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特集

戦争法廃止の政府を 各界との懇談

 日本共産党の志位和夫委員長が発表した提案「『戦争法(安保法制)廃止の国民連合政府』の実現をよびかけます」(9月19日)について、各界のみなさんに聞きました。


伊藤 真さん

内橋克人さん

小林 節さん

斎藤貴男さん

西郷南海子さん

澤地久枝さん

瀬戸内寂聴さん

菅原文子さん

想田和弘さん

中野晃一さん

浜矩子さん

益川敏英さん

山口二郎さん

湯川れい子さん

立憲主義守る野党の団結を/弁護士・伊藤塾塾長 伊藤 真さん

伊藤真さん 戦争法廃止の国民連合政府を、野党の共同でつくろうという共産党の呼びかけに大賛成です。

 違憲の戦争法の廃止とともに、出発点である集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回はどうしてもやらなければなりません。

 他の個別政策が違っても、立憲主義と民主主義を守る、憲法の価値を守るという一点では、政党が大同団結しなければならない。それは十分可能だと思います。

 有権者は請願権や、表現の自由を行使して、戦争法案に反対を訴えてきました。今度は国政選挙で選挙権を行使する番です。

 前回総選挙の小選挙区では、自公が絶対得票率約25%で、8割近い議席を得ています。戦争法廃止で野党が連携すれば、自公候補を倒すことは十分可能です。

 国民が主体的にあげている声を次の選挙に生かしていく。そのために、政党の利益ではなく、国民の利益のために行動する姿を野党各党が示せば、政治に対する信頼を回復する人も多いと思います。

(「しんぶん赤旗」日曜版2015年9月27日)


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議会制民主主義と日本の未来かかっている/経済評論家 内橋克人さん

内橋克人さん  安保法制を廃止する国民連合政府を成功させられるかどうか。議会制民主主義の形骸化に野党がどこまで危機感を共有できるかにかかっています。昨年の総選挙における沖縄の選挙協力は、米軍基地問題での強い危機感で生まれました。この経験をいま生かせなければ、野党は小党が乱立する永久野党になってしまいます。

 安倍晋三首相によって閣議決定が私物化されています。自民党内では党内民主主義が絶滅危惧種と化しています。そのもとで集団的自衛権行使容認が閣議決定されました。安倍官邸独裁です。

 政治の劣化に野党は共同の認識を持つべきです。主導権争いに陥らず国民連合政府が力を持てるかどうか、連合政府をいかに成功させるかに議会制民主主義と日本の未来がかかっています。賢さを伴った勇気が野党に求められています。日本の未来を見る賢明さ、鋭さを持たないといけません。

 国民の危機感にいかにこたえるか。すでに自民党から野党の分断工作が始まっています。それに乗ってはいけません。国民の望みをどう生かしていくかは政治家の責任です。

(「しんぶん赤旗」2015年9月29日)


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選挙で政権交代「わが意を得たり」/慶応大学名誉教授・弁護士 小林 節さん

小林節さん 「戦争法」と呼ぶ以外にない、明白な憲法違反の法律を、数を頼んで強行するのはまるで全体主義です。

 でもここからが本当のたたかいです。最終的には国政選挙で決着をつけなくてはなりません。選挙で政権交代させるしかありません。

 その点で、日本共産党の「戦争法廃止の国民連合政府」実現のよびかけには、「わが意を得たり」という思いです。山下芳生書記局長と会って直接、説明を聞きましたが、まったく同感で、うれしくなりました。私もできることをやっていきたいと思います。

 今回成立した安保関連法は、内閣の判断で自衛隊を海外に派兵できます。日本は、不戦の状態から戦争可能な状態に入るのです。これは、アメリカの要望に従って自衛隊を〝2軍〟として差し出す戦争法です。

 法律の合憲、違憲論争など、とっくに私たちが勝っています。向こうが認めないだけです。相撲で相手を土俵に倒したのに、「いや、座りたくて座ったのです」と言っているようなものです。(笑い)

 自民党議員の中にも「小林さんのいうことが正しい」とこっそり言ってくれる人はいます。でもけっして表立っては言えない。言ったら自民党にいられなくなるからです。

 一方、民主党の中にも、集団的自衛権行使を「正しい」と考えている人たちがいます。だけど、彼らもはっきり、「現行憲法はそれを許していない」と言っています。憲法破壊の戦争法を通した安倍首相の手法はダメだという点では一致しています。

 それでも、共産党と組むことに拒否感がある人はいます。「共産党とどうやって口をきいたらいいかわからない」というのです。だけど、私が「目の前の共産党が敵じゃないでしょ、安倍首相が敵でしょ」「共通の強大な敵を前に連携するしかないでしょ」というと、みんなハッと顔色が変わるんです。

 山形市長選(13日投票)では、大学での私の教え子が野党各党から推されて立候補しました。彼は「戦争法案反対」を掲げ、3カ月前は世論調査で大きく差をつけられていたのを、投票では得票率1・5ポイント差まで詰め寄りました。私もずっと応援に入り、野党共闘の現場体験を積むことができました。現場では共産党は本当によくやってくれましたよ。

 私は初めて、日本で民主革命が起きるのではないかという実感を持っています。国政選挙までこの問題を有権者が覚えておくように、自公に絶対投票しないように、国民運動を大きくしていくことが大事です。

 「国民連合政府」ができれば、閣議決定を白紙に戻した上で、戦争法を廃止し、しばらく政権を担当し、いろんな分野、課題で自民党政治を完全に終わらせてほしい。自民党政治にいっしょにとどめをさしていきましょう。

(「しんぶん赤旗」2015年09月27日)

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右、左の立場を問わず相いれない「戦争法」/ジャーナリスト 斎藤貴男さん

斎藤貴男さん 戦争法案審議の最終盤、子育て中のママ、パパなどを含め、これまで必ずしも反権力的な立場でなかった層の人たちまでが反対の声をあげ、行動しました。「戦争法」の成立までの過程はもちろん、内容もでたらめであることを、政治の場ではっきりさせることが必要です。

 「戦争法」は日本の安全保障の理念をはるかに超えています。日本の自衛隊にアメリカの覇権主義の一翼を担わせ、アメリカがすすめる戦争に国民の命を差し出すものです。

 政府は「戦争法」成立後、早速、アフリカ・南スーダンの国連平和維持活動(PKO)派遣自衛隊の任務に「駆けつけ警護」の追加方針を固め、武器輸出事業への貿易保険適用の検討を始めました。戦争することが当たり前になろうとしています。

 右、左を問わず、どういう政治的立場の人も、この「戦争法」とは相いれない。「戦争法」廃止で一致する政党や個人が共同して国民連合政府を実現させるよびかけに全面的に共感します。

(「しんぶん赤旗」2015年10月1日)


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社会は変わると実感/「安保関連法に反対するママの会」発起人 西郷南海子さん

西郷南海子さん 強行成立に心の底から抗議するとともに、「ママの会」は会名から「案」をとり再出発しました。私たちが生活の中から上げた声は、国会の演説にも盛り込まれ、政治も無視できなくなりました。

 一人のママの呼びかけから始まった「ママの会」は、「だれの子どももころさせない」を合言葉に、全国に50以上に広がりました。強行成立ですが、みんな絶望するどころか明るい。

 それは、声を上げ、仲間が増えることで自分たちの社会は変わっていくと実感できたからです。今夏、私たちが蓄えた力は計りしれません。

 私たちの「手作り民主主義」は、新たに始まりました。「これから何ができるだろう」というわくわく感でいっぱいです。

 共産党が、戦争法廃止の一点で幅広い政党や人々と共同する提案をしました。本当にやってほしかった。共産党の奮闘は存在感を示してきました。しかし選挙になると票が割れ、自民党が当選するという悔しい思いもしてきました。野党は市民の声を実現するために共闘してほしい。

(「しんぶん赤旗」 2015年09月21日)


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「提案」まったく同感 一致点で反アベ選挙/作家・九条の会呼びかけ人 澤地久枝さん

澤地久枝さん 戦争法案が強行可決されて、怒りと悲しさで身が引き裂かれるようでした。そこへ、志位さんの戦争法廃止の国民連合政府実現のよびかけを読んで、まったく同感する思いです。

 戦争法は9月30日に公布されて、来年3月に施行されます。戦場には、ここで線を引いてここからが前線で、ここからが後方ということはありえない。自衛隊が地球のどこにでも行っていつ殺し殺される事態になるかわからないというギリギリのところです。次の選挙で、何としても安倍政権を倒し、政治を変えたいと思います。

