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赤旗


学生が安心して使える奨学金に

 ――奨学金返済への不安と負担を軽減するために

2014年10月7日 日本共産党

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 日本共産党の小池晃副委員長(政策委員長)が7日の記者会見で発表した政策「学生が安心して使える奨学金に――奨学金返済への不安と負担を軽減するために」は次の通りです。

“奨学金という借金”が若者の未来を押しつぶす

 「奨学金返済に行きづまり自己破産」「夫婦で奨学金を返済中。子どもをあきらめた」など、ほんらい若者の夢と希望を後押しすべき奨学金が、若者の人生を狂わせるという、正反対の“結果”をもたらす、かつては考えられなかった事態が起きています。

 いま奨学金を借りると、平均的なケースで300万円(月5万円を4年間、入学時50万円など)、多い場合には1000万円(大学院進学の場合など)もの借金を背負って社会人としてのスタートを切ることになります。その一方で、非正規雇用の増大などで卒業後の雇用・収入は不安定になっており、大学・短大などを卒業した30~50代の3分の1以上が年収300万円以下の賃金(総務省就業構造基本調査)で働いています。こうしたもとで奨学金を借りた既卒者の8人に1人が滞納や返済猶予になっています。奨学金の返済は、期日から1日でも遅れると5%の「延滞金利息」が上乗せされ(2013年度までは10%)、滞納が3カ月以上続けば、金融の「ブラックリスト」に載せられます。

 これは学生生活にも深刻な影響を及ぼしています。「多額の借金」を恐れて奨学金を「借りたくてもがまんする」学生も増えています。「高校の時に奨学金を借りたから、大学に入ったら奨学金は借りられない。毎日深夜までバイトする」など、さらにバイトに追われる学生生活になってしまいます。ブラック企業のような違法・無法な働かせ方を押しつける「ブラックバイト」から学生が抜け出せない一因もここにあります。

奨学金の本来の役割にふさわしい改革を

 日本の大学教育にとって奨学金の役割はますます重要になっています。奨学金は、1998年から2014年の間に、貸与額で4・9倍、貸与人員で3・7倍に急速に拡大し、いまや学生の2人に1人が奨学金を借りています。この間、勤労者の所得は平均年収で60万円も減り、親からの仕送りも平均で月額10万円から7万円に減りました(下宿生=大学生協連調査)。その一方で大学の学費は上がり続け、初年度納入金は、国立で83万円、私立は文系約115万円、理系約150万円にもなり、教育費負担は重く国民生活にのしかかっています。こうして大学進学のためには奨学金に頼らざるを得ない若者が増え続けたのです。

 ところが政府は、この奨学金依存度の高まり、奨学金への期待の高まりに、まともに応えず、もっぱら有利子奨学金の拡大という“奨学金の教育ローン化”で対応してきました。1984年に「無利子奨学金の補完措置」として導入された有利子奨学金は、当初、貸与額の5%だったものが2014年には75%と、「補完」どころか「主流」になってしまいました。

 文部科学省が設置した「学生の経済的支援の在り方に関する検討会」も「貸与型奨学金の返還の不安を軽減していくことが重要」「(非正規雇用の拡大などは)卒業生の経済的状況にも影響を及ぼしており、奨学金制度もこのような変化を受け止められるように、進化していく必要がある」という報告書を出しています(2014年8月29日)。

 日本共産党は、奨学金返済への不安と負担を軽減し、教育の機会均等を保障するにふさわしい奨学金制度に改革していくために、以下の提案を行います。

1 学生の有利子奨学金を無利子に

 新規に貸与する奨学金を無利子にするとともに、在学中の学生の有利子奨学金を無利子奨学金へと「借り換える」制度をつくり、国が利子補給を行って全員に無利子化を実現します。これに必要な予算は年間1000億円程度です。

 奨学金というなら利子はとらない、これが国の教育行政の最低限の責任ではないでしょうか。文部科学省も“奨学金は無利子が根幹”としてきました。借金返済の負担軽減の第一歩は、本来の姿に戻して負担を減らすことです。

 有利子奨学金は、最大で年利3%の利子負担が生じます。その場合、貸与額300万円であれば85万円、1000万円であれば360万円もの利子負担になります。

 奨学金は、金融商品である「教育ローン」であってはなりません。「教育ローン」の対象は親であり、金融機関は借入者である親の所得や資産を査定して融資を決定します。所得も資産もない学生を何百万円もの借金を負わせて利子を取り立てる「ローン」の対象にすること自体が間違っています。無利子化は、学生の負担と不安軽減のためにも、奨学金制度の本来の趣旨からも、緊急対策として、ただちに実施すべきです。

2 奨学金返済が若者の生活を追いつめないように返済方法を改善する

 大学入学前に、将来の所得を考えて奨学金の借入と返済の計画を立てることは、今日では不可能です。卒業後の所得に対して、奨学金返済が過重となり、若者の生活を押しつぶしてしまう、奨学金が“ローン地獄”への入り口となってしまう事態は、緊急に解決しなければなりません。

