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8.エネルギー

再生可能エネルギーの開発・利用を広げ、原発依存のエネルギー政策を転換します

 エネルギーは食料とともに経済・社会の存立の基盤であるにもかかわらず、日本のエネルギー自給率はわずか4%(2006年。エネルギー白書)にすぎません。

 エネルギー問題は、地球の温暖化対策とも密接な関係があります。日本は、京都議定書にもとづいて、その第一約束期間内(2008〜12年)に二酸化炭素などの温暖化ガスの排出量を、1990年比で6%削減する義務があります。しかし日本の目標達成は危機的状況にあります。政府は原発の新増設を“頼みの綱”としていますが、原発は安全性に問題があり、原発に依存するのではなく自然エネルギーの導入に本腰を入れるべきです(→温暖化対策全般については、2008年6月25日発表の「地球温暖化の抑止に、日本はどのようにして国際的責任をはたすべきか―――日本共産党の見解」を参照)

 08年は、先物取引などによる異常な投機、イラク、イランなど中東情勢の緊張や、中国やインドなど発展を続ける途上国のエネルギー需要の増加によって、原油などエネルギー価格が高騰しました。需給ベースでは1バレル60ドル程度のはずの原油が、147ドル(08年7月11日)と史上最高値を記録し、日本の経済・社会に打撃を与えました。エネルギーの値上がりは今後も起きる可能性があると懸念されています。

省エネの徹底やエネルギー効率の引き上げによって低エネルギー社会を目指すとともに、日本の条件にあった再生可能エネルギー(自然エネルギー)の開発・利用を計画的に拡大することで、エネルギーの自給率の引き上げをはかります。

エネルギー政策の重点を自然エネルギーの開発・利用へ転換します

 二酸化炭素の排出量の9割がエネルギー由来であることからみても、エネルギー対策は温暖化対策の要です。エネルギーの自給率を引き上げ、また地球温暖化対策をすすめるためには、エネルギー効率の徹底した向上とともに、環境に配慮した自然エネルギー源の開発・利用に本格的にとりくむ必要があります。風力や太陽光・熱、地熱、小水力、波力や、あるいは畜産や林業など地域の産業とむすんだバイオマス・エネルギーなどは、まさに地域に固有のエネルギー源です。そこから得られる電気やガスを販売することで地域に新たな収入が生まれます。事業の成果や副産物を地元に還元したり、雇用や技術、資金の流れを地元に生み出すことで、地域経済の活性化に役立ちます。

 ところが政府は、2020年の再生可能エネルギーの導入目標を1次エネルギーのわずか10%にとどめ、再生可能エネルギーの利用拡大のカギとなる再生可能エネルギー発電に関する固定価格買い取り制度の導入も、太陽光による電力のみで余剰分だけを買い取り、必要な財源はすべて消費者負担にするなど、再生可能エネルギーの普及にかんして本格的な取り組みになっていません。そればかりか、「エネルギー基本計画」での「2030年のエネルギー需給の姿」では、原発の新増設によって発電量の半分以上を原発にたよる計画を立てています。日本の自然エネルギー利用の現状は、国際的にも大きく立ち遅れ、電力供給にしめる比率でEUを下回り、太陽光発電の導入量でドイツに首位の座を奪われスペインにも抜かれました。日本にとって、自然エネルギーの普及は急務です。原油・石炭など輸入エネルギーの需要増・高騰が予測されるもとで、経済基盤の安定のためにもエネルギー自給率の引き上げが求められているからです。

 化石燃料偏重・原発だのみから脱却し、自然エネルギー重視へと、エネルギー政策の抜本的転換が必要です。

(1) 再生可能エネルギーの割合を2020年までに20%とする導入目標を明らかにします

EUが2020年までに一次エネルギーの20%を自然エネルギーでまかなう目標を決定したのをはじめ、世界的に見ても、太陽光・熱、風力、小水力、地熱、バイオマスなど再生可能エネルギーの普及が本格的な流れになっています。こうしたなかで、日本だけが再生可能エネルギーの普及に背をむけ、一次エネルギーのわずか2%(大規模水力発電分3%を除く)をまかなうだけにとどまっています。2020年までにエネルギー(一次)の20%、2030年までに30%を再生可能エネルギーでまかなう「再生可能エネルギー開発・利用計画」を策定し、着実に実行していきます。