 志位さんが提案されているような三つの条件で一致できる統一候補者を立てる。反アベの選挙を徹底したい。

 提案にある「国民連合政府」という名称にアレルギーをもつ人がいるかもしれないと思いましたが、先日、市田忠義副委員長と対談した際、「政府の名称にはこだわらない」と説明されて納得しました。

 小選挙区という選挙制度の悪弊も思います。4割台以下の得票で7~8割の議席を得る。それで当選した人たちが憲法を無視して強引に悪法を通す。こんなひどいことはありません。新しい選挙制度を考えなければと思っています。

 異例の非常識な長さの95日間の延長国会にしたのは、安倍首相が日本の国会で審議するより前にアメリカで約束してきたから。通さないとアメリカに顔向けできない、というのが見え見えでした。

 でもその間に反安倍政権、反戦争法の声がどんどん広がった。

 憲法学者も、法律家もそろって、「違憲」の意見がのべられています。一般民衆の声の熱さがあります。SEALDs(シールズ)など、若い人たちの抗議の声が広がり、それが無垢で真摯なことに胸をうたれました。九条の会の呼びかけ人であった思想家の加藤周一さんは、最晩年に、若者と老人が手を取り合って進む方向を語っていましたが、生きていらしたらどんなに喜ばれたことか。

 日本の集団的自衛権容認は、海外で人道支援活動をしている人々の命をも危険な目に遭わせます。アフガニスタンで、ペシャワール会の中村哲先生は医療活動とともに干ばつ対策のために灌漑用水路を引き、何十万人の命を救ってきましたが、丸腰だからこそできたことです。戦争法は、アフガニスタンの人たちからも日本の裏切りと思われるでしょう。

 私は、軍事基地に反対です。日米間の根本の矛盾は、軍事同盟である安保条約にあります。平和条約に変えたいと思っています。日米のどちらか一方の国が通告をすれば変えることができるのですから。

 今は、次の選挙で勝つことです。憲法の原点にもどりたい。そのために「九条の会」もあります。

 戦後の焼け野原から新しい憲法を抱いて出発したように、力を合わせて新しく日本をつくりなおしたいですね。

(「しんぶん赤旗」2015年10月4日)

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虚心坦懐に力を合わせて/作家・僧侶 瀬戸内寂聴さん

瀬戸内寂聴さん 今度の政府のやり方は民意をちっともくみ上げていない。そこが一番ひどい。

 でも、SEALDS(シールズ)のような若い人たちが立ち上がったのは本当に頼もしい。法案成立後も絶望せず、「たたかいはこれからだ」と。若者が元気なのは日本の希望です。「ママの会」などお母さんも子どもを守らなければと頑張っています。

 法案に反対した野党で「戦争法廃止の国民連合政府」をつくろうという共産党のよびかけは、たいへん結構です。しっかり願います。野党がまとまって力を強くしないとダメですね。〝うちが中心でなければいや〟とか言っているときではありません。お互いに虚心坦懐(たんかい)に力を合わせてほしい。

(「しんぶん赤旗」日曜版 2015年09月27日)


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「オールジャパン」で粘り強く運動/辺野古基金共同代表 菅原文子さん

菅原文子さん いま日本は国民自らの力で本当の民主主義を築くという、民主主義の第2ステージに立っていると思います。

 安倍政権が解釈改憲で平和憲法を踏み破ろうとしたとき、国民一人ひとりが蜂のように国会に押し寄せて、全国でも立ち上がった。政治とは縁遠かった学生やお母さんも多く、運動の形もおしゃれで新しいものでした。それは強行採決後も細ることなく続いています。国会の野党共闘はこの国民運動に支えられたものでしょう。

 共産党の「戦争法廃止の国民連合政府」の提案、とってもいいと思います。沖縄・辺野古への新基地建設に反対している「オール沖縄」のたたかいのように、今度は「オールジャパン」で、この政府の実現のために国民が粘り強く運動していかなければなりません。

 共産党は戦後ずっと反共攻撃にさらされてきました。アレルギーのある方も多いでしょう。しかしそれを乗り越えて、平和憲法を取り戻し、本当の民主主義を手にするために、野党と国民は大同団結すべきだと思います。

(「しんぶん赤旗」2015年9月27日)


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運動継続の旗印になる/映画作家 想田和弘さん

想田和弘さん 国民連合政府の呼びかけを報道で知り、ネットで全文と志位さんの記者会見の一問一答を読みました。よく検討され、考え抜かれた提案だと感じました。

 政策の違いの大きい野党が連立して政権を取ろうとしても単なる数合わせでは「野合」になってしまいます。しかし戦争法廃止の目的に特化した暫定政権なら、民主主義の見地からも理にかなっている。憲法違反の戦争法と閣議決定を廃止するには、野党が違いを脇に置いて大同団結するしかないでしょう。

 安倍政権の危険性は常軌を逸しています。なのに自公は選挙で勝ち続け、なぜ野党はバラバラなんだと歯がゆく思ってきました。今回は戦争法反対でかつてない規模の主権者が立ち上がった。成立しても戦争法賛成の議員を落とすという次の目標ができた。共産党の提案はその運動を継続させる旗印となるもので、歓迎しています。

 志位さんがツイッターで共産党アレルギーに言及し、アレルギーを乗り越え力を合わせようと言っている。確かに共産党と組むことの抵抗感は強い。僕も無党派なので「赤旗」に登場するのはちょっとためらった。(笑)

 でも、いま問われているのは国の根幹にかかわる立憲主義、法治国家の原則を回復できるかどうかです。劇作家の平田オリザ氏が言うように、安倍政権へのレジスタンスの段階にきています。その危機感を他の野党が共有できるかどうか。ぜひ実現するよう野党を応援したいと思います。お手本は沖縄ですよ。

(「しんぶん赤旗」日曜版2015年10月4日)


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国民が渇望した提案/上智大学教授(政治学) 中野晃一さん

中野晃一さん 「戦争法廃止の国民連合政府」という志位委員長の提案は、非常に大胆に踏み込んだもので、驚いていますし、前向きなとりくみに感銘も受けています。

 石川健治東大法学部教授らが法学的にみて「クーデター」だと批判する今回の戦争法強行の事態を緊急に正すべく打ち出された提案ですから、他の野党・会派も真摯に受け止め、対応してもらいたいと思います。

 私は、国政の基本問題での一致を選挙協力の条件としてきた共産党の方針には正当性があったと思いますし、従来の共産党の政策も大事にすべきだと理解しています。ただ、今回のように政治の土俵そのものを壊す暴挙に対しては、一歩踏み込んだ提案をしてきた。

 背景には、共産党の地道な努力の蓄積があります。これまで運動を支えるうえで、共産党は場合によっては己を殺してでも頑張ってきた。多様な意見をできるだけ尊重し、自分たちの意見も主張しようとしていると感じられました。

 国会前など全国の戦争法案反対の運動が広がりと多様性を増したことで、私たちも元気づけられました。スタートの段階では野党の共闘には頼りない面もありましたが、市民社会の声の大きさと広がりを目の当たりにして足腰が定まり、抵抗運動が盛り上がったことは画期的です。その声に共産党が応え、野党連携をさらに発展させる一歩を示したことには大義があります。

 来夏の参院選挙で、あるいはその前にも総選挙に追い込み、野党が自公政権の暴走に対抗する選択肢を国民に示すことが、なによりも求められています。戦争法成立当日というタイミングで、ここまで大胆に国民の期待に応えようという姿勢自体、共産党が市民社会に向き合う政党となっていることを示すものです。見返りや党利党略のためではなく、国民の渇望に応える提案であり、ぜひ実現をと期待しています。

(「しんぶん赤旗」2015年9月21日)


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今の時代状況に適合 希望の灯を大きく/同志社大学大学院教授 浜 矩子さん

浜矩子さん 私たちが目の当たりにしているのは、21世紀型の市民革命です。それがこれからさらに進化していく。立ち上がった市民の姿がすばらしい。老いも若きも、顔ぶれも多彩。ここに希望があります。  その希望にかなった国民連合政府になれば、まさに今の時代状況に適合したものになると思います。

 アベノミクス「新3本の矢」は、「1億総活躍社会」を唱え、強く大きな経済をつくるために、国民総動員を図るという発想が露骨に出ています。「子育てにやさしい」と言うけれど、子育てをしている人にやさしいわけではない。

 安倍首相はアベノミクスと外交・安保政策は表裏一体だと明言しています。今度の政策も、その線に沿って描かれたシナリオだということを忘れてはいけません。

 希望の灯をどんどん大きくしていくことが重要です。まさに本番はこれから。この流れの中で国民連合政府を進めていってほしい。

(「しんぶん赤旗」2015年10月12日)