(1)既卒者の奨学金返済の減免制度をつくり、生活が困窮する場合の救済措置を講ずる    

 奨学金を返済中の既卒者すべてを対象にした減免制度の創設を提案します。「返済に困ったときのセーフティーネット」をつくることは、現役学生の奨学金への不安を軽減するためにも必要です。

 延滞者の8割が年収300万円未満ですが、現行では10年が上限の返還猶予制度(年収300万円以下などの条件で1年ごとに申請する)があるのみです。10年たてば年収が大幅にアップする保障はありません。「猶予期間の終了で自己破産」などという事態が続出する危険性があります。

 諸外国では「25~35年間」(イギリス)、「20~25年間」(アメリカ)の返済期間を経過したり、年齢が65歳に達したら、残額を免除する制度にしています。日本でも、10年という返済猶予期間の上限を撤廃するとともに、25年間などの返済期間や年齢を条件に、所得に応じて残額を免除する制度にします。親の奨学金返済が終わらずに子どもが大学に行けないというような「負の連鎖」を起こさず、老後や次世代に借金を残さないようにします。

(2)延滞金、連帯保証人・保証料を廃止し、返済困難者への相談窓口を充実する

 国の奨学金事業を実施している日本学生支援機構は、返済困難者を相手どって、年間6000件もの裁判を起こしています。現行の返還猶予制度さえ知らされずに、高利の延滞金を徴収され、さらに追い詰められるケースも後を絶ちません。「滞納すれば延滞金や裁判」という脅しの対策をあらため、返済困難者によりそった相談窓口こそ充実すべきです。

 滞納者の事情をまったく考慮せずに一律に課す延滞金はただちに廃止します。奨学金借入時に連帯保証人を求める制度は、親が高齢になった時に連帯保証人としての借金返済を迫られるということが問題になりました。その「改善」策として2004年に導入されたのが毎月の奨学金から保証料を天引きして、実際の奨学金額を減らす制度です。例えば、月額5万円だと2141円の保証料が天引きされ、4年間で奨学金は10万円も減らされます(2014年現在)。経済的に苦しい学生を支援するより、「借金取り立て」を優先させる姿勢をあらため、個人への連帯保証人・保証料徴収を廃止し、政府保証にします。

(3)すべての貸与奨学金を所得に応じた返済制度にする    

 奨学金を無理なく返済できるように、卒業後の進路さえ見当もつかない大学入学前に毎月の返済額が決まる現行のやり方を改め、年収階層別に返済額を決めるなど、貸与奨学金を所得に応じて返済する制度にします。文部科学省の「学生の経済的支援の在り方に関する検討会」も「所得連動返還型奨学金」を提言していますが、「年収300万円以下は返済猶予」という現行を踏まえ、少ない所得から無理に返済させることのない制度にする必要があります。同時に、特定の学生に限るのではなく、貸与奨学金全体を対象にすべきです。

3 給付奨学金をただちに創設する

 先進国(経済協力開発機構〔OECD〕加盟国)で、大学の学費があり、返済不要の給付奨学金がないのは日本だけです。アメリカでは、最高で年間約60万円、平均約40万円の給付奨学金(連邦ぺル給付奨学金)を全学生の3分の1以上が受給しています。

 ところが日本では、世界でも異常な高学費でありながら、給付奨学金制度の導入が「先送り」され続けています。2012年度予算編成の過程では、文部科学省が給付奨学金制度の導入予算146億円を概算要求に盛り込みましたが、政府予算案ではカットされました。自民党も先の総選挙で「大学における給付型奨学金の創設にとりくみます」という公約をかかげていますが実行していません。文部科学省の「学生の経済的支援の在り方に関する検討会」でも「給付型支援を充実していくことは、我が国の高等教育における重要な課題」としながら「将来的な検討」課題にしています。

 文部科学省の調査でも、「経済的理由」で中退する学生が増えています。給付奨学金の早期導入がいよいよ重要になっています。

 本来、国民の教育を受ける権利を保障するための奨学金は、若者の借金となってしまう貸与制でなく、給付制とすべきです。ただちに給付奨学金制度を創設し、経済的な困難から大学で学ぶことを断念せざるを得ない若者をなくす支援を行いながら、奨学金の基本は給付制となるように制度を拡充していきます。

教育の機会均等を保障し、国際水準の高等教育に

 日本の教育への公的支出は、先進国(OECD加盟国)の中で5年連続の最下位です。政府や財界は、「大学の競争力の強化」などと言いますが、国などの教育への支出が「先進国最低」で、どうやって「競争力を強化」しようというのでしょうか。日本の大学教育は、家計の重い負担で支えられてきましたが、それも限界にきています。

 政府は、2012年にようやく国際人権規約の「高等教育の漸進的無償化」条項を受け入れました。高い学費を値下げする方向に踏み出すとともに、奨学金制度を拡充することは、憲法と教育基本法が定める教育の機会均等への国の責任を果たすことであり、日本政府の国際公約でもあります。日本共産党は、学生、高校生、教育関係者、そして国民のみなさんとともに、学費の無償化に向けた着実な前進と、安心して使える奨学金制度の実現のために、力をつくす決意です。


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