と健康、生命のためにも、たとえ開催途中であっても万博は中止しなければなりません。同時に、2030年にも夢洲で開業が予定されているカジノ施設は、半恒久的施設となるために危険性は一過性のものではありません。開業をストップさせるべきです。

万博会場としての問題点

万博が開催されてから2カ月以上が経過しましたが、この間だけでも以下に指摘するような重要な問題点がでてきました。

1、地中からのメタンガスが発生し続けている

2025年4月の万博開催1週間前に、現地を視察・調査した大阪・守口市の寺本健太市議(日本共産党、元消防士)は、万博会場の西側(グリーンワールド工区)のマンホールから、引火によって爆発のおそれがある最低濃度(5vol%)を超えるメタンガスを検知しました。

2024年3月には、万博会場の建設現場で、メタンガスによる爆破事件があったばかりです。万博協会はその後、メタンガス漏えいを監視し対策を練ってきたと主張してきましたが、それがまったく実効性がないことが明白になりました。

メタンガスの発生は、夢洲の各所で指摘されており、部分的一時的な対策では来場者の健康と安全を確保できなことは明らかです。

2、想定を超える災害被災の恐れ

人工島である夢洲でもっとも心配されるのが災害による被害です。災害時の危険について専門家は、護岸の倒壊や沈下、津波の遡上、建設残土の液状化などの危険を指摘しています。

夢洲への陸上ルートは、橋とトンネルの2カ所しかありません。地震などで通行不能となれば、ピーク時には1日20万人を超える来場者が孤立する危険もあります。

落雷の危険もあります。万博協会は大屋根リングの上や会場内の樹木のそばに人がいる場合、雷が飛び移る危険(側撃雷)があるとしています。

風水害も、2018年の台風21号並みとなれば、樹木、照明・スピーカー柱などが横転し、トラックの横転、建物の外装材が飛散する危険もあります。

とくに梅雨の時期を迎え本格的な夏や台風シーズンを控えるいま、以上のような災害への対策に万全を期すとともに、それがむずかしい場合は、万博の中止を考える必要があります。

3、学校行事としての子ども動員の危険

日本政府や大阪府・市は、学校行事として万博への子どもたちの動員を始めています。一方、一部の学校は、〝子どもたちの安全が保証されていない〟〝責任をもてない〟という理由から、万博への子どもの参加・動員をとりやめています。

〝万博成功〟を演出するために、子どもたちを事実上の〝人質〟に取るようなやり方はすべきでありません。

4、「いのち輝く」万博のスローガンだおれ

万博の最大の目玉である木製の大屋根リングの周辺で、5月以降、大量の虫(ハマユスリカ)が大量発生し、入場者を驚かせています。「普通の蚊と違って人の血を吸うことはない」と問題がないかのように指摘する声もありますが、あまりの発生数の多さから、環境と人体への悪影響を懸念する声が広がっています。

一つは、来店する客と飲食店の困惑です。ユスリカはキッチンカーの周辺はもちろん、建物のなかにも平気で侵入。虫が食べ物についたり、死骸が床に散乱したりするなど、求められる衛生環境に逆行する事態がうまれています。

万博協会は製薬会社に駆除と対策を依頼しているといいますが、かりに大量の殺虫剤が使われるとしたら、現地の水質・地質に影響するだけでなく、瀬戸内海への海水汚染も心配されています。

万博協会はユスリカの発生を知らなかったといい、出店する業者やパビリオン関係者にもその旨を知らせていなかったといいます。しかし、すでに4年も前から、ユスリカの大量発生を警告する意見が協会側に報告されていました。

「大阪市が2021年12月に実施した万博事業の公聴会では、大阪自然環境保全協会がこんな指摘をしていた。『今の夢洲は虫の王国です。多くのバッタ、多くのトンボ、多くのチョウ、そして恐ろしいほどの数のユスリカがいます。改めて影響の有無の調査をお願いしたいと思います』」(「AERAデジタル」5月24日)

警告を受けながらまともに対策も周知もしていなかった万博協会の責任はきわめて大きいといわなければなりません。

また、5月に入ってから、万博会場のウォータープラザや「静けさの森」の親水施設で、基準値を超える「レジオネラ菌」が検出されました。万博協会がその事実を公表したのは10日以上経ってからで、その値は国の指針値の約53倍と発表しました。そのため、この会場近くの行事(「水と空気のシンフォニー」や「アオと夜の虹のパレード」など)が当面、中止となりました。レジオネラ菌は水中に長時間、広く分布することで知られており、増殖の好条件がそろう空調設備の冷却水を介して集団発生する可能性が指摘されています。日本でも、たびたび集団発生が確認されており、死亡 者もでています。協会の石毛博行・事務総長は、6月9日の会見で「すぐに立ち入り禁止措置をせず、不安を与えた」などと対応の遅れを認めています。

万博のスローガンは、「いのち輝く未来社会のデザイン」というものですが、夢洲の現実は、それとは真逆の「いのち危険」なものとなりかねません。

5、過大な訪問客の見通し

万博協会が6月8日に発表した数字によると、大阪・関西万博の一般入場者数は、速報値ベースで12万6000人、関係者を含めた総来場者数は14万5000人でした。これまでの一般の最多入場者数は、5月31日の16万9923人。

大阪の誘致計画では、万博の入場者数の予測は2,820万人です。万博開催は183日間ですから、入場者の目標を達成するためには、1日の単純カジノ計算では、最低15万人以上が必必要です。しかし、一般入場者でこの数字を上回ったのは、前述の5月31日の1回だけです。このまま推移すれば、目標に大きく及ばない事態となります。そうすれば、万博が赤字になることは避けられず、大阪府民・市民はもちろん、国民に新たな負担がふりかかることになります。

