特集

2016参院選
前進した野党共闘 現場からの報告

「しんぶん赤旗」2016年7月12・13・14日付より

東北5県 安倍自民に異議申し立て

「東北の有権者は『1強』に異議申し立て」(河北新報11日付)―。東北地方6県のうち5県で、市民と野党の統一候補が自民党候補(公明党推薦)を打ち破りました。野党共闘の前進を現場から報告します。

 青森  新しい流れが誕生した/田名部匡代さん

青森・田名部匡代さん開票日、未明まで自民現職候補との勝敗がもつれた青森選挙区。

田名部匡代さんの地元・八戸で2万以上の差をつけ、自民候補の地元・青森市や弘前市で競り勝ちました。

田名部さんは「県民に突き動かされた。市民の力を感じた。それぞれの中に渦巻いているものが終盤にきて私に押し寄せたと感じました」と選挙戦を振り返りました。

民進党の升田世喜男衆院議員は、「青森の政治の新しい流れが誕生した」と、勝利の要因に野党共闘を挙げました。

木明(きみょう)和人氏=民進・元野辺地町議=は「勝利のために活動する共産党員の姿に感動した。同じ地域の市民団体とのつながりもできた」と話しました。

勝手連「津軽応援隊」の男性メンバー(51)は、「俺は保守だけど、反安倍、安保法廃止を目指している。保守=自民じゃない。この勝利を、“りんご革命”と呼びたい」。

松尾芳明後援会会長も、「共産党、連合、社民と一緒にやれなかったら勝てなかった。選挙だけでは、もったいない。国会内でも共闘してほしい」と期待します。

田名部定男選対本部長は「最初、共産党アレルギーが出てくるかリスクを考えたが、リスクはゼロ。リスク以上のものを得ました」と語りました。

 岩手  日本の夜明け東北から/木戸口英司さん

岩手・木戸口英司さん「日本の夜明けは東北からですね」。岩手選挙区の野党統一候補で当選した、木戸口英司氏らが11日、日本共産党岩手県委員会を訪問し、和やかに懇談しました。比例で当選し、盛岡市に駆けつけていた共産党の岩渕友氏も加わり、お互いの今後の奮闘を誓い合いました。

岩手では野党統一候補の擁立が遅れたものの、公示前から野党共闘をめざす地方議員の会が各地で結成され、合同街頭演説を実施。公示後は県内の主要地域で野党が合同して、木戸口氏の第一声を行い、最終盤も2日間かけて合同打ち上げ演説に取り組みました。

4野党の幹部を迎えた2回の合同街頭演説の成功(公示前1000人、公示後2000人)を力にして、野党共闘が日増しに県内すみずみまで浸透し、木戸口氏勝利の大きな要因となりました。

共産党の事務所には「母親として安保法制は許せない」などという女性らが訪れ、電話かけや街頭宣伝に決起しました。

一方、議席奪還を狙った自民党は安倍首相や閣僚級の国会議員の応援を受け、「野合」攻撃に終始。しかし、共産党や他の野党から「国民の命と生活を守るための野党共闘は、当然だ」と反撃され、伸び悩みました。

 宮城  市民の力で押し上げた/桜井充さん

宮城・桜井充さん「市民の声を届ける議員を、市民の力で押し上げることができて本当にうれしい」。当選の歓声に沸く桜井充候補の選挙事務所で、SEALDs TOHOKUの青年(20)は語りました。

改選数が減って、自民党と民進党の現職の事実上の一騎打ちとなった宮城選挙区。「立憲主義を取り戻す」と願う市民がつなぎ役となって、全国に先駆けて日本共産党と民進党、社民党の3党が政策協定を結び、野党統一候補を実現しました。

自民党は、党を挙げて野党共闘をつぶしにかかり、安倍首相が公示日をはさんで2度、小泉進次郎衆院議員、岸田文雄外相は3度など連日閣僚などが来県し、街頭で「自衛隊をなくす共産党」と偽りの宣伝を繰り返しました。公示前に数十万枚規模で2度謀略ビラがまかれるなど、共産党攻撃も激烈でした。

それに対し、志位委員長や4野党書記局長・幹事長の街頭演説で反撃。超党派の桜井候補を応援する女性議員の会や大崎市議の会など地方でも共闘が進み、各地で市民と民進党・共産党・社民党の合同個人演説会が開かれ、大盛況でした。桜井候補は共産党や社民党の演説会にも出席し、訴えました。

10日夜、事務所で喜びを語った桜井氏は「野党共闘、国民共闘としてたたかってきました。県民のみなさんの力のおかげです」と表明、拍手に包まれました。

SEALDs TOHOKUの青年は、「この経験を生かし、共闘の力で、憲法を何としても守りたい」。次を見つめています。

 山形  新たなたたかいの始まり/舟山康江さん

山形・舟山康江さん県内35市町村の内、32市町村で舟山康江野党統一候補が自民候補を上回りました。

共闘実現の力は市民団体の「野党はまとまれ」という行動でした。「戦争やんだ!おきたまの会」「安保関連法に反対するママの会やまがた」「舟山やすえを勝手に応援する母さんたち」などが4野党にいろいろな形で共闘の要請を行いました。

選挙結果について元JA幹部は「自民党に農政は託せない。共闘実現に共産党が果たした役割は大きい」と話します。JA政治連盟は自民を推薦せず自主投票を決め、今回勇退する自民党参院議員の元事務所長も舟山支持を表明しました。

志位和夫委員長、小池晃書記局長の街頭演説で、共産党と交流のなかった市民団体の幹部がマイクを握り応援演説をするなど大きな変化が生まれました。

フォークグループ影法師の青木文雄さんは「市民団体が野党共闘を繰り返し要請した時、共産党が誠実にこたえ大きな役割を果たしてくれた。市民と野党共闘の勝利です」と話します。

戦争やんだ!おきたまの会の若林和彦さんは「野党がまとまり市民団体と一緒にたたかうことができたことが勝利の力になった。新たなたたかいの始まりだ」と話しました。

 福島  現職閣僚に競り勝つ/増子輝彦さん

福島・増子輝彦さん福島選挙区の野党統一候補、増子輝彦氏は大接戦を制し、現職閣僚に競り勝ちました。自民党が最重点区に位置づけた同区での勝利は、原発事故被害に苦しむ福島県民を切り捨て、環太平洋連携協定(TPP)推進など暴走を続ける安倍政権への審判となりました。

自民陣営は安倍首相が公示後3度も訪れ、閣僚、党幹部らが続々応援。業界団体を通じた締め付けなども激しく行われました。増子氏は「相手候補と私のたたかいでなく、(原発再稼働と海外輸出を進める)総がかり攻撃の安倍首相と福島県民のたたかいだ」と指摘し、広く支持を呼びかけました。

自民陣営の攻撃をはねのける原動力となったのが、市民と民進、共産、社民3党の共闘です。戦争法廃止、憲法9条を守ろうと増子氏が先頭に立って訴え、原発事故被害からの県民に寄り添った復興策、オール福島の願いの県内原発全10基廃炉を強調しました。

野党共闘の発展と相乗的に、共産党と後援会の活動も広がりました。いわき市の女性は1人で2000人以上と対話。白河市の後援会員は、初めて国政選挙でテレデータによる対話に取り組み、県北地区の青年後援会は、2倍に引き上げた支持拡大目標をやりあげました。


 

 新潟  新しい民主主義の誕生/森裕子さん

新潟・森裕子さん

大激戦・大接戦が続いた新潟選挙区では、野党統一の森裕子氏(60)=元、無所属=が、自民党現職に2279票差で競り勝ちました。

開票率が99%になって2千票差でも当選の報が入らず、午前零時前に当選が決まると、事務所に集まった人たちから、待ちわびた喜びの声がどっとわきあがりました。

森氏は涙を拭きながら、「新潟に新しい民主主義が生まれた。安倍首相が3回も応援に入り、私をつぶそうとの大号令がかかったが、全県でそれぞれが自分の持ち場で頑張ってくれた結果。オール野党と市民はひとつだ」と強調しました。

さらに「有権者が、最後は平和憲法を守る、子どもの命と未来を守る思いで、私だけでない議席を勝ち取らせた。野合との攻撃があったが、野党共闘は希望だ。言論の府に戻り、安保法制廃止で迫っていきたい」と決意を述べました。

「オールにいがた平和と共生」(共闘組織)共同代表で市民連合@新潟の佐々木寛共同代表は「新しい時代の幕開けの一歩だ。接戦を覚悟していたが、選挙戦が進む中で共闘関係が良くなったことを感じた。時間があればもっと浸透できた。市民連合などと6野党との共同は一つのモデルになると思う」と語りました。

 長野  市民連携「長野モデル」/杉尾秀哉さん

長野・杉尾秀哉さん「これは県民の勝利。野党共闘の体制が早くでき、市民グループや労働団体との連携がうまくいったことが勝因です」。投開票日の10日、長野選挙区の野党統一候補・杉尾秀哉氏(58)=民進公認、共産・社民両党推薦=は感激ぎみに語りました。地元紙は「『改憲阻止』 野党共闘結実」(「信濃毎日」11日付)と報じました。

杉尾氏に対する政策抜きの大規模な中傷攻撃を仕かけ、県民を欺こうとした自民現職陣営の攻勢を打ち破った歴史的勝利でした。

戦争法反対の空前のたたかいは、「村デモ」など草の根から共同の波をつくり出し、成立後も「戦争法廃止」「野党は共闘」の声を広げ、市民+野党の選挙での共同を後押しして、「怒れる元TBSキャスター」(「日刊スポーツ」)杉尾氏を野党統一候補に押し上げました。

自民陣営は野党共闘の勢いに「『安倍自民党にお灸をすえたい』という支持者もいる」(県連会長)と頭を抱え、首相が3度応援入りしました。

支援の御礼に11日、共産党長野県委員会を訪れた杉尾氏。そこには比例区で当選を決めたばかりの武田良介氏の姿も…。杉尾氏は「市民と野党が一緒になってたたかう『長野モデル』。東京でも信州でも“タッグ”を組んでやりましょう」と、意気投合していました。

 山梨  党派超えて支援広がる/宮沢由佳さん

山梨・宮沢由佳さん参院山梨選挙区(改選数1)の野党統一候補、宮沢由佳氏(53)=新、民進公認、共産、社民推薦=は10日、「横一線」といわれた激戦を制し、自民新人に2万票余の差をつけて当選を果たしました。

「当選確実」の報が入った選挙事務所は「やったー」「がんばってよかったね」の声であふれました。

たくさんの支援者らに囲まれた宮沢氏は「(当選は)平和と子どもの未来を守ってほしいと、党派を超えて寄せられた支援のおかげです。共産党や市民団体のみなさんからのアドバイスもありがたかった」と感謝を述べ「これからがスタート。みなさんの願いを国会に届けるために力の限り頑張ります」と決意を語りました。

日本共産党県委員会は3月末、民主、維新(いずれも当時)、社民の県内4党で戦争法廃止、安倍政権打倒など5項目の政策協定を結び、宮沢氏を統一候補として推薦。公示後は、小池晃書記局長、不破哲三前議長が相次いで来県し、宮沢氏の支援を訴えました。

安保関連法に反対するママの会@山梨の右田厚子代表(39)は「ほんとにうれしい。宮沢さんが候補のうちでただひとり『憲法改正に反対』といってくれた。ママからママへと支援が広がり、みんなでたたかった選挙になった。今後に生かしていきたい」と話しました。

 三重  大義への思い一つ/芝博一さん

三重・芝博一さん「大義のために思いを一つに市民や野党がたたかったから勝つことができた」。参院三重選挙区で3回目の当選を果たした野党統一候補の芝博一氏は、当選あいさつで連合三重など支持母体をねぎらいつつ、何度も市民への感謝を口にしました。

自民党は安倍首相をはじめ毎日のように閣僚クラスを入れて民共批判を展開。対する芝氏と若者や多くの市民は「自公対市民の選挙」と対置させました。

日本共産党は、自らの候補者のつもりで猛奮闘し、元自衛隊員や公明党支持者も芝氏支持へと変える攻勢的なたたかいをしました。

芝氏は44万776票を獲得し、自民新人(42万929票)の激しい追い上げをかわし大接戦を制しました。

「市民連合みえ」呼びかけ人の岡歩美さんは選挙事務所に集まった100人超を前に芝氏に花束を渡し「私たち一人ひとりの市民の勝利」と満面の笑みを見せあいさつ。日を追うごとに芝氏が野党統一候補と市民の代表である自覚を高めていった姿に感動したとのべました。

