文字の大きさ : [] [] []

2009年12月4日(金)「しんぶん赤旗」

事件リポート

8月に殺人未遂事件

逮捕されない 米兵の子

米軍、引き渡し拒否 地位協定口実に

東京・横田基地


 東京都武蔵村山市で今夏、道路に張られたロープにミニバイクが引っ掛かり、女性が重傷を負った事件で、警視庁が殺人未遂容疑で逮捕状を取りながら、いまだに執行できないでいます。容疑者は、米軍横田基地(福生市)所属の米兵の子どもで、同基地側が身柄引き渡しを拒否していることが3日、本紙の取材で分かりました。(山本眞直)


 事件は今年8月13日午後11時すぎ、武蔵村山市伊奈平の市道で起きました。運送会社の敷地内の金属ポールから、合成繊維のロープが道路を横切るように反対側の電柱に結ばれていました。ミニバイクの会社員女性(23)=同市=が、ロープに首を引っかけ転倒、頭蓋(ずがい)骨骨折の重傷を負いました。

 運送会社によれば、ロープは夜間など車庫への侵入防止のため入り口の両端のポールに張っていました。

 警察の捜査で、現場付近で米兵の子ども4人(少年少女15歳〜18歳)が遊んでいたことが判明。防犯カメラにも映っており、事件への関与が強まったとして警視庁組織犯罪対策2課が殺人未遂容疑で逮捕状を取りました。

 4人のうち2人は基地内に居住。日米地位協定では米軍施設や敷地内での逮捕、家宅捜査をする場合、米軍側の許可が必要なため、警視庁は身柄引き渡しを要請していました。

 しかし逮捕期日の1日までに身柄は引き渡されませんでした。

警察も無回答

 武蔵村山市は同日、横田基地に説明を求めました。同基地のクリストファー・ワット広報部長の答えはこうでした。「(日本側から)正式に身柄引き渡しの要請を受けておらず、逮捕状も提示されていない。要請があれば、日米地位協定の規定内で協力する」

 同市は、警視庁にも「いったいどうなっているのか」と逮捕状請求の事実確認を問い合わせました。返事は「回答できない」。

 本紙は、身柄引き渡しについて、同基地に問い合わせました。同広報部は2日、次のように回答しました。

 「11月24日、日本の警察から身柄を引き渡してほしい、との非公式な打診があった。基地側としては日米地位協定の解釈として身柄は渡せない、と回答した。今後も同様なかたちで要請してくれば、同じように対応する」

基地ある限り

 警視庁は逮捕状を更新、身柄引き渡しを引き続き求めていくとしています。警察に詳しいマスコミ関係者は指摘します。

 「地位協定を都合よく解釈する米軍の態度は許せないが、日本側にも問題がある。基地をかかえる自治体への情報開示を拒否するのは異常だ。逮捕状の執行に対し外務省や警察庁など政府内での政治的判断が働いているのでは。沖縄での普天間基地『移設』日米協議への配慮があるのではないか」

 東京平和委員会は1日、日米両政府に厳しく抗議する声明を出しました。「日米地位協定にも違反し、犯罪者を基地内にかくまい、身柄引き渡しを拒む米軍に怒りを込めて抗議する。事件は基地ある限り、なくならない。被害者は米軍基地を容認する政府の犠牲だ。日米地位協定の抜本的な見直し、米軍基地の撤去を求める」



■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp