2008年10月29日(水)「しんぶん赤旗」

衆院本会議

新金融機能強化法案

佐々木議員の質問


 日本共産党の佐々木憲昭議員が二十八日、衆院本会議で行った新金融機能強化法案についての質問は次の通りです。


 アメリカ発の金融危機は、世界経済に大混乱をもたらし、日本経済に深刻な影響を広げています。

 今回の金融危機の背景に、アメリカにおける金融バブルの極端な膨張がありました。この十年来、金融自由化のもとで、銀行の貸出債権が売却され、証券化され、他の金融商品と組み合わせた金融派生商品が次々とつくられ、投機的な売買を通じて価格がつり上げられてきました。グラススティーガル法の「銀行・証券分離の原則」を後退させたことを背景に、巨大複合金融機関が大規模な投機的取引に手を出し、今日、巨額の損失を発生させたのであります。

 十月二十三日に行われた米議会公聴会で、FRB(米連邦準備制度理事会)前議長のグリーンスパン氏は、金融派生商品の規制に消極的だったと指摘され、「間違っていた」と認めました。アメリカの金融自由化を手本に「金融立国」を推進してきたのが、日本政府であります。麻生総理、これまでの自由化一辺倒の路線を反省し、根本的に見直すべきではありませんか。お答えいただきたい。

 この間、政府は、「対米協調」の名のもとで、日銀とともに異常な低金利政策をすすめてきました。こうしてつくられた日米間の金利差が、円キャリートレードによる大量の投機資金を生み出す土壌となり、投機をいっそう増幅させたのであります。麻生総理は、金融バブルを加速させてきた日本の責任について、どう感じているのでしょうか。

 四月のG7では、国際展開する大手金融機関に対する各国当局の協力による「共同監視」が強調されました。いったい、それはどこにいったのでしょうか。十月のG7では、その姿勢を百八十度転換し「公的資金の投入」に踏み出しました。バブルに踊った経営者の責任をまともに問わず、なぜ、「カジノ経済」のツケを国民に回すのでしょうか。

 法案の内容に即しておききします。

 第一は、金融機関への資本注入についてです。法案では、その資金は、預金保険機構が政府保証によって調達し、最終的な損失が出たときは国民が税金で負担するしくみになっています。しかし、金融機関の経営安定のために公的資金が必要というなら、それは最終的に、銀行業界全体の負担で返済すべきではありませんか。

 メガバンクはもちろん、農林中金・信金中金までもサブプライムや不動産関連など投機的な資金運用に傾斜し、多額の損失を出しています。公的資金による資本注入は、損失の穴埋めに使われるだけではありませんか。総理の答弁を求めます。

 第二に、今回の資本注入が貸し渋り対策だと言っていますが、その保証があるのかという問題です。

 従来の法律では、資本注入を申請するさいに提出する「経営強化計画」に「中小企業への貸出目標」を盛り込むことが義務づけられ、それが「未達成」の場合、経営責任・株主責任を明確にすることが要件となってきました。

 ところが今回の改正案は、これらの要件は「必要ない」と、外してしまったのはなぜでしょうか。目標も掲げず、責任も問われないなら、中小企業への貸し出しを、ますます“ないがしろ”にすることになるのではありませんか。

 いま、緊急に求められているのは、銀行の貸し出し姿勢をただすことです。この十二年間、公的資金による銀行への資本注入は、十二兆四千億円も行われてきたにもかかわらず、中小企業への貸し出しは、一九九六年三月から今年八月までの間に、実に八十四兆円も減らされてきました。

 全銀協会長は、それを反省するどころか、「貸し渋りをしている意識はない。貸せないところには貸していない」と開き直っているのです。中川財務・金融大臣は、これを正す姿勢を示しておりません。これでは、貸し渋りを容認するようなものではありませんか。

 総理、金融機関は、信用保証協会の保証つきでなければ貸さないのです。この姿勢こそ正すべきです。これを放置したまま、政府が信用保証制度に「部分保証」を導入したため、中小業者にとって「命綱」というべき「保証つき融資」すら受けられない事態を招いています。ただちに「全額保証」に戻すべきではありませんか。

 これまでの政策を見直し、公的金融制度の改善・拡充を行うべきであります。総理の答弁をもとめ、質問を終わります。


 円キャリートレード 金利が低い日本円で資金を借り入れ、それを米ドルなど高金利の通貨に替え、株や債券などで運用して、利ざやを稼ぐ取引。低金利の円がマネーゲームの供給源になっている格好です。



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