再生可能エネルギーから得られる電気やガス、将来的には水素などを販売することで、その地域には新たな収入が生まれます。ドイツでは、再生可能エネルギーの普及によって年間1億トンの二酸化炭素を削減するとともに、30万人の雇用と年間3.7兆円の売り上げなど、雇用や技術、資金の流れを地元に生み出し、事業の成果や副産物を地元に還元しています。再生可能エネルギーの拡大は地域経済への波及効果も大きく、雇用創出や内需拡大にもつながります。ドイツなどでの実績に照らせば、日本でも数年間で約6万人の雇用を増やし、2030年には約70万人の雇用をもつ産業となる可能性を持っています。

(2) 再生可能エネルギーによる電力を固定価格で買い取る制度を早急に導入します

 再生可能エネルギー発電の普及には、長期的な採算の見通しが重要であるため、電力の固定価格買い取り制度の導入がカギです。固定価格買い取り制度は、再生可能エネルギーの設備を導入した時点で、その設備から供給される電力の買い上げ価格を市場まかせにせず、中長期にわたって保障する方式です。EUのなかでも固定価格買い取り制度が導入されたドイツ、デンマーク、スペインでは、自然エネルギーの普及が急速にすすみ、世界をリードしています。

 政府は、太陽光発電についてのみ、自家消費分を除いた余剰電力に限定して、従来の倍の価格で電力会社が購入する制度を導入しました。しかし、二酸化炭素の排出量を大幅な削減をめざして急速に再生可能エネルギーの普及を図るには、太陽光発電だけでは不十分です。すでに党国会議員団が国会で提案したように、電力会社が、太陽光だけでなく自然エネルギーによる電力全般を、10年程度で初期投資の費用を回収できる価格で、全量買い入れる「固定価格義務的買取制度」に転換します。初期投資を回収したあとは余剰電力の買い取りに切り替えます。そのさい、いま電気料金に含まれ主に原発用に使われている電源開発促進税(年間3300億円)や、温室効果ガスの削減目標に達しない分の穴埋めに海外から排出権を買い取るのにも使われている石油石炭税(同4800億円)などの使い方を見直し、ユーザーへの負担を抑制するようにします。

また、再生可能エネルギーの普及促進のために、家庭用の太陽光発電に対する国の補助を抜本的に引き上げ、公的助成を半分まで高めます。国、自治体の施設や、一定規模以上の建物については、再生可能エネルギーの利用、熱効率の改善を義務づけます。

さらに、排熱を熱供給に利用すること(コジェネレーション=電気・熱併給システム)で、エネルギーの利用率を40%程度から70%台まで引き上げることができます。小規模・分散型利用を促進する制度を整備し、コジェネレーションの導入を積極的に支援すべきです。

バイオ燃料は、食料と競合しない植物資源を使い、国内産・地域産の資源を優先活用します

 近年、原油価格の高騰などを背景に、世界各国でバイオエタノールの生産が急増しました。この動きは、トウモロコシの需給をひっ迫させ、国際価格をこの1年で倍近くに高騰させました。たとえばメキシコでは庶民の食生活を直撃するなど、バイオエタノールの開発が、途上国や低所得者の食料を脅かしています。日本でも、トウモロコシの輸入価格が大幅に上昇し、飼料や多くの食品に影響が出ています。

 バイオエタノールは、地球温暖化対策に役立ちますが、原料となるサトウキビ生産の拡大やパーム油生産のためのヤシ農園の建設による熱帯林の破壊が、各国で新たな環境破壊として問題になっています。

 政府は、エタノールを含むバイオ燃料の利用促進を打ち出していますが、その大部分は輸入を見込んでいます。二酸化炭素の排出削減をいいながら、二酸化炭素の吸収源である森林を破壊するのでは、地球環境にやさしいエネルギー開発とはいえません。

 日本共産党は、バイオ燃料の開発・導入を自然エネルギーの重要な柱であると考えています。その具体化にあたっては、食料需要と競合しない植物資源などに限定する、国内産・地域産の資源を優先的に活用する(「地産地消」)、生産・加工・流通・消費のすべての段階で環境を悪化させない持続可能な方法を採用するなど、新たな環境破壊をひきおこさないためのガイドラインをもうけるよう政府に要求します。

