2010年10月24日(日)「しんぶん赤旗」

築地市場 石原都知事の移転表明

「食の安全」投げ捨て

現在地での再整備に立ち返れ


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(写真)専門家から「欠陥実験だ」と批判があがっている汚染地下水の浄化実験現場=東京都江東区豊洲

 東京都の石原慎太郎知事が22日、築地市場を東京ガス工場跡地に移転する関連予算1281億円の執行を表明したことは、土壌汚染が深刻な豊洲への移転はやめてほしいという都民の願いを踏みにじるものです。

高濃度汚染

 築地市場は「築地ブランド」で世界的に有名な、鮮魚や青果を扱う「都民の台所」です。発がん性物質のベンゼンや猛毒のシアン化合物などで高濃度に汚染された豊洲地区に移転させることは、「食の安全・安心」を最優先すべき市場の役割からみて不適切です。

 そのうえ汚染処理対策には重大な欠陥があります。都の汚染処理策は、地中の粘土層(有楽町層)より深いところにある汚染の可能性が高い土壌を、調査もせず処理対象から除外しました。

 豊洲予定地は中・高濃度の有害物質で汚染された地点が広範囲に散在しており、都の調査は汚染を見逃している危険があります。

実験ずさん

 都が「処理技術の有効性を確認する」とした実験も欠陥でした。

 汚染土壌の処理実験で環境基準の4万3000倍のベンゼン汚染を環境基準値以下に浄化したかのように宣伝しました。しかし、実験で使った試料の実験前濃度(初期値)は基準の2・7倍。ベンゼンで汚染された地下水の処理実験にも欠陥が判明し、研究者から「科学的な実験とはいえない」と批判があがりました。

 都が「健全土を搬入した」としてきた豊洲予定地の盛り土も、ベンゼンやシアン化合物などの汚染が分かるなど、究明すべき問題は多々残されています。

 石原知事は「(議会の検討は)やり尽くした」「(都の処理策に)科学的な論拠を構えた反論は一向に聞こえてこない」と言いますが、専門家の批判に科学的論拠を持った答弁をできずにいるのは知事自身です。ごまかしの汚染対策をタテに移転予算を執行することは断じて許されません。

過大計画案

 築地市場の現在地再整備案は都議会特別委員会で検討している最中です。同委員会で調査してきた計画案の規模は築地市場の現状から見れば過大で、市場業者の利用料負担に跳ね返る問題があります。日本共産党都議団が提案したように、都の責任で施設規模を適正な水準に見直して都が財政投入を行えば、業者の負担を抑えて現在地再整備を進めることは十分可能です。

 「築地市場は老朽化して危険だ」と言うのなら、何をおいても応急対策を講じるべきです。にもかかわらず、現在地再整備事業を中断してきた石原知事が「築地の再生は時間的に非常に無駄」とうそぶくのは都民をあざむくものです。

 都が進めるべきは豊洲移転ではなく、「食の安全・安心」「築地ブランドの存続」を願う都民と市場関係者が求める現在地再整備の道に立ち返ることです。(東京都・川井 亮)





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