芝氏が「市民の生活と安全が脅かされるときは、必ず先頭に立って、安倍政権の暴走を体を張って止める」と決意をのべると割れんばかりの拍手が起こりました。

 大分  共同が局面開いた/足立信也さん

大分・足立信也さん安倍首相が4度も大分入りし、自民党候補を支援する中、大分選挙区は野党共同の足立信也氏(現、民進公認)が激戦を制し勝利しました。票差はわずか1090票でした。

足立氏は「それぞれの立場の人が自分の立場で運動してくれたおかげだ」とのべ、陣営幹部は「労働組合に依拠しつつも、『アベノ暴走ストップ』で一致した野党3党と市民団体の頑張りが大きい」と話します。

2日に初めて開かれた日本共産党、民進党、社民党の3党共同街頭演説で足立氏は「安倍暴走を止める」と力を込め、市民団体代表らは「選挙に行こう」と呼びかけ。集まった聴衆は大きな拍手を送りました。

陣営幹部は「この市民と野党の共同行動が局面を切り開いた」と指摘。日本共産党の林田澄孝県委員長も「改憲を大きな争点として浮上させたことが候補者を押し上げ、世論を変えていった」とのべます。市民団体代表は「3党そろい踏みで元気が出た。若者や無党派層への支持を広げることができたのでは」と振り返ります。

足立氏勝利を受け、共産党事務所にも期待と激励の声が寄せられています。別府市の30代男性は「野党共闘をさらに大きく進めてほしい」と話しました。

 沖縄  新基地反対の審判/伊波洋一さん

沖縄・伊波洋一さんオール沖縄の伊波洋一氏が、沖縄・北方担当相の島尻安伊子氏に10万6千票の大差をつけての圧勝。開票から数時間後の県議会で翁長雄志知事は「『オール沖縄』という基本姿勢で取り組んだ結果、私が支持した方が大差で当選した」とのべ、政府に「辺野古新基地反対の沖縄の民意をしっかりと受け止めていただきたい」と求めました。

選挙戦で伊波氏は、「沖縄戦と、その後の71年間の過剰な基地負担に苦しみ続けてきた沖縄に、新たな新基地建設は許されない。私が勝つことで終止符を打ちます」と訴え続けました。訴えを聞いた県民が伊波氏の手を握りしめ「絶対に負けないでよ」。そんな光景が何度も見られました。

対する島尻氏は「波高しと言われるが乗り越える」と危機感を前面に、「予算を付けられるのは自民党・公明党。無所属議員にはできない」と攻撃を繰り返しました。一方で、基地問題には触れないことに「だまされない」と語る県民も少なくありませんでした。

県議選と、続く参院選。その間には米軍属に殺害された女性を追悼する6万5千人が結集した県民大会や慰霊の日がありました。基地のない平和な沖縄を―その願いに沖縄が包まれ続けた中での選挙結果でもありました。

 香川  「確認書」大きな力/田辺健一さん

香川・田辺健一さん香川選挙区は、1人区で唯一の日本共産党公認の野党統一候補としてたたかった、田辺健一氏が議席は得られませんでしたが、10万4239票を獲得。2013年参院選での同氏の得票(3万4602票)から3倍化をはたしました。この原動力となったのは、野党と市民の共同の豊かな発展です。

10日夜、選挙事務所で田辺氏は「市民と野党の共同が香川でも広がりました。立場の違いを乗りこえて多くのみなさんに支援していただいた」と感謝を表明しました。

応援演説にたびたび立った民進党や社民党の県議、みどり・香川、新社会党の代表など県内の野党関係者、市民団体代表も駆け付けました。「10万を超える得票を得て、一定の野党協力がすすんだ」(民進党県連幹事長の山本悟史県議)など、結果を喜びました。

選挙中も民進党の小川淳也衆院議員(香川1区)の後援会員は連日、電話での対話・支持拡大をすすめました。共産党の松原昭夫県委員長と民進党県連代表の小川氏が結んだ「一党独裁否定」などの内容の確認書も、共産党への誤解や偏見を払しょくし、自民党候補陣営の反共攻撃をはね返す大きな力になりました。


 

 (c)日本共産党中央委員会