プルトニウム利用をやめ、原発からの段階的な撤退をすすめます

政府と電力会社が温暖化対策を口実に新増設を図っている原発は、十分な安全の保証がなく技術的に未確立です。磨耗した配管の破裂で死傷者を出した美浜原発の事故(2004年)にひきつづき、冷却用海水の温度データのねつ造、志賀・福島の各原発の臨界事故隠しなどが次々と発覚しました。経済産業省の指示で電力会社が行った調査の結果報告(07年3月)によれば、問題事例が全体で1万件をこえ、うち原子力関係が455件もあるという驚くべき数に上りました。その事例で明らかになった、基準や手続を無視したルール違反の横行とずさんな検査体制や経営・管理の実態は深刻です。今年4月末にも、中国電力の島根原発1、2号機の点検漏れが506件にのぼり、点検計画と実績に食い違いがみられる機器が1665件もあるなど、ずさんな実態がまた明るみに出ました。

にもかかわらず民主党政権は今年5月、1995年のナトリウム漏れ・火災事故以来、14年ぶりに高速増殖炉「もんじゅ」の運転を再開しました。運転再開して早々、運転員がいわば原子炉の「ブレーキ」である制御棒の完全な挿入の仕方をしらなかったことや、燃料の破損を検出するために、原子炉内のガスに含まれる放射能を測定する装置3台のうち2台が故障するなど、トラブル続きです。民主党政権は、2050年を実用化の時期としていますが、欧米では安全性と採算性が見込めないために、すでに高速増殖炉の開発からは撤退しています。これまでもすでに7900億円(民間資金も入れれば9300億円)もの予算が投じられて、今後も毎年300〜400億円規模の予算を投じる計画です。見通しがないまま、巨額の予算をつぎ込む核燃料サイクル計画は、きっぱりやめるべきです。また、民主党政権は、MOX燃料(プルトニウムにウランを混ぜたもの)を普通の原発(軽水炉)で燃やすプルサーマル計画も進めています。プルサーマルは、2015年度までに16〜18基の原発で実施する計画です。現在の原発は、もともとMOX燃料を想定せずに建設されました。ブレーキに当たる制御棒の利きが悪くなるなど危険性が増します。危険なプルサーマル計画はすみやかに中止すべきです。

国民の安全に責任を持つ規制行政を確立するうえで、原発を規制・監督する原子力安全・保安院を、促進官庁である経済産業省から独立させることは、国際的なルールに照らしても最低限やるべきことです。

 2007年の新潟県中越沖地震を契機に、柏崎刈羽原発や高速増殖原型炉「もんじゅ」などの地下に活断層があることが明らかとなりました。六ケ所村の核燃料サイクル施設の地下にも活断層があると指摘されています。すべての原発について活断層調査を実施し、また耐震基準の見直しを行って、原発の耐震性の総点検を実施します。東海地震の想定震源域の真上には浜岡原発があります。このような政府・電力会社による原発立地のあり方は、無謀としかいいようがありません。今の原発では他にも、放射性廃棄物の処理と万年単位の管理の問題、莫大な費用がかかる問題など、多くの問題が解決されないままです。

 こうした問題を抱えた原発からは、計画的に撤退すべきです。原発の危険性を増幅するだけのプルサーマル計画や「もんじゅ」の運転再開計画は撤回し、六ヶ所再処理工場をはじめ核燃料サイクル施設の総点検を実施し、計画は中止すべきです。原発の総点検をおこない、老朽原発をはじめ安全が危ぶまれる原発については、運転停止を含めた必要な措置をとらせます。

 政府は、自治体にプルサーマル実施の受け入れや、高レベル放射性廃棄物の最終処分場への応募をうながし、受け入れれば手厚い補助金を出すとしてきましたが、補助金と引き換えに住民に危険を押しつけるようなやり方はやめるべきです。

 民主党政権は、「原子力立国」をかかげて原発の輸出や技術協力を目指していますが、国内外で、安全を軽視した原発の新増設をすすめることはやめるべきです。

エネルギー高騰を許さないため、投機規制に取り組みます

 一昨年の原油高騰では、中小企業、農林漁業、運輸業などが、燃料の値上がりで深刻な打撃を受けました。

 投機マネーに関しては、国連や各国政府が今検討している投機マネー規制を強化することが重要です。「投機マネーの暴走を抑える」という強い政治的意思を打ち出して、国際社会とも協力しながら、―――(1)原油や穀物など人類の生存の土台となる商品に対する投機の規制を具体化する、(2)ヘッジファンドに対して、直接の情報開示を求めるなど抜本的な規制強化にふみだす、(3)国際連帯税など、投機マネーの暴走を抑えるための適正な課税を本格的に検討する―――こうした規制策を早急に具体化すべきです。


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