2010年8月31日(火)「しんぶん赤旗」

政府・日銀の緊急経済対策

雇用対策、中小企業振興、「空洞化」回避

求められる内需拡大策


 菅直人内閣と日銀は30日、急激な円高・株安に対応するために金融対策を発表しました。円高被害に苦しむ中小企業業者やコスト削減のために過酷な長時間労働を強いられる労働者の苦境を打開するものになるのでしょうか。

バブルの恐れも

 日銀の追加金融緩和は、年0・1%の固定金利で資金を供給する「新型オペレーション」(公開市場操作)の規模を20兆円から30兆円に増額し、供給期間についても従来の3カ月物に加えて6カ月物を導入する措置です。市場金利の低下をいっそう促進して金融面から景気にてこ入れしようというものです。

 日本経済が陥っている問題は賃金の抑制や雇用情勢の悪化によって個人消費が低迷し、内需・家計がやせ細ったことにあります。そこにメスを入れずに資金供給を増やしても効果は得られません。

 これまでの金融緩和でも資金は生産活動の主役である中小企業に回りませんでした。その原因は内需不足とともに、都市銀行による貸し渋りです。

 実体経済に資金が回らない中で金融緩和を拡大すれば懸念されるのはマネーが投機に使われることです。

 新型オペの拡大にただ一人反対した須田美矢子審議委員は「長い目で見てバブルの温床につながるリスクを高める」と表明。白川方明総裁自身も「どのような金融政策の決定にあたっても効果だけあって副作用がないということはない」とバブルにつながる可能性を否定しませんでした。

公正なルールを

 経済産業省が27日に発表した円高影響調査には「取引先からのコストダウン要求が昨年末の急激な円高の際から強くなっている」(鋳造)などの深刻な声が寄せられていました。リーマン・ショック以来、中小企業は内需の冷え込みに直面し、下請け中小企業は、親企業による「買いたたき」「下請切り」に泣かされてきました。下請け2法(下請け代金法、下請中小企業振興法)違反が横行。急激な円高は、大企業の無法にいっそうの拍車を掛けます。中小企業を振興するとともに大企業・親企業の無法を一掃し、公正な取引ルールをつくることが求められます。

大企業中心正せ

 円高の背景には、自動車や電機など一握りの輸出大企業による大量生産・大量輸出があります。下請け中小企業への単価の引き下げに加え、正規労働者の非正規労働者への大量の置き換え、リストラと過密労働の強化、賃金の引き下げをテコにしています。企業犯罪であるサービス残業も横行しています。

 しかも、今回の円高を口実に「日本で生産を行っている車種、部品の海外生産への変更も視野」(自動車)、「さらなる海外移転を考えざるを得ない」(電機)などと「産業空洞化」の動きも出ています。

 「職場破壊」「雇用破壊」の事態に政府が打ち出した雇用対策は、事業主に対する雇用奨励金が柱です。

 労働者、中小企業の犠牲のうえに、一握りの大企業に富が集中するという異常な事態にメスを入れることにはなっていません。いまこそ、このシステムを転換し、日本経済を内需主導で再生することが求められています。





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