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今こそ野党の団結で現政権退陣を/京都大学名誉教授・ノーベル物理学賞 益川敏英さん

益川敏英さん 安倍首相は、立憲国家の首相としてむちゃをした。明らかに憲法違反の法律を、国民に十分説明しないまま、オレがいいと思ったことは押し通すんだと。

 集団的自衛権行使を認めない憲法が今の国際情勢に合わないというなら、合わない理由を説明して、国会で3分の2をとって、立憲国家としての手順をきちんと踏むべきです。そういうのを全部すっとばして、日本を「戦争できる国」にする。憲法無視の安倍さんのやり方はまさにファシズムですよ。彼にはやめてもらわないといけない。

 共産党が「戦争法廃止、立憲主義を取り戻す」の一点での国民連合政府の実現をよびかけたのは、非常に時宜を得た提案だと思います。

 野党は自分の独立性を追求する部分もあるから、粘り強く一致点での共闘を重ねていく努力が必要になるでしょう。譲歩するところは譲歩しつつ、今こそ野党が団結して、現政権を退陣に追いやらなくては。

(「しんぶん赤旗」2015年9月27日)


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強権政治止めるために/法政大学教授 立憲デモクラシーの会共同代表 山口二郎さん

山口二郎さん 安保法制が国会で数を頼んで強行されることは予想していました。しかし、ここまで反対運動が盛り上がったこと、そしてこんなに憲法の平和主義への愛情が深いものだったとは正直予想外でした。学生、教員、市民が対等に並んで運動する姿は、60年安保でもなかったでしょう。「立憲主義」という言葉がこれほど浸透し、その是非が政治の争点になるというのも予想以上です。

 この世論、国民の力を継続・増幅して、安保法制をひっくり返さなくてはなりません。「立憲主義」「法治主義」という近代国家の常識すら顧みず、戦後日本の形を大きく変えるため恣意(しい)的にやりたい放題の安倍首相には退陣してもらいたい。こんな安倍政治が今後もまかり通るなどということでは、私は政治学者として死んでも死にきれません。

 この点で、共産党が安保法制廃止、閣議決定撤回のため、連合政府と選挙協力の提案を、素早く出してきた。かなり踏み込んだ提案で、大局的な判断に立つものだと思います。安倍政治を許さないと思っている多くの市民も同じ思いだと思います。私自身、この間、共産党が良心的に頑張ってきたことには頭が下がります。

 野党各党は、安保法制廃止のために、この提案をしっかり協議して、これまでの立場を乗り越えて、大胆に協力・共同してもらいたい。ステップ・バイ・ステップ、まず、当面は参院選で自公与党の過半数割れを引き起こすべきです。共産党の提案に、一部に否定的な反応がありますが、安倍政治を止めるには大同団結しかありません。敵の敵は味方というリアリズムを共有すべきです。「基本的な政策理念の一致が必要」という意見はわかります。しかし、いまは、違憲の安保法制を廃止し、安倍強権政治を止めるということ以上に、崇高な理念があるでしょうか。まず、そこから始めるべきです。

(「しんぶん赤旗」日曜版2015年10月4日)


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野党の本気度問われる/音楽評論家 湯川れい子さん

湯川れい子さん 仕事で50年以上、国外を歩いてきました。「もう戦争はしません」という約束を国是とした国は日本以外ありません。簡単に平和が守れるとは思っていませんが、人間の理想の形として、そういう縛りを持っている国を誇りにしてきました。憲法解釈で「戦争はしない」という国是を崩すことは本当に悔しい。

 今回、日本共産党が、戦争法を廃止するために国民連合政府をつくることを呼びかけ、そのための選挙協力を打ち出したのは率直にうれしいです。志位さんは、選挙協力で独自候補にこだわらないという姿勢を示しています。「戦争法を廃止してほしい」という国民の声をどう具現化するか。野党の本気度が問われるでしょう。

 私は親族に、連合艦隊司令長官だった山本五十六がいて、父も海軍大佐。兄は戦死しました。戦争の悲惨を体験しています。

 戦後、街角に立っていた傷痍(しょうい)軍人の姿は忘れられません。つまり戦争の責任なんて誰も取れないということです。すべては国民の決意と外交の力、想像力の問題だと思います。

(「しんぶん赤旗」日曜版2015年10月4日)

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