カジノ問題――人の不幸のうえに「税収増」や「経済振興」は許されない

夢洲の問題は、万博だけではなくカジノにも密接にかかわる問題ですが、とくにカジノは〝博奕(ばくち)〟で得た利益を「税収増」や「経済振興」に振り向けるところに最大の特徴があります。これは、人が不幸になればなるほど、地域の利益につながるというものです。

過大な訪問客の見通し

大阪の誘致計画では、カジノを含むIR(統合型リゾート)施設への年間の来場客数を2,000万人と見込んでいます。そのうちの6割、1,200万人がカジノ以外の国際会議場やイベントに足を運ぶと想定しています。

しかも、カジノ業者は、このほとんどが日本人客で占められることを明らかにしています。大阪カジノに進出する企業のパートナーであるオリックスは、「客は全員日本人、日本人だけでどれだけ回るか、その前提でプランニングを作っている」(2021年11月4日、決算説明会)とのべています。

万博開業から2カ月以上が経過していますが、この間の一日の平均入場者数は、

また、日本のプロ野球の観客動員数が過去最高となったのは、コロナ禍前の2019年ですが、1試合平均では約3万人でした。仮に2019年と同じ規模の観客で1年365日毎日試合をしたとしても、合計でようやく1,095万人となるだけです。

こうした数字と比較しても、1,200万人の来客数がいかに過大で非現実的な見積もりかは明らかです。

カジノのために格安賃料で用地を引き渡しすることは許されない

大阪府と市は10月1日、カジノを運営するIR事業者(大阪IR株式会社)に、貸し出す土地を引き渡したことを発表しました。市は月額約2億1,000万円で市用地を貸し出す契約です。(1㎡当たり月額428円)

この格安賃料での契約にたいし、本来、月額4億7,060万円と見積もられる本来の賃料が半額以下とされたことで、約35年間で約1,000億円の損害になるとして、市民約500人が松井一郎前市長やIR事業者らに賠償を求める監査請求をおこしています。

また、大阪市は本来負担する必要のない液状化対策などの土地対策費として、最大788億円を負担しようとしています。

カジノ業者のために、府民・市民の血税をつぎ込むようなことは、ただちにやめるべきです。

24時間営業する日本最大の〝パチンコ店〟の登場

大阪へのカジノ進出を申請したMGM・オリックス企業連合が2021年12月23日に提出した計画によれば、「電子ゲーム約6,400台をゲーミング区域内に適切に設置する」としています。ここでいう電子ゲームとは、大規模集積回路(LSI)によって制御されるソフトウェア内蔵型のゲーム機のこと。子どもたちがゲーム場で遊ぶ射撃(シューティング)ゲームや、レーシングゲームなども電子ゲームですが、カジノのゲーム機は、〝多額の掛金を伴うゲーム〟、すなわちパチンコ、スロットマシンなどを指します。

インターネットで検索すると、現在、日本最大のパチンコ店はさいたま市にあり、ゲーム機は3,030台(パチンコ1,584台、スロット1,446台)となっています。一方、大阪で最大のパチンコ店は約1,000台とされます。

しかも、これらのパチンコ店の営業時間は、県によって異なりますが、ほとんどの場合午前9時から、午後11時までです(一部の県は24時まで)。

ところが、大阪・夢洲のカジノでは、日本最大のパチンコ店の2倍以上のゲーム機をもち、営業時間も終日の24時間営業です。

これらの数字を比較しただけでも、どれだけの〝お化けパチンコ場〟になるかは明白です。

カジノはギャンブル依存症をふやすだけ
パチンコ、公営ギャンブルも賭博性をめぐって問題の解決を

カジノ導入にともなうギャンブル依存症の問題は看過できません。

厚生労働省は2024年8月、「令和5年度 依存症に関する調査研究事業 ギャンブル障害およびギャンブル関連問題の実態調査」(速報値)を公表しました。これは18歳以上75歳未満の、日本国籍を有する人を対象とした調査です。(調査対象18,000人、回答者9,291人)

それによると、「過去1年におけるギャンブル等依存が疑われる者」は、全体で1.7%(男性2.8%、女性0.5%)でした。これを国勢調査人口と推計すると、日本全国で146万人(男性122万人、女性21万人)がギャンブル依存と考えられます。

しかも、この調査で「最もお金を使ったギャンブルの種類」としたのが、1位パチンコ(男女合計46.5%)、2位パチスロ(同23.3%)、3位競馬(9.3%)、4位競艇(4.7%)、5位競輪(3.1%)となっています。(証券の信用取引、先物取引市場への投資などを除く)

かねてから日本のギャンブル依存症の比率は、他国と比較しても異常に高いことが指摘されてきました。この最大の要因となっているのが、世界に例をみない遊技であるパチンコです(スロットマシンを含む)。前述の厚労省の調査結果もそれを示しています。

上記で指摘したように大阪のカジノの特徴は、サイコロやカードなどの本来のカジノ賭博だけでなく、日本最大級のパチンコ・パチスロの遊技台が設置されることです。このことは、カジノによるギャンブル依存症だけでなく、従来、日本で大問題となってきたパチンコ・パチスロによる依存症患者を激増させる結果になることは、火を見るよりも明らかです。

カジノの開業の前に、カジノをストップさせることが、市民・住民の生活と健康を守るだけでなく、地域社会の健全な発展にも重